祖には我が大使■■■。
降り立つ風には壁を。
四方の門は閉じ、王冠より出で、王国に至る三叉路は循環せよ。
繰り返すつどに五度。
ただ、満たされる時を破却せよ。
ーーーー告げる。
汝の身は我が下に、我が命運は汝の剣に。
聖杯のよるべに従い、この意、この理に従うならば応えよ。
誓いを此処に。
我は常世全ての善となる者。
我は常世全ての悪を敷く者。
されど汝は我の眼と共にせよ。
汝は、我と等しく同様となる者。我は、汝と等しく同様となる者。
我が身は汝の下に、汝の命運は我の剣に。
汝は常世全ての善となる者。
汝は常世全ての悪を敷く者。
誓いを此処に。
汝三大の言霊を纏う■■、
抑止の輪より来たれ、天秤の守り手よーーーー
酷い頭痛が僕を覚醒させた。
鈍く、そして懐かしい痛みが頭蓋の下で踊り狂っている。
懐かしい? その感覚はどこから来たんだろうか。僕が幼い頃に感じた喪失に似た痛みにそっくりだった。
外を見ると夜の帳が降りかけて紺色に染まっている空があった。
「......そんなに寝てたのか」
寝ぼけ眼を擦り、職員室へ向かう準備を始める。頭痛はするものの気にするほどではなくなり、身体も寝る前と比べれば鈍重感は消失していた。ただ、倦怠感が身体に残っており今日一日は家でしっかりと寝たほうが、明日以降に迷惑がかからないだろう。
つまりとっとと仕事を終わらせて寝よう、なんて現代では不思議な程自堕落な考え方を僕はしていた。まあ、間違ってはない。
鞄に資料を入れ、帰ろうとドアに身体を向けた時だった。慌ただしく走る足音と人影が一つドアの磨りガラスを素早く通過していった。
人影は形を見る限りだと制服を着ていたから、ここの学校の生徒かな。それだとしたら、
「もう下校していなきゃおかしい。......追いかけないと」
嫌な予感がする。僕の中に眠る第六感がそう囁いた。
急いでドアを開けて、廊下に躍り出る。
無人の廊下は焦燥をさらに掻き立てる。生徒は階段を駆け上がったんじゃないのかと、階段を2段飛ばしに疾く駆ける。
2階、居ない。3階に一息で辿り着く。廊下に予想どうり本校生徒の姿が確認出来た。
暗がりで多少は見え辛いけれど、明るい朱色はあの生徒しかいない。
「エミーー」
ヤ、と続く言葉は血生臭い匂いとなだれ落ちる物音で掻き消された。
いや、何度も見てきた筈だ。殴り合い、切れた唇から出てきた赤色を僕は知っている。
ーそんな訳がない。
暗がりが徐々に月光に満ち溢れる。
ーーそんな訳がない。
そこには血溜まりに倒れる、エミヤと呼ばれる穂群原学園の2年生がいる。胸辺りから滲み出る夥しい生命の流体が、茶色の制服を紅く染め上げていく。
ーーーそんな訳がないッ!。
否定は肯定することを拒んだ。そこには、そこにいたのは、瀕死の重体を負った衛宮士郎が倒れているという事実だけだ。
「......ウッ」
空気が澱んだ。歪んだ。ひび割れた。
今にも決壊しそうな正気の器が、まだある真実に辿り着こうとしていた。月光は神秘を映し出す。
「なんだ? 今度は医者か。ーーー見たな、お前」
蒼い髪だった。
全身を暗闇より明るい色と無機質な金属類の光沢で彩り、手に持つ一本の赤い赤い槍は眼前に迫り、自分へ振り降ろさんと一筋の線を描こうとしている。終点は左胸、その中にある人間にとっての最重要の臓器を貫こうとしていた。
ーーー心を滾らせるなよ!
咄嗟に身体を右に傾ける。穂先は左肩を掠る軌道を描き、白衣に赤い直線をつける。握り拳を右手で作り、赤い眼をした美丈夫の顎目掛けて放つ。驚くほど自然に、慣れている殴り方に僕自身が困惑した。
「ッ!ーーおいおい」
クロス気味の殴打に、なんて事なく上体を曲げることで避けた侵入者はそのまま後方に一回転し、ステップ踏み距離を開ける。そして、槍を左で構えて口を開く。
「まさかマスターに出会うとはな。サーヴァントはどうした?」
意味不明な言語が立ち並ぶ。マスターとサーヴァント。2つの言語が何らかの関係を示しているのは理解できるものの。生憎そういうのは持っていないような。疑問符を並列に繋いでいると、侵入者は僅かに顔を歪めて腰を屈める。
「......まあいい。サーヴァントは虎の子だというんなら、引き出してみるだけさ」
轟と突風が吹く、赤色のナニカが侵入者に纏わりつく。
あれは死を告げる。先程の突きと比べものにならないだろう攻撃が待ち構えているのは確実だろう。何か行動しようと指先を動かそうとして、酷く痙攣を起こしていることに気が付いた。
このままでは防ぐことなく、呆気なく死んでしまうのは確実だった。
目の前の蒼い戦士は言外に語る。ーーー観念しな。
まだだ。僕は死にたくない。死んでたまるか。
ーー俺は、あいつを救わなければならないんだ。
右手を突き出して、手甲のタトゥーに誓う。言霊が浮かんでくる。
身体から雑音が入る。純白の綺麗な気体が自分の身体から漏れ出る。
ーーー告げる。汝の身は我が下に。我が命運は汝の剣に。
聖杯のよるべに従い、この意、この理に従うならば。
満ちる。満ちる。満ちる。満ちる。満ちる。
破却された時は戻り、希望を形成する。絶望の槍を破壊する、矢を番えよ。
絞る。絞る。絞る。絞る。絞る。引き絞るごとに五度、強き意志を発現せよ。
ーーー我に従え。ならばこの命運、汝に授けよう。
《ギリギリ クリティカル ストライク!》
光芒一閃。ただ絶望を粉砕したのは、背後からの一条の光だった。
想像通りの光線は、紺碧を直撃させる。波状に広がりを見せ、コンクリートの天地に罅を入れて拡散、次第に霧散していった。
「いい一撃入れてくれる。だが、それは弓兵の真似事か?」
槍を立て、問う。僕ではなく、後ろから奇襲を仕掛けた人物に向けての問いだった。新たな気配は口開く。
「いいや。てか何だよその槍、殺す気満々じゃない」
軽やかに、それであってここを戦場だと実感させる言葉を乗せながら、月下の舞台に乱入者が躍り出る。
茶色の皮ジャンパーを纒い、青いジーパンを一丁。背丈は僕と変わらず、右手には黄色の玩具一つ。顔は戦場に佇む日本の武士そのもの。幾らかの戦いを潜り抜けた相貌は、僕が記憶するある人と一致した。
「助けに来たぜ」
「ぼ、僕は上条茂夫です。あなたは誰ですか」
僅かに太い眉を寄らせ、乱入者は侵入者の盾になるように位置を移動する。先程は見えなかった腰につけた緑と赤みがかったピンクの機械、そして左側に添えてある機械に刺さった黒の物体がチラリと映る。
「自分の名は、ライダー。仮面ライダーレーザー」
「ほう、騎手を名乗るか。此度の聖杯戦争は真っ当な役割を捨て去った奴らが多い」
少しでも動けば戦闘が再開される中、仮面ライダーを名乗る彼は腰にあった黒い物体を抜いた。侵入者が槍を即座に構え、突撃する体勢を取る。ガッシューンと気の抜けた機械音声と共に黄色の玩具が泡状に溶けて消えていく。
「何の真似だ」
「見ての通り、自分にはあんたを倒せる武器を持ち合わせてない。だから、降伏するという訳ですよ。あんたは立派な番犬だ。主人の命令には従った方が今は良いんじゃないか?」
彼は両手を大袈裟に広げて降伏を意味するボディサインを示し、戦いを鎮める交渉を行う。確かに、今は戦う時じゃない。何よりもこうしているだけで失われる命が床にあるのだから。
「ちっ......わかったその提案乗ってやる。但し、一つだけ約束しろ」
侵入者は槍で地面を半分の弧を描き、朱の光壁を造りだす。喰い殺さんとする獰猛な目付きで睨みつけてくる。
「俺が万全に戦える時になったら、挑戦状を送りつけてやる。そん時には絶対に逃げるなよ」
月夜の虚空に響くは青い捨て台詞と、安堵の一息を入れる茶色の仮面ライダーと、滑って腰を打ち付け床を転がる僕だけだった。
――――――
先ほどの戦いが目を閉じれば鮮烈に蘇ってくる。
弓兵との手ぬるい打ち合い。実力が自身に課せられた制限によって出せなかったにしろ、実に満足ができるものではなかった。戦士として、全力を通じて相手の全力と鍔迫り、相手を倒すのが最上の喜びというものだ。
しかし、この戦いは不満ばかりが残っている。できたことは不幸にも秘密を見てしまった者への処理のみ。それは完遂できたはずだが、俺にはあの医者マスターがどうにかすると戦士の直感が囁いている。
「しかし、なんだ……いいやつがそろってやがる」
懐を見せれなかったのなら、次に会った時に全力を見せてもらえばいい話だ。
あの
また相まみえる日もある、その時こそが決戦の時だ。
「くはっ、楽しみだな」
早くこの槍で戦いたい。それだけで、思考が堂々巡りしていく。この感覚こそが、久しく戦いの血を滾らせてくれる。
しかし、まだ奴らと戦う舞台はそろっていない。ならばこんな下準備はとっとと終わらせよう。まだ現れぬセイバーのマスターを探すという準備をな。
サーヴァント・マトリクス1
真名:仮面ライダーレーザー
クラス:ライダー
属性:秩序・中庸
【ステータス】
筋力:E 耐久:D+ 敏捷:E
魔力:E+ 幸運:E 宝具:EX
【スキル】
バグスターウィルス:EX
とある世界にて発見された電子生命体。人間に感染することにより、宿主の存在と引き換えに肉体の培養をする。バグスターウィルスが完全に現実世界に出てきたとき、宿主の身体はデータとして現実から消滅する。
彼は人間としての生をバグスターウィルスによって終わり、再び神の手により人間ベースのバグスターウィルスとして蘇った。なので、バグスターウィルスが本来持ち得る怪人体を持ち合わせていない。
人心理解:A
人心の構造を正確に知り尽くしていることを表すスキル。彼の場合は数多の人体を生き死に関係なく観てきたことにより培った経験と、人の心の動向を一寸の狂いもなく捉えることのできる洞察眼が備わっている。真実を見つめる目は誰よりも鋭い。
真実隠蔽:EX
真実を遠ざけることを厭わない精神性がスキルとして顕現した。彼は真実を最も近くで見つめるが、それ故に他者を虚偽で惑わせる。それを反映し、自身の一部情報を隠蔽または捏造している。なぜなら真実を伝えることが、正解だとは限らないと知っているから。
【宝具】
《ライダ―ガシャット》
ランク:EX 種別:対人宝具
神より造られし電子医療機器。
バグスターウィルスを管理、特性を再現することができる。
彼が持ち合わせているのは4つ。
問答無用な疾走戦へと持ち込ませる特性を持つ《爆走バイク》。
窮地に立たされた時、想像を超えた力を発揮する特性を持つ《ギリギリチャンバラ》。
バグスターウィルスを抑制する特性を加えた《特別製爆走バイク》。
バグスターウィルスの上位版であるゲムデウスウィルスを抑制、沈静化させる特性を持つ《ドクターマイティ
《ゲーマドライバー》
ランク:EX 種別:対人宝具
ライダ―ガシャットを読み込み、増幅させる専用機械。
腰に当てるとベルトが自動的に使用者に巻き付く。
本体左側にある二つのスロットの右側にガシャットを差し込むことによりデータをロード、データに沿いバグスターウィルスを活性化させることにより特性を最大限に使用することが可能。
右側は《変身用スロット》、左側は《強化用スロット》となり、それぞれ引き出す力の割合が異なる。ガシャットの相性として《爆走バイク》と《特別製爆走バイク》が《変身用スロット》、《ギリギリチャンバラ》が《強化用スロット》と相性が良い。しかし、逆のスロットへガシャットを入れたとしてもエラーが起き、起動することはない。
例外として《ドクターマイティXX》だけは二つのスロットを使い起動する。
ベルトが巻き付くと同時に使用者の左腰に《キメワザスロットホルダー》が生成される。スロットホルダーには一つの《増幅用スロット》と二つのガシャットを保持するホルダーが付いている。
《増幅用スロット》にガシャットを差し込むことでガシャットに応じたアイテムを呼び出すことが可能。また、差し込んた状態で銀色のスイッチを二回押すことにより必殺技が発動する。
ホルダーにセットされたガシャットはゲーマドライバーに量子分解されて格納され、持ち運びが可能。