高嶋叶吾は勇者である   作:宇津田

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今回は友奈ちゃんが全く出ません。また、シリアス気味です。注意してお読みください。
また今回スマホからの投稿ですので変な箇所があるかもしれないです。

ちなみにこの回は中野サンプラザから投稿です。
ということは今日は・・・
正解は本文のあと!



第4話

 

「さっきはごめんね~、見苦しい所を見せてしまったね~」

「い、いえ、気にしないでください」

「高嶋だから、たかっきーでいいかな?」

「へ?もしかしてそれ、あだ名ですか?」

「うん、高嶋君のあだ名はたかっしー!」

僕は友奈ちゃん以外の人には基本名字で呼ばれているので、あだ名をつけられ、その名で呼んでもらえるなんて経験したことが無い。

あだ名を付けられるなんて仲が良い人同士でしかしないものだと思っていたのでこんな所で経験するとは思わなかった。

まだ友達でもないただの他人だけど、それでもあだ名を付けて貰えて僕はとてもうれしかった。

「はい!そのあだ名でぜひ呼んでください!」

「たかっしー、良い食いつきだね~。いいよいいよ~」

「とりあえず、色々お話ししようか。そこにある椅子に座ってね」

ベッドの脇に折り畳み椅子が立てかけてあり、それに僕は座る。

「僕は名字で呼べばいいですか?」

「園子とか、そのっちとか、好きに呼んでくれていいよ~。出来たら名前で呼んでほしいかな~」

「いきなり下の名前で呼ぶのはちょっと・・・」

友達でもないのに下の名前で呼ぶのは馴れ馴れしい感じがするし、名字で呼ぼうかな。

「大丈夫だよ~。私たちはもう友達だよ!出会いは最悪だけど、これからで挽回だよ~!」

まるで僕の心を読んでいるような発言にぽかんとしてしまう。

「仮面を付けていて表情は分からないけど、たかっしーの動きで大体はわかるよ~。さっきは腕を組んで頭を傾けていたし、私と春信さんが話してたときなんて足が震えてたでしょ~?」

「あ、足が震えていたのは緊張のせいですよ・・・」

僕の考えていることは読まれやすいのかな・・・

衝撃の事実にショックを受ける。

そんな僕に乃木さんが

「たかっしーはショックかもしれないけど、表情や顔に出やすいってことはたかっしーが素直なことなんじゃないかな?」

「自分の心に嘘がつけないから素直なんだよ。それって素敵なことだと思うよ~」

「他人を思いやれる優しい人なんだよ〜、たかっしーは」

出会ってまだそんなに時間が経っていないのに、友奈ちゃんとほとんど同じ結論に達した、目の前の女の子に僕は驚いた。

「だからね〜、まだ会ってから時間が経ってないけど、素直で優しい人だと感じたから、私はあなたと友達になりたいと思ったんよ〜」

「ぼ、僕なんかと友達になりたいんですか?」

そう言ったあと、僕は思い出す。

今はフードをしているから乃木さんには見えないが、僕の髪は普通の色をしていない。

髪の毛を見れば、気味が悪いと感じ、嫌がらせや暴言を吐かれるかもしれない。

僕は友達を作りたいと思っているのに、友達を作ることが怖い。

仲良くなった人に裏切られるのが怖いんだろう。

そんな僕の不安を読み取った乃木さんが

「私と友達になるのはダメかな〜?・・・やっぱり、こんな包帯でぐるぐるの怪しい子とは友達になりたくないよね・・・」

実は今付けている仮面は、足元はよく見えるように多くの穴が空いているのだが、正面には少しの穴しかなく、乃木さんの姿がよく見えていないのだ。

彼女のことをきちんと見たいと思い、仮面とフードを外した。

確かに目の前の女の子は手や顔の左目と口以外は包帯が巻かれていた。

見たときは驚いてしまった。

彼女も僕の髪の毛を見て、驚いているようだった。

けれど、僕は髪の毛のせいで見た目は難ありな人なので、何かしらの事情があり、それで今の状態を強いられているんだろうと納得することが出来た。

そして彼女の目は、寂しくて何か縋れるものを探しているような目をしていた。

まるで、いじめられていたときの僕の目に似ていると感じた。

昔、友奈ちゃんが僕を救い出してくれたように、目の前の女の子の助けになりたいと感じた。

友奈ちゃんがいないと、友達すら作れない。

友奈ちゃんがいないと何もできない僕でも、目の前の女の子の助けになりたいと感じたから、勇気を振り絞り、自分の心の殻を破る一歩を僕は歩み出す。

「僕、髪の毛の色が他の人と違ってこんな変な色をしているんです。それが原因で、友達も2人しかいないです。そ、そんな僕とでも友達になってくれませんか!」

まるで告白してるみたいだなあ・・・

「うん!私からも宜しくお願いします!」

乃木さんが笑顔でそう言った。

友奈ちゃんやったよ!

僕初めて一人で友達作れたよ!

「それじゃあ、乃木さんのこと、園子ちゃんって呼ばせてもらうね」

「うん、いいよ〜!久しぶりに友達に名前で呼んでもらえて、嬉しいな〜!」

「園子ちゃんも友達少ないの?僕なんかより人とぐいぐい話せそうなのに」

「私、よく周りとズレてるって言われてて今までで友達は2人しかいなかったんだよ〜。今はたかっしーも入れた3人だ〜!」

「他の2人の友達と今は会っていないの?」

そう言ったとき、園子ちゃんは目を細めて悲しげな表情をしていた。

「2人とも今は遠くの場所にいてね、今は会えないんだ〜」

「ご、ごめんなさい。変なこと聞いちゃって・・・」

「ううん、気にしなくていいよ〜。たかっしーが謝ることじゃないから」

園子ちゃんはそう言って、少し重くなってしまった空気を変えるために違う話を振ってきた。

「たかっしーのご両親は大赦で働いているんだよね?」

「そうだよ。どんな仕事をしてるかよく分からないけど」

僕はお父さんとお母さんが大赦でどんな仕事をしているのか知らない。

大赦の仕事は、神樹様に関係している仕事がほとんどなので教えることは出来ないと説明されていた。

この世界を維持してくださってる神樹様に関わることなので、部外者に情報が漏れた際に、神樹様に危害を加えようとする人が出るのを避けるためらしい。

そんなことを思い出しつつ返事をしたら園子ちゃんから驚くことを聞かされる。

「そうなんだ〜。じゃあ、たかっしーは本物の高嶋家の一族なんだね〜。私、他の五家に連なる名家の人とは会ったことないからちょっと興奮してるんよ〜!」

うん?

僕が歴史上有名な名家の子孫?

そんなこと親から一度も聞いたことがないんだけど・・・

僕が驚きでポカンと口を開けていると、園子ちゃんは頭に、?マークが出るような表情をしていた。

「もしかして、たかっしーは知らないの?」

「う、うん。お父さんやお母さんから聞いたことないよ」

「そっか〜。じゃあ歴史の勉強の復習も兼ねて、昔の話をしよっか〜」

園子ちゃんはそう言って、三好さんに旧世紀の終わり頃から始まっている年表を持ってこさせた。

「旧世紀末の西暦2015年の夏に、死のウィルスが世界中に蔓延したことは分かるよね?」

「うん。世界中の人々が死んじゃっていくなかで、四国の周りに神樹様が防御結界を張ってくれたお陰で、四国には死のウィルスが入ってくることはなかった」

「うん、そうだよ。そんな混乱した四国をまとめ上げて、今ある大赦の大まかな部分を作った方々が、乃木家、上里家、高嶋家、伊予島家、土居家の五家なんだ〜」

「うん。知ってるよ。だけどなんで僕はがその五家の1つの高嶋家の子孫なんだと園子ちゃんには分かるの?一般の人でも乃木や高嶋の名字の人なんて沢山いるよ」

そう、僕のクラスでも名字が高嶋が2人、乃木が3人、土居が1人といった感じで何人も五家の名字の人が多いのだ。

だというのに何故僕が五家の高嶋家の子孫だと言うんだろう?

「実は大赦にはねある規則があって、五家の子孫以外はその名字を名乗ることは許されないっていうのがあるんだよ〜」

「これは大赦設立時からある規則でね、五家を神聖視する人が多くて作られたものなんだ」

「そんな規則があるんだ・・・」

「うん。だからたかっしーが、五家の高嶋家の子孫だと分かったんだ〜」

「僕、親から何も聞いていないよ・・・」

「多分だけどね〜、たかっしーの両親はたかっしーが周りの人に利用されるのを防いでいたんだと思うよ?たかっしー素直だからすぐ騙されちゃいそうだし」

「た、確かに・・・」

「そもそも、普通の人は信じてくれないだろうし、痛い子扱いされちゃうね〜」

こんな所にも両親の気遣いがあるとは知らず、申し訳なく感じてしまう。

「そんな訳で、私はたかっしーが五家の高嶋家の子孫だと分かったんよ〜」

「説明ありがとう、園子ちゃん」

「いいえ〜。そういえば、たかっしーは学校でどんなことしてるの?」

「僕は、今中学校に入学したばかりで、あまり話すことなんてないよ?」

「たかっしーのお友達はどんな子がいるの?何人いるの?」

園子ちゃんが目を輝かせながら聞いてくる。

まるで目がシイタケみたいだよ・・・

「ぼ、僕は、園子ちゃんもいれて3人いるよ。普通の人がより全然少ないと思うけど・・・」

「数なんて関係ないんだよ、たかっしー。その友達がどれだけ大切な人なのかが大事だと思うよ〜」

園子ちゃんの言葉と目がまるで経験を物語っているように真剣なものになっていた。

彼女の2人の友達はとても大切な人達だったんだろうな、と僕は思った。

3人目の友達の大切な人になれたらいいなぁ・・・

「うん。そうだね。ありがとう園子ちゃん。大切なことを教えてくれて」

「気にしなくていいんよ〜。で、どんな子達なの?」

「えっと、一人目は、結城友奈ちゃんっていう子でね、髪は真っ赤で、周りを誰でも笑顔にしてしまうぐらい元気のある子なんだ。身長は僕と同じくらいなんだ」

「うんうん。それでそれで〜?」

「でね、僕は友奈ちゃんに出会って、沢山、救われたんだ。だから、僕にとってとても大切な人なんだ・・・」

「たかっしー、結城さんに惚れてるね〜」

「ええっ⁈そ、そうなのかな・・・?」

園子ちゃんがニヤニヤしながら話してくる。

僕、恋愛のことなんて分からないよ・・・

まだ友達が3人目出来たばかりなのに・・・

僕の思考がショートしかけていると園子ちゃんが話を変える。

「結城さんのことはまた何か進展があったら教えてね〜。それでもう1人はどんな子なの?」

「2人目は、東郷美森さんっていう子なんだ。まだ友達になったばかりで、ほとんど何も知らないんだ」

そのとき園子ちゃんの表情が消えた。

考えるのをやめたみたいに感情が空っぽになった目を僕に向けて。

園子ちゃんみたいなほわほわしていて柔らかい雰囲気を纏っていた彼女の表情がいきなり変わったので僕は驚いた。

「ど、どうしたの園子ちゃん⁉︎」

「ううん。なんでもないよ〜。それで外見とかは?」

「う、うん。東郷さんは、髪が真っ黒で、体全体が大人びていてね、まるで大和撫子みたいな子なんだ。事故の影響で、車椅子に乗っているよ」

「そうなんだ〜。2人とも魅力的な子たちだね。私も友達になりたいよ〜」

「2人とも優しくて、面白いから園子ちゃんもすぐに友達になれるよ。もしよかったらここに今度2人を連れてこようか?」

「それは出来ないことなんだよ。高嶋君」

そこで年表を持っていた三好さんが話に入ってきた。

「なんで駄目なんですか?僕は今ここに来ているのに・・・」

「君は先程園子様から説明があったように、五家の血を受け継いでいる人間なんだ。その2人では家格の不釣り合いで、ここには連れてこられない」

「そんな・・・」

「いいよ、たかっしー。いつもこんな感じで大体は断られちゃうんだ。だから次来るときに2人の写真を見せてもらいたいな」

「でも・・・」

「今までは対等で話せる人がいなくて寂しかったけど、今はたかっしーがいるから寂しくないよ。だからね、またここに来てくれるかな?」

園子ちゃんが少し悲しい目で見てくる。

友達をこんな所でいつも1人にさせるなんて僕には出来ない。

だから彼女と約束する。

「うん。絶対僕はまたここに来るよ。園子ちゃんに会いにくるから」

僕の出来る限りの笑顔で彼女を見た。

 

 

その後はお昼ご飯を挟みながら園子ちゃんとボードゲームやトランプなどをして遊んだりした。

園子ちゃんは両手が動かせないらしいので、お付きの巫女さんに代わりに駒を動かしてもらったりしていた。

遊ぶときは人数が多いほうがいいと園子ちゃんの提案で、三好さんと、お付きの巫女さんも一緒にゲームを楽しんだ。

そして、夕方になり僕は自宅に帰ることになった。

「たかっしー、また来てね」

「うん。また来るからね」

そう返事をして僕は園子ちゃんの部屋を後にした。

送迎の車の中で三好さんが話しかけてくる。

「今日は本当に助かった。お付きの神官、巫女を代表して礼を言わせてもらうよ」

「いえ、僕はただ新しく出来た友達と遊んだだけですから」

「君には週に1回、園子様の所に来てもらいたい。学校が休みの土日のどちらかで迎えを出すので良いかな?」

「はい。僕はそれで構いません。あと1つ聞いてもいいですか?」

「私で答えられることならば」

「どうして園子ちゃんはあんなに酷い怪我をしているんですか?事故での怪我ですか?」

人が事故ではどうにも違和感がある怪我をしているように感じたので質問をしてしまった。

「それには答えられないな。この質問は君自身が園子様に直接聞くほうがいいと思うよ」

「そうですか・・・」

「あと質問にはなるべく答えたいとは思うが、知りすぎると君が危険になる可能性もある。覚悟を決めて質問したほうがいいよ」

大赦の内情を知ることは死ぬ可能性がある、と三好さんは言った。

このあと特に何も話さずに自宅に着き、疲れていたので僕はすぐに寝た。

長い1日だったから、早く友奈ちゃんに会いたいなぁ・・・

 

 




正解は、満開祭り3があります!
作者は昼、夜の部どちらも参加します。
もしかしたら読んで下さってる方ともすれ違うかもしれないですね。

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