投稿期間が空いてしまいすみません。
今回は東郷さん回です。
この作品はメインヒロインが友奈ちゃんでは?という疑問は考えちゃダメですよ!主人公君には勇者部のみんなと仲良くなってほしいので。
真夏になる少し手前の時期に僕達の学校では期末テストがある。
今日は東郷さんの家で、友奈ちゃん、東郷さん、僕の3人でテスト勉強をしていた。
「なんでテスト前に課題を沢山出すんだろう」
友奈ちゃんが、机に突っ伏しながら言う。
「友奈ちゃん。勉強しないとまたテストの点数が前みたいに酷いことになるわよ」
「うっ・・・はい」
そう、前回の中間テストで友奈ちゃんはあまりよろしくない点数を取ってしまった。
今回のテスト勉強は東郷さんの発案で行われることとなったのだ。
「大丈夫よ友奈ちゃん。分からない所は私が教えるわ。一緒に頑張ろ?課題が終わったらぼた餅作るから」
「東郷さんのぼた餅⁉︎やったー!頑張ります!」
東郷さんが上手く友奈ちゃんのやる気を引き出した。
さすが東郷さんだ。
「じゃあ僕も、友奈ちゃんが課題が終わったら友奈ちゃんがしてほしいことするね」
「本当?何でも?何個でも?」
「う、うん。僕が出来ることならいいよ」
「頑張ります!」
そう宣言し友奈ちゃんは課題に向き合って解き始めた。
うん、友奈ちゃんのやる気が出たなら良かった。
僕も課題をやらなくちゃ。
東郷さんはもう課題を終わらせていたので、友奈ちゃんにつきっきりで勉強を教えていた。
なるべく自分で解くようにしてどうしても分からない時は僕も東郷さんに質問した。
僕達の中で一番勉強が出来るのが東郷さん。
パソコンや和食や和菓子など出来ることがとても多い。
そして何より他の人と普通にコミュニケーションを取れている。
まさに完璧人間だ。
何故そんな人が僕と友達なのだろうか?
少しぼーっとしているといつの間にか勉強以外の考え事をしてしまっていた。
「高嶋君、手が止まってるよ?」
「あ、そ、そうだね。あはは、やらないと」
変なことを考えないようにと僕も集中して課題を解いた。
僕と友奈ちゃんの課題が終わる頃には夕食の時間に近くなっていた。
「終わったー!」
「お疲れ様、友奈ちゃん。夕食が食べられないと困るから少しだけぼた餅用意するわね」
「やったー!東郷さん大好き!」
東郷さんのぼた餅は美味しいからつい沢山食べそうになってしまう。
それを見越してのことだろう。
「じゃあ、用意してくるから2人とも少しだけ待っててね」
「はーい」
「うん」
そう言って東郷さんは台所へ向かった。
「で、友奈ちゃんは僕に何をして欲しいの?」
「あ、覚えててくれたんだ。忘れられてるかなって思ってたよ」
「僕は友達との約束は破らないよ」
もちろん、友奈ちゃんのお願いなら何でもするよ。
と、心の中で答えて友奈ちゃんの話を聞く。
「でね、きょう君。2つお願いがあるんだ」
「どんなこと?」
「えっとね、1つ目はきょう君に膝枕してもらいたいな」
友奈ちゃんが少し顔を赤くして見つめてくる。
多分恥ずかしいのだろう。
恥ずかしがっている友奈ちゃんは珍しいと思った。
てか友奈ちゃん可愛い!
というかこれは僕にとってはご褒美だよ!
だって友奈ちゃんの顔を間近で見られるんだよ!
「えっと、本当にそれでいいの?なんていうか、友奈ちゃんのご褒美になっていない気がするけど・・・」
興奮している自分を落ち着かせるために確認をしてみる。
「以前にね、私がきょう君に膝枕したときあるよね。その時にきょう君が気持ちよさそうな顔して寝てるから、膝枕って気持ちいいのかなーって思ったの」
「そ、そうなんだ。友奈ちゃんがいいなら僕は大丈夫だよ」
友奈ちゃんの答えに僕は恥ずかしくなり、友奈ちゃんから顔を逸らす。
「2人で何を話してたの?」
ちょうど東郷さんがぼた餅を持って戻ってきた。
「東郷さんのぼた餅ー!」
友奈ちゃんがぼた餅を見た瞬間飛びついていった。
「ダメよ友奈ちゃん。まず手を拭かないと」
そう言って東郷さんは友奈ちゃんにお手拭きを渡す。
友奈ちゃんは素早く丁寧に手を拭き、ぼた餅を食べ始めていた。
「んー!やっぱり東郷さんのぼた餅は美味しいよ!和菓子は東郷さんのじゃないと美味しいと感じないよ〜」
「大丈夫よ友奈ちゃん。責任は取るから」
そう言って東郷さんは友奈ちゃんへ最上級の笑顔を向けていた。
出会った時では考えられない。
さすが友奈ちゃんだ。
東郷さんとそこまで親密な仲になるとは。
2人を微笑ましく見ていると東郷さんが僕にもお手拭きとぼた餅を渡してくる。
「ほら、高嶋君も見てないで食べて」
「うん。ありがとう」
僕も東郷さんお手製のぼた餅を食べる。
うん、美味しい!
どうやったらこんなに美味しくなるのだろうか?
今度作り方を聞いてみようかなて・・・
と考えていたら食べ終えた友奈ちゃんがさっき話していた続きを話し始めた。
「あ、そうだ!きょう君への2つ目のお願いなんだけどね、東郷さんにも手伝って欲しいんだ」
「私?」
「うん。ダメかな?」
「私が手伝えることなら協力するわ、友奈ちゃん」
「やったー!ありがとう東郷さん!」
「友奈ちゃんのお願いならいくらでも手伝うわ」
それは僕も同意だね。
でも東郷さんも一緒に僕は何をするのだろうか。
少し心配になってきた・・・
「友奈ちゃん、僕は何をすればいいのかな?」
「良い質問だよきょう君!それはね、きょう君に女装して欲しいんだ!」
「・・・」
うん?
「友奈ちゃん、もう一回言って」
「きょう君に女装して欲しいんだ。それが2つ目のお願いだよ」
「じょ、女装⁈」
なんと斜め上のお願いが来てしまったよ・・・
「確かに高嶋君は素材が良いから女装いけると思うわ」
そして東郷さんも賛成してしまった・・・
まあ、友奈ちゃんのお願いなので僕には断る選択肢などない。
「友奈ちゃんがそれでいいのなら僕は反対しないけど、女装が似合わなくても変なこと言ったりしないでね」
当然、友奈ちゃんはそんなこと言わないだろうけど、何事も初めてやることに不安になることはしょうがないだろう。
「きょう君に変なこととか傷つくことなんて言わないよ。安心して」
「うん。分かった」
友奈ちゃんが優しい笑顔で見つめてくる。
恥ずかしくて目を逸らしてしまうが、ちゃんと返事はする。
そしてそこからは2人が服の話では盛り上がっていたので、僕は半分話が分からなかったので勉強して待っていた。
その後は夕食の時間帯だったので僕と友奈ちゃんは帰ることとなり、友奈ちゃんを家まで見送って僕も家に向かう。
僕の家は友奈ちゃんの家の真後ろなので、ぐるっと回らなければならないので少し面倒くさいと感じてしまう。
僕の家も友奈ちゃんや東郷さんの隣にあったらいいのにな〜、と考えていると端末が震えた。
確認してみると東郷さんからで、東郷さんの家に僕が忘れてしまった教科書があるとのことだった。
すぐに向かうと連絡し東郷さんの家に引き返した。
「ごめんね、東郷さん。手間をかけてしまって」
「気にしないで。これぐらい手間ではないから」
東郷さんの家に向かうとすぐに東郷さん自身が出迎えてくれた。
車椅子だから移動に手間が掛かるのにとても申し訳ない。
「高嶋君、今から時間ある?」
「僕は大丈夫だよ。どうしたの?」
「少し話をしない?」
東郷さんが僕に?
なんだろう?
不思議に思いながら返事をする。
「うん、いいよ」
「じゃあ、私の部屋に来てもらっていいかしら」
「うん。分かった」
東郷さんの後を追い、部屋に入る。
そして先ほど座っていた場所に座る。
東郷さんは僕の前に来て、じっと僕の目を見てきた。
探るような、そして何かを警戒している冷たい視線を感じて僕は昔を思い出してしまった。
好奇心や警戒心、恐怖などを感じさせる視線を向けられて過ごしていたあの頃を・・・
まさか友達と思っていた人に向けられるとは思わなかったので鮮明に思い出してしまい、身体が震えてしまう。
「あ、あの・・・僕が、な、何かを、してて、してしまったのなら、謝ります。だから、許してください。おお、お願いします・・・」
口がうまく言葉を発してくれない。
最後の方は声が小さくなってしまい、聞こえていないかもしれない。
怖くてボロボロと涙が出てしまう。
東郷さんの視線を直に見ることが出来ず、顔を見て伏せてしまう。
「た、高嶋君、どうしたの⁉︎」
「その、とと、東郷さんの目が、こわ、くて・・・」
「私の目?」
それだけで東郷さんは理解したらしく、話しかけてきた。
「ごめんなさい。高嶋君を怖がらせるつもりではなかったの」
「怒ったりとかは・・・」
「もちろんしていないわ。大丈夫よ、顔を上げて?」
恐る恐る顔を上げるといつもの優しい表情の東郷さんが僕の横にいた。
先ほど感じた視線も今は感じさせない目をしていた。
「ご、ごめんなさい。泣いたりしちゃって・・・」
「高嶋君は気にしなくていいわ。元は私のせいだから」
「それでね、高嶋君に聞きたいことがあるの。変なことを聞いちゃうから嫌だったら答えなくてもいいからね」
「うん。分かったよ」
顔を拭いながら返事を返す。
いったいどんな事を聞かれるのだろうか・・・
「高嶋君って、同性愛者なの?」
・・・・・・・・・・え?
「今なんて?」
「高嶋君は同性愛者なの?」
はひゃ〜〜〜〜〜。
僕が同性愛者?
てことは東郷さんからみて僕は男の人が好きな人だってこと?
いったい何がどうすればそんなことになるの⁉︎
てかまだクラスの男子ともまともに話せていないのに・・・
それから理由を聞いてみた。
東郷さんは、同学年の女子より、その、男の僕が言うのはあれだけど、胸が大きい。
それが原因で学校での男子の視線が胸に釘付けになるらしく、それがとても嫌だという。
僕も似たような経験を今もしているのでなんとなく分かる気がする。
東郷さんは嫌だけれど、仕方のないことだと割り切って学校生活を送っていた。
そこで1つの問題が起きた。
身近にいる男子、僕のことだけど、僕が友奈ちゃんや東郷さんと一緒にいるのは東郷さんの考えでは他の男子みたいに下心があるからだと思っていた。
僕は昔相手の表情から空気を読もうとすることが多かったので、今でも話すときはもちろん何もしていなくても相手の顔を見ていることが多い。
そのことが問題の原因となった。
僕が胸を直視することはない、話すときはきちんと相手の顔を見て話してくる。
東郷さんは他の男子とは違う僕のことをとても不気味に感じた。
そして同時に不思議に思ったらしい。
なぜ彼は他の人と違うのか、と。
そして考えついたのが、僕は同性愛者で異性には興味がないのではないか、と。
東郷さんは凄い発想をしているなー。
とりあえず誤解を解かないと。
「東郷さんあのね、まず僕は同性愛者じゃないよ」
「高嶋君いいのよ、人には人の数だけ愛があるのだから」
「てか僕まだ恋愛とかよく分からないからどうしようも出来ないよ」
そう、僕は恋愛というものがどういう感じのものなのか分かっていない。
「じゃあどうして高嶋君は私の胸を見ないで話せるの?」
男女で話す内容ではないと思うんだけどな・・・
「えっと、まず僕の昔の話をしなくちゃいけないんだけど、長いよ?」
「大丈夫よ。お願い」
それから僕の過去にあった出来事を話した。
イジメを受けていたこと、その時に身についた癖のことを。
「そんなことがあったのね。ごめんなさい、私のせいで嫌なことを思い出してしまったでしょ?」
「仕方ないよ。東郷さんに悪気があったわけじゃないし。気にしなくていいよ」
「だからね、僕は同性愛者ではないよ。分かってもらえたかな?」
「ええ、納得できたわ。私自分の考えを決めつけてしまう所とかあって、本当にごめんなさい」
「もう解決したことだし気にしなくていいよ」
気にしなくていいと言っているのに東郷さんは暗いままだ。
話題を変えるために今度は僕が質問してみることにした。
「そうだ、東郷さんに聞きたいことがあるんだけどいいかな?」
「何かしら?もしかして護国関係のことかしら?」
「ちょっと違うかな・・・。東郷さんはなんで僕と仲良くしてくれるの?僕のことが気持ち悪かったのなら僕とはあまり関わらないようにすればよかったんじゃないの?」
こうして直接聞いてくるということは僕との関係を切りたくないからだと感じていたからだ。
「確かに高嶋君と距離を取れば手っ取り早く済んだとは思うわ。でもね、高嶋君の学校とかでの様子を見ているとね、優しくて思いやりのある人だと分かったのよ。話しかけたりするのが苦手でも周りの人のために何かしようとしていたりするのを見たことあるわ」
「でもあまり人のためになっていないけどね。する勇気も途中でなくなっちゃうし、失敗することがほとんどだし・・・」
「何かしようとすることが大切なのよ」
東郷さんが笑顔で言う。
「それにね、私が車椅子で過ごしているのに高嶋君は一度も理由を聞いてこなかったじゃない?そのことも高嶋君が気遣いのある人なんだなって感じさせてくれたのよ」
「それは東郷さんもだよ?僕の変な髪の色のこと何も聞いてこなかったじゃん?」
「私は高嶋君に会う前から友奈ちゃんに話を聞いていたから何も聞かなかったのよ」
気遣い屋さんな友奈ちゃんならあるだろう。
「ちなみに友奈ちゃんはなんて言ってたの?」
「優しくて、恥ずかしがり屋で、内気だけど相手を思いやれる、とてもいい子だって言ってたわ」
自分の事についてなので恥ずかしくて顔が赤くなっていくのが分かる。
「あとね、恥ずかしがってる所がとっても可愛いって言ってたよ」
「も、もう友奈ちゃんは何言ってるの?!」
そんなこと聞いてしまうともっと恥ずかしくなってしまい顔を東郷さんから逸らしてしまう。
「友奈ちゃんの言ってた通りね」
東郷さんが笑顔で頷く。
その後真面目な表情になった東郷さんが言った。
「私高嶋君にひどいことを聞いてしまって傷つけてしまったと思うけれど、これからも仲良くしてくれる?」
僕自身はあの質問であまり傷ついていない。
逆にこんな誤解で友達を失うほうがショックで泣いてしまうだろう。
「うん!こちらこそよろしくね、東郷さん!」
この日から東郷さんとも話すことが多くなり、僕の学校生活はもっと楽しくなっていった。
読んで頂きありがとうございます。
前回誤字報告してくださった方ありがとうございます!
そしてこの作品なんとお気に入り数50超えました!ありがとうございます!
皆様が読んでくれるお陰でこの作品は続いています。次回ものんびりお待ちいただけたら幸いです。