正規ルートが全然進んでいないのに、IFストーリーが書きたくなったので並行して書きます。
序盤は大赦に勤めているとある男視点からです。
第1話
ある時ふと、変な考えが頭の中で思い浮かんだ。
少女が神樹様のお気に召し勇者になれるのであれば、まるで少女のような容姿・振舞いであれば男子でも勇者になれるのではないのか、と。
18歳になってすぐに購入したエッチなR18のゲームの主人公が、先ほど述べた特徴、所謂『男の娘』であり自分がとても気に入ってしまった影響のせいもあるだろう。
一度火が付くと止めるのも難しく、変なテンションでノリノリな私は1日で計画書にして当時の上司に提出してしまった。
内容に目を通した上司は顔を引きつらせていたが、この時の大赦はいつ天の神からの襲来が来るのか、勇者の数は足りるのかなどのことで戦々恐々としていたこともあり、私が提案したとてつもない計画書が了承されてしまった。
計画の大まかな内容としては、『神樹様に男の娘の素晴らしさを伝え、勇者の素質のある男子も勇者として選ばれるようにする』である。
計画の了承がされた翌日より、私は神樹様の元を訪れ、アニメやゲームなどを用いて神樹様に男の娘の素晴らしさを伝えた。
まあ私自身は神樹様の思いを直接感じることは出来ないので、いつ頃目標達成となるのか分からないのが難点であった。
神樹様の元を毎日尋ねて半年ほどが経った頃、神樹様からの神託が上里家の巫女様を通じて計画の成功を知る。
神樹様の神託は言葉ではなく、景色や映像などをを巫女様や神官様に見せることで思いを伝えるそうだ。
今回では、とても可愛らしい男子が変身する映像が神託で見られたとのことだった。
まさか本当に成功してしまうとは考えてもいなかった。
勇者の数が増えれば戦力も増し、戦闘による死亡率も低下すると考えれば良いことだ。
だが戦地に赴く少年少女の数が増えるのも嬉しいことではない。
男子ではなく成人を勇者にしてもらえるよう計画すれば良かったのになあ・・・。
自分のねじが外れた時の馬鹿さ加減に怒りと呆れを感じつつ、敵の襲来が当分先であることを祈るしかない。
私が間抜けなことをしてから2年ほどが経ち、私は20歳になった。
あの間抜けな計画の功績により私の大赦での地位は一気に上がった。
今では一般職員へと自ら降格した高嶋本家の穴埋めのお役目を担えるほどだ。
高嶋本家が担っていたお役目は、旧世紀の武器の管理、勇者システムの改良だ。
旧世紀の武器の管理といっても、撮影用に貸し出しをしたり、盗みに来る輩がいるための警備の統括などである。
正直言ってさほど難しいお役目ではない。
勇者システムの改良に関しては、高嶋家以外の4家の名家も協力して行っているので私は関与していない。
お役目もこなしつつ、趣味にも手を抜かず、悠々自適に日常を送っていた。
けれどここから少しずつ私の日常は崩れ始めていく。
「お呼びでしょうか、お館様」
「だからね、お館様と呼ばないでよ。もう私はただの一般職員なんだから」
「私がそうお呼びしたいだけです。おきになさらず」
「本当に君は頑固なところがあるな。まあいいが」
「それで本日はどうされたのですか?最近は私をご自宅に呼ばれることもなかったではないですか」
私がお館様と呼んでいるのは、高嶋本家現当主のことである。
と言っても今いる自宅は一般的な広さの一軒家。
使用人はおらず、家族3人で静かに暮らしている。
過去にご子息のことで親族と問題になり、お怒りになったお館様は、ご家族と共に出奔しようとした。
しかし乃木・上里家の仲介により、今まで本家とされていた者、分家、その他親族はお館様とその家族への接近を禁止することを条件で、一般職員として現在も大赦で勤めている。
大赦の上層部は、よっぽど高嶋家の血筋を絶やしたくないらしく、お館様と揉めていた残りの本家の人間を分家の扱いに降格させるほど怒っていたそうだ。
そのことで高嶋本家は3人しかいないのだ。
お館様は、私が上位の地位の役職についてから気を遣ってかあまり声をかけてくれる頻度は少なくなっていた。
それなのに自宅にまで招いて話したいこととは何だろうか?
「実は、叶吾が学校でいじめにあっているんだ」
「いじめ、ですか。確かに叶吾君の容姿は目立ちますね。それに神樹館での親の地位などでスクールカーストは簡単に決まりますしね。お館様は現在一般職員。いじめの対象となる条件は揃っていますね」
「そうなんだ。それで叶吾は今不登校になってしまっているんだ」
「それは・・・。学校側は何か対策はして下さらないんですか?」
「学校側に相談したが、真面目に対応してくれていないんだ」
「所詮大赦に勤めている子供が通うための学校ですから、一般職員の子供に対しては対応が雑なんですね。腐ってやがる」
「良い先生方もいるさ。それで君に頼みたいことなんだが、叶吾の家庭教師をしてみないか?」
「私が、ですか?ですが家庭教師ならもっと教えるのが上手な方もいらっしゃると思いますが。それにいっそ転校も視野に入れるのは出来ないのですか?」
「転校しても叶吾の容姿だと、またいじめの対象になってしまうと思うんだ。だから籍だけ神樹館のままにして家で勉強してもらえれば良いと私と妻は考えているんだ。学校なんて辛いなら無理してまで通う必要なんて無いと思うからね。それに今の叶吾は元々の人見知りといじめの影響もあって初対面の人と同じ部屋にいることすら難しいんだ。それで初対面ではない君に頼みたいんだ」
「そうですか。お館様が色々考えてのことなら私はお引き受けします」
「本当か!ありがとう!」
そう言うとお館様は席を立ち、こちらに向かってお辞儀をしてくる。
「お館様、頭を上げてください!お館様の頼みであれば私は引き受けますから」
正直に私に教師役なんて務まるのか心配だが、お館様の頼みである。
頑張らねば!!
「久しぶりだね、叶吾君」
家庭教師として初めてお館様の自宅を訪ねた際、最初のうちは親がいたほうが安心できると思い奥様も同席して頂いたが、奥様にの右腕に抱きついたままこちらを見つめてくる状態だった。
「私を覚えているかな?確か1年ぶりくらいだと思うんだが」
私の声を聴いて言葉での返答はないが、頷きで返事をしてくれた。
ただやはり、元来の人見知りといじめの影響で両親以外の人間とコミュニケーションをとるのは怖いみたいだ。
返事が無いときがほとんどで、あったとしても『はい』や『いいえ』頷きや首を横に振るモーションしかなかった。
初日はコミュニケーションをうまくとることが出来ず、簡単な顔合わせだけで終わってしまった。
う~ん、どうすれば子供と仲良くなれるかねえ・・・。
読んでくださりありがとうございます。
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