申し訳ありませんでした。
今回は少し短めとなっておりますが楽しんでいただけたら幸いです。
それではよろしくお願いします。
――第10話『ルビィの気持ち』
裕紀さんに真実を告げてから数日が経ったけどそのことはお姉ちゃんにも花丸ちゃんにも善子ちゃんにも言っていない。
言ったら二人には驚かれそうでなんかいやだし、お姉ちゃんに至っては怒られそうな気がしてもっといやだ。
裕紀さんには一応口止めをしておいたんだけどばれるのも時間の問題だよね……。
あーあせっかくこのままとんとん拍子で仲良くなれるかな、なんて思ってたけどこれじゃあ年に一回しか会えない織姫さんと彦星さんにでもなった気分だなぁ。だけどそれはそれで少しロマンティックかもしれないなぁ、なんて想像してもみたり。
でもそんなことより初めて仲良くなれるきっかけをつかめた男の人だからどうしようか考えるためにルビィは『
ここのみかんどら焼きは本当に絶品で甘いものにうるさいルビィの舌を
毎回違うケーキを頼みながら必ずみかんどら焼きを一個頼んで満喫しています。
今日頼んだのは上にイチゴが丸々一つ乗っているタルトともちろんみかんどら焼き。
タルトはこんがりサクサクに焼かれていてその上にイチゴを支えるために絞られた生クリームは甘さが控えめで上に乗っているイチゴの甘さを引き立たせるように味付けされています。
ルビィも時々スイーツを自分で作ったりするけれど、こんなに計算されつくしたスイーツが食べられるのはここらへんで『秋月』さんだけだと思います。
今のルビィにはスイーツがおいしいとかスイーツの食レポをしていることよりも重大なことがあって、しばらくの間男の人とのかかわりがなかったルビィはどうやって男の人と接していいかがわからないのです。
裕紀さんとスマホで連絡先を交換したのはいいもののどう話し始めていいかもわからず、裕紀さんからも連絡が入ってこなくてとっても困っています。
今頃裕紀さんは何をしているんだろう……。もしかして花丸ちゃんと過ごしてるのかな、それとも善子ちゃん。
はたまた一周回ってお姉ちゃんだったりして……。いやそれはさすがにないよね。
誰も席にいないことをいいことにルビィは大きなため息を吐きます。
よくため息を吐くと幸せが逃げていくと言いますが、幸せを手に入れていないルビィからすればそんな迷信どうでもいいのです。
今は裕紀さんとどう連絡を取ればいいか、どう接すればいいかだけを考えることにしたいと思います。
あっ、そういえば。
と思ってルビィのカバンから一枚のポストカードを取り出します。
ついさっきなじみの駄菓子屋さんに寄ったときに見つけたかわいらしいポストカード。
普段はこんなもの置いていないはずなのに駄菓子屋さんのおばあちゃんに聞いたら棚の奥から出てきて使うこともないから売り物にしてしまおう、って思ったらしくて。そんなタイミングでちょうど駄菓子屋さんを訪れたれルビィは幸運だったのかもしれません。
ポストカード……。
取り出したポストカードを少しだけ見つめて、とりあえずシャープペンシルで下書き。
『お元気ですか?』
なんて書いてみたけど、手紙なんて形式ばったもの今の時代に出すことなんてないからなんて書けばいいのかわからなくて。
もしかして学校で習ったように『拝啓』とか『敬具』って書いたほうがいいのかな? それだとやっぱりかしこまりすぎだよね。
そう思うと最近は携帯を何回かタッチするだけで相手に文字を送ることができてどんなにうれしい言葉も厳しい言葉も優しい言葉も薄れたように感じてしまうのかもしれません。
自分の中で色々と自己完結しながら『お元気ですか?』っていう一言は確定させるためにボールペンできれいに下書きした文字をなぞる。
ルビィの字は昔からうまくなくてお姉ちゃんみたいにしっかりした字が書けなかった。
だけど今この瞬間はきれいに字が書きたくて、指に力を込める。普段は何も思わないけどこの時だけはお姉ちゃんに嫉妬してしまう。
かえって緊張してしまって、腕が震える。結局いつものように少し歪んだ字でルビィらしさも味もしっかり出ている……と、思いたい。
……ルビィもしっかりお習字とかまじめに習っておけばよかったな。
好きなことしかやってこなかった罰だ、と自分を戒めながら時間がたって冷たくなってしまった紅茶を飲み干す。
せっかくこれから仲良くなれると意気込んでいたけどまだまだ裕紀さんの姿は遠くにあって。
でもいつか、いつかちゃんと面と向かって話せるようになって楽しく連絡も取りあうようになれる気がするから。
そう心に決めて、落ち込んでないよ。大丈夫だよ。って自分に言い聞かせる。
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そのまま『お元気ですか?』の文字の次が
手書きだとなんだか照れてしまって、電話だったりメールだったりすればすらすら言葉も出てくるし伝えやすいんだけど……。
いろんな言葉を書く気だったから書かれている文字は小さくて、こんなにも思いつかないんだったらもっと大きく書いておけばよかったな。
最初からへたっぴな字だし、もう一枚ポストカードがあればいいのに……。
そう思って慣れないペン回しをしてみるけれどペンはルビィの手から離れて床にカンとむなしく音を立てるだけで何も事は先には進まない。
ペンが地面に落ちる拍子に急に字がうまくなったり、ポストカードがもう一枚出てきたリしてくれればいいのに。
もちろんそんなことは願ってもかなうわけないからルビィは床に落ちたペンを拾うための労力を無駄に使っただけだったよ……。
もう二度とペン回しなんてしないんだから、そう意気込むルビィに悪魔のささやき……。
あれ? これちょっとクセになるかも、できそうでできない感じが……。
さっき惜しかったし、次はできるかも……。
誰もいないのをいいことに『えいっ』なんて掛け声もしてみたり。勢いで結果が変わるわけなんてないのに。
ハッと気づけばペン回しに10分も費やして、うまくなったのかうまくなってないのかもわからずじまいでこれがまさに時間を無駄にするってことなんだな、って。
楽しかったし、いい……かな?
そのあとはなんとか、ない知識を振り絞ってらしくない言葉もかきながら裕紀さんに手紙を書いた。
ちいさく書きすぎていて下の空白が目立ったから右下に一言。
『P.S ルビィと仲良くしようとしてくれてありがとう』
返事は出してくれなくてもいいけど、初めて入学式で出会って優しくルビィに話しかけてくれたこと、それなのに冷たく突き放してしまったこと、今では後悔して胸が締め付けられてなんだか切ないんだ……。
やっぱりまだまだ距離は遠い気がするなぁ。さみしいなぁ。
ようやく書き終わったポストカードを鞄の中に大切にしまって。
あったまろうと思って頼んだ2杯目の紅茶も1杯目と同様に結局冷たくなってしまって、一気に飲み干す。
中途半端に冷たくなった紅茶は今のルビィと裕紀さんの関係をまさに表しているようでなんだか少しだけ悲しくなった。
何はともあれポストカードは完成したし、もう一度家に帰って精査してみようと思う。
気分がいいしお姉ちゃんにプリンでも買っていってあげようかな。
そう思ってお財布の中身を見るとさっきの紅茶で使い果たしてしまったみたいで、ひもじくなっていた。
一つ分のプリンしか買えないけれどこれでお姉ちゃんが喜んでくれるならルビィもそれはそれでうれしい。
少し悩んでお金とお姉ちゃんを天秤にかけたけどお姉ちゃんはお金にも何にも変えられない唯一無二のものだから迷う必要なんてなかったな。
さて、帰り道にポストでも探しながらゆっくり帰ろうっと。
あ……。ルビィ裕紀さんのお家の住所知らないや。
読了ありがとうございました。
余談なのですが今回で物語の1章が終了いたしました。
そのため1ヵ月ほどお休みをいただきたいと思います。
また次回の更新をお待ちください。