「……紗夜、何を見ているの?」
ロゼリアの練習の休憩時間。ケータイである動画を見ていた紗夜に、同じようにケータイに見入っている友希那が声をかけた。
「別に、大したものではありません」
画面から目をそらすことなく返事をすると、横からリサが画面を覗き込んだ。
「あれ、日菜じゃん。これ、紗夜が撮ったの? なんだ、二人とも、案外仲良いんじゃん」
「違います。この前日菜の代わりにパスパレの練習に参加した時、メンバーにもらったので見てみただけです」
「氷川さん……何だか、穏やかな表情をしてました……」
燐子にまでそう言われて、少しムキになってしまう。そんなことをすれば、逆に肯定しているように見えてしまうというのに、なぜだかそうせずにはいられなかった。
「だから、違うと言っているでしょう。そう言う湊さんこそ、何を見ているんですか?」
これ以上何か突っ込まれてはたまったものではない。そこですかさず紗夜は、話題の矛先を友希那の方に向けた。
それにも、あこは友希那を擁護するように目をキラキラさせている。
「友希那さんはきっと、曲作りのために色々調べてるんですよ! そうですよね?!」
「ダメだよ……あこちゃん。勝手に画面覗きこんじゃ……」
そう言いながらも、燐子も興味があったらしく、一緒になってちらっと画面を覗き込んでいた。
「わー! 可愛い猫ー! 友希那さん、猫好きなんですか?」
「そうだよ、友希那はねー……」
「勘違いしないでほしいわね。人懐っこい猫の時折見せる野生的な一面を音楽に取り込めないかと考えていたところよ。別に可愛いから眺めていたというわけではないわ」
リサの言葉を遮り、あくまで平静を装い、真面目な顔で淡々と告げる友希那に、リサは笑いをこらえられないようだった。
「あはは……。友希那、それはちょっと無理あるんじゃないかなー」
しかし、紗夜も友希那と同じく真面目な顔で淡々と続いた。
「湊さん、私も同感です。決して可愛いから眺めていたというわけではなく、日菜の音楽を私なりに吸収しようとしていただけですから」
この紗夜の言葉で、リサは完全に笑いを抑えられなくなって、ケタケタと笑い転げてしまった。
そんなリサを他所に、あこは友希那のケータイの画面に映った猫の動画をじっと眺めている。
(……友希那さんと氷川さん。……可愛いから眺めていたんですね……)
燐子は一人、微笑ましい四人の様子を眺めながら、これがロゼリアらしさなのかもと、しみじみ思っていた。
(終)