摂氏0℃   作:四月朔日澪

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梅雨というのもあり、ジメジメした暑さですね...
エアコンをスプレーやフィルター掃除したのですが、前より風は来るようになったのですが冷房が寒すぎる...(かといって、消すと暑い)

※福井編始まってますが、ここではまだ世田谷の自宅にいる設定です


【番外】熱

 かつて言われていた"熱射病"という言葉は死語と化している。今や熱中症は人々を死に至らしめる季節病といっても過言ではない。厚生労働省人口動態統計によると熱中症による死亡者数は1993年以前よりも10倍近く増加している。

地球温暖化の影響という学者もいれば周期説を唱える学者もいるが、とにもかくにも年を重ねるごとに日本の夏は暑くなっていることは事実である。街を行き交う人々は様々な暑さの対策をしている。手持ちの小型扇風機を手に持ち汗を拭う女性、暑いなか街路樹をダッシュで駆け抜ける上半身裸のランニング男、公園で水遊びに勤しむ子どもの姿...

 そんななか住宅街をビニール袋をぶら下げて額から汗を流しながら帰路にいる山城の姿があった。クールビズとはいえ、白いカッターシャツにスラックスとサラリーマンの型を破った格好はできない。シャツが肌に張りついてベタベタしている。山城は今でもこんなに暑いのに夏はどれだけ暑くなるのだろうかと思案していた。

手に持つビニール袋には珍しく麻知からおつかいを頼まれた2リットルのスポーツドリンクが入っている。麻知はあまり私が寄り道することを快くは思っていないのでおつかいを頼まれることはほとんどないのだが、今日は向こうからメールで買ってきてと頼まれた。

家につきドアを開けると、麻知が出迎えていた

 

「...おかえり」

 

「これ、頼まれてたの」

 

「ありがとう...着替えたら?今飲むもの用意するから」

 

「ああ。」

 

麻知に荷物を預け脱衣所でシャツとインナーを脱ぐ。洗濯してあるTシャツを手に取り、頭から被るようにして袖を通す。

 リビングに入り、ゆっくりと椅子に座り一気に脱力する。麻知が買ってきたスポーツドリンクとコップを持ち近づいてきた。

しかし、それを置いてから微動だにしなかった。私はどうしたのだろうか、と心配になると麻知はふと口を開いた。

 

「"熱中症"ってゆっくり言ってみて」

 

「え?」

 

私は急なことに驚いた。そして耳を疑った。聞き直したかったが、麻知は無言でジッとこちらを見ていたので聞きただす勇気はでなかった。

私は断る理由もなかったので言う通りに言ってみた

 

「ねっ ちゅう しょう」「もっとゆっくり」

 

麻知はムスッとした声色で言った。麻知の意図が全く読めなかった。

 

「ねえ ちゅう しょおう」

 

私は出来るだけ"熱中症"という単語をゆっくりと発音した。ゆっくりすぎて原型をとどめていないかもしれないが。

麻知はおもむろにコップにスポーツドリンクを注ぎ、自らそれを口に含んだ。

 

そして、麻知の唇が私の唇に近づいていき...接点が広がっていった。

麻知の口からセルロース特有のケミカルな甘さが口のなかを支配していった。

麻知が口を離し、手の先で口を押さえた。

 

「あなたが"チューしよ"っていうから...」

 

「ああ」

 

私はやっと理解した。熱中症をゆっくり言うと「ねえチューしよう」に空耳で聞こえるのか。妻のお茶目な可愛い一面をみられて少しにやついてしまいそうだが、どうしてスポーツドリンクが必要だったんだろうか。

顔に出ていたのか、麻知がその疑問について口を開いた。

 

「疲れていたと思ったから...水分補給もしてなさそうだったから...」

 

そうか。きっと麻知は私をねぎらうためにこんな手の込んだことをしてくれたのだろう..

 

「なぁ..もっとしていい?」

 

俺が聞くと麻知は少し照れながら「うん...」と頷いた。

麻知は再びスポーツドリンクを口に含み、唇を重ねた。先程とは違い、口のなかに液体が無くなってもキスは止めなかった。麻知は名残惜しそうに唇を離した。麻知の顔は紅潮し、目がとろんとしていた。私も頭がふやけたようにこの快感に溶けそうになっていた。

私と麻知はあと何回かこんなことを続けた。そして二人の間を隔てていた液体は次第に減っていき、遂には口に含むことなく麻知を貪り続けた。

 

 最後のキスをして、麻知は乱れた息を吐きながら私から離れた。

 

「ご飯の用意するから....お風呂にでも入ってて..」

 

私も息を整えて、

「いや、まだいいよ。少し部屋で休むよ。お風呂は後でちゃんと入るから..」

 

「そう」

 

麻知はいつもの感じで返事をした。正直私の心臓はバクバクと脈打っていた。

 

**************

 

『どうだった?麻知ちゃん』

 

「とても...刺激的だった..」

 

『よかったじゃん!最初麻知ちゃん乗り気じゃなかったけど』

 

確かに最初は"熱中症"をゆっくり言うと、「ねえチューしよう」に聞こえるなんて下らないと思っていたが、まさか滉一が乗ってくれるとは思わなかった。私も自分が思っていたよりも昂りが見えたのが驚きだった。

 

「それで、透ちゃんはどうだったの...?」

 

『う...それがね』

 

************

 

「ただいま...透、珍しいね。出迎えなんて」

 

「ね、ねえ!!!!!熱中症ってゆっくり言ってみて!!」

 

透は宏人が帰ると早々ぶっきらぼうに質問した。宏人は最初面食らったが、透の意図が分かると意地悪な感じで透rに話しかけた。

 

「じゃあ、透が先に言ってみてよ。どれくらいゆっくり言わないといけないかわからないし」

 

「え?!私が最初に?.....えっと、その...」

 

透は顔を赤くしてもじもじし、

 

「ね.........ねぇ、ちゅ....ちゅ.........うわああああん宏人のバカあああああああああああああ」

言いかけて自分の部屋に引きこもってしまった。

 

「...ちょっと意地悪しすぎたかな..」

 

*************

 

「野口さんに手玉にとられたんだね」

 

『ほんっとに意地悪だよ!』

 

「まぁまぁ..野口さんは透ちゃんから言われたかったんじゃないかな..透ちゃん可愛いし」

 

『え~もう麻知ちゃんはいつも上手いんだから。麻知ちゃんにならキスしてあげてもいいよ~』

 

「それくらいのことを野口さんにも言えればいいのに...」

 

『それは言わないでぇ~』




お久しぶりです。小話を書いてみました。本当は熱海旅行とか一度消した学祭の話も考えたのですが固まってなかったのでやめました。(いずれ書きたい)

今後のことを言うと、福井編はあれで終わりというか滉一と麻知は地方勤務になり誰の邪魔も入らない世界で静かに暮らす(その辺は文加と似てるかも)という解釈でいいと思います。
大学編はそろそろ決着をつけたい。やや滉一や読者にとってキツいシーンになるかもしれないけど書ききりたい...中学編書かないのか?って声もいただいたのですが、正直高校編とあまり変わらないし少し束縛の強い麻知になるだけなのであまり新鮮味がないのかなぁと思います。学祭は高校編の延長線で書いてみたいですが。
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