キバって運命をブッ壊す!   作:ふくつのこころ

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長くなりそうなので、戦闘は次回になりそうです


神をブッ飛ばせ

 後日、正音は気の乗らなさそうな顔で学生鞄を手に下校しようとした時、門を出たところで見知らぬ男に声をかけられた。

 

「お前、登正音か?」

 

 男の格好は浴衣姿、パッと見た印象では不良オヤジといった印象が正しいところか。

 それも、並々ならぬオーラを纏っており、只者ではないというのが正音の本能が告げていた。

 

「そうだけど。ウチの先生、じゃないよな?見たことがない。ウチの学校の先生なら、そんな他人行儀な言い方しないしな。だいたい、呆れたような感じで俺のこと見る。……なんだ?リアスとかその辺の知り合いか?あんた」

 

 正音は疑念を一切隠さず、上から下へと見下ろした。

 掴みどころがなく、それでいて目的が分からない以上、本心を明かすつもりはないが、疑っているという姿勢を見せた。

 どういうつもりで自分に接触してきたのか、どういう目的でやってきたのかということを問いただすために。

 ()()()()()()()を引いていても、それはほとんど正音の身体に影響を与えていない。

 キバの力を使って、はじめて浮き上がってくるほどに正音の中の人ならざる者は正音が「寝坊助野郎」と称するほどに呑気なところがある。

 

 それゆえ、()()()()()()()()()を放っている二人の腐れ縁、腐れ縁のうちの一人の友人の生徒会長にも正体を悟られずに今日まで生活することができた。

 キバの姿で活動していれば、間違いなく、彼女たちの耳に入るだろうが、その()()()()()()()()()()()のおかげで正音と蝙蝠男(キバ)の正体を一致させることはまず難しいだろう。

 

 そんな正音に声をかけてきたとあれば、彼女たちのように人間ではない者であると踏むのが普通だ。

 この男は、人間でない者であったとしても、その中でも桁違いの能力を持っているのが窺える。

 キバに変身していなければ、簡単に消し飛ばされてしまうくらいの力は持っているだろう。

 

「そんなところだな。オレはアザゼル。お前の話はよく聞いているぞ。……しかし、リアスと朱乃の二人の話とは、随分と性格が違うな。聞いたぞ、あの二人に告白したんだって?」

 

 茶化すような男――アザゼルの言葉に正音はため息をついた。

 

「なんだよ、他の奴にも言ってるのか。……女の前でわざわざシリアス気取るか?そういうのは口説くときに取っとくもんだ。あの二人は俺の良さが分からなかったが、このツラまで見せる必要ねえだろ。俺はお気楽で女好きの登正音でいいんだよ」

 

 少なくとも、彼奴らの前ではなと言う様子には真面目な様子は見られず、のらりくらりとした男子高校生にしか見えなかった。

 アザゼルが知っている男子高校生といえば、リアスの眷属の男子が挙げられるが、目の前の正音とはかなりタイプが違っていた。

 その口ぶりは、まるで自分が人でない者となった、あるいは人でない友人にとっての“日常”であろうとするようなもので、妙に達観したところが見られる。

 

「一度は惚れた女なんだ。フラれたんだとしても、いいところを見せたいもんだ。なんたって、美人じゃあな」

 

「変な奴だな。フラれてるのに、か?」

 

「当たり前だ。どんな時だって心火(しんか)を燃やして格好つけたい生き物なんだよ、男ってのはさ。あんたもそうじゃないのか?」

 

 心火を燃やして、という正音のフレーズがアザゼルには気になった。

 何かを含んでいる意味というのではなく、アザゼルの感性に正音のフレーズを非常に気に入ってしまったのである。

 

心火(しんか)を燃やして、ねえ。いいぜ、気に入った。話の続きは場所を変えよう」

 

 ニヤリと笑うアザゼル、一歩どころか二歩下がる正音。

 

「どうした?取って食いやしない、ただ聞きたいんだ」

 

「いや、男と二人きりってのは辛いっていうか……」

 

 露骨に嫌そうな表情の正音にすかさず、アザゼルは突っ込みを入れる。

 

「オレだって出来れば、女と二人きりがいいわ!気になることと話したいことがあるって言ってんだろ!感心したオレが馬鹿だった!」

 

「感心するようなことは言ったつもりはないな」

 

「あのなあ……、まあいい。すぐ終わる」

 

 そういうと、二人は歩き出した。

 

===

 

「……なんで好き好んで、オッサンと二人きりにならなくちゃいけなかったんだろうな」

 

「それはお疲れ様にゃん。でも、後ろ盾になってくれるんでしょう?それなら良かったんじゃないの?正音、どこから持ってきたのかわからないくらいの量のお金持ってるけど、それだっていつ尽きるか分からないんだし。そういう背景があったほうがいいんじゃない?万が一の時に頼りになる人?っていうかにゃん」

 

 制服のシャツのボタンを一つ外し、開けたまま、登家のリビングの上座に座っている正音がだらけていると黒歌が労う。

 思った以上にまともな答えが返ってきたので、どうしようかと考えているところ、ジャージ姿でアギトがやってきた。

 

「おはようございます、カシラ。キバットさん見てきました!」

 

「ご苦労。で、あいつは起きてたか?」

 

「寝ぼけていたんで、すぐに来ると思います」 

 

「そのまま二度寝しそうな気もするけど」

 

「いやあ、そんなことないでしょー」

 

 ビシッと正音に敬礼するアギト、キバットを起こすときは一番起こし方が平和的なアギトに任せている。

 キバットは眠るときに少し大きめのハンドタオルを掛け布団代わりにしているのだが、だいたいそれを引っぺがしてキバットの寝起きが悪くなるのがアギト以外の二人がやる常。

 黒歌はキバットの身体に触れる手が柔らかいから許されているのか、一番起こされて嫌そうにしている相手というのが正音であった。

 家主、哀れである。

 

「それで寝たら、アギトの昼飯抜きな」

 

「えーっ!そんな殺生な~!?あ、でも、カシラ。今日は何時くらいに帰ってくるんです?確か、堕天使総督の頼みだとかなんだかで出かけるんでしょ?」

 

「え、じゃあ、誰がご飯作るにゃん!?これはとんでもない死活問題よ!もっとお姉さんをいたわりなさい、正音!」

 

「なら、もっと、年上のお姉さんらしく振舞えって。先日に会った、銀髪のお姉さんは良かったぞ。綺麗だったし、なにより、年上の魅力があふれ出ていた」

 

 堕天使総督の頼み、と聞いて黒歌が何かを察したのか、正音の肩を掴んで揺らす。

 正音より黒歌の方が力が強いこと、なにより、揺らされるたびに大きく開けた胸元に視線が自然と向いてしまうので不可抗力なのだが、吸い寄せられてしまう。

 これで見ていることがバレたらまずいな、と思いつつも視線を逸らすことができなかった。正音も男の子なのだ。

 

「こら、なに私の胸を見ているにゃん。変態」

 

「いてっ、バレたか」

 

「正音の考えることにゃんて、お姉さんにはお見通し。……じろじろと見られるのは好きじゃないの」

 

 バレてしまった。

 そして、小突かれた。

 力が入っていないのは分かるが、今日の黒歌が機嫌が悪かったら、肩の関節が外れてしまったのではないだろうかとも考える。

 浴衣美女と暮らせるのは正音としても幸運なことと十代男子としては考えているが、幸運と危険は常に背中合わせになっているのもまた事実であった。

 

「そんなに出やすいのか?俺の顔」

 

 正音が首を傾げると、アギトと黒歌の思考は一致した。

 

((そう言うところが分かりやすいんだよなあ(にゃん))

 

 調子に乗っているときとか特に。

 

「まあ、とにかく」

 

 正音が咳払いし、仕切り直す。

 

「今回の話のまとめをしておこう」

 

 アザゼルの正音に問いたいことというのは、こうだ。

 

 

「俺の口からは何も伝えていないが、アザゼルに俺が()()()()()()()がバレてしまった」

 

「え、それって大丈夫なんですか?確か、カシラのキバの力って……」

 

 アギトは驚いて眉を吊り上げてしまう。

 アギトは呑気ではあるが、これがどういう意味かは分かっている。

 登邸の主人でアギトの主である、登正音は正体を隠して(便宜上)、キバとして活動している。

 正音の中に流れている、人間とそうでない血を引いていることを隠すために必要なことだからだ。

 本人があまり隠したがらないのは、いずれにせよ、正体がバレてしまうならば、堂々としている方がいいのでは、という楽観的な視点からくる。

 

 事実、過去に正音がキバの力を持っていることに目を付けた悪魔の中でも古い派閥にあたる旧魔王派の̻刺客が正音のもとに送られてきたことがあった。

 そのときになって初めてキバの力を使えるようになったのだが、それが正音が自分に降りかかる火の粉を自分の手で払うためにキバとして戦うようになったのである。

 本人としては、キバットには惚れた女を守るにはクールな姿と調子乗ってはいるものの、こちらが正直なところの本音である。

 

「そうだな。旧魔王派が欲しがっていた逸品だ」

 

「まさかの正音もとんでもない秘密を抱えていたなんて」

 

「出会ったとき、黒歌は見てるだろ」

 

「乙女ジョークよ、冗談も通じないにゃんてつまんない人は嫌われるわよ?」

 

 黒歌がわざとらしい反応を見せると、正音はすかさず突っ込んだ。

 厄介ごとに巻き込まれていると見た黒歌を救ったのをきっかけに駒王町で時折、目撃されている蝙蝠男が黒歌を助けたことによって悪名高くなっているのは、本人はまだ知らないこと。

 

 蝙蝠男と正音がキバであるとアザゼルの中で繋がるきっかけとなったのは、また別の理由があるのだが、正音はまだそれを知ることはないだろう。

 

「俺のジョークはいつでもウィットに富んでいるさ。リアスや姫島もご機嫌になっちまう」

 

「カシラのジョークは雲行きが怪しいっていうか」

 

 遠回しに雲行きが怪しいイコール、分かりにくいジョークを言っているとアギトに言われ、正音の心は傷ついた。

 

「話戻すぞ。アザゼルの奴は、キバである俺がどの勢力につくのかを会談で明らかにしてほしいらしい」

 

「……それって、悪魔もいるの?」

 

「いるだろうな。まあ、俺はどこについてやる気もないんだがな」

 

 様子が変わった黒歌に対し、正音の反応は変わらない。

 あっけらかんと言い放った言葉に黒歌はかえって戸惑う。

 

「え、それって、大丈夫なの?」

 

「今更、ファンガイアの王子にどうしろって話だ。火の粉を払うくらいならいいが、誰かの下についてやるつもりは毛頭ない。ただでさえ、毎日が忙しいんだ。居候もいるしな」

 

 ふわふわと飛んで降りてきた、キバットの朝食を立ち上がって用意し、キバットの席の前に置く正音の背中は哀愁で満ちていた。

 ファンガイアとは、吸血鬼とはまた別の方向に進化していった種族であり、生物のライフエナジー、生命力を吸収して生きる。

 その数が急速に減少したのは、ファンガイアの王族を守る為に作った“鎧”が原因であった。それこそ、キバと呼ばれる正音が振るう力である。

 その気になれば、世界をも滅ぼすことができるキバの力を求め、かつての魔王はファンガイアを虐殺し、同族がこれ以上、殺されるのを見たくなかったら、キバの力をよこせと要求した。

 

 ファンガイアを束ねる長、キングはこれを固辞した。

 キバの力とは、王位の象徴であり、これを失うことはファンガイアとして、ファンガイアの王としての誇りが失われてしまうのだと。

 そうして、当時のキングは魔王と争い、敗北してしまい、その命を落とすも、ファンガイアの王族は何とか逃げ延び、正音が生まれたのである。

 キバットに教育を受けたのも、いつ追手が来るのかわからない為、あまり学校に通うことができなかったからだ。

 しかし、退屈を嫌う正音がそれに満足することはなく、中学には必ず行くといい、そこでリアスや朱乃と出会うことができた。

 

「でも、お前、それなら、正体は隠した方がいいんじゃないか?自分がキバであると名乗るのはやめたほうがいい」

 

 朝食を口にしながら、キバットは正音を諭す。

 しかし、正音はキバットの言葉に対して頭を振った。

 

「それこそ、俺のじいさんの言う誇りがなくなっちまう。キバってのはよ、今では俺の力だが、大事に守られたものなら、俺もそれを誇りにしたい。キバであることを」

 

『自分だけの音楽を見つけろ』。

 そう言った父親の言葉の意味を理解するには、正音はまだまだ未熟だが、こうしたものを大切にしていくことがそれに繋がるかもしれないと感じた。

 

「……正音の気持ちは分かった。でもよ、俺様が思うに、そのアザゼルって奴にキバのことがバレたのはアレだと思うぜ?」

 

「?」

 

 キバットは正音がクエスチョンマークを浮かべると、サラダを咀嚼し、飲み込んだ。

 

「お前、いつもの調子でキバだって名乗ってたから、声でバレたんじゃねえか?アザゼルって言えば、今でこそ、研究者だが、かなりの実力者だ。神器(セイクリッドギア)マニアだけどな、今は」

 

「流石にそれはないだろう。なあ、アギト、黒歌?」

 

「「いや、ある」」

 

 正音がキバットの言葉を笑い飛ばすが、アギトらの返答は突き刺すものであった。

 

「ま、まあ、とにかくだ。今回は、北欧神話のロキとかいう、いかにもな奴をブッ飛ばす!ってわけだ」

 

「え、それ、正音勝てるの?」

 

 黒歌が本気で心配してそうなので、腕時計で時間を確認し、正音は立ち上がる。

 それから、今にある扉をコンコンとノックする。

 

「このビックリどこでもドアのおかげで楽々ワープだ、場所ももちろん記してある」

 

 ひらひらとさせた、それは紙切れであった。

 『三大勢力会議』と書いてあるのが見える。

 

「さて、キバット、行くぞ。俺がまずい状況になったら、お前ら、助けに来い」

 

「あ、おい!俺様を置いていくんじゃねえ、正音!」

 

 正音が扉を開くと、その後を食事がひと段落したキバットがその後を追うが、まだミルクがコップに残っている。

 

「あ、正音!待ってって!まだ聞きたいことが……」

 

 黒歌が呼び止めようとするも、すでに扉は閉ざされており、正音とキバットの姿はない。

 

「無駄ですよ。カシラはいつもあんな感じなので」

 

 すっかり、慣れた様子のアギトが片づけをする中、黒歌は一言漏らす。

 

「……自分から突っ込んでいくなんて、馬鹿。大人しく閉じこもっていたらいいのに」

 

 

 




矛盾しているような正音の考えですが、要するに楽しかったらなんでもいいって感じです
これだけ書くとヤバい奴でしかないんですが、キバットが本当にマズい時はストッパーしてたり、アギトのツッコミとかで一線超えてない感じで。

軽い感じなのは音也リスペクトなんですけど、再現できてたらいいな
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