高嶋叶吾は勇者である   作:宇津田

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あけましておめでとうございます。
今年も宜しくお願いします。
今年のこの作品の目標は、主人公を勇者にするです。
投稿ペースが遅いのでいつになるか分かりませんが、私は投稿しますよー!

時系列が分かりにくいですが、最初の部分は以前の日記の次の日です。


第17話

病棟の廊下を歩いて東郷さんの病室に向かう。

朝早く面会時間にはなっていないが、園子ちゃんの所に行くときに着る服装でナースステーションに名前を言えば通してくれることになっている。

こういう時だけ大赦の権力が役に立つなんて腹が立つ。

東郷さんの病室の前にも立ち、仮面を外してドアをノックする。

「はい、どうぞ」

返事を確認してドアを開ける。

部屋は個室だけど私物はほとんど見当たらない。

身体に異常がないから退院が近いからだろう。

「おはよう、東郷さん。朝早くからごめんね」

「事前に連絡をもらっていたから大丈夫よ。それで話は?」

「話したいことが色々あるんだけど、体調は大丈夫かな?」

「ええ。熱とかはないわ」

「以前から動かなかった足や戦い機能を失った左耳や右目は段々機能が戻ってきた?」

「ええ。左耳と右目は段々と。足もリハビリ中よ。でもこれは話と関係あるの?」

「一応確認しときたくて」

そう、本当に確認しときたかっただけだ。

散華した身体機能はもう二度と戻ってこない。

今回は神樹様が神の力を用いて、皆の散華した身体機能を新しく作り直して与えている。

だからリハビリなどをしてまた自分の物にしていく必要があるのだ。

これで誰か一人でも散華した機能が新しく与えられていなかったら神様を殴りに行かなくちゃいけなかったから本当によかった。

「でもよかった、皆身体の機能が戻ってきてて」

「・・・えぇ、そうね」

「友奈ちゃんのことは聞いてる?」

「ええ・・・。でもまだこの目で見ていないわ」

「じゃあ、会いに行く?」

「私が行っていいの?皆から止められているけど・・・」

「僕が一緒だから大丈夫だよ」

「・・・。なら、会いに行くわ」

「じゃあ話もそこで一緒にしようか」

東郷さんに車椅子に乗ってもらい、友奈ちゃんの病室まで一緒に行く。

部屋を出てから東郷さんは何も話さなくなった。

どんどん顔色が青白くなっていく。

「東郷さん、顔色が悪くなってきてる。部屋に戻ろうか?」

「友奈ちゃんに会わせて・・・。お願い・・・」

僕の方を振り返り、ハンドルを握っている僕の手を掴んできた。

東郷さんの手はとても冷たかった。

絶対無理をしているのが様子で分かる。

けど東郷さんの目は諦めていなかった。

だから僕はそのまま東郷さんを病室に連れて行った。

友奈ちゃんの病室のドアをノックして入る。

ベッドの上には虚ろな目をした友奈ちゃんがいた。

「ゆう、な、ちゃん・・・。友奈ちゃん!!」

友奈ちゃんを見た東郷さんが車椅子から立ち上がり、ベッドまで駆け寄っていく。

まだリハビリ中なので足が上手く動かず転んでしまう。

「東郷さん!大丈夫?怪我はない?」

「友奈ちゃん・・・。友奈ちゃん・・・」

「友奈ちゃんはすぐそこにいるよ。でも東郷さんが怪我をすると友奈ちゃんも悲しいと思うから、無茶なことはしないで」

「ごめんなさい・・・」

東郷さんに車椅子に戻ってもらい、友奈ちゃんのベットのそばに寄せる。

「友奈ちゃん、返事をして・・・」

友奈ちゃんに声をかけながら東郷さんは友奈ちゃんの頬に手で触れる。

だけど、友奈ちゃんから返事はない。

「やっぱり、だめなのね」

そう言って東郷さんは涙を流す。

「私の、私のせいで!!」

東郷さんはそう言うが僕はそうじゃないと思う。

東郷さんの横に椅子を持ってきて隣に座る。

「東郷さんのせいじゃないよ」

「何も知らないあなたが何を言うの!!」

僕の大赦での扱いは、勇者部皆の手伝いをしたり、何か困ったことがあればそれを大赦に伝えたりするとかの雑用係みたいなものだ。

でも今の僕は違う。

「全部、知ってるよ。最後の戦いであったことも、散華のことも、今の僕は全部知ってるよ」

「え・・・。ど、どうして知っているの!?勇者と大赦の一部の人しか知らないはずなのに・・・」

今回の東郷さんがしたことやそれで起こったことは勇者と大赦の中でも上層部の人たちしか知らない。

なぜ僕が知っているのか、それは――――

「東郷さん。僕ね、皆と同じ勇者になったんだよ」

「え・・・」

 

 

 

三回目の戦いが終わったあと、転入生が僕達勇者部2年生組のクラスに編入してきた。

「三好夏凜です。よろしくお願いします」

自己紹介を聞いて思ったことがある。

もしかして三好って名字だから大赦の三好さんと親戚だったりするのかな?

あまり三好って名字聞かないしね。

そして今クラスで自己紹介している彼女こそが僕を除いた勇者部皆のお役目の助っ人らしい。

僕は皆と一緒に戦えないから話を聞いて様子を聞くことでしか戦いの様子は分からない。

友奈ちゃんの話では、三好さんはとても強いと言っていた。

人数が増えたことで戦いも有利になるはずだ。

これで皆の怪我とかが少なくなってくれればいいなあ。

 

放課後になって三好さんは勇者部の部室に来た。

多分お役目の話をするんじゃないかな。

「転入生のふりなんてめんどくさい。でもまあ、私が来たからには安心ね。完全勝利よ!」

東郷さんが疑問に感じたことを質問したりしている。

ある程度話が終わると三好さんがこっちを見る。

「ていうかどうしてここに関係者じゃないやつがいるのよ。出ていきなさい」

三好さんが僕に対して言う。

ちょっと高圧的で怖い・・。

「あ、あの、い、一応僕も、関係者です」

「はあ?あんたが?」

信じてもらえてない・・・。

なんて説明しようかあわあわしていると、部長が代わりに説明をしてくれる。

「高嶋はね、私達のお役目のことを何となく知っていて色々手伝ってくれてるのよ」

「は、はい。そうなんです」

大赦の三好さんからは皆からお役目のことについて聞いてはいけないと言われているけど、友奈ちゃんがよく僕に話をしてしまうので所々知っている。

僕から尋ねて聞いてるわけじゃないから大丈夫大丈夫。

多分。

「部長。もしお役目のことでお話するなら、僕は別の場所に行きます」

「そうね、これから詳しい話をするから高嶋には部室を出ていてもらおうかしら」

「分かりました」

「本当にごめんね、いつも話をする時は部室を出てもらっちゃって。大赦も高嶋にはお役目のことを全部教えてもいいのにね。私達のことを手伝ってくれてるのに」

「大赦も不必要に情報を広げたくないんじゃないですかね。じゃあ僕は屋上に行きます」

「分かったわ。後で連絡するわ」

「お願いします」

皆がお役目のことについて話をする時は、聞いてはいけないことになっているので部屋を出ているのだ。

「じゃあ牛鬼も一緒に行こ。ご飯もあるよ」

いつの間にか僕の頭の上に乗っている牛鬼に声をかける。

すると手で僕の頭を二回叩いてくる。

最近分かったけどこうやる時は分かったって意味がある。

皆に声をかけ、部屋を出る。

お弁当の入った手提げを持ち屋上のドアを開いた。

屋上についたら社の隣に座り、お弁当箱を5個出してすぐ食べれるように準備していく。

お弁当箱は3つは小ぶりで、2つは大きめのにしてある。

「牛鬼、食べていいよ」

牛鬼に声を掛けると頭から離れてお弁当の前に座り食べ始めた。

友奈ちゃん達がお役目を始めた頃、社に行っても牛鬼に会えないことが続いた。

会えない日が続いたので心配してたけど、友奈ちゃんと牛鬼が一緒にいるのを見かけて安心した。

その時に友奈ちゃんに牛鬼のことを聞くと、お役目の手伝いをしてくれているとのことだった。

「友奈ちゃんのこと、よろしくね」

そう言って牛鬼の頭を撫でると、のほほんとした顔を向けてくる。

もう牛鬼はかわいいなあ。

さあ、他の皆も呼ばないと。

社の正面に立ち、扉に向かって覗き込むようにして言った。

「ご飯持ってきたよー」

言ってから少し離れると、社が光りだしてそこから新たな精霊が出てくる。

「こんにちは、皆。もう牛鬼は食べ始めてるから皆も食べていいよ」

社から出てきたのは、義経、雪女郎、輪入道、七人御先だった。

義経、雪女郎、輪入道は小ぶりのお弁当を食べ、七人御先、牛鬼は大きめのお弁当を食べている。

七人御先は名前の通り7体いるから大きなお弁当を食べるのは分かるけど、それと同じ量のお弁当を食べる牛鬼ってすごいよね・・・。

精霊の皆がご飯を食べている間に、社の掃除を始める。

掃除って言っても濡れ雑巾で社を拭くだけなんだけどね。

これも僕のお役目の一つだから、丁寧にやらないと。

精霊のことは、上里さんから教えてもらった。

牛さんの名前が牛鬼だってことも。

素質があると精霊が見えることも。

一体こんな僕にどんな素質があるんだろうなって思う。

そんなことを考えながら掃除をしていると、頭の上に牛鬼が乗ってくる。

「お弁当食べ終わったの?友奈ちゃんからもらってるビーフジャーキーもあるよ?」

そう言って手提げからビーフジャーキーの袋を出すと、牛鬼はそれに向かって飛びついていった。

「本当にビーフジャーキーが好きなんだね」

掃除もある程度終わり牛鬼にビーフジャーキーをあげていると、屋上に三好さんが来た。

「高嶋、もう話は終わったから部室に戻っても大丈夫よ」

「あ、あの。わざわざ呼びに来てくれたんですか?」

「か、勘違いするんじゃないわよ!あんたの仕事ぶりを見に来ただけよ!」

もしかしてわざわざ話が終わったことを伝えに来てくれたのかな?

三好さん、優しい人な気がする。

さっきは怖かったけど。

ふとそんな考えが思い浮かぶ。

「ていうかなんであんた精霊と一緒にいるのよ!勇者でもないのに」

「ああ、僕精霊が見えるんですよ。素質があるみたいで」

「へー。男でも適正値が高い奴いるのね」

「適正値、ですか?」

「あんた、適正値のことも知らないの?」

「一応僕は皆さんのお役目について詳しいことを聞いちゃいけないことになっているんです」

「まあいいわ。それじゃ、私は伝えたから」

「あ、はい。ありがとうございます」

とりあえず、話が終わっているなら部室に戻ろう。

「皆もう食べ終わった?」

精霊達がいる方を見て、声を掛ける。

精霊達はお弁当を食べ終わって敷物の上で寝っ転がっていた。

うん、かわいい!

「僕そろそろ戻らなくちゃいけないんだ。皆はお腹いっぱいになった?」

そう言うといつの間にか頭の上に乗っている牛鬼以外の精霊達は、寝っ転がっているのをやめて宙に浮かぶ。

義経や雪女郎は僕の前で頷くような動作をしてくれる。

輪入道や七人御先は特に何も動作をしない。

皆、満足してくれたようだ。

満足していない時は、義経や雪女郎は頷いてくれないし、輪入道や七人御先は身体にくっついてくる。

お弁当箱や敷物を片付けて精霊達に声を掛ける。

「また明日も来るね。時間は何時になるか分からないけど」

そう言うと牛鬼を除いた精霊達は、社に近づく。

そして社が光り輝き、輝きが終わると牛鬼以外の精霊は居なくなっていた。

「じゃあ僕達も部室に戻ろう」

荷物をまとめて部室に戻る。

すると今度の日曜日に子ども会のレクリエーションを行うことを、犬吠埼さんから説明を受けた。

「分かりました。僕折り紙が上手くないから練習してきますね」

「はい。高嶋先輩、よろしくお願いしますね」

犬吠埼さんと話をしていると、東郷さんが会話に加わってくる。

「高嶋君、その日はもちろん女装で参加するわよね?」

「え?な、なんで?する必要ないよね?」

「高嶋君の依頼での正装が女装だからよ!」

「そ、そうだったっけ?いつ決まったのかな?」

東郷さんが熱のこもった視線で僕を見てくる。

ちょっと怖い。

東郷さんの視線を感じ続けるのに恐怖を感じた僕は、友奈ちゃんの背中に隠れる。

「高嶋君、大丈夫よ。私は怖くないわ。ほら、こっちへおいでー」

東郷さんがゆっくり手招きしてくる。

益々怖くなって友奈ちゃんにピッタリとくっつく。

「子ども会だときょう君の女装は必要ないんじゃないかな?」

僕のことを見かねて友奈ちゃんが助け舟を出してくれる。

「ゆ、友奈ちゃんがそう言うなら・・・」

そう言うと東郷さんは部室のパソコンの前まで移動して勇者部のホームページの更新を始めた。

「友奈ちゃん、ありがとう」

「そんな。東郷さんはきょう君の女装姿に夢中だから、違う時に女装してあげてもいいと思うな。私も一緒にいるから」

「うん、分かった」

友奈ちゃんが一緒なら東郷さんも変な事を言いだしたりしないだろう。

た、多分。

『さりげなくきょう君に女装してもらえる機会をゲット!やった!』

 

 

そして、予定の日曜日になった。

しかし集合時間になっても集合場所に三好さんが来ない。

友奈ちゃんが電話してみたけど、電源が切られているらしく、三好さんが電話に出ることは無かった。

「もしかして夏凜ちゃん、具合が悪くて来れないんじゃないかな?」

友奈ちゃんが心配そうに言う。

三好さんはクラスでの様子を見ていても真面目な人だと思う。

だから休むなら一言連絡すると思う。

「もし具合が悪くて寝込んでいるならちょっと心配ね。あいつ一人暮らしだから」

「え?そうなんですか、風先輩?」

僕達が知らない事を部長が言った。

「一体何処でそんな事を知ったんですか?」

「職員室で聞いたのよ」

それは、盗み聞きというのでは・・・。

「高嶋、細かいことは気にしない」

「わ、分かりました」

「でも、夏凜さんが来てくれないとお誕生日を祝えないよ」

犬吠埼さんが言うように、今日は三好さんの誕生日なのだ。

だから三好さんには内緒で、誕生日会を今日参加する子ども達と一緒に行う予定だった。

だけど、その本人が来ていない。

どうしようかと考えていると、友奈ちゃんが言った。

「じゃあ子ども会が終わったら、夏凜ちゃんのお家に行こうよ!そしたら誕生日会を行えるよ」

「友奈ちゃんは夏凜ちゃんのお家の場所が分かるの?」

「あ、そういえば私、夏凜ちゃんのお家の場所分からない・・・」

「私が知ってるから大丈夫よ」

「お姉ちゃん、夏凜さんのお家の場所知ってるの?」

「あいつが出した入部届にきっちりと書いてあったわ」

「その手がありましたね。私も何かあったらやってみます」

東郷さんが変なことを言っているが気にしない。

「それじゃあ子ども会が終わったら、夏凜の家に行って誕生日会をするわよー!勇者部ファイトー!」

「「「「おー!」」」」

 

子ども会が終わった後に三好さんの家に行くと、木刀を持った三好さんが出迎えてくれた。

具合は悪くないとのことだったので、皆安心した。

「わーーー!!!、み、みみみ、見るなーーー!!!」

今は三好さんの家で誕生日会を行っている。

皆楽しく話している。

この調子なら三好さんも皆と打ち解けられるだろう。

部員も増えて、これからが楽しみだ。

 

 

 

 




いつも読んでくださりありがとうございます!
やっと勇者部全員登場させれました。

次回は短めですので多分、投稿は早い、はず・・・です。
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