高嶋叶吾は勇者である   作:宇津田

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お久しぶりです。
合宿前半です。


第20話

今日は力を使った移動の練習をした。

昨日はイメージを強く持たずに力を使ったから反動で身体が痛かったけど、今日はイメージを強く込めて力を使ったからか反動で身体が痛くなることはなかった。

でも一回遠くまで跳ぶイメージをして足を動かしたら、浜辺から浜辺の端にある山の中まで跳ぶことになってしまった。

初日に防御の練習をしていたから、両足の骨折だけで済んだ。

その後は上や横に跳ぶ距離を少しずつ伸ばす練習をした。

空を飛んでいるような練習だったので僕は楽しかった。

今の所、勇者になって初めて楽しいと感じた時だ。

 

 

早く勇者部の皆で遊びたいな。

 

 

神世紀300年10月3日

 

 

 

 

勇者部は今2泊3日の合宿に来ていた。

僕以外の五人へのお役目のご褒美として大赦が運営している旅館に招待されたのだ。

けれど、僕の分も合わせて6人分の旅館を手配したと連絡があったと部長が言った。

何故僕も含まれているんだろうと思い、部長に尋ねたが理由は知らないとのことだった。

なので春信さんに聞いてみると、僕自身のお役目のご褒美も含まれているとの事だった。

そういうことで僕達は、午前中に旅館に到着したので、荷物を預けて今は泳ぎに来ていた。

僕は学校の水着に、日焼けをしたくないので上には薄手のパーカーを着ていた。

男の僕は着替えがすぐに終わったので、パラソルやシートを敷いたりして準備をしていると、皆が着替えてやってきた。

「きょう君お待たせー!」

そう言って友奈ちゃんが僕の近くまで走ってくる。

「全然待ってないから大丈夫だよ。友奈ちゃんその水着似合ってていいと思うよ」

「本当?ありがとう!」

友奈ちゃんに少し遅れて他の皆が来た。

今日東郷さんの海用の車椅子を押しているのは大赦が派遣してくれたライフセーバーさんだ。

海の中でも東郷さんが安全に過ごせるようにとの配慮だった。

「おっ待たせー」

「お待たせしました」

「またせたわね」

「高嶋君!どうして女物の水着ではないの⁈」

開口一番に女装に関してとは・・・。

1人だけ違う言葉に呆れつつ返事をする。

「そんなに待ってないので大丈夫ですよ、皆さん。・・・知らない人ばかりの所で男の僕がビキニで居るのは流石に恥ずかしいよ、東郷さん」

「何を言っているの?高嶋君は男の娘じゃない。それならば以前買った友奈ちゃんとお揃いの水着を着ないでどうするの!」

「え?僕は男の子だよ?」

「そうよ、男の娘よ!」

「「???」」

東郷さんと2人で首を傾げてしまう。

話が噛み合わないでいると、部長が止めに入ってくれる。

「いや東郷、流石にここで女装させるのはやめなさい。部長命令よ」

「そんな殺生な!」

「させたいなら合宿が終わって帰ってからにしなさい。その方が東郷もカメラとかあっていいんじゃない?」

「確かに・・・。流石風先輩です」

あれ、結局僕は帰ってから皆の前でビキニを着なくちゃいけないのかな?

でも今着なくていいのならと了承してしまった。

だって友奈ちゃんが隣で目を輝かせているから断れない・・・。

皆で飲み物などを準備し終わると、部長と三好さんは泳ぎの速さを競うために海に飛び込んでいった。

そして友奈ちゃん、東郷さん、犬吠埼さんの3人は仲良く話しながら海に入っていく。

僕はカナヅチなのでシートが引いてある所に座って皆を見送り、飲み物と一緒に買ったカキ氷を食べていた。

シロップはレモンだ。

勇者部の皆と居ると1人になることは少ないので、ふとお役目の事について考えた。

皆の話や様子からお役目はひと段落したのだと思う。

でも春信さんからそのような事は聞いていないので、まだ皆のお役目は続くのではないかと僕は考えていた。

お役目なんて早く終わって欲しいと思っちゃうけど・・・。

それと僕が行なっている、精霊の皆へのご飯を食べさせる事にどういう意味があるのかな?

そもそも友奈ちゃん達が戦っているのはどんな相手なんだろうか?

勇者部の皆と一緒にいるから話を聞いてしまうことはあるけど、何も聞いちゃいけないことになってはいるから、よく分かっていないのだ。

僕は友奈ちゃんや皆と出会ってから、友達が沢山増えたり、クラスメイトや周りの人ともお話を簡単にすることが出来るようになった。

皆には返しきれない恩がある。

まだ友奈ちゃん達のお役目が続くのであれば、もっと僕は皆の役に立てないかな?

そんなことを考えながらかき氷を口に運んでいく。

僕に皆の役に立てる力があればなあ・・・。

 

かき氷を食べ終えて少しした後、波打ち際まで行き友奈ちゃん達を見守ることにした。

波が足の下にある砂を運ぶ感覚がくすぐったくて気持ちいい。

そう思いながら友奈ちゃん達を見ると、僕に気づいた友奈ちゃんと東郷さん犬吠埼さんが手を振ってくる。

気づいた僕も3人に手を振り返す。

部長はテンションが高かったし、三好さんも部長の誘いに乗るぐらい楽しんでいるみたいで良かった。

最後のお役目が終わってから皆元気がなかったので、この合宿を通して元気になって欲しいなあ。

「ねえねえそこの君、よかったらご飯一緒に食べない?俺たちが奢るからさ」

友奈ちゃん達を眺めていると、後ろから知らない男性3人に話しかけられた。

高校生ぐらいの人達だ。

「あの・・・。僕に何か用ですか?」

「だから俺たちと一緒にご飯食べようよ。君みたいな可愛い子と話をしたくてね」

これって東郷さんに気を付けてねって言われた、ナンパなのかな?

でもナンパは異性に対してするものって聞いたけど、なんで僕?

それに初対面の人と話すのは緊張して駄目なんだけど・・・。

色々考えていると1人が近づいてきて、僕の手首を掴んでくる。

ひいい!知らない人に手を掴まれた!

「あ、あの!知らない人にご飯を買ってもらうのは申し訳ないです。な、なのでだ、大丈夫です」

「いいからいいから。ほら行こうよ」

断ってみたけど相手が引く気はなく、そのままぐいぐい引っ張られてしまう。

わわわわ!

「や、やめてください!」

なんで断ってるのに強引に連れて行こうとするの!

誰か・・・。

「あのー。私の彼氏に何か御用でしょうか?」

そう声をかけてきたのは友奈ちゃんだった。

急いで泳いできたのか息は上がっている。

「はあ!か、彼氏ってことは男!?」

「はい。彼は男の子ですよ」

息を切らしながら僕のことを淡々と説明していく。

友奈ちゃんの話を聞いた3人は慌てふためく。

「貴様ら何をしている」

そこに大赦の服装をした人が、僕の手を掴んでいる人の肩を掴む。

というかこの声は春信さん?

「な、なんだよ、大赦の奴まで」

「こちらにいらっしゃるのは大赦の中でも重要なポジションにいる御方だ。貴様ら下衆共が気安く話しかけてよい御方ではない。失せろ!」

春信さんらしき人が一喝すると、3人は走ってどこかに行ったのであった。

 

「きょう君大丈夫だった?怪我はない?」

「うん、友奈ちゃんありがとう。でもよく気づいたね」

「さっきの人達がきょう君に近づいていく所が見えたから急いで来たんだ」

「そうなんだ。あれ、友奈ちゃん顔赤いけど大丈夫?」

「急いで泳いできたからまだ顔が赤いんだよ!大丈夫大丈夫!」

『さっき無意識にきょう君のこと彼氏って言っちゃった!でもきょう君は気づいてないみたいだしこのまま話を変えよう!』

「後ろにいる人はきょう君の知り合いかな?」

そうだ、僕を助けてくれたのは友奈ちゃんだけじゃない。

夏の浜辺では暑そうな、いつもの服装をしている人の方に向き直り声をかけた。

「すみません、お礼もすぐに言わずに友達と話してしまって。助けてくださってありがとうございます。僕の間違いでなければもしかして、春信さんですか?」

「まあ仮面をしていても声でばれてしまうか。そうだよ、私だ」

「やっぱり。それでここで何をされてるんですか?そのカメラもどうされたんです?」

いつもの服装に加えて何故か左手には高そうなカメラを持っていた。

けれども質問されたくなかったのか、顔を少し背けられてしまう。

しまった!!

聞かれたくないことだったんだ。

「やっぱり何でもないです!助けてくれてありがとうございました。もう僕たちの方は大丈夫ですよ」

「そ、そうかい?分かった。近くにはいるから何かあったら呼んでくれ」

「はい、分かりました」

そう言い残すと春信さんは走って岩陰の方へと向かっていった。

「もしかしてあの人って夏凜ちゃんのお兄さん?」

「そうだよ。あれ、友奈ちゃんは三好さんにお兄さんがいることって知ってたっけ?」

「うん。きょう君のお父さんとお母さんとこの前会ったときに夏凜ちゃんのお兄さんにお世話になってるって聞いたから、もしかしたらと思って。でもどうせなら夏凜ちゃんに会っていけばいいのになあ」

「春信さん、三好さんと会いたくないみたいなんだよね」

家庭の事情がありそう。

 

~三好春信視点~

まさか夏凜の写真を撮りに来ていたら、彼がチンピラ共に絡まれるとは思わなかった。

まあ少し見ただけでは男だと気づかないのも無理ないか。

仕草もまるで女そのもののような振る舞いをしているしな。

彼の周りにも気を配りつつ、夏凜の写真を沢山取らなければ。

最近は夏凜の写真を撮る機会も無かったしな。

夏凜も転校してから楽しそうで何よりだ。

 

 

~高嶋叶吾視点~

「そこの者よ。私の手と足となり城を作るのじゃ」

「ははぁー」

こんな感じで東郷さんと遊びつつ砂の高松城を作ったり、スイカ割りなどをして遊んでいるとすっかり夜になった。

そして旅館に戻るとご飯の準備が出来てるとのことで、すぐに食事となった。

「「おーー!」」

カニやお刺身の盛り合わせなど豪華な内容で、皆で驚いてしまった。

「ここは大赦絡みの旅館だし、お役目を果たしたご褒美ってことじゃない?」

旅館の方や料理の質から、皆が達成したお役目はとても凄いことだったんだなと改めて感じた。

でも友奈ちゃんは今味覚を感じない。

だから美味しそうな料理を楽しむのは難しいんじゃ・・・。

そう思い友奈ちゃんの方を見る。

「このお刺身のコリコリとした歯ごたえ、たまりませんね!」

いくつか料理を食べ、触感を楽しんでいた。

「もう友奈ちゃん、いただきますが先でしょ」

「あぁそうだった、ごめんごめん」

「あらゆる手段で味わおうとするとは」

「色々敵わないわね、友奈には」

本当に友奈ちゃんには敵わないな。

楽しくご飯を食べ終わると、次はお風呂だ。

ここからは別行動なので、隣の自分の部屋に戻る。

お風呂の準備をしているとウトウトしてくる。

疲れて眠い・・・。

せめてお風呂に入るまでは・・・頑張らないと・・・。

 

~結城友奈視点~

今日はきょう君も疲れてるし、もしかしたらお部屋に戻ってそのまま寝ちゃってるんじゃないかなと思い、お風呂に行く前にきょう君のお部屋に行ってみた。

私の考えは当たってて、お風呂の準備の途中で畳に座ったまま眠ってしまっているきょう君がいた。

「きょう君、お風呂に入ったほうが身体もすっきりして眠れるよ?」

身体をゆさゆさしながら声をかけても反応は無し。

きょう君1度寝ちゃうとそのまま朝まで寝ちゃうことが多いんだよなぁ。

どうするか考えながらついきょう君のほっぺたをムニムニしてしまう。

ああ、この肌触り、柔らかさ、触覚から伝わってくる全ての情報が最上級だよ‼︎

「う〜ん。誰〜?僕の顔触ってるの?」

「うわぁ⁈きょう君起きてたの⁉︎」

目は瞑ったままだけど声を出すきょう君に驚いてしまう。

「あれ〜?友奈ちゃんどうしたの、僕の部屋で?」

「えーっとね、きょ、きょう君がもしかしたらお風呂に入る前に寝ちゃってるんじゃないかなって思って来たんだ」

「ん〜さすが友奈ちゃん。もう僕のことなんでも知ってるね」

「きょう君のことなら私はなんでも知ってるからね。それでお風呂はどうする?お部屋にあるで入る?それとも大浴場に行く?」

「明日の朝にシャワー浴びるからこのまま寝る〜」

「でもシャワー浴びないと肌荒れしちゃうよ。そうだ!それなら私とお風呂入ろ?それならきょう君もお風呂入るでしょ?」

「え?うーん・・・。友奈ちゃんがいいなら・・・いいよぉ」

「決まり!それじゃあ私が準備とかするからきょう君は寝てて大丈夫だよ。お風呂場に着いたら起こすから」

「分かったぁ〜」

返事をするときょう君は寝息を立て始める。

まだ眠りが浅い間にパパッときょう君の服一式、バスタオルを準備する。

お風呂なんて数え切れないほど一緒に入ってるから、どの服を準備すれば良いのか分かるんだよね。

準備を終わらせて外で待っている皆に声をかけ、手伝ってもらうことにする。

「ありゃー、高嶋寝ちゃったのね」

「だらしないわね、これでも男子なの?」

「高嶋君は男の娘よ夏凜ちゃん!!」

「最近東郷の言ってる男の娘ってのは何なの?」

「夏凜、そこに突っ込むと・・・」

「よくぞ聞いてくれたわ夏凜ちゃん!!男の娘というのはね、~でね」

「こうなるから、今度からは気を付けてね・・・」

「悪かったわ・・・。まさかこうなるとは・・・」

三人が話している横を通って樹ちゃんが荷物を持ってくれる。

「ありがとう、樹ちゃん」

樹ちゃんにお礼を言って私はきょう君をおんぶする。

皆も準備が出来ているから、一緒にお風呂場に向かう。

「それで高嶋はどうするの友奈?その状態で一人でお風呂に入れないんじゃないの?」

「そこはちゃんと考えてあります風先輩!確か旅館の説明の時に家族風呂があるって女将さんが話してたので、きょう君と一緒に入ろうかなって思ってます」

私の話を聞いて夏凜ちゃん以外の三人が納得したのか頷く。

「え?友奈が高嶋の着替えとかを手伝ってるのは知ってたけどお風呂も一緒に入ってるの?!それは駄目でしょ!!」

「え?何で駄目なの夏凜ちゃん?」

「えっと、それはその・・・」

「きょう君とはいつも一緒に入ってるから大丈夫だよ?」

「いやいやそういう問題じゃないでしょ!!」

「夏凜あきらめなさい。友奈と高嶋にとってはいつものことなのよ」

「えぇ・・・」

「そうよ夏凜ちゃん。二人の間に入ることは無粋よ」

「東郷も何を言ってんの・・・」

『夏凜さんも慣れますよ』

「樹まで・・・。勇者部は違う意味で駄目だわ・・・」

夏凜ちゃんがショックを受けている間に大浴場に着いた。

家族風呂の場所は大浴場の隣にある。

「それじゃあ私ときょう君はこっちに行くね。東郷さんごめんね、お風呂一緒に入れなくて」

「気にしないで友奈ちゃん。高嶋君の寝顔が見れただけでお釣りが返ってくるぐらいだわ」

そう言うと東郷さんはきょう君を見ながら鼻息を荒くしている。

ちょっと怖いよ東郷さん・・・。

「東郷は私に任せて大丈夫よ友奈。ほら鼻息を荒くしていないで行くわよ」

「ああ待って!!寝顔の写真はまだ撮ったことが無いんです!!せめて脳内に保存できるまで眺めさせてください!!」

「はいはい行くわよー」

東郷さんの身の回りのことは風先輩に任せて大丈夫そう。

まず脱衣所できょう君のことを起こさないとな。

 

 




活動報告に簡単な近況を載せましたので、気になる方は見て頂けると嬉しいです。
感想や誤字報告などいつもありがとうございます!
次回の投稿も未定ですが、のんびりとお待ちいただけると助かります。
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