ダリアの花に情熱を   作:ほおずきん

5 / 10
ルビィちゃんから見た今までの総集編的な。


本当の私

――第5話「本当の私」

 

 

 学校が始まってから1日経ったときにルビィのもとにある人がやってきた。

 その人に会う予定も会うはずもなかったのに、その人はルビィの前に現れた。

 しっかり対応できていたかな? 気弱なルビィでもしっかり断れたかな?

 ちょっぴり意地悪だったかもしれないけどあんな言い方今思うとルビィでもないなぁ、って思うけど。

 だけど真実は相手にしかわからないから大丈夫だって信じたい。

 今日これきりで近づくことがないと信じたい。ルビィ裕紀さんもつらい思いしたんだから……。

 だけどそのことがもやもやになってルビィの頭の中にずっとあって、今日はなんだか眠れない。

 

 あれから1か月も2か月も経ったはずなのになんだかもやもやする。確信はないんだけどあの人なら、ってふと思うの。

 辛い思いをさせてしまったな、って。ルビィはベランダに出て夜空さんに聞いてみるの。

 なんで優しくできないの? 優しくなれなかったの? って。裕紀さんは優しくしてくれたのに、なんで優しくすることができないの?

 驚いた顔をしていて、ありえないなんて顔をしていて、そんなのルビィだって泣きたくて……。ずるいよ。

 でも今更「ごめんね」なんて謝ろうとしたってそんなの遅いし……。後悔もしているけど、後悔だって今更だし……。

 素直にならなくちゃ……って思うけど本当のことを打ち明けることのできる友達もいないし、あぁ……夜空さんは”今後のこと”も知ってるのかな?

 

‐‐‐‐‐‐‐‐‐‐‐‐‐‐‐‐‐‐‐‐‐‐‐‐‐‐‐‐‐‐‐‐‐‐‐‐‐‐‐‐‐‐‐‐‐‐‐‐‐‐‐‐‐‐‐‐‐‐‐

 

 ピピピピピピピ。

 

 朝から目覚ましの音がうるさい。

 あれ? いつもお姉ちゃんに起こしてもらってるはずなのに、ルビィ昨日目覚ましなんてかけたっけ?

 若干の疑問を抱きながら眠い目をこすって時計を見る。

 いつも起こしてもらう時間よりも20分遅れていた。

 

「え?」

 

 なんて情けない声がぽろっと漏れて。

 慌てて布団から飛び出す。急いで飛び出たせいでこけてしまったけど、どんくさいルビィにはいつもの事。やっぱり昨日夜更かしなんてするんじゃなかった。

 

 いくら眠れなかったとはいえ夜風にあたりながら考え事なんてしてる場合じゃなかった。

 いつもはきちんと朝ごはんも食べて、歯を磨いて、髪を縛って、学校に行くんだけどそんなことしてる暇もない。遅刻なんてしてしまったら笑いものにされてしまうし、だらしないなんて思われてしまう。

 

 なんとか着替えだけは素早く済ませて家を飛び出す。走れば何とか間に合うかな……。

 

 昔お姉ちゃんと体力づくりのために一緒に走ったことがある。

 なぜかお姉ちゃんは体力があまりなくてすぐ息が上がっていたけどルビィは楽しくて仕方なかった。

 

 もともとルビィはスクールアイドルというものが好きで走り始めたのもお姉ちゃんがスクールアイドルを始めたから。

 いつかお姉ちゃんとやりたかったから、やりたくて仕方なかったから。

 

 最近やっとルビィも花丸ちゃん、善子ちゃんとスクールアイドルを始めることができた。

 ……お姉ちゃんは一緒じゃないけど。でもルビィは好きだから、スクールアイドルが。

 でもやっぱりこの坂はきついなぁ……。普段は知る時は平地だし、走りやすい時間帯に走っていたから。

 朝から太陽が燦燦(さんさん)と照り付ける中、傾斜が高い坂。

 

 こんなにつらいのは初めてかも……。中学校はもっと違う場所で立地がいいところにあったからちょっと寝坊したところで影響はなかったけど、今日はさすがにまずいかも……。でも遅れないように頑張らなきゃ。

 

 

 なんとか時間ギリギリに教室についてけど花丸ちゃんに笑われてしまった。

 汗をかいていたので花丸ちゃんが渡してくれたハンカチで汗をぬぐった。

 

「そういえばルビィちゃん、あとで話があるずら」

「あとで? 今じゃあできない話なの?」

「うーん、ちょっと長くなるかもしれないずら。ルビィちゃんがギリギリで登校してきたせいでできなかったずら」

「アハハ……。じゃあお昼休みでいいかな?」

 

 あんまり手短な話じゃないみたいだけどなんだろう……。まぁ朝のうちに解決できなかったのはルビィが悪いかな。

 

「うん、そうずらね。じゃあご飯食べながらお話しするね」

 

 そうやって花丸ちゃんといつも通りお昼を食べる約束をしてホームルームやら授業をこなした。

 まぁこなしたというよりはただ寝ていただけなんだけど。

 いやルビィのことをいつまでも引きとめる夜空さんが悪いんだよ? 普段は寝てばっかりじゃないからね?

 

「さぁお昼たべるずらー!」

「花丸ちゃんいつもお昼になると元気になるよね」

「もちろんずら、人間の欲求を満たすことはまさに最高の時間と言えるずら。寝るとき食べるときはまさに至福の時間ずら。あとは本を読んでいるときかな?」

 花丸ちゃんのお弁当はルビィのお弁当の約2倍はあって主に白米が7割くらいを占めていた。

 

 花丸ちゃんから聞いて初めて知ったんだけど、月曜日に自分の家から白米を持ってくるのは全国で静岡県だけらしい。

 中学校の時なんでそんなに白米が多いの? って聞いたことがあったけど、たしか授業で使った脳をしっかり午後に取り戻すためにはブドウ糖がなんたらかんたらって、ルビィには難しすぎてここまでしか覚えられなかった。

 疑問をぶつけると花丸ちゃんは博識になってその知識だけで10分くらい一人で喋っている、いつもありがたいお話をしてもらっているんだけどいつも最初の1行しか覚えられない。

 

 2人とも箸でお弁当箱の中をつつきながら何か忘れている気がした。

 あ、そうだ。話があるんだったっけ。

 

「そういえば花丸ちゃん朝に言ってた話って何のこと?」

「あ、忘れてたずら……。んー実は結構言いにくいことなんだけど……」

 

 花丸ちゃんがルビィに言いにくいことって何だろう。

 お金貸してほしいとかかな。ルビィお金なんて持ってないよ……。

 

「実は裕ちゃんの事なんだけど……」

 

‐‐‐‐‐‐‐‐‐‐‐‐‐‐‐‐‐‐‐‐‐‐‐‐‐‐‐‐‐‐‐‐‐‐‐‐‐‐‐‐‐‐‐‐‐‐‐‐‐‐‐‐‐‐‐‐‐‐‐‐‐‐‐‐‐‐‐‐‐‐‐‐‐‐‐

 

 今日は珍しく一人で帰ることにした。

 

 いつもは家が近い花丸ちゃんと帰っているんだけど今日はいろいろ考えたくて。

 入学式の日にあれだけ釘を刺したはずなのにどうして、どうしてあなたは私にかまうの?

 

 初対面でああやっていえば全員の人はルビィにかまうことはなかった。

 まさか花丸ちゃんに今週末裕紀君と善子ちゃんとルビィの家に来たいなんて……。

 普段はあんなこと言ってもただの一週間くらいですぐ忘れちゃうのにあのもやもやはこういうことだったのかな……。

 

 ルビィどうすればいいんだろう。

 

 家に帰ってももちろん悩みは解決することもなくただただ時間だけが過ぎていった。

 ベットに力なく倒れこんでそのまま眠ってしまった。

 ルビィにしては頭フル回転させたし、仕方ないよね。

 

 ――ビィ! ルビィ!

 誰かに呼ばれた気がして手放した意識を手繰り寄せる。

 

「あ、お姉ちゃん」

「フフ、寝坊もして昼寝をするなんてルビィはよく寝ますのね。布団もかけずに昼寝をするなんて風邪をひきますわよ。さぁ晩御飯の支度が出来ましたわ、行きましょう」

 

 帰ってきてから結構な時間寝ちゃっていたみたい。お姉ちゃんに起こされなかったらそのまま朝まで寝ちゃっていそうなくらいぐっすりだった。

 ん? お姉ちゃん? そうだ、お姉ちゃんがいた。何も一人で悩むことなんてないよね。

 男性の避け方を教えてくれたのはお姉ちゃんなんだし、今回のことだってお姉ちゃんならきっと――。

 

「え? 男がうちに来る?」

「うん、実はそうなんだ……」

 

 お姉ちゃんはご飯を食べる箸をピタッと止めて少しだけ眉をぴくっとさせた。

 あぁきっと怒っているんだろうなぁ……。説明の順番間違えちゃったかなぁ。

 

「ルビィ……。あれほど男の人は避けてきなさいと言ったはずですが?」

 

 声からお姉ちゃんが怒っているのがわかる。いつもルビィがアイスを盗み食いしてばれたときの声だもん。

 何回もやったことあるから呼び出されたときに怒られるかただの用事かすぐわかるようになっちゃった。いらないスキルなんだけど……。

 

「ち、違うんだよ。もう近づいてこないようにいつもお姉ちゃんが言いなさいって言ってることを伝えたんだよ? だけどその人花丸ちゃんと仲がいいみたいで……」

 

 こういうとお姉ちゃんは納得したようでまたご飯を食べる箸を進めた。

 

「そう、それで花丸さんを経由してルビィに近づこうということですか。そういうことでしたらわたくしも力をお貸しいたしますわ、いつ来ると言っているんですの?」

「それが、今週末って言ってて……」

 

 その他もろもろを伝えるとお姉ちゃんはすぐに考えを思いついたようですぐに話始めた。

 

「今週末……。わかりましたわ、家に招きなさい。何とかしてあげます」

「フムフム、でルビィはどうすればいいの?」

「ルビィは何もしなくてもいいですわ、その人を家に招いて客室で待っていただけるよう案内してもらえますか? それからその人と話す必要はないのでその時だけ頑張ってくれますか?」

「うん! もちろんそれだけならできるよ! でも本当にそれだけでいいの?」

「ええ、後はわたくしに任せてくれれれば大丈夫ですわ」

 

 どうやらお姉ちゃんが裕紀さんにいろいろ言ってくれるみたい。

 お姉ちゃん不器用だからなぁ……。大丈夫かなぁ。

 

 絶対『とにかく! 今後は黒澤家に近づかないでください!』っていうんだろうなぁ。

 そんなの普通理由を聞こうとして食い下がられるにきまってるのになぁ。

 

 だってルビィが直接あんなにきついこと言ったのに仲良くしようとするんだもん。

 本当に黒澤家に近づいたら危ないんだけどなぁ……。何とかできないかなぁ。

 

「ごちそうさまでした」

 

 ルビィも何か解決策がないかまた考えてみたけどいい案なんて思いつくはずもなくとりあえず考えるのをやめて週末はお姉ちゃんに一任することにした。

 まぁルビィは難しいこと考えずに善子ちゃんと花丸ちゃんと遊ぶことに徹底しようかな。

 何して遊ぼうかな……。善子ちゃんはゲームとか大好きだけど、対照的に花丸ちゃんはゲームとかやらないし……。

 やっぱりここはスクールアイドルのDVDでもみようかな! せっかくみんなで始めたんだしほかの人たちに後れをとっちゃだめだもんね!

 しっかりダンスの仕方とか歌い方とか予習しなきゃ!

 

‐‐‐‐‐‐‐‐‐‐‐‐‐‐‐‐‐‐‐‐‐‐‐‐‐‐‐‐‐‐‐‐‐‐‐‐‐‐‐‐‐‐‐‐‐‐‐‐‐‐‐‐‐‐‐‐‐‐‐‐‐‐‐

 

 それから週末はあっという間にやってきてついに花丸ちゃんたちがいよいよやってきた。

 

「ルビィでは客室に案内するようにお願いいたしますわ」

「うん、本当にそれだけでいいんだよね? お姉ちゃん」

 

 ルビィがそういうとお姉ちゃんは優しい笑顔でルビィの頭をなでてくれる。

 あぁルビィがもしこんなのじゃなければきっとお姉ちゃんに迷惑をかけることもなかったし男の人とも関係を持つことができたのかな……。

 ごめんなさい、お姉ちゃん。ごめんなさい、花丸ちゃん。ごめんなさい、善子ちゃん。ごめんなさい……裕紀さん。

 

「そんなに悲しそうな顔をしないで、ルビィは何も悪くないわ。悪いのはそう……近づいてくる男の人だから……。さぁ花丸さんたちがいらしたみたいですわ。裕紀さんを客室に招いた後、いったんそのことは忘れてたっぷり遊んできなさいな」

 

 あまりにもルビィの顔がわかりやすかったみたいでまたお姉ちゃんは優しくしてくれる。

 これから毎日解決策はないか考えるようにしないと……。あんまり周りの人に迷惑かけてられないし、ルビィだって一人でできることを見せてあげなきゃ。

 そのためにはとりあえずこの場をお姉ちゃんに任せて困らせないように遊ばなきゃ!

 

「うん! じゃあ行ってくるね!」

「ええ……。いってらっしゃい、楽しんでくるのよ」

 

 裕紀さんを客室に招いて花丸ちゃんと善子ちゃんと遊んでいたらついに怪しまれて真実について聞かれてしまった。

 まぁそりゃ裕紀さんがルビィと仲良くなりたくてここにきているのにこの場にいないって普通怪しむよね……。

 ごめんね、お姉ちゃん。この二人なら信頼できるから、約束破っちゃうけど、話してみるよ。

 3人寄れば文殊の知恵なんてことわざもあるくらいだしきっと解決策も見つかりやすくなるよね。

 

「………………っていうことなんだ、二人には心配かけちゃったけどこれがルビィの真実。今まで話せなくてごめんね」

 

 2人ともルビィの話を聞いてとても驚いた顔をしている。

 そりゃそうだよね……。普通じゃ考えられない理由だし。

 

「ル、ルビィちゃんにそんな真実があったなんて……。ごめんなさいマル何も知らないで裕ちゃんを連れてきたいなんて言っちゃって」

「ルビィ下手したら私よりも不幸なんじゃない? なんか申し訳ないわ……」

 

 やっぱり花丸ちゃんも善子ちゃんも優しいや……。何も知らないはずなのに謝ってくれるなんて。

 

「ううん、二人とも謝らないで。もっと早く相談できてれば解決できてたかもしれないし、二人は何も知らなかったんだから悪くないよ。悪いのは何も言えずに黙ってたルビィのほうだもん」

 

 ついに16年間守ってきたルビィの秘密を家族以外の人に話してしまった。

 2人はきっと外に漏らさないと思うけど一応言っておかないとダメだよね……。

 

「2人ともわかってるとは思うけど家族と花丸ちゃんと善子ちゃんしかルビィが男の人と”話しちゃいけない”理由言ってないからね」

 

 2人は何も言わずにそのままうなずいてくれた。

 

「さぁしんみりした話はここでおしまいだよ! 今日はスクールアイドルについていろいろ知ってもらうために来たんだからね!」

 

 ここでルビィがしんみりしてたら残りの時間二人とどう過ごしていいかわからないし2人にスクールアイドルについて知ってほしいのは本当だし。

 そう思ってルビィは二人に声をかけたんだけどやっぱり二人は気持ちの整理がついてないみたいで黙り込んでしまう。

 

「ほら! そんなにしんみりしたままだとルビィ怒っちゃうよ? ルビィ怒ったら怖いんだからね!」

 そういって頬を膨らませてムスッとした顔をして2人をジーッと見つめると二人は笑い出した。

 

「そうね、今はしんみりしてる場合じゃないわよね」

「そうずら、こんなに可愛いルビィちゃんに怒られるのも怖いし」

「ええっ! どういうことなのそれ。可愛いのか怖いのかどっちかにしてよぉ」

 

 よかった。何とか二人のこと励ませたみたい。

 ルビィのせいでこうなっちゃったからちゃんと責任取ってあげなくちゃね!

 

「それでね、今はこのスクールアイドルがすごい人気で…………」

 

‐‐‐‐‐‐‐‐‐‐‐‐‐‐‐‐‐‐‐‐‐‐‐‐‐‐‐‐‐‐‐‐‐‐‐‐‐‐‐‐‐‐‐‐‐‐‐‐‐‐‐‐‐‐‐‐‐‐‐‐‐‐‐‐‐‐

 

「ルビィ、もう遅いですから二人には帰ってもらいなさい」

 襖がガラッと開いてお姉ちゃんがやってきた。いつの間にか話過ぎていたみたい。

 

「じゃあ花丸ちゃん善子ちゃんまた学校でね」

「うん! 今日はありがとずら!」

「ヨハネよ!」

 うん! 二人とももうすっかり元気になったみたい。

 

 

「話は……どうだったの?」

 2人を見送った後お姉ちゃんと勇気さんがどうなったのかどうしても気になったから聞いてしまった。

 

「裕紀さんですか? 大丈夫ですよ、今後ルビィに近づかないよう強く言っておきましたので今後ルビィが困ることはないはずです」

「そっか……。ありがとう、お姉ちゃん」

「ええ、ところで元気がないようですが大丈夫?」

「う、うん! 大丈夫だよ!」

 

 お姉ちゃんに花丸ちゃんと善子ちゃんに真実を話すかどうか悩んでいたらしんみりしちゃった。

 大丈夫なんて言った手前ますます言いにくくなっちゃったし……。

 

 でもどうしてこんなに裕紀さんのことについて気になるんだろう。

 今までの男の人とは違って絡もうとしてくるから? ううん、なんだかそれとは違う気がするの。

 なんだか優しくできなかったことが悔しいというか……。悲しいというか……。

 あぁまたもやもやするなぁ、今日も夜空さんにほんとのことがわかるまでお話してみようかな。

 

 夜空はなんでも知ってるの?




次話もよろしくお願いします。
  1. 目次
  2. 小説情報
  3. 縦書き
  4. しおりを挟む
  5. お気に入り登録
  6. 評価
  7. 感想
  8. ここすき
  9. 誤字
  10. 閲覧設定

▲ページの一番上に飛ぶ
X(Twitter)で読了報告
感想を書く ※感想一覧 ※ログインせずに感想を書き込みたい場合はこちら
内容
0文字 10~5000文字
感想を書き込む前に 感想を投稿する際のガイドライン に違反していないか確認して下さい。
※展開予想はネタ潰しになるだけですので、感想欄ではご遠慮ください。