Fate/extra game   作:セトリ

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魔王と救世主 2004

スカイウォールの惨劇から10年。

私、桐生戦兎は仮面ライダービルドとして1年。様々な死闘を繰り広げ、最終的には新世界を創りあげた。

そんな私は今、女の子にスライディングした脚に杭を打たれようとしています。

 

「せぃ!」

「うわっ!」

 

危ないし、道路のアスファルトがひび割れてるし、力強いし!咄嗟に開脚しなきゃ脚終わってたよ!

 

「隙ありぃ!」

 

ガシャコンブレイカーで回りこんで斬りかかり、逃げる時間を稼いでくれる檀さん。的確に相手が防御することを見込んで、左から攻撃して弾かれている。

 

と、その間に体勢を整え、左脚のホップスプリングを使い右側から少女へ急速接近する。ドライバーが違うとはいえ、ビルドの使い方に違和感がないのは流石だ。

 

「くっ! やはり人数の差は、戦闘に響きますね!?」

 

マシュ・キリエライトちゃんへ挟み討ちを仕掛ける。左手からは剣撃が、右手からは打撃が浴びせられていく。

 

こっちが本気ではないとはいえ、的確に攻撃の軌道を読み、大盾で上手く弾いたり、避けて盾で殴ってくるとは、可憐な見た目と裏腹に中々のワイルドな闘い方をしてくるねぇ。

 

檀さんの攻撃に合わせて、連携攻撃を行うってのも大変だってのにね。ま、お互いの戦闘スタイルがあんまり噛み合っていないから攻撃の速度も鈍っているし。

 

「ちぃ! やはり即席コンビでは、息が合わないようだなぁ!」

 

崖際のガードレールを踏み台にして上段から斬ると見せかけて、盾を踏んでマシュの背後をとるものの、マシュちゃんの背中の機械からバーナーが噴出、檀さんを怯ませて自身を逃していた。

 

「内部構造が非常に気になるけど、今はそれどころじゃないね!」

 

スプリングを使い追従して攻撃の手を緩めないようにしているが、これじゃジリ貧で決め手に欠けている。

そういえばエナジーアイテムが、周囲に浮いている。あれらを使える隙があれば......。

 

「今です!」

 

ん? マシュちゃんが距離を取って盾を横にして構えてる......?

確かマシュちゃんの身体には、噴射機構が身につけられてる。盾を向けた方角はガードレールを背に追撃しようとしている檀さん。

 

嫌な予感しかない。

 

ガードレールの向こうは崖だ。そして武器のリーチを持っているゲンムを狙うのは必然。止めるしかない。

近くの暗がりに黄色いエナジーアイテムが浮いている。コミックなら、何とかいけるかもしれない。

ラビットの瞬発力をエナジーアイテムに向かう力に注ぐ、これならギリギリ届く筈だ!

 

「全ブースター開放! 必殺の! ブラダマンテさん直伝バンカーストライクゥゥゥゥゥゥ!」

 

黄色いエナジーアイテムを取ると同時に、黄色く変色していく左手。

俺は四コマ忍法刀を呼び出す為に左手を突き出す。差し伸べる手の向こうでは、噴出装置で加速を得て盾に格納している杭を引き出し突撃していくマシュちゃん。

 

「今助けます! 檀さん!」【アーユーレディ?】

 

そして徐々に光り輝いていく腕。

ん? 光り輝く? ......コミックにそんな機能って無かったよな。

 

【ラビットライト! トライアル!】

 

ライト?

いやいや、あのオクトパスライトの片一方の成分?

発光する奴だよね。これ、止まらないんですけど!

 

「檀さんごめん!」

 

「ビルド、きさまぁぁぁぁぁぁぁっっっっ!」

 

発光と共に、マシュちゃんの必殺技をまともに受けて崖に落ちていく檀さん。恨み節は4秒ぐらいの叫び声だった。うん、生きているってことは分かってるから大丈夫か。

 

「.......っ目が」

 

やはりというか偶然というか。

マシュちゃんにも目眩しは効いている。これを無駄に出来ない。

取り敢えず街灯の配線部を左手で殴り、はみ出た電線を掴みライトバルブショルダーへ電気エネルギーを送り込む。

 

山の中の道路だからか、街灯はおよそ20mの間隔で設置されている。その隙間は暗闇だ。ラビットじゃ全く闇に順応できない。なら、ライトで発光させて闇を見れば、埋もれたエナジーアイテムを見つけられる筈だ。

 

掴んでいる街灯に光が消える。

そして、新たな光がいくつか見えてくる。

 

【水色のエナジーアイテム】

【灰色のエナジーアイテム】

【紫色のエナジーアイテム】

【白色のエナジーアイテム】

 

良く見ても何故か色しか(・・・)視覚モニターに映らない。

けど、大体理解出来た。俺が取るなら、これだ。

ラビットスプリングを駆使して、5m離れたマシュちゃんの後ろへ大ジャンプをする。

 

その軌道上に浮いていたエナジーアイテムを取得して、ガードレールの上に着地する。

 

ラビットの赤が俺が望んでいた色へと変化していく。この組み合わせは、勝利の法則へと導く為の一つのパーツ。

 

【アーユーレディ?】

 

無機質に流れる音声。

とっくに覚悟は出来ているさ!

 

「さて、ここからがビルドの本領発揮だ!」

 

今回の勝利条件は傷つけることなく戦いを終わらせる事。

このベストマッチなら、彼女を傷つけないように闘える。

 

 

【ライトニングテクニシャン! オクトパスライト! イェイ!】

 

 

 

 

さて、話をしよう。

 

普通の高校生である常盤ソウゴ。

 

彼は、2018年から50年後の未来。2068年を支配する我が魔王『オーマジオウ』になる運命が待っている。

しかしながら私が持っている『逢魔降臨暦』に私が知らない一節が記され、以降の記述が白紙になっていた。

 

「7つの聖杯集まる時、魔王を超える新たな王が誕生する」

 

我が魔王は私の言葉に従い、白紙になる直前の時代、つまり歴史の転換点に飛んでいった。

その時代とは2016年8月28日。

 

そこには歴史が消滅した筈の仮面ライダーゲンムの他にビルド、カルデアと呼ばれる人理保証機関と黒いエグゼイドが存在して......

 

 

失礼、少々語り過ぎてしまったようだ。

後は君自身の眼で確かめてみるといい。

 

私?

 

おっと。まだ名乗っていなかったね。

私の名はウォズ。我が魔王『オーマジオウ』の臣下である。

 

では、また未来で会うとしよう。

 

 

 

 

吐き気を催す衝撃の中、俺は居た。

ノウムカルデア第二回レイシフトは2016年8月28日の東京に起きた極小の特異点に定め、実行された。

特異点はあるだけで歴史が書き換わってしまう。

そこで我々の知る人類というものは消えてしまう。

過去、魔術王ゲーティアが人理を焼却するため72の魔神柱を放ち行おうとした偉業だった。

ゲーティアが居ないということは、他の誰かが歴史を滅茶苦茶にしているということだが、2016年に何かあるというのか?

 

その時代は人理修復の時に上書きされた1年ではないのか。

 

『我々が永遠に知り得ない物語を知るチャンスかもしれないね』

 

どこかの天才少女はそう言う。

聞いた俺は興奮している。そういう浪漫溢れる事柄には興味深い。

 

ーーーー

 

吐き気は薄れ、足が地面に着く硬い感覚。

レイシフトは無事に過去に届いたという安心感を胸に目を開ける。

 

そこは枯れた木々が生い茂り、枯葉が地面に積もる森の中だった。

夜ということもあり少し肌寒い。

 

『あーテステス。聞こえますか?聞こえるなら返事してくださーい』

 

ーーーー聞こえますよ。シオンさん。

 

右耳に装着した小型の機械を通して返事をする。

この機械は以前の失敗から学び、耳元に装着して話すブルートゥースと同じ構造の魔術機械だ。

耳穴にしっかりと嵌り、外部に飛び出た3cm程の平たい棒状の部分を触るだけで通話のオンオフを切り替えれるワンタッチ機構になっている。因みにデザインはダ・ウィンチ監修である。

 

『新型の調子は良いようね。では、まずは状況確認から始めましょうか。計器ではそこは3℃となっているけど、肌寒くない?』

 

ーーーーそういえば、肌寒い。というか3℃って低くないですか?

 

『計器の故障ではないのは分かっていると思うけど、異常気象ではないと思うのよね。だって周囲の環境を見ると急激に枯れたという訳じゃなく、あくまで自然に枯れたみたいだし』

 

日本の夏ならば夜でも30℃程で、レイシフトした8月は真夏に位置している。なのに関わらずまるでーーー

 

ーーーー真冬みたいな?

 

『大体そんな感じ。季節が真逆なのよ。礼装で問題ないようにしてるけど、実際なら長袖を着ていないと違和感があるレベル』

 

ーーーーだから、礼装が変わっているんですね。

 

手足を見ると味気ない茶色の布地が腕や脚を包み込んでいる。

真っ黒の極地用の礼装よりかは環境に適していると、納得する。

 

『ま、過去の聖杯戦争時に学生が参加していた事例(ケース)もあったみたいですよ。今回はその時に学生が身につけていた服をそっくりそのまま再現してみました』

 

ーーーーということは、学生服?

 

『そういうこと。さて、やっぱり(はぐ)れたカルデアのサーヴァントを呼ぶ所から始めなきゃいけないーーー待って、君の上空に正体不明の高エネルギーを検知した!』

 

シオンの鬼気迫った声に慌てて空を見上げる。

ちょうど雲で月が隠れ、光のない黒色が自分を見下げている。

 

いや、一つだけわかることがある。

ーーーー「ロボ」って文字が浮いてる。

 

『「ロボ」?......どういうことだい? そこに何も検知出来ていないけど』

 

ロボの文字から何かが飛び出してくる。

人影が音もなく枯葉を巻き上げて着地した。

怪しく桃色に光るその文字は『ライダー』。およそ顔の位置にデザインされた仮面、ニ対の長針と短針があるということは時計をモチーフにしているということだが、にしても顔面に『ライダー』とはどういうことなんだ?

 

耳元の通信機を触ってみるけれど、吐くのは雑音だけだった。

 

【KAMEN ライダー Riderー ジオウ Ziーo ジオウ(ZiーO)II(ツー)

 

代わりに奇天烈な音声が聴こえてくる。

仮面にライダーという文字があるから、仮面ライダー?

でもジオウⅡって自己紹介音声が流れている。この人?を仮面ライダージオウⅡさんと呼んでいいものか。

 

ーーーーええと、どうもこんばんは?

 

一応挨拶をしてみるけど、仮面ライダージオウⅡさんを略してジオウⅡさんはこっちをみたまま動く気配すらないうえ、こちらを警戒するように肩を僅かに強張らせているのが、金とマゼンタの線が入った流線形のボディアーマー越しに感じ取れる。

 

息を詰める空気には何度でも慣れない。

喉の奥の水分が急激に飛んでいく。脚も震えてくる。この場から逃げ出したい気持ちがせり上がってくる。

けれど、この場合に取れる手段は一つだけだ。

 

戦う。

一番嫌いなことだけれど、やらなきゃいけない。

しなければ死ぬんだ。俺は戦う。レイシフトの際に逸れてしまったサーヴァントを呼び出そうと左手の令呪を発動する。

使うは一画。想像するはセイバー。

 

空間が渦の如くねじ曲がり、高濃度の霊子を帯びていく。

空間湾曲現象。多大な魔力リソースを費やすことにより可能となる、魔術だ。

俺は令呪という魔力リソースで、セイバーとの空間を捻じ曲げ距離を無理やりゼロにする。捻じ曲げれるのは一瞬だが、それでいい。

 

渦から飛び出るは、真紅と黄の二対の剣。

フィオナ騎士団最強の騎士。輝く貌。頼れる一人。

 

ーーーー来てくれ、ディルムッド!

 

「承知」

 

ミドルトーンの声が俺に応え、こちらに振り向く。

 

ウェーブがかかった艶のある黒髪。長めの細い眉に、切れ長の眼。

整った血色の良い、ピンク色の薄い唇。丁度良い高さのしっかりとした鼻梁。

どれをとっても全てのパーツが美しい比率で揃えられ、男が見ても綺麗とため息混じりに言える程の美顔。加えて、胴体だけを守る紺の胸当て。身軽さを重視したため必要最低限の防御のみに抑えた男らしい装備。

 

「ディルムッド・オディナ。マスターの命により参上した。さて、打ち倒すべき標的は後ろの怪人で合っているでしょうか?」

 

ーーーー合ってるけど、あくまで落ち着かせるためだからね?

 

『ジカンギレード』

 

ジオウⅡさんは、刀身に『ケン』と描かれた武器をベルトの装置からアーチャーの投影魔術のように取り出し、片手に持つ。

構えがない。ただ歩く。

それだけ。それだけで一歩ずつ目を離せられなくなる。

焦燥、気迫、敵意、興奮、敬意。

自分の身体が闘争の熱に浮かされていく。

 

ーーーーいくよ。

 

言葉は開始の合図。

剣とケン。二つが交わるのにかかる時間は1秒にも満たなかった。

 

 

幾重にも管を束ね突き穿ち、発光する。

蛸と電球。それを相性が良いと誰が発見したのだろう。

オクトパスライト。とある力の片鱗。誰かの為に破壊(守護)する力は、今ビルドされた。

 

シールダーは戦う為に、仮面ライダーは守る為に。

 

ぶつかり合う。盾へ、鎧へ、アスファルトへ、ガードレールへ。

 

シールダーは攻撃をするたびに、仮面ライダーはいなすたびに戦闘の経験差を感じ取る。

世界のために戦い、世界のために傷つき、世界を守ってきた。

 

想いに違いは無い。優劣の差は今を動かす覚悟のみ。

 

仮面ライダーはシールダーを守る為に武器を出すことを躊躇して、シールダーは異変の元凶だろう仮面ライダーに全力を尽くして戦う。

 

立場、認知、情報。

仮面ライダーには足りなくて、シールダーには足りているもの。

 

だからこそ仮面ライダーは追い詰められていく。

ひたすら逃げの一手を使い、反撃の糸口を見つけようとしているが見つけようにも自身の体力が底尽きるのが分かっている。そして恐るべきはゲンムが現場へ復帰することだ。

 

助けの一手が必要だった。

 

『必ず来てくれよ、ソウゴ君』

 

仮面ライダーは時間を引き延ばす為の触手を伸ばす。

 

 

「踏み込んで!」

 

セイバーは己のマスターの言葉通り、踏み込んで真横に跳ぶ。

魔力を足裏から放出することで生まれる破壊力は、ディルムッドの身体を神速へと瞬間的に到達する。

 

ディルムッドは、そこから自身の赤い剣を木の幹へ突き刺し、無理矢理方向を変えて上方向へ跳躍を再び行う。その距離は凡そ15m。

 

「生死を分かつ境界線、今ここで見極める!」

 

ディルムッドは赤い剣を再度召喚することでその手に持ち、黄色い剣と共に月光を背に宝具を開帳する。

 

憤怒の波濤(モラ・ルタ)。超人的な跳躍から繰り出す神速の落下攻撃技。受ければ必死。避けることなど速度を以って切り捨てる。不意を突いた全力など避けれる訳がない。

 

仮面ライダーは交戦早々に勝機を確信した。

 

『ジオウサイキョウー!』

 

新たな武器をベルトから既に取り出し、必殺技を落下攻撃に合わせて放っていた。

 

『覇王切り!』

憤怒の波濤(モラ・ルタ)アァァァァ!」

 

 

同時にぶつかる必殺技。

極彩色の発光が夜の森を彩り、数秒ののちに消え去る。発生した衝撃波は木々をへし折り、枯れ葉を霧のように舞い踊らせる。

 

 

 

ディルムッドはマスターの元に転移していた。

 

「マスター、有難う御座います。令呪で呼び戻されていなければ、今頃消滅していました」

 

ディルムッドは己の主人の聡明な判断に心から感謝する。

ぶつかり合う、その瞬間。令呪による離脱を命令され、強制的に転移した。僅かでも遅れていれば、余波で霊核へ致命的なダメージを負い消滅を余儀なくされていた。

 

それ程までに仮面ライダーが放った技は絶大な威力を持っていた。

 

ディルムッドの背筋に凍りつくような悪寒が駆け巡る。

 

「マスター、私に最後の令呪を! 」

 

『Finish Time!』

 

枯れ葉が空気に煽られて舞い上がる。

何処までも伸びていく光の柱がある。文字通り威光を示す導は、それを振り下ろさんとする仮面ライダーを輝かせる。

 

「令呪を以って、命ずる。

 

ーーーー宝具を開帳せよ!」

 

『キング! GIRIGIRI Slash!』

 

ディルムッドは、令呪による魔力のブーストを受けて霊基を変化させる。元々は剣と槍の使い手、ランサーとしての適正もある。

そして、今この場面で必要なのはランサーで使える宝具だ。

 

ディルムッドは赤の槍ーーー癒すことの出来ない傷を負わせる事が出来る槍と、黄の槍ーーー穂先にて魔の力を祓う事が出来る槍を両手に持ち足裏へ魔力を通す。

 

仮面ライダーが極限にまで輝いた一閃を『ジオウサイキョウ』の文字と共に振り下ろす。その隙間を縫うようにディルムッドは走り出す。

 

受け止めては死ぬ。ならばその前に致命傷を与えればいい。

 

ディルムッドは流れる景色の中、両手の槍を突き出し、自身の身体を赤と黄の交わる一筋となり仮面ライダーへ肉薄していく。

 

5m。まだ踏み込める。

 

3m。まだ脚は動ける。

 

1m。頭上にある眩い光へ黄の槍先を触れさせ、赤い死を突き立てる。

 

 

重厚な胸部装甲を突き破り、血肉が爆ぜる音が聞こえる。

夥しい量の血液を枯れ葉へ溢していく。

 

ディルムッドは勝利を確信した。

仮面ライダーの確実なる死が槍を持つ手に伝わっていく。

 

「見えていたよ。その攻撃」

 

初めて聞いた敵の声は、幼い子供の様な高い声だった。

 

 

ーーーーーーーーーーーー

 

 

『藤丸君! 目の前に敵性反応! 気をつけて!』

 

『ロボ』の文字から人間が飛び出してくる。

怪しく桃色に光るその文字は『ライダー』。あれはーーーー

 

【KAMEN ライダー Rider ジオウ Zi-o ジオウ(ZiーO)(ツー)

 

仮面ライダージオウⅡ。

ーーーーあれ? さっきまで......戻った?

 

『あれは、人間なんでしょうか? 見るからに強化外装のようですが、この時代には相応しくない。一旦警戒した方がーーー』

 

「その必要は無いよ」

 

腰の部分に取り付けられていたアイテムを外すと、強化外装が淡い桃色の光に包まれて溶けていく。その中で俺は一人の人間が居る事を感じ取れた。

 

ーーーー君は?

 

月光が姿を映し出していく。

俺と同じ茶色の制服を身に纏い、あどけない笑顔で彼はこう答えた。

 

「常盤ソウゴ。2000年生まれの18歳。よろしく!」

 

彼は俺の前まで来て、右手を差し出した。

待て、今重大な情報を出さなかったか? 今の時代は2016年だ。彼が18歳だとすれば2歳サバ読んでるんじゃないのかい。

 

『......彼は正真正銘の18歳。1秒前に生体スキャンして得た情報だから確かだよ』

 

「どうかしたの?」

 

って事は彼はレイシフトも無しに時空移動してきたーーー

 

ーーーー『未来人!?』

 

「ちょ、ちょっといきなり大声出さないでってぇ......」

 

ーーーーごめん。

 

常盤ソウゴ君の数秒の悶絶が終わったのを見て、差し出された右手を握る。

 

ーーーー藤丸立香。19歳。人理継続保証機関フィニス・カルデアというところに所属している。よろしく。

 

「こちらこそ。見た目からして心強いよ」

 

やっぱりさっきの戦いは幻覚じゃないのかな?

ちゃんと暖かい人間の体温が、俺の右手に伝わってくる。

 

......さっきの戦いの事は黙っておいてね。ほら、右耳の人に余計な混乱を招くのも悪いし

 

と、同時に耳元へ囁いてくる。

確かに、と首を縦に振って言外に肯定する。

 

ーーーーそういえば仮面ライダーって言ってたけど、あの仮面ライダーで良いのかい?

 

「ん? どういうこと? 仮面ライダーは仮面ライダーだけど」

 

俺が知っている限りでは仮面ライダーはテレビ番組で放映されていた筈。

ということは仮面ライダーは実在していたって事? ならーー

 

ーーーー仮面ライダービルドって知ってる?

 

 

 

 

今、俺は大ピンチを迎えている。

マシュちゃんを抑えて戦闘を終わらせようとしたのに、突如現れたイケメンの双剣使いが戦闘に参加した。しかも、マシュちゃんの味方として。

 

【アーユーレディ?】

 

このイケメン双剣使い、物凄く強い。

剣に乱れが無くて一撃一撃が凄く鋭く重い。

正直言ってこれ程の剣術使いが現れるなんて予想していなかった。

緊急時に使えるよう目星をつけていた水色のエナジーアイテムを取得して、ビルドの装備を換装した。

 

【オクトパスダイヤモンド! トライアル!】

 

予想通りダイヤモンドボディに換装できた俺は、地面のアスファルトを触りマシュちゃんと離れるように動いて、ダイヤモンドの床に置換する。距離は10m程。

 

「アスファルトをダイヤモンドに変換!?」

 

そしてガンモードのドリルクラッシャーを呼び出して、『フェニックスフルボトル』をスロットへ装填。ダイヤモンドの床に狙いを定め、引き金を引いて発射する。

 

ダイヤモンドは900℃以上の高熱を継続して晒すことで無炎性の燃焼反応が現れる。その時白く輝いて、二酸化炭素を吐き出す。

フェニックスフルボトルは900℃以上の炎を継続して出すための燃料となり、特性として燃えるものがあれば延々と燃えることができる。

 

結果としてアスファルトの道路は、俺たちを守る炎の壁となった。

 

「これなら!」

 

右横はガードレールとアルトリアさん、左横は舗装された10m程の崖。

前は距離10mの超高温の炎。これならガードレールに飛んで逃げれるけれど、それじゃあセイバーを連れて逃げることが難しい。

 

故に、側にあった灰色のエナジーアイテムに手を触れる。

すると右側のダイヤモンドボディが換装される。

無機質のボトルで灰色はガトリングと時計。さあどっちだ!

 

【アーユーレディ?】

 

「ビルドアップ!」

 

【オクトパスウォッチ! トライアル!】

 

視覚モニターに正確な時間が表示される。

2004年 1月31日2時35分40秒。タイムトラベルをしているとは思っていたけど、13年前に来ているとは。

 

「いや、今はそうしている場合じゃないか」

 

と、背後に気配を感じる。

恐らくゲンムだろう。振り返って姿を見る。

 

そこには黒い髪の毛を模した頭部と特徴的なオレンジ色の瞳が光っていた。

 

「壇さん。逃げますよ!」

 

アルトリアさんを拾って逃げようとガードレールに向かう。

瞬間、背中に激痛が走り思わず膝をついてしまう。

呻き声が自分の口から出る前に、痛みが走った方向へ首を向ける。

 

そこにはガシャコンブレイカーのブレードをこちらに向けたゲンムがにじり寄ってくる。抵抗しようとオクトパスの触手をゲンムに向けようとしたが、その時には遅かったのか、俺の首を鷲掴みされ持ち上げられる。

 

「アッ......ク、ウ」

 

ゲンムの手の力はとても強く、脳に酸素と血が届けられるのを妨げられていくのが分かる。締め上げている腕を叩いて拘束を解こうとしてみるけどビクともしない。

 

酸素不足で霞んでいく視界に入っているのは、ゲンム。

いやこれはゲンムの姿をした誰かなのだろう。

それを推測するには、酸素が足りない。

やばい、意識が、なくなって......

 

くそ、こ、れ、じゃぁ......

 

「ビルドから離れろ!」

 

急に、身体が、宙を舞って、地面に落とされる。

 

口から新鮮な空気を何度か吸い込む。

ぼんやりとした意識が覚醒していく。

 

何とか定まってきた視界は、二人の人影を捉えた。

一人はゲンムのような姿をしているが、ベルトの部分がゲーマドライバーになっており、身体に走るラインも黒いボディと同じように同化していた。

何よりもゲーマドライバーの色が黒と赤の二色に変わっており、スロットに刺さっているガシャットも、ピンク色のゲンム......いや、エグゼイドが顔を覗いている。

 

「エグゼイド?」

「いや、あれは俺たちが知っているエグゼイドじゃない」

 

疑問に答えるもう一人の影。

赤いボディに四肢を黒いアーマーが保護している。それに特徴的なのは頭の文字だった。黄色い文字で描かれたひらがなの『らいだー』。

 

「あんたは?」

 

「俺は仮面ライダーゲイツ。お前を助けに来た」

 

ゲイツと名乗った仮面ライダーは手元のアイテムを取り外し、起動させる。

 

【Ghost】

 

機械音声が名乗る。

まさかあれって仮面ライダーゴーストの......

 

【Armor TIME!】

 

ゲイツの背後に現れたアーマーが分解して、全身を纏うように再結合していく。

 

【KAIGAN!Ghooooostoooo!】

 

最後に頭へ『ごーすと』の文字が嵌め込まれて、多分ビルドでいうビルドアップをして形態を変化させた。

 

「さぁ、黒いエグゼイド! いくぞ!」

 

 




仮面ライダーは運命(Fate)と邂逅する。

そして判明する真実。

全ての始まりが紡がれるーーー

次回、『2016:ライダータイム2004』

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