弊カルデアの日常・・・?   作:しろけむり@マスター

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エイプリルフールははっちゃけたかったんだ。
などと供述しており・・・。
タイトルで全落ちですが一応学パロ注意
今回はぐだ男(男主人公)です


閉鎖電脳学園カルデア

…………意識が浮上する。体を起こそうとして異変に気付く。

そこは見慣れた無機質なマイルームではなく。

どこかの学校の寮のような生活感あふれる部屋だった。

天井は体を起こして手を伸ばせばぶつかってしまうほど近く、すぐに二段ベッドであることがわかった。

 

(どうしようか、強制レイシフト(レムレム)したのか?すぐに協力出来るサーヴァントを探さねば。)

 

幸いにも似たような経験があったので直ぐにすべきことが分かった。

そして…下のベットにいるのは誰なのか、身を乗り出して確認する。

 

そこにいたのは、安らかな顔で眠りにつくマシュの姿だった。

 

(?????????あれー?ここにいるのは男のサーヴァントだと思ったんだけどなー?)

 

そんな混乱に襲われていると頭に声が響く。

 

『これはひょんなことから男女同室となってしまった貴方とマシュの甘酸っぱく、ほろ苦い青春の物語・・・。』

 

そんな言葉とともに数多のイメージと聞きなれたマシュの声がが頭の中に投射される。

放課後、真っ赤な夕焼けに照らされた河川敷で隣を歩く制服姿のマシュ。

『先輩。今日はどうします?』

休日、ともに町に繰り出す私服姿のマシュ。

『先輩!向こうのカフェで一旦休憩しましょう!』

図書館で勉学に励むマシュ。

『先輩。ここ、どうなすればいいのかわからないです。教えてくれませんか?』

そんな、同じ学校に通っていたなら見れたであろうマシュとの景色。

最後には・・・

夜、ベットに押し倒されたマシュ。

『先輩・・・。来てください。』

そのどれもが、自分の視点辺りからの景色で・・・。

 

意識がイメージと声から解放される。

体勢はベットの上に胡坐を掻いていて覗き込んだままではなかったことに安堵する。

ポタリ。太もも辺りに液体が垂れる。

下を向くと赤い点が二つ。

枕元においてあるスマホのインカメラを使って顔を確認する。

予想通り鼻血がでていた。とりあえず鼻を抑えながら、太股に垂れた分を拭き取る。

数分後、鼻血が止まったあたりで下のベットからごそごそと音がした。

どうやらマシュが起きたようだ。

ベッドを降りてマシュに挨拶する。

マシュの寝間着はカルデアで偶に目撃できるもこもこなフォウくんの着ぐるみパジャマだった。

「マシュ。おはよう。」

「先輩!?起きてたんですか。いつもはまだ寝ているのに。」

「今日はなんだか目が早く覚めてね。」

「今日が日曜日だからですかね・・・?」

 

あはは、うふふと笑いあう。

マシュがパチリと手を叩いていう。

「さて、先輩。朝の支度を済ませてしまいましょう。」

 

私服に着替え、スマホのアプリで今日の予定を確認する。

(今日の予定はなし・・・。ついでにこの町の地図でも入ってないか確認しよう。)

無事、町の地図と、学校に関する情報を入手できた。

どうやら電子通貨が広く普及しており、スマホさえあれば大丈夫なようだ。

それとは別で自分自身のパーソナリティも入手できた。

名前も誕生日も性別も元のまま。高校2年生だった。

マシュは壁にかかっているリボンの色から見るに、どうやら1年生のようだ。

 

着替えシーンは見ないようにベットの上で壁を眺めている。

 

「先輩。もうこちら見ても大丈夫ですよ。」

 

マシュから声がかかりマシュの方を向く。

マシュの服装は、カルデアでは最もよく見る服装だった。

 

(マシュの服装はいつも通りか。それにしても、やっぱりマシュは可愛いなぁ。」

「そっ、そんな可愛いなんて・・・。」

「あれ、くちにでてた?」

「はい。それはもうしっかりと。」

 

顔を赤く染めながらか細い声でいう。

 

「じっじゃあ、朝食、食べに行こうか。」

 

声が詰まってしまった。恥ずかしい。

 

マシュの手を引いて、先ほど叩き込んだ地図を頼りに、寮の食堂へ向かう。

扉を開けて、思わず数秒絶句する。

わいわいがやがやとした風景は普段の日常と変わらないのだが、

食品の注文列が凄い長いのだ。

思わずマシュと顔を見合わせてしまう。

 

「仕方ないですね。」

「並ぼうか。」

 

最後尾に並ぶと、二人は前に並んでいる人物から声をかけられる。

前に並んでいたのは、望月千代女、くノ一のサーヴァントだった。

 

「む、藤丸殿にキリエライト殿。おはようございます。」

「おはようございます、望月さん。」

「おはよう・・・望月・・・さん」

 

普段はちよちゃんと呼んでいるせいか望月さんと呼ぶときに少々詰まってしまった。

 

「今日は列が長いですね。」

「普段二人はもっと遅いから知らぬと思うが、このくらいの時間だとこれが普通でござるぞ?」

 

思わずマシュと顔を見合わせて苦笑いしてしまう。

 

「二人は普段からそうでござるが・・・。もう少し人目を忍んではどうでござろうか。」

 

はぁ、とため息とともにそんなセリフを吐かれて、ちよちゃんは前に向き直ってしまった。

 

そこからマシュとの他愛のない話で時間を潰して、ようやく順番が来た。

 

「おはよう。藤丸君にキリエライトさん。

今日のおすすめは和食Aか洋食Bセットだが。」

 

エミヤが応対しているようだった。

隣を見てみると、メニュー表とにらめっこしながら何にするか悩んでいるようだ。

 

「キリエライトさんはいつも通りなら洋食Cだったと記憶しているのだが。藤丸君はたしか和食Bが好みだったな。」

 

マシュが虚を突かれたような表情に一瞬なったような気がした。

 

「えっ?あー・・・。偶には自分の好みとは違うものが食べたくて。」

「そうか、じっくり考えると良い。では、藤丸君は何に?」

「おすすめの和食Aでお願いします。」

「私も同じのでお願いします。」

 

受け渡し所ではタマモキャットが受け渡しをしているようだった。

奥には小さな体をせわしなく動かしながら和食の調理をする紅閻魔が見えている。

 

「ふむ。藤丸とキリエライト二人とも和食Aであっているな?」

「うん」「はい」

 

トレーに盛られた和食セットが二つカウンターに並んでいる。

 

「では召し上がれなのだな。」

 

ひとつづつ渡される。

二人で並んで開いている席を探す

 

「先輩。あそこの席が空いていますよ。」

「え?あ、ホントだ。」

「頼れる後輩の観察眼ってやつです。」

 

マシュがふふんと胸を張る。

向かい合わせに座り、ともに手を合わせる

 

「「いただきます。」」

 

焼き鮭に少し醤油をつけ、頬張る。

思わず、目を見開く。

まるで自身の好みが把握されているように思えるほど、おいしかったのだ。

続けて白米も口に放り込む。

成程。これが頬が落ちるおいしさなのか・・・

と、ある種の納得を得る。

 

「先輩。和食Aセットおいしいですね。」

「ん?ああ、そうだね。凄い塩気が丁度いい。」

 

思わず放心してしまい、マシュに声を掛けられてからの反応が遅れてしまう。

 

「先輩?大丈夫ですか?」

「おいしくてね、味を噛み締めていたんだ。」

「卵焼きも絶品ですよ。」

 

と、二人で話しながら朝食を食べ進める。

 

数十分後、

 

「「ごちそうさまでした。」」

 

「おいしかったね。」

「そうですね。」

 

おいしいご飯を食べたからか、それとも彼女とともに食べたからか、その両方か、

自然と笑みがこぼれてしまう。

 

「じゃあ、お皿返してきちゃうね。」

「お願いしますね。先輩。」

 

トレーにお皿を重ね、食器返却所までもっていく。

棚の向こうにエミヤが見える。

 

「ごちそうさまでした。」

「おいしかったか?」

「はい。絶品でした。」

「なら良かった。」

「では、失礼します。」

 

席には座っておらず、入口近くでマシュは待っていた。

自室に戻りがてら今日の予定を相談する。

 

「今日はどうしますか?」

「街に出て、色々見て回ろうと思うんだけど、どう?」

「いいと思いますよ。何使って行きますか?」

「せっかくだし、徒歩で。」

「今日見たいな天気ならピクニックとかでもいいかもしれません。」

「流石頼れる後輩。魅惑的な提案を・・・。」

 

ふむ・・・。と思案する。まあいいかと結論付ける

 

「そうしようか。エミヤ・・・さんにキッチン借りられるか聞いてみようか。」

「では私はレジャーシートを探してきますね。」

「だめそうだったら連絡するよ。」

「わかりました。先輩。」

 

今歩いてきた道を引き返す。

食堂の前にはエミヤが看板の内容を書き換えていた。

その内容は

 

『本日限定:お花見セット1500QP』

 

ここでも金銭の単位はQPなのかと思いつつ

食堂に入る。

先ほどとは違い、まばらにしか人は居らず、注文列にならんでいる人は居らず、

セルフのドリンクを飲んでくつろいでいるようだった。

 

「エミヤさん。お花見セットが欲しいんですけど。」

「何時ごろに寮を出る予定かな?

その時間に間に合うように用意しておこう。」

「それがどこに行くかも未定で・・・。」

「そうか。なら地図アプリを起動してくれ。

どうせキリエライトさんと二人だろう?

ならおすすめがあるんだ。」

 

言われるがままに地図アプリを起動し、エミヤに見せる。

エミヤのわかりやすい説明とともに地図上に経路が表示されていく。

数分後一通りの説明が終わった。

 

「これで説明が終わったが大丈夫かね?」

「ありがとうございました」

「12時につくとしたら、大体11時半くらいに出れば間に合うだろう。」

「じゃあ11時20分位にセット受け取りに来ますね。」

「では先に料金をいただこう。」

 

丸い支払いデバイスを提示される。

スマホをその端末の上に置き、代金を支払う。

 

「よし。ではこの引換券を持って11:20前後にここに来てくれ。」

「わかりました。」

 

白い半券を渡される。

そこには、『藤丸 11:20』とだけ書かれていた。

 

そこからは早かった。

マシュにエミヤから聞いたこと、お花見セットを注文したことを伝え、

マシュからは、無事レジャーシートを発見したことを伝えられる。

 

「この服装で行くのもあれだし着替えちゃうね。」

「じゃあ、私も着替えます。」

 

互いに背中を向き合って着替える。

シュルシュルと衣擦れの音が聞こえてきたが、鋼の精神で振り向きたい欲を抑えて着替える。

つい最近買った外出用の服を取り出す。

タグをはがしたりしながら着替え終わったところで、マシュから声がかかる。

 

「先輩こっちは終わりました。」

 

後ろを向くと、そこには、純白のワンピースを身にまとったマシュが立っていた。

その美しさに声が詰まる。

何も言えずにフリーズしていると、マシュから不安げな声が聞こえる。

 

「あの、似合って・・・ますか?」

「うん。とても綺麗だよ。似合ってる。」

 

そんな陳腐な言葉しか出なかった。

黒髭によく、『本当に良いものにあった時、人は語彙が喪失するのですぞ。』

と言われていたが、その意味を漸く理解した。

彼女の美しさを言い表す言葉が見当たらない。

 

「ありがとうございましゅ・・・。」

 

照れて真っ赤に染まった耳も、最後に噛んでしまって思わず下を向いて顔を手で覆っている状態も。

ただひたすらに可愛い。

 

閑話休題

 

10分程で語彙は再生し、マシュの顔も元の白さを取り戻していた。

 

「そろそろ出発しようか。」

 

準備も終わり、マシュが大きな麦わら帽子を被って手持無沙汰にしているのを見て提案する。

 

「そうしましょう。先輩。」

 

レジャーシートの入ったカバンを持って、食堂に向かう。

食堂には早めの昼食を食べている人がちらほらいるだけで、ガランと空いていた。

受取所に向かい、半券をエミヤに渡す。

 

「しっかり完成している。」

「ありがとうございます。」

「では、お花見を楽しんできたまえ。あと、夕食時でも構わないからランチボックスは返却するように。」

「「行ってきます。」」

 

二人で挨拶して、寮を後にする。

スマホの地図アプリを頼りつつ進む。

晴天の元歩くことおよそ30分。

そこは開けた公園で、休日だというのに人は居らず、広々としていた。

 

更に奥の方に一際大きな桜があった。

その木のもとにレジャーシートを広げランチボックスを開ける。

中身は一口サイズのサンドイッチがたくさん入っていた。

 

「凄いですね。」

「おいしそうだね。」

 

そんな会話をしながら、水筒のお茶を紙コップに注ぐ。

マシュに一つ渡し、昼食を食べ始める。

 

「「いただきます」」

 

ミックスサラダ、BLT、たまご、カツサンド等々。

定番のサンドイッチを少しづつ食べていく。

 

「先輩。これおいしいですよ。はい、あーん」

「え?あ、あーん」

 

等とカップルらしくいちゃついたりしながら食べ進めていく。

互いに最後の一個を食べ終えた頃、

 

「先輩、楽しいです。」

「そう?なら良かった。」

 

こてん。とマシュが肩に頭をのせてくる。

心地よい重さが肩にかかる。

突如、一際強い風が吹く。

その風に吹かれてか、この二人を祝福するかの如く

白く、淡く咲いた桜が二人にふわふわと降り注ぐ。

 

 

 


 

 

 

ふと、眠くなる。

こんな人気のない公園だ。少しくらい昼寝してしまっても問題ないだろう。

すとん、意識が落ちる。

 

 


 

 

目を開けると、そこに広がるのは晴れ渡る晴天・・・などでは無く、

白く無機質な見慣れたダウィンチ工房の天井だった。

頭が拘束されている。

ダウィンチちゃんに声を掛けられる。

 

「どうだったい?魔術と科学の交差したVR恋愛ゲームは!」

 

その一言で、レムレムする前の記憶が蘇って来る。

 

「ダウィンチちゃんにフルダイブのVRゲー出来たって言われてやったんだっけ。」

「そうだね。でも本来の仕様とは一つ、違うところがある。それは何だと思う?」

「いやわかりませんよ。」

「ヒントは右手と右側だね。」

 

そういえば右手が温かいような?

 

「ほら、ロックを解除してあげた。見てみるといい。」

 

がちゃんと音を立てて頭の拘束が外れる。

右手を離さないようにしながら右側を覗く。

そこにはきれいな、このゲームの中で真っ先に見た顔。

 

マシュがすやすやと眠っていた。

 

「あの、ダウィンチちゃん、まさか。」

「そのまさかさ!ほかの人物は全員高度に再現されたNPCだがマシュだけは中身が入っていたぞ!」

 

うああ、など情けない声をあげながら左手で顔を抑える。

そのぬくもりが惜しいのか、マシュが起きるまでは、と。

右手はしっかりと、マシュの左手を握り、離そうとはしない。




学園(寮)
来年のエイプリルフールはリベンジしたい。

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