Hero×Heroine×Hundred   作:緑谷百

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好きな気持ちに遅いとかありますか?

好きな気持ちに嘘はつけますか?

好きな方に自分を知って貰いたい

好きな方に興味を持たれたい

あの娘じゃなくて

私が隣に居たい



第二話

張り詰めた空気の中、

 

「生徒の校則が自由なら、先生も自由ということだ…。

そうだな、記録がビリだったものは除籍とする!」

 

(危機感を煽る為の嘘でやる気を出させる

作戦ですわね。皆顔つきが変わりましたわ。)

 

一部の生徒は動じず、

一部の生徒は顔を恐怖でひきつらせ

ざわざわする中、

 

「先生!流石に横暴すぎではありませんか?!」

 

(飯田さんと言ったかしら、すっかり

先生の策に嵌まりましたね。

その隣の彼…、顔色が悪いですが

大丈夫でしょうか?)

 

 

“私が初めて彼を認識した時だった”

 

 

この時の私は

地味で弱そうな見た目

思い詰めた顔をし

ヒーロー目指すのに

そんなんでやってけるのかと

呆れと同情すら覚えていた。

 

 

 

「ヒーローとは苦難の連続!

これから数々の壁を俺ら教師は

全力で君達に与え続ける!

Plus ultraだろ?

ヒーロー目指すんなら

これ位の壁乗り越えてみせろ。」

 

ニヤリと笑いながら

目の前の教師は言い放った。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

それから個性把握テストを一通りこなしていった。

 

 

その中でもあの地味目の彼は、

ほとんどの競技で個性を使わず、

本当にヒーローになる気があるのかと

疑問に思っていた所、

 

ソフトボール投げで遂に個性を発揮。

 

指を赤黒く腫れさせながら、目尻に涙を溜めて

 

「先生、まだやれます!」

 

と怪我とは裏腹に笑みを浮かべていた。

 

(爆豪さんの話が本当なら、緑谷さんは

今まで無個性…!?

そんな事本当に有り得るんですの!?

だから個性が馴染んでないのかしら…。

それとも個性を使うのに代償がいるとか…。

それにしても、今まで無個性でよく

雄英に進学できたものですわ。)

 

自傷行為に近い彼の個性を見ながら、

私は無意識に彼を見下し、

興味を持とうとすらしなかった。

 

 

 

”何故この時に彼の事を思えなかったのだろう“

 

 

 

 

 

 

そして、先生がイレイザーヘッドという事が分かり、

合理的虚偽という理由で、“最下位”だった緑谷さんの

除籍はなくなった。

 

 

(最初からそのつもりだったんでしょうに…。

それにしても皆さん強い”個性“をお持ちのようで。

これからの学校生活が楽しみですわ。)

 

自然と笑みがこぼれた。

 

この個性把握テストのお陰で、

クラスメイトとの簡単な自己紹介も済ませられ、

確かに合理的だと感じた八百万であった。

 

 

 

~放課後~

 

「はぁー!誰も除籍でなくて良かったねー!!」

 

満面の笑みで話す芦戸さん。

耳郎さん、葉隠さんと一緒に教室から出た。

 

「うちも正直焦ったかな。男子と女子の

ジェンダー差もあるしさ。」

 

そう話すのは耳郎さん。

 

「私もー!!透明なだけの私には

この世の終わりかと思ったよー!」

 

制服が喋っているように感じる葉隠さん。

 

「やはりヒーロー科だけありますわね!

初日からかなりハードでしたわ~。

まぁ本当に除籍はないと思ってましたけど。」

 

と私達は下駄箱で靴を履き替える。

 

そして、校門前に一台の車が見えた。

 

「それでは皆様今日はお迎えが来てますので、

ここで、また明日ですわ~。」

 

私がお辞儀をすると、

 

「やっぱお嬢様なんだねー!

また、明日ねー!」

 

皆、笑顔で手を振ってくれた。

 

そして駆け足で車まで向かう途中

 

緑谷さん、飯田さん、麗日さんの三人組を

追い越した。

 

笑顔で話してる三人をちらっと横目に見て、

軽い会釈をしながら、私は車に乗り込む。

 

「お帰りなさいませ。」

 

運転手に声をかけられながら、車は自宅へ向けて

走り出す。

 

 

 

 

“ああ…この時も、チャンスがあったんですのね”

 

 

この時の私は、夕飯でお父様とお母様に

話す事で頭がいっぱいでした。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 


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