翌朝の事。サトシはパッチリと目を覚ました。このサンヨウシティは居心地が良かった。自分の出身がマサラタウンだと名乗っても嫌な顔をする者が全くいなかった。それどころか、問題行動ばかり起こすアイリスを止めてスカッとしたらしく、評判はうなぎのぼりに上がったのだから。
無論、点数稼ぎの為にやったわけじゃない。大切な仲間であるフカマルを奪おうとしたので、その火の粉を振り払っただけだ。評判が上がったのは結果論だ。
「サトシ。ジム戦頑張れよ」
「ああ。トウヤも、何かゲットできると良いな」
2人は別れた。サトシはジム戦、トウヤはジム戦の為の新たなポケモンゲットの為に。
*
夢の跡地に来たトウヤ。早速、ムンナと言うポケモンに遭遇したのだが……
「ああっ!逃げられた!」
もう少しの所で逃げられてしまったのだった。
「仕方ない。別のポケモンを探すとするか」
トウヤは奥へと進んだ。
「ん?」
そこには、戦闘不能となったポケモンが沢山いた。中心部には、1体のポケモンがいた。
「え?何でミジュマルが生息してるんだよ!?」
御三家ポケモンというのは通常、生息地不明とされている。野生で出て来る事自体、滅多に無い事なのだ。
「しかもあのミジュマル……ホタチを2枚持ってやがる」
しかも特異な個体と来た。これだけのポケモンを倒して来たのだから、とんでもなく強いのだろう。
「無謀かも知れないけど、やってやるぜ!」
トウヤは、ミジュマルをゲットする事にした。
「オレはトウヤ!ミジュマル、オレとバトルをしてくれ!」
トウヤは、ミジュマルに向かって歩く。ミジュマルはそれを警戒し、水鉄砲を放って来た。
「やるな!でもオレだって、生半可な覚悟で来たわけじゃない!行くぞ!」
トウヤはモンスターボールを構えた。
*
「地図だと、ここにある筈なんだけど……」
ジムがある場所は、レストランだった。間違えたかと困惑するサトシ。
「おや。ここにいるのはピカチュウ?ピカチュウだよね!?」
声がした方向を振り向くサトシ。そこには薄緑色の髪をし、ウェイターを思わせるような恰好をした男性が居た。
「あの~何か?」
「あ!これは失礼。僕はデント。ポケモンソムリエをしているんだ」
「オレはサトシです。マサラタウンから来ました!そしてこっちが、相棒のピカチュウ!」
「ピカ、ピカチュウ!」
「マサラタウン?もしかしてカントー地方から遥々と?」
「はい!」
「あの町には、オーキド博士が研究所を構えているからね」
「成る程……デントさん。ポケモンソムリエって何ですか?」
「ポケモンソムリエはね、豊富な知識や経験を活かして、トレーナーとポケモンの相性を診断したり、もっと親密な仲になるためのアドバイスをするんだ。簡単に言うと、ポケモン関連のアドバイザーさ!」
「へえ!イッシュにはそう言う職業があるんですね!」
「それで、サトシ君はこんな所で何をしているのかな?」
「ジムを探しているんですけど、何処にもそれらしい場所が見つからなくて」
「そうか。なら、僕が案内しよう!そこの関係者だからね」
「ありがとうございます!!」
サトシは、デントに連れられてジムへ入って行った。
「今までのジムに比べたら、随分とお洒落だなぁ」
サトシの感想はそれだった。辿り着いたのはジムというより、おしゃれなレストランだった。だが、前例はなかったわけではない。久しぶりに副業と兼業しているのだと明確に分かるジムは本当に久しぶりだったのだ。
奥へ進むと、デントと同じ格好をした男性2人が近付いて来た。1人は青髪の優男、もう1人は赤髪の熱血そうな印象だ。
「いらっしゃいませ。デント、お客様ですか?」
「いいや。彼はチャレンジャーさ」
「成る程な。だったら、早く案内しないとな!」
もしやと思うサトシ。だが、ハッキリしてないので黙る事に。数分して、辿り着いたのはバトルフィールド、ジムに相応しい部屋だ。そして、いつの間にか上の観客席に、レストランの客が集まっていた。
「ようこそサンヨウジムへ。僕達がこのジムのジムリーダーさ。改めて紹介させてもらうね、デントだよ」
「同じくコーンです」
「俺はポッドだ!」
「やっぱり!という事は、3人に勝たないとバッジがゲット出来ないんですか?」
「いいえ。私達はそこまで鬼ではありませんよ。3人の内の1人を指名して、勝てばバッチを貰える。それがこのジムのルールなのです」
「サトシ、君は誰を選ぶんだ?」ポッドが問いかけて来た。
「オレ、3人とバトルしたいです!」
「それを言って来る方は初めてですね」コーンが言った。
「良いんじゃないか?それに、他地方のトレーナとのバトルなんてそうそう無いしな!」
「じゃあ、2勝したらジムバッジを渡す形でどうだい?サトシ君」
「分かりました!それでお願いします!」
こうして始まった、サトシのイッシュ地方最初のジムバトル。ジム戦に出ないピカチュウとガバイトは観客席に移動した。観客席にいる客は、殆ど全員が無謀だと思っている。だが、ピカチュウとガバイトはそうは思わなかった。そしてもう1人……赤い服の男も見ていた。
「マサラタウンのサトシ。5つのリーグで上位成績を持ち、バトルフロンティアの完全制覇者。このデューンが、見届けるとしよう。なあ、ジュナイパー」
デューンも、相棒を外に出してジム戦を見ていた。シーザーサラダとステーキを食べながら。
*
サトシのジム戦が始まった。最初はコーンだ。彼はヒヤップを出した。
「マメパト、頼んだぜ!」
【お任せください!】
「ピカチュウでは来ないんですか?」
「マメパトならやれるって、オレは信じているんです!」
「そうですか、分かりました。それがあなたの決意だというのなら。ですが、手加減はしませんよ!水鉄砲!」
先手を打ったのはヒヤップだった。
「マメパト、風起こしだ!」
風を起こし、水鉄砲を巻き込んだ。水を纏った風起こしを速攻で完成させたのだ。ヒヤップに襲い掛かる。
「マジかよ!?風起こし?暴風の間違いじゃないのか?」
「やるね、彼」
ポッドとデントの会話が聞こえた。観客も、今回のチェレンジャーは今までとは全く別物だという認識を持つ事になった。
「アクロバットで避けて下さい!」
驚いたコーンだが、すぐに気を取り直して対処法を思い付いた。ヒヤップは攻撃を避ける事に成功した。
「ふう。これで一安心……」
「マメパト、影分身からの電光石火!!!」
無数のマメパトがヒヤップに迫った。水を纏った風起こしを躱した直後なので、流石に対処のしようがなく、ヒヤップは攻撃を受けてしまった。
「影分身にこのような使い方があるとは……ですが、私は負けるつもりは毛とうございません!ヒヤップ!熱湯!」
「マメパト!地面擦れ擦れを飛ぶんだ!」
ヒヤップの熱湯に対して、地面擦れ擦れを飛ぶ事で避けるマメパト。しかし、熱湯により湯気が立ち上がって、視界が見えなくなってしまった。
「しまった!これではマメパトが見えない!この状況では、視力の良い鳥ポケモンであるマメパトの方が有利!!」
「影分身の後にエアカッターだ!」
湯気の中から数え切れないエアカッターがヒヤップを襲った。ヒヤップは戦闘不能になる。
「完敗ですね……」ヒヤップをモンスターボールに戻すコーン。
「やったぜマメパト!」
【まずは1勝です。ポカブさん、ミジュマルさん。後は頼みましたよ】
ゼエゼエと声を上げるマメパト。その後、2戦目に突入した。今度はポッドだ。彼はバオップを出し、サトシはポカブで勝負に出た。これもサトシが勝った。ここでバッジが手に入るのは確定した。
「おめでとうサトシ君。約束通り君にジムバッチを渡すよ。だけど、その前に僕ともバトルしてくれないかい?先程のバトルを見て、ジムリーダーやソムリエとしてではなく、トレーナーとして戦いたいんだ」
「オレは元々、3人とバトルするつもりで来たんです。ですからお願いします!」
「ありがとう!それでは、マイビンテージ、ヤナップ!」
「ミジュマル!頼むぜ!」
【オレに任せろ!ホタチもうねりを上げてるしな!】自信満々に出て来たミジュマル。
【ホタチはうねらないよ】とツッコむピカチュウ。
【物の例えだよ!】ホタチを投げ落とし、その後からクルリンパをした。
【なんか変な奴と当たったなぁ……】ヤナップがぼやいた。
何故ミジュマルで、と言う反応が観客席から聞こえて来た。何か理由があるのか、それとも相性も知らないバカなのか。だが、サトシの実力自体は本物だという事は嫌でも分かってるので、どちらかと言えば前者の方が多い。
「その子も強いから出したんだよね?君の事だ。少なくとも、何の理由もなしに出して来る筈が無い。余程の理由があるんだと思う位にはね」
「オレのミジュマルは強いですよ?」
「それじゃあ、行くよ!ヤナップ、タネマシンガン!」
「ホタチでガードしながら接近しろ!」
タネマシンガンによる攻撃を防ぎつつ、ヤナップに近付いた。
「岩石封じ!」ミジュマルではなく、周囲に張った。
「上空から広範囲にタネマシンガンだ!」
「ミジュマル!アクアジェットで躱せ!」
デントの作戦の意図を察したサトシ。ミジュマルの周囲にある岩に打つ事で反射させ、周りからミジュマルを襲うというものだ。だからサトシは、未完成ながらもミジュマルにアクアジェットを指示した。ミジュマルは何とか逃げる事は出来たが、1発だけ掠って当たった。
「1発だけ当たったけど、他は全て避けた……」女性客の1人が呟いた。
「ヤナップ、瓦割りだ!」
「シェルブレードで対抗しろ!」
ヤナップとミジュマルの攻防は続く。ミジュマルは、ヤナップに少しずつ攻撃を当てて行った。
『サトシ君は何を?シェルブレードばかりを指示しているけど……まてよ、シェルブレードの効果は……マズイ!』
「ヤナップ!そこから離れるんだ!そろそろ充填は終わっている筈だからね!」
デントの声で、ヤナップは後ずさった。
「ソーラービーム!」
「そういう事か!」
デントの最初の作戦としては、瓦割りで応戦しつつ、好きを見て至近距離からソーラービームを撃つつもりだったのだろう。だが、途中でサトシがやっているシェルブレードによるヤナップの防御力低下に気付き、距離を取った。丁度、放てる位の大きさになったので、それも兼ねての事だろう。
だが、本来の威力ではない。チャージ時間を短縮した代わりに、威力は落ちているものだ。
また、サトシにはソーラービームを使う事が出来るポケモンを持っている。だからこそ、撃ちどころや、弱所に関しては人一倍分かっているのだ。
「ミジュマル!シェルブレード!そしてシェルブレードに凍える風!それで、ソーラービームを切り裂け!オレが指示した個所に!」
サトシの指差した場所にシェルブレードを当てた。するとソーラービームは真っ二つになった。ミジュマルにはダメージは一切入ってない。
「なっ!?」流石のデントも驚きを隠せなった。
「今だミジュマル!アクアジェット!」
ミジュマルがヤナップに突っ込んでくる。
「そこから回転しながら凍える風だ!」
冷気を纏ったアクアジェットは、氷のアクアジェットと化した。ヤナップに直撃し、戦闘不能となった。勝者、サトシ。
「お見事だよ、サトシ君。これが、トライバッジだよ」
デントからバッジを受け取った。
「デントさん。このジムの目的って、相性を教える為にやってるんですよね?2つの意味で」
「やっぱり気付いた?セオリー通りで来ても、ちゃんと相性補完技を持つ相手もいるんだって事を分かって貰う為にね。コーンと前に対決した金髪の子も、1度は負けているんだ。まあ、2回目はジャノビーに進化させた上にゴリ押しで来たんだよね」
シューティーの事かな、とサトシは思う。だが、すぐにトウヤと合流する事にした。
*
トウヤとミジュマルの戦いは続いていた。サンダースとワシボンを倒されてしまったが、ポカブはまだ残っていた。ミジュマルは膝をついている。
「これで最後だ!ポカブ、ニトロチャージ!」
ミジュマルは体当たりで対抗して来る。互いに吹き飛んだ。そして、ミジュマルはもう限界だった。
「行くぜ、モンスターボール!」
好機ととらえ、トウヤはミジュマルにモンスターボールを投げた。数回揺れてから、ポン!と言う音が聞こえた。ゲットに成功したのだ。
「ミジュマル、ゲットだぜ!」
*
「お前のポケモンを開放する!」
白装束の男女数人が、灰色の服を着た青年を取り囲んでいた。
「……」青年はミジュマルを出す。既にモンスターボールは全部壊していた。
【え?】
「皆は逃げるんだ。絶対に生き延びるんだよ!」
【イヤよ!ここにいる!】
青年のポケモン達は、反対の声を示す。だが……
「あいつらは、皆の力を悪用しようとしている!そうなる前に……だから頼む……逃げてくれ。僕が囮になるから」
青年の必死の願いに、ミジュマル達はついに折れた。ある程度逃げた所で、青年の断末魔が響き渡った。
*
【ここは?】目が覚めたミジュマル。
「お!起きたか!ミジュマル!」
トウヤが満面の笑みで声を掛けてきた。
【最後、モンスターボールで……】
トウヤにゲットされたのだと悟るミジュマル。すると、トウヤは青い液体が入った容器を手渡した。
「オレンの実で作ったジュースなんだ。絵面は悪いけど、味は保障するよ。飲んでみて」
悪い気はしないので、ジュースを飲む。
「美味いか?美味しいか?」
【ええ。お陰様で体力も回復したわよ】ミジュマルは頷いた。
「良かった~!後さ、これ」
何か小さい、四角いものを手渡して来たトウヤ。赤、青、緑、黄、桃、虹の6種類だ。
「これ、ポロックって言うんだぜ。オレの友達が木の実で作った、ポケモンのお菓子なんだ」
ミジュマルは青いポロックを口に入れた。美味しい。それが感想だ。
「ミジュマルは凄いよ。オレ、これでも強くなっているかなって思ったけど、やっぱりまだまだなんだって思ったんだ。きっと、ここまで来るのに相当特訓して来たんだろうな」
「もし良かったらさ、オレと一緒に行こうよ!どんな理由でこの夢の跡地にいたのかは分からない。でも、もっと広い世界で実力を見せた方が壮快だって思うしさ!!」
トウヤはミジュマルを真剣な眼差しで見つめる。実力はともかく、目は真っ直ぐだった。少なくとも、前のトレーナーを殺した白装束や珍しさで今までの人間よりは信用出来そうだ。
だから頷いた。
「これからもよろしくな!ミジュマル!!」
こうして、トウヤはミジュマルをゲットしたのだった。
サトシのポケモン
ピカチュウ♂
ガバイト♂
ミジュマル♂
マメパト♀
ポカブ♂
トウヤのポケモン
ポカブ♂
サンダース♂
ワシボン♂
ミジュマル♀