大体私最後で悩むんだけどなぁ...
大学に入学し、1年が経った。話せる友人もでき、講義もそこそこに受けごく普通の大学生活を山城は受けていた。しかし、普通ではないことがある。母・文加が大学にいるのだ。しかも、講師として。それに気がついたのは2年になり、経済学の講義を受けるようになってからだった。
「すなわち、貨幣の本質というのは今生きている資本主義社会において人々が自分の社会的役割を証明するということがわかる訳...じゃあ今日はこれで終わり」
文加は金融学の非常勤講師をしていた。ただの専業主婦が?と最初は冗談かと思ったが、講義が終わった後に二年前の修了証と修士号を見せられ信じる他無かった。母から聞くと随分前から元大蔵官僚ということもありオファーがあったらしく今年から請け負ったようだ。
だが、文加だけではなかった。
「よって日本国憲法の改正というのは法律の改正よりも極めて難しい。こういった憲法を硬性憲法といって大体の国は硬性憲法だ.....なんだ時間か。これにて終わり」
日本国憲法の講義は麻知の母なのだ。山城は二つの講義で自分と幼馴染の母に教授されるという普通ではない状況にいた。この二人違う点を言えば麻知の母は山城が小さい頃から大学教授である。私語があっても無視をして進める文加と違い麻知の母は一喝し、虫すら鳴らない場を作る。教える人間というのは凄いと思う。
「金融の山城って滉一のお母さんだったのか。はー質問なんて普段しないのになーとは思ってたけど」
講義が終わると文加の下に向かって弁当を受け取っている。勿論麻知が作ってきたものだ。初めは滉一も自炊をしていたがそう長く続くわけもなく、まるで見透かすように学食を利用しようと思ったときに麻知からと弁当を届けてもらったのが始まりだ。
大学の友人、宮野創(みやの はじめ)はパスタをフォークでクルクルさせ、滉一の話を聞いていた
「元カノに甘えすぎてんじゃないのー?滉一」
「それを言われると痛いな」
「もう大学生なんだから自立しないと。....親のときは親離れだけど、幼馴染は幼なじみ離れ?って言うのかなー?とにかく、滉一は幼なじみ離れしないと!」
「幼なじみ離れってなんだよ。それに断れるなら断ってるよそれができないからダラダラ続いてるんだよ..」
「ふーん、じゃあ早く彼女でも作って彼女に弁当作って貰えば流石に...」
「別れたのに浮気だって半ば復縁させられたことがあるし、家に来て他の女と付き合ったら不幸にするなんて言われたら出来るわけないだろ..」
「怖いなぁ。ん?でも私と目合わせてるし話してるじゃん?ちょっと滉一私元カノに刺されたら責任とってよね!」
「お前彼氏いるだろ」
創という名前だが、正真正銘の女子である。彼氏は明正大学のゴツいラグビー部員らしい。高校時代はバリバリのギャルだったようだ。ルーズソックスに化粧、茶髪なプリクラを見せてもらったが、本当のようだがどうすれば黒髪メガネの大人しそうな環境学部の女子大生に変身出来るのだろうか..
「分かってないなぁ滉一は」
創はため息をつく
「滉一の元カノみたいなタイプは独占欲が強くて、誰だろうが近づく異性は許さないってタイプなんだよ。だけど私は滉一のことタイプじゃないから全く狙ってないから、どうか命だけはお助けを〜」
「いや、俺に言われてもな。それにしてもよくそんなこと分かるな。」
創は滉一に向かって手を合わせる。
「ま、彼氏累計13人は伊達じゃないよ。酸いも甘いも見てきたんだから」
「節操ねぇなぁ...」
「元カノが一途過ぎるんだよーだ。もう行かなきゃバイビー
(滉一、盗聴器付けられてるの気づいてないんだろうなぁ。まぁ普通は考えないだろうけど)」
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法英大学北方法律学研究室
ガチャ
「マリちゃん、遊びに来たよー...お昼それだけ?」
文加は麻知の母、マリの研究室にお邪魔していた。マリは一瞬不機嫌な顔を浮かべながらも席を用意する。
「何しに来たんですか?山城先生」
「水くさいなぁ。文加って呼んでよマリちゃんそれか、お...」
「じゃあ文加さん、何の御用ですか?用もなく出入りされるとゼミ生の邪魔になりますから」
「それはごめんね。実はね麻知ちゃんが作ったお弁当を持ってきたの。コンビニおにぎり食べるよりはいいでしょ?」
2つの巾着袋を机に置くもう一つは文加の分だ。文加は広げ食べる。
「うちの学生は大変でしょ」
「モグ……うんまぁボイコットされないだけマシかな。私の時代は全共闘真っ只中で授業なんてロクにしてないし」
「五月蝿い時は注意したほうがよろしいですよ。文加さん」
「別に。困るのは連中だし。連中がどうなろうと知ったこっちゃないしね…」
「相変わらずだね。エゴイストなところは」
「人間(ヒト)はそう簡単に変わらないものよ」
「他人に関心の無い文加さんにしては麻知に好意的というか仲がいいですね」
「麻知ちゃんは何だか私に似てるからかな。料理は圧倒的に私の方が上手いけどね」
「当たり前よ。麻知に料理を教えたのは私なんだから…………で、麻知は元気ですか?」
「フィアンセのことで悩んでいたようだけど、今は吹っ切れたように見えたわ。麻知ちゃんなりの答えを出したんじゃ無いかしら…」
「そうですか…」
「ふふっ…」
文加は不意に笑う。
「お母さんは大変ね……もう帰って買出ししないと、じゃあね」
「お姉ちゃん!……麻知をよろしくね」
「もちろんよ」
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