静寂をネオンが照らす聖都の夜。廃棄されたビルの屋上。
幽霊と漆黒は互いの武器を重ね合わせ、火花を空中に何輪も咲かせていた。
幽霊は白と黒の剣を投げ飛ばしては、その手にまた青い粒子が集い白と黒の剣を創り出す。
それを漆黒は白の槌で叩き落とす。
その繰り返し。
「ほう、サーヴァントはバグスターウィルスに感染したとしても、自覚症状が発生しないということか。しかもゲーム病を発症しない」
冷静に語り出す漆黒。
幽霊には大半の名詞に聞きなれず、疑問だけが内側に充満する。
「サーヴァントというのはどういう存在なんだ? 人を模した影という訳かい? ならばゲーム病にならないのも分かる。何だって人形に不可思議な力を注がれただけの動ける機械なのだから」
一人言は続いている。
防戦一方な状況に関わらず、余裕ある言葉。そして、その態度こそが幽霊を苛立たせる。
「......ならば、選択しよう。これが、『仮面ライダー』という力だからなぁ」
幽霊の攻撃の合間。
2秒ほどの隙。漆黒は、ガシャットを起動する。
【RIDE CHRONICLE ZIーO】
幽霊は、新しいガシャットの存在に気取られてしまった。
そのガシャットは、新たなる力であり、危険なものだろうと幽霊は防御に徹した。
「このガシャットは、ある機能がついていてね」
漆黒は歩きだす。
ゲームエリアは新しく桃色を映し出していく。王という存在が、レッドカーペットを歩くように、緩慢に。
「正しく、元に、存在を書き換える。という強力なものでね。私はその機能を使ってバグスターを取り出そうとしている。レベル1のバグスター摘出機能とまた違う、バグスターそのものを本体とは無縁にするという現象を起こせるのさ」
ガシャコンブレイカーのスロットにガシャットが差し込まれる。
【GASHATT!】 【決め技!】
ハンマーに波動が纏わり付いていく。
防御している幽霊は、その隙だらけな姿を見て、剣を投げようと身体を動かそうとした。
(何! ......身体が動かない!?)
投げようとした、その手、胴、脚。全てが縛られたように動かなかった。口もそのままで、言葉を発することが出来ない。
「言い忘れていたが、このガシャットはバグスターウィルスの行動を止めることが出来てね。感染して身体に住み着いている君は、その影響を受けてしまうということだ」
漆黒は幽霊の目の前まで辿り着く。
白と黒の剣を胸の前で交差したままの幽霊。漆黒はブレイカーを振りかぶりガラ空きの腹目掛けて必殺の一撃を放った。
【RIDE CHRONICLE CRITICAL FINISH!】
「安心したまえ......『ビルド』のバグスターは私が削除する」
聖都の夜に反響する機械音声。
それは、幽霊が漆黒との戦いに負けたことを告げた。
【会心の一発ゥッ!】
◇
【シャカリキ クリティカル ストライク!】
【カイシンノイッパツ!】
その音声は、命中率が高い時に発生する音声。
つまり、車輪は殆ど命中している。
だというのに、今この現状はどういうことだ。
「嘘だろ。......完全に決まったじゃねぇか」
目の前には、未だピンピンしているバーサーカーと呼ばれた巨漢。
胸に僅かな摩擦の煙が出ているだけで、肉体の損傷も殆んどない。
「当たり前だもの。バーサーカーはとっても強いんだから!」
バーサーカー。
確か狂戦士って意味だったよな。こりゃ、見透かした宝具の効果も含めて強き者という訳か。付け入る隙も、バグヴァイザーを使う暇も無い。
「......なら、使うしかないか」
バーサーカーは動いていない。
強者の余裕ってところだろう。だったら、その余裕って奴を無くさせてもらおうかな!
【ラビットタンク】 【ベストマッチ!】
起動した記億用ガシャットから、ラビットタンクのデータを呼び出す。
視覚モニターに映る付加効果は、
『ジャンプ強化』『高速化』『伸縮化』『鋼鉄化』×2
これだけあれば、対等まではいかないけれども抵抗は出来る。
「何? 今の? 魔術かしら?」
「さあ? 似たようなもんだ。これからは本気でいかせてもらうぜ」
グンとゆっくりになったバーサーカーの動きを見て、車輪を投擲する。それに加えて、一歩を伸ばしてバーサーカーの懐へ飛び込む。
およそ、10歩程の距離を至近距離にまで近づける。
そして、鋼鉄と化した手足をバーサーカーの強靭な肉体に叩き込む。
連打、連打、連打。
衝撃のエネルギーを奴の肉体に蓄積させていく。
高速化によって鋭敏化された感覚がバーサーカーの僅かなうめき声を聞き取る。
って何十発か打ち込んでいるのに、ビクともしてねぇじゃねえか!
バーサーカーが斧剣で薙ぎ払おうとするのが視界に映る。
斧剣の軌道に合わせて身体をゴムの様に極端に伸ばしてその下に滑り込む。
それだけでも、攻撃の際に生じる衝撃波が自分の身体を吹き飛ばさんとしている。
何とか鋼鉄化による重量増加の効果で何とか踏ん張れるが.....こいつはさっさと目的を達成してやるか。
ただ、この形態じゃ殴り合いに弱い。
【ギリギリチャンバラ!】
少し間合いを取り、素早くガシャットを切り替える。
中距離のトリッキーな攻撃が得意なシャカリキスポーツから、近距離用の装甲を増加させるギリギリチャンバラへと変えることで殴り合いへと展開を発展させるって寸法だ。
【ギリッギリ バリッバリ チャンバラー!】
チャンバラゲーマーによる装甲を纏い、尚且つラビットタンクの力を相乗させた状態。
内部のエンジンを暖めながら、召喚した弓形態のガシャコンスパローを双振りの鎌へと変形させる。
「へえ。その腰の機械、ゲーム機みたいだね。色んなデータを駆使して戦うって面白い。けどね、それじゃまだ駄目なんだよ。そんな小手先の騙しじゃあね」
バーサーカーのマスターである少女が、冷静に現状を言い当てる。
ギリギリチャンバラでも、ラビットタンクでも太刀打ちできないなんて分かっている。
現状の状態じゃ、何もできないなんて分かり切っている。
だが、
「それがどうした? それで、自分が怖気つくとでも?」
そんなことで逃げ出すだなんて、護ることを放棄しているのと一緒だ。
勝率が殆どない、絶望的な状況でも、光明を見つけ出す。どれだけか細くても、そこには勝利への手掛かりがある。希望がある。
「『仮面ライダー』を舐めるなよ、嬢ちゃん。自分は果たさなければならない責任って奴があるんだよ」
「減らず口だね。じゃあ先ずはそのクサい口を黙らせればいいかな?」
斧剣が圧倒的な威力を以って上から振り下ろされようとしている。
自分はアーマーを纏った腕で交差してあえて受け止める。腕には木が軋むような音が聞こえてきた。
攻撃の圧を受け止めるために大きく開いた足元の地面は、埋もれていく。鋼鉄化でのコーティングで何とか保たれているとはいえ、アーマーが破壊されるのは時間の問題だ。
耐えろ、耐えろ。
ライダーゲージがジワジワと減っている。
相手の重量を支えきれずに地面に膝をつく。
なおも圧し潰して殺そうとしているという気迫が伝わってくる。
耐えろ。耐えろ。ライダーゲージはもう少しで0だ。
「やっちゃえバーサーカー!」
勝利の予感。
バーサーカーの雄たけび。
ライダーゲージはギリギリの生存ライン。
—――――条件は整った。
自分は全身の力を抜き、伸縮化の効果で柔軟になった身体を駆使して半身になる。
すると斧剣が勢い良く地面に突き刺さり、バーサーカーに僅かな隙が出来上がる。
呼び出したバグヴァイザーⅡの必殺プロセスを完了させる。
【キメワザ!】
高速化を利用してバーサーカーへ接近。ライダーゲージがほぼ0の状態での攻撃力上昇を合わせて、極大に膨れ上がった光のエネルギーは今にも奴を吹き飛ばさんとしていた。
「喰らいやがれえええぇぇぇぇ!!!!!」
【クリティカルジャッジメント!】
カウンターとして放った必殺技は、夜の帳に突き抜ける一条の光と化してバーサーカーの頭部を貫いていく。
数秒、それか数瞬。
瞼が瞬く間に巨大なる奔流がバーサーカーを滅していく。
それが勝利の瞬間として—―――
% % % %% %%%%%
少女は、勝つと予想していた。
最強無敵の強さを持つ、バーサーカーが勝つと思っていた。
あんな、ヘンテコなサーヴァントには負けないと確信していた。
だというのに、この現状は何だ。
【ゲームオーバー】
その音声は少女の敗北を意味すると同時に、レーザーターボの敗北をも宣告していた。
レーザーターボの姿はドット状に消え去り、ボロボロと小道具が3つ程地面に溢れ落ちた。
少女は、バーサーカーの頭部が消し去られたのにも目もくれず小道具の所まで駆け寄り、拾い上げる。
「何これ? 仮面......ライダー......ビルド?」
拾い上げた赤と青の二色の小道具に貼ってある文字を読み上げる。
歯車を半分に分割した独特のマークに、赤と青を纏った人型が背中を向けて不思議な壁を見ている構図のラベル。
「......戦利品として、貰っておこうかな。何だか大事なものっぽいし」
他の物も取ろうと手を伸ばして、少女は気づいた。
地面に緑色のブロックノイズが走っているのを。
【Enter The Game Riding The END】
一つのセンテンスの英語が少女の耳に入る。
方角は森。セイバー達が逃げ込んだ方向。
そこから、誰かが姿を現わす。
「......それを渡せ」
先程の仮面ライダーレーザーターボを簡素化した、仮面と茶色の栗のような頭部。
その仮面の奥から、男の声が漏れる。
成人した男性が発する独特の低い声。少女はその要求に応えず、小道具を全て懐へ仕舞う。
「やだ。これは大事な戦利品なの。渡せないわ」
茶色の肩装甲が目立つ仮面の彼は、その手に収まっていた何かのスイッチを押して、少女へ投げつける。
【タカウォッチロイド〜! タカ!】
歌い紡ぐ、その魔術でもないそれは、円形の物体から鷹の姿へ変形して少女へと襲いかかる。
「......何なのよ一体!」
魔術を駆使して鷹を落とそうとするが、発した魔力の弾丸は悉く躱され、少女へと突撃していく。
【サーチホーク! 探しタカ•タカ!】
少女の懐から二つの道具を掠め取り、仮面の彼の手元に鷹が戻っていく。
「......ガシャットは預かった。残り一つのガシャットもいずれか返してもらうよ」
金属の重なる音。
ガシャンという音が不意に仮面の彼と少女の両方の耳に入る。
「それは、どうかな?」
教会の黒い金属門の下、その略奪劇へ参戦する者が居た。
黒い長髪を夜風に靡かせ、夜より光を消した神父服を身に纏う長身の男性。その目からは狩るものの獰猛な鋭さが宿っている。
「......どういう意味だ?」
「ここで倒されるって事だよ。ライドプレイヤー君?」
神父は服の下から物体を取り出す。
下部に円形のギアが取り付けられた、真っ黒な機械。
どこかガシャットに似たそのギアを回すことで神父は、作動させた。
【chain Perfect Puzzle......】
神父姿の男性は消え去る。
代わりに、漆黒と純白を交えた鎧を身に纏った人型がそこに立っている。夜の暗黒に黄色の目は鈍く輝いていた。
「パラド......!」
【Stage Select】
少女は二人の空間移動に置き去りにされる。傍にはバーサーカー。頭部の傷が治癒しつつあるものの未だ戦闘不能状態から復帰していない。
森の中を少女は覗く。
遠く遠くだけれど、一つの大きな魔力が渦巻いているのが感知できる。その一つの魔力、セイバー。そしてそのマスターである衛宮士郎。彼らを追うことは出来ないだろう。
少女は誰も居なくなった戦場で呟く。
「ちぇっ、つまんないの」
言葉では不貞腐れてはいたものの、少女の顔は満面の笑みである。それは、これからの全てを悟っていたからに違いない。
「仮面ライダー、エグゼイド。あなたはいつになったら会えるのかしらね」
冬木市の寒空の戦いは、まだ続いていく。
謎とは、人の考えで至らない神秘である。
神秘とは、暴かれるものである。
仮面が外れた時、また謎が増えていくだろう。
次回、『ビルドアップ!』
See you next extra Stage?