摂氏0℃   作:四月朔日澪

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お久しぶりです。
気がつけば年の瀬!?

熱海編の締め方はある程度まとまってますが、保険のために没ネタをSS(ショートショート)にしてお送りします


摂氏0℃ショートショート

【広報活動?】

 

 ある日のこと私は甲辰商事の広報課に呼び出された。そこには若手の社員二人が待っていた。

 

「山城課長わざわざありがとうございます」

 

「いやいや。別にいいけどどうしたの」

 

「実は当社で公式Tiktokを始めようと思いまして」

 

「てぃ..ティクタク?」

 

おじさんには分からないワードが飛んできた。

 

「TiktokっていうSNSに山城課長と奥様に出てもらいたくて」

 

「え?家内を?」

 

麻知は私と同じくネットには疎い。SNSも私の知る限りではやっているような素振りは見えない。外食や旅行などもほとんど行くことはなく、『映える』とは縁遠い存在な彼女が了承してくれるような気がしない。

私は構わないけど何故麻知も出ないといけないのか聞いてみたら、「だって山城課長と奥様は鴛鴦(おしどり)夫婦だって社内で有名ですから」と返ってきた。

話を聞いたら、甲辰商事のライフワークバランスの良さを就活生向けにPRするために社員が夫婦で出演して欲しいとのことだった。

会社の為なら自分が媒体に出ることは構わないが、麻知が首を縦に振るとは思えなかった。

 

「この話一回持ち帰らせて貰っていいかな」

 

「はい。奥様とご検討お願いします」

 

「よい返事をお待ちしています」

 

広報の二人はお辞儀して、一度保留となった。

 いつも通り定時になり、真っ直ぐ家路へとつく。

麻知は寄り道することを嫌うところがある。少し小腹がすいてコンビニでパンを買ったときも

 

 

『遅かったね。何してたの?』

 

『少しコンビニに..』

 

『なんで?』

 

麻知は不機嫌になる

 

『少しお腹が空いたから..』

 

『私のご飯が食べたくないからそんなことするんだ..』

 

と修羅場になったことがあるくらいだ。ちなみにその日は晩御飯が出てくることはなかった。

それにうちはおしどり夫婦などと言われるほど仲がいいわけではない。ここ数年は家にいても殆ど会話など起きたこともない。話すとしても出掛けるときの「はい」と帰宅時の「おかえりなさい」くらいしか会話がない。寝るときも別々の部屋で眠っている。休日もリビングにいる私を邪魔そうにしながら掃除機をかけている。そんな私と麻知を見ておしどり夫婦と思う人がこの世の中にいるんだなぁ..

気がつくと我が家に辿り着いていた。

 

「おかえりなさい」

 

麻知は私が着くのを分かっていたかのように玄関で待っていた。

私は鞄を麻知に預け、ネクタイを緩める。

寝間着に着替え、リビングにはいる。食卓には食事が用意されており、麻知がご飯をよそいだ茶碗を私の手前に置く。それから手を合わせ、食事をとる。

普段は食事中に会話など起きないのだが、私は箸を置き口を開いた。

 

「あのさ、麻知。実は会社の広報課にSNSに出て欲しいって言われて、そのティクタクとかいう...」

 

「Tiktok?」

 

私は「そうそれ」と返した。麻知は知っていたようだ

 

「それに麻知にも出て欲しいと言われたんだが...出てくれないか?いや、麻知が嫌というなら断るし、無理にとは言わないけど」

 

「そう」

 

麻知は興味がなさそうに相槌を打ったが、そのすぐ後に「いいよ」と返事があった。

 

「え?いいのか」

 

「あなたの役に立てるなら」

 

「ありがとう。助かるよ」

 

翌日、広報課に承諾の返事をしに向かった。若手の二人は安堵した様子だった。案件が案件なだけになかなか了解してくれる人がいなかったみたいだ。

二人から広報の詳しい内容を聞いた。このTiktokというのは短い動画を投稿するサイトのようだ。スクロールすると音楽に合わせて踊る若い子の姿があった。

 

「私も家内もあまり踊りは上手くないけど大丈夫かな」

 

「それは平気です!簡単なものを考えているので」

 

女性社員の子からスマホを見せてもらう。私でも分かる数年前やっていたドラマのエンディングでやっていたダンスだ。たしかここで夫婦役をやっていた俳優が実際夫婦になったような気がする。このドラマは麻知と二人で見ていたので麻知も出来るだろう。撮影の日程なども打ち合わせをした。

 撮影当日、ドラマの舞台風のスタジオを借りて撮影が始まった。

麻知と二人でダンスの振りを練習する。短い動画なのでサビの部分だけ覚えればよかったのが幸いだった。ドラマのエンディングでは旦那役は真顔だが、妻役は笑顔で踊っているので麻知が笑えるか心配だったが杞憂のようだった。

麻知は明るい笑顔で楽しそうに踊っていた。

私は撮影のことで広報課の女の子と話すことがあったのだが、麻知は珍しく気に留めることはなかった。まぁ、私としては楽だったのだが。

撮影から暫くしてどんな形になったのか、楽しみで野口に聞いてTiktokで甲辰商事で調べてみたが、検索結果にあがることはなかった。私は不思議に思い、広報の二人に聞こうと思ったが広報課に姿はなかった。近くに同期で広報をしているのがいたので聞いてみたら、

「え?そんなのうちにはいないはずだけど...Tiktok?なんでうちがそんなことするんだよ?うちはそんなことしなくても就活生に人気の就職先だからやる必要性がないよ」と返ってきた。私は狐につままれた気分に陥った。

麻知には正直に言えるわけもなく公開が中止になった、とだけ伝えた。麻知は「そう」とだけいつものように相槌をうった。

ただ、何か嬉しいことでもあったのだろうかいつもより機嫌が良さそうだった。

***********

【異世界転生摂氏0℃】

 

 目が覚めると、目の前には水萌くんが立っていた。しかし、普段のスーツ姿ではなく、魔法使いのような格好をしていた。

 

「やっと長い眠りから覚めたのですね。勇者様!」

 

「勇者?水萌くん一体どうしたんだい?そんな格好をして」

 

「ミナモ...?私の名前はファルエですよ。勇者様!....やっぱり魔王にやられた時に記憶が消えてしまったのでしょうか..」

 

勇者...魔王..私はRPGみたいな世界にいるのだろうか?体を起こし自分の身に付けているものを見ると、大体が想像をするような勇者の身なりをしていた。

私はここでやっと自分が夢を見ているのだと、気がついた。

 

「私は魔王と戦っていたのか?」

 

「はい!勇者様は私を庇って炎を浴びて大きなやけどを負ってしまって..私の魔法でなんとか火傷は治せたのですが、ずっと意識が戻らなかったのですよ!」

 

火傷...なんかどこかで聞いたような話ではあるが、私はずっと意識不明で倒れていたようだ。

 

「みな...ファルエくん、済まなかった。じゃあまた、魔王を倒しに行こうか。」

 

「え!?また行くのですか?」

 

「そりゃ勇者として責務を果たさないといけないから」

 

「あの女にまた会わせたくないのにな...勇者様は私のものなんだから..(ボソッ」

 

「ファルエくん、何か言ったかい?」

 

「い、いえ!じゃあ、案内しますね!」

 

夢の中だからか、スムーズに魔王の根城へと辿り着くことが出来た。道中疲れたので休憩を取った。水萌くん...もといファルエがサンドイッチを振る舞ってくれて、なんかデジャブのようなものを感じた。

 魔王の城は特に警備もなく、誰もいないのではないかというくらい静かだった。門から真っ直ぐ進むと、玉座の間のような部屋へと辿り着く。

 

「ここに魔王がいます。勇者様」

 

「あ、ああ」

 

いよいよ魔王との対峙の時が来て武者震いがする。一度やられたという相手だ。とても緊張する。私は扉を開いた!

 

「よく来たね勇者コウイチ」

 

扉を開けると玉座に鎮座する魔王?の姿があった。何故疑問系かと言えば、その姿は見たことがある..いや、見慣れている私の愛する妻にとても似ていたからだ。

 

「それに泥棒猫も...」

 

麻知...いや、魔王はファルエを睨み付ける。この世界でもこの二人は仲が悪そうなようだ。

 

「なんで?私はコウイチのことが好きなのに..あんな女とベタベタベタベタして...本当に許せない....」

 

何か魔王がぶつぶつ言っているが、話を進行させるため私は口火を切る

 

「私は麻知...魔王を倒しに来た!」

 

「そう...でも私はコウイチとやるつもりはない。私が倒したいのはそこの女だけ..」

 

そう言って魔王はファルエを指差した。ファルエも魔王を睨み、臨戦態勢にあった。

 

「私のコウイチを奪った泥棒猫は絶対に許さない...」

 

「私も勇者様を傷つける魔王を許すつもりはないから...」

 

奪った...?どういう経緯なのだろうか。私は魔王の言葉に引っ掛かり、今にも飛びかかりそうな二人を制止した。

 

「待ってくれ!ま..魔王奪ったっていうのはどういうことなんだ?」

 

「どうもこうも、あなたは私の旦那様だもの。それをあの女がこの城から拉致していっただけ...あなたはそんな女を庇って怪我をしたけど..」

 

魔王は私の妻だったのか。まぁ、実際妻だからそう言われても頷けるのだが。

 

「勇者様!魔王の言葉に耳を貸さないでください!この女は勇者様を騙そうとしています!」

 

「....やっぱりこの女は◯さないと...」

 

何かしようとする麻知...魔王に「ちょっと待ってくれ」と声をかける

 

「私がここに残れば麻知は誰にも危害は加えないのか?」

 

「...コウイチさえいれば私はそれで十分」

 

「じゃあ、私と一緒にいてくれ。魔王としてじゃなく勇者の嫁として」

 

「...//急に何」

 

魔王が顔を真っ赤にして照れているが私は玉座に近づきそのまま続けた

 

「君とは何があっても出逢うんだと思ったよ。辛いときも楽しいときも悲しいときもずっと一緒だ。麻知が好きだから誰も傷つけて欲しくない!だから魔王なんてやめて私の傍にいて欲しい」

 

「え.....え....」

 

麻知は目をぐるぐるさせて顔を紅潮させていた。私がプロポーズしたときもそんな反応だったのを思い出す。

 

「待ってください!」

 

遠くから声がした。水萌くんが涙目になって叫んでいた

 

「勇者様はいいんですか?魔王は勇者様を束縛して、暴力を振るうような女ですよ!そんな女より私の方が..!」

 

「水萌くん!!それでも、そんなところも含めて私は麻知が好きなんだ...」

 

麻知を見ると、とても艶かしい雰囲気を纏っていた

 

「じゃあ、キスして」

 

至近距離で囁くように麻知...魔王は懇願する。

私はそれに応えるように魔王の口元に近づくと....

~~~

 

「あなた、起きて」

 

「はっ!」

 

目を開けると、そこには妻の姿があった。普段のエプロン姿で。

私は寝ぼけていて「魔王..」と呟いてしまった。麻知はそれを聞き逃すことはなかった。

 

「魔王....へぇ..寝言の魔王って私のことだったんだ..へぇ魔王、ね。」

 

私はすぐに弁解したかったが、麻知は黙って部屋を出ていってしまった。

それから3日くらい口を利いてくれなかった。




閲覧ありがとうございました。
実は第一話がショートショートくらいの文字数だったんですよね。
星新一の作品を読んで少しやってみたくなりました。
広報活動?...ただ山城と麻知に恋ダンスさせてみたいと思ったが、本編に出すほどの話ではないので没にした。書くにあたってTiktokを入れてみたが、使い方がいまいち分からず秒で消した。
異世界転生摂氏0℃...ファンタジーは書いていたことがあったけど、そういえば異世界転生ものはないなと思ったが、現代ラブコメなので没にした。魔王麻知と魔法使い晴絵、異世界でも犬猿の仲です。
騎士麻知「浮気したら...叩き切るから..」
ヒーラー麻知「へぇ...あの女に治してもらったんだ。じゃあ元に戻さないと(攻撃魔法)」
聖女麻知「コウくんと私が結ばれるのは神のお導きです...他の女はみんな悪魔だから話しちゃダメだよ..」
色々できたけど、魔王がしっくり来たので魔王にしました。

没ネタをここで消化できてよかった..
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