夜。サトシとトウヤは合流した。夢の跡地でミジュマルをゲットした事を報告した。サトシのミジュマルは、トウヤのミジュマルにナンパしていた。
【へい!そこのお美しいミジュマルちゃ~ん!オレの胸にダ~イブ!!】
【……】
《こ、この女の目!まるで……まるで、養豚場のポカブでも見るかの様に冷たい目だ!!途轍もなく残酷な目だ……。そう、それは、例えるならば「可哀想だけど、明日の朝にはお肉屋さんの店先にならぶ運命なのね」って感じの!》
見事に玉砕したのであった。ちなみに2体のポカブは、何か失礼な事を考えて無かったかコイツと言う表情をしていた。
「サトシ。ポケモンが本当の意味で成長するのってどんな時なんだ?」
ふと思った事をサトシに聞いてみる。
「う~ん、そうだなぁ。やっぱり、逆境に立たされた時かな?」
「どういう事?」
「具体的に言えば、自分にとってタイプ相性が悪いポケモンと戦って、勝利する事かな」
「成る程」
「でも、焦る必要は無いぜ。トウヤには、トウヤのやり方があるんだからさ」
「分かってる」
*
翌日。トウヤはサンヨウジムに挑戦した。選んだのはコーンだ。彼のポケモンであるヒヤップに対して、ポカブを繰り出した。苦戦こそしたものの、見事に勝利。無事、トライバッジをゲットした。
ポケモンセンターでポケモン達の回復を待っていると、アナウンスが聞こえた。
『マサラタウンのサトシ様。マサラタウンのサトシ様。お届け物が届いております』
「サトシ、何か注文した?」
「いいや。でも行って来るよ」
サトシは、受付に向かった。そこには、配達員がいた。
「こんにちは、サトシ様でございますね?」
「はい」
「あなた宛てにお届け物が2件届いております。どうぞお受け取り下さい」
サトシはお届け物を受け取った。まずはアララギ博士から、リバティチケットだ。もう1つは段ボールで、中身を空けてみるとオーキド博士からだった。ガンテツ製のモンスターボールを1ダースずつ入っていた。サトシはそれをバッグに入れた。
*
サンヨウシティを旅立とうとする2人。だが、ふと空をみるとピンク色雪の様な何かが降り始めた。
「何なんだ?」
「ピ~カァ……」ピカチュウが眠そうにしている。
「ピカチュウ!」
サトシは急いで、ピカチュウをバッグの中にいれた。それ以外のポケモンは、全てボールの中に回収した。
「あの方向って夢の跡地か?」
「行ってみようぜ、トウヤ!」
「ああ!」
2人は早速、夢の跡地へ行こうとする。
「ちょっと待って貰っても良いかしら?」
そこに現れたのは、メガネを着けた女性だ。
「貴方達、夢の跡地に向かうのよね?」
「あ、はい」サトシが即答する。
「あ、私はマコモ博士ともうします。別名、夢見る乙女と呼ばれています。」
『なんで?』
『痛いな』
いい歳して夢見る乙女って、と思った2人。だが、それは心の中に留めておいた。
「それで、今回の一件。恐らく貴方達も察している通り、夢の跡地が原因ではと思っています。今からその調査に向かおうとしていました」
「どうする?サトシ」
「良いんじゃないか?1人よりは3人でやった方が効率が良いしな」
*
夢の跡地に着いた3人。
「人間に害意がないのが幸いでしたね、博士」
「でも、ポケモン達には効いてしまうのは難点ですね」
トウヤ、サトシの順でそう言う。
「夢の跡地には夢のエネルギーがたくさん眠っているんです。悪用する者が沢山現れました。それにムシャーナが怒り、大爆発を起こしてしまった」
マコモ博士がそう言う。
「もう、あの爆発以来、私は研究から離れていました。ムシャーナとはもうあれ以来」
目的地は、昨日トウヤがミジュマルをゲットした場所とは反対方向の、倉庫がある場所だ。
「!?これって」サトシが声を上げた。
そこには、灰色の服を来た男女4人がムンナやムシャーナを痛め付けて、何かを取り出していた。少し離れた所で、同じ格好をした女の子は苦しそうな表情をしている。
「「やめろ!!!」」
サトシとトウヤが同時に叫ぶ。それに気づいた4人はサトシ達を見る。
「はぁ?俺達は夢の煙を集めているんだ。そら!」
男がムンナを蹴る。すると煙を出し、それを吸い取っている。
「おいサトシ。あれ、プラズマ団だよな?」
「ああ。だけど、ポケモンを開放するって言ってたのに、何でこんな真似を?」
「知れた事。我々プラズマ団は、愚かな人間達からポケモンを解放するという崇高な目的の為に日夜闘っているのだ!!」
「ムンナやムシャーナの夢の煙という不思議なガス!!それを出す事で、色々な夢を見せているらしいじゃない。」
「それを我らが有効に使い、人々がポケモンを手放したくなる。そんな夢を見せて、人の心を操るのよ!」
「我々とて心はある。だがこれもポケモンを解放するため。これも必要な犠牲だ!!さぁ!夢の煙をだせ!」
「ムナ!!」
「ムシャ!!!」
4人でムンナやムシャーナに暴力を振るう。
*
「そんな下らない事の為に……ポケモンを。ムンナ達にこんな暴力を。」
サトシは下を向き、キャップで目を隠した。握り拳を作っている。
「ふざけんじゃねえ!!何が解放だ!何が必要な犠牲だ!!!そんな目的の為にポケモンを虐待して!!お前らそれでも人間かよ!!!」
トウヤが吠える。
「絶対に許さねえ!!!」決意を固めたサトシ。
「ほざけ!お前達のポケモンも解放してやる!!」
「俺達はポケモンの自由のため!」
「我々のポケモンの自由。それは力ずくでポケモンを奪うこと!」
「お前等のポケモンも救い出してやる!」
そう言ってプラズマ団は、チョロネコ、ミネズミ、コロモリ、ヨーテリーを3体ずつ、そしてそれぞれの進化系であるレパルダス、ミルホッグ、ココロモリ、ハーデリアを出してきた。
「とあるルートで手にした、ポケモンを無理矢理進化させる電波を使った産物がこれよ!これでお前達も一捻りだわ!」
「……皆、頼むぜ!」
「サンダース、ポカブ、ワシボン、ミジュマル!」
サトシとトウヤのポケモン全9体が現れた。そして、トウヤのミジュマルの眼の色が変わった。
「進化系ポケモンは、ピカチュウとガバイトでやる!トウヤにはミジュマル、マメパト、ポカブを預けるから、残りを頼むぜ!」
「ああ、分かったよ!すぐに終わらせて、加勢する!ポカブ、ニトロチャージ!ミジュマル、シェルブレード!サンダース、電撃波!マメパト、エアカッター!ワシボン、アクロバット!!!」
2体のポカブがチョロネコ、ミネズミ、ヨーテリーを吹き飛ばし、サトシのミジュマルはヨーテリー、トウヤのミジュマルが二刀流でコロモリとミネズミを瞬殺した。
サンダースの攻撃はチョロネコ、ミネズミ、コロモリ、ヨーテリーを戦闘不能に追い込み、マメパトはチョロネコ、ワシボンはコロモリを倒した。
「終わった!サトシの加勢に行こう、皆!」
9体が頷いた。
*
「ピカチュウ、放電だ!」
「味方を巻き込むつもりか!この間抜けめ!」
プラズマ団員はサトシを嘲笑った。だが、ガバイトのタイプを知らないからそう言えるのだ。レパルダス、ミルホッグ、ハーデリアには大ダメージを与え、ココロモリに至っては戦闘不能だ。だが、ガバイトは地面タイプ故にピカチュウの放電を受けてもケロッとしていた。
「何故効かない!?」
「イッシュ以外を田舎だとほざくお前達には分からない事だよ!ガバイト、ストーンエッジ!!」
レパルダスが倒れた。
「クソが!やはり、トレーナーにもなってないガキのポケモンじゃあ、幾ら進化させても雑魚のままか!」
「ピカチュウ!これで終わらせるぞ!」
【うん!こんな奴等よりも、ロケット団の方が何倍もマシだ!!!】
「10万ボルト!カウンターシールドだ!!!」
ピカチュウが回転しながら10万ボルトを放つ。この攻撃により、ミルホッグとハーデリアが倒れた。
「やった!」
勝利して、安堵するサトシ。
「オレが出るまでも無かったか。でもまあ、良かったぜ!」
だが、2人の安心の気持ちはそこで終わった。プラズマ団4人が、同じ服装をしている女の子に手を上げ始めたのだ。
「この役立たず!!!」
プラズマ団の女が、女の子を引っ叩く。
「お前がトロくて、不器用なクズだからあんなガキ共に無様に負けたんだろうが!!!」
「ゴメンなさい!ゴメンなさい!」狂ったように泣き叫ぶ女の子。
「折角ゲーチス様が育てて来てやったというのに!お前なんてこうしてやる!」
男が銀のナイフで刺そうとした。
「やめろ!!」サトシが叫んだ。
女の子がナイフで刺される事は無かった。トウヤのミジュマルが、阻止したのだ。ナイフを持っていた男の右腕を、シェルブレードで斬り落とす形で。
「え?」
咄嗟にサトシは、女の子の目元を隠した。幾ら悪人とは言え、人間の体の一部が切断されて血が噴き出すなど、トレーナーにもなっていない子には余りにも刺激が強過ぎたからだ。
「ギャアアアアアアアアアアアアアアアアアア!!!!!う、腕が!!俺の腕がああああああああああああああああああああああ!!!!!!!」
「ねえ、あのミジュマル、ヤバ過ぎよ!」
「ここは退散だ!」
そう言うとプラズマ団の4人は逃げ出す。
「ミジュマー!!!」
怒り狂っているトウヤのミジュマル。殺してやると言わんばかりの憎悪を秘めて、プラズマ団に追い打ちをかけようとする。
「戻れミジュマル!!!」トウヤはすぐさま、ミジュマルをボールに戻した。
「何で、どうしちゃったんだよ?」
不安げな表情でトウヤは、ミジュマルのモンスターボールを見つめる。
「もしかしたら、野生になった理由にプラズマ団が深く関わってるんじゃないのかな?」
サトシが言った。女の子を背負っている。
「どうすれば……」
「トレーナーが不安になると、それがポケモンにも伝わって来るんだ。トウヤ、今はミジュマルと向き合ってやるんだ。それで、信じてやって欲しい」
「……」トウヤは無言で頷いた。
「それよりもこの子、酷い状態だ!病院へ連れて行こう!」
一方のムンナとムシャーナは、傷だらけになってしまった。
「ムンナ!ムシャーナ!」
マコモ博士はムンナとムシャーナに駆け寄る。
「急いでポケモンセンターに!」
*
ポケモンセンターに着いてからも、マコモ博士は2体に付きっきりだった。回復したのは翌日。ムンナとムシャーナは、マコモ博士と暮らす事となった。それならば安全との事。2体は、新たな居場所を見つけたのである。
*
そして、サトシとトウヤは病院に行った。女の子の担当医師によれば、順調に回復しているとの事。だが、心に深い傷を負っており、PTSDを患っているそうだ。
「まあ、あんな目に遭わされればなあ」サトシが言った。
「どうなるんだろうな?」
その後、警察署へ行く事になっている。ジュンサーさんから、女の子の事で話があるからだ。
「悪いわね、サトシ君。トウヤ君」
「いいえ、大丈夫です」
「あなた達が保護した女の子についてよ。あの子の身元が分かったの」
そうは言いながらも、ジュンサーさんはどこか浮かない顔をしている。
「何かあったんですか?」
「ええ。それにはまず、8年前に起こった事件について説明する必要があるわ」
ジュンサーさんの説明はこうだ。ガゴメタウンで起こった一家惨殺事件。夫婦が殺され、まだ赤ん坊だった1人娘のメイの行方が分からなくなったのだ。警察の方では、死亡認定していた。
「ま、まさか……」トウヤの顔が真っ青になった。
「あの女の子、イヤ。メイは、カゴメタウンで起こった事件の被害者、ですか?そして、真犯人はプラズマ団って」
「ええ」
それは、余りにも残酷な現実だった。メイの家族は、既にプラズマ団によって殺されていたのだから。流石のサトシとトウヤも、絶句した。
「これからどうなるんですか?」
「保護施設で引き取る予定になってるわ」
「そうですか。最後に1回だけ、見舞いに行きたいんですけど」
「ええ。良いわよ」
また病院に戻った。病室に入る。
「え?」
メイが、不自然なまでの笑顔を浮かべて、室内を掃除していた。普通の感性を持った人間からすれば、不気味である。
「何だよこれ……」
「……」無言ではあるが、プラズマ団の所業によるメイの状態を見て、眉を顰めるサトシ。
「すみません、すみません。働きますから、休まずにやりますから殺さないで下さい」
「メイ。何をしてるんだ?」口を開くサトシ。出来るだけ、優しい口調で問いかけた。
「何があっても泣きません。だから殺さないで下さい」
【まさか、ここまでだなんて】メイを見るピカチュウ。
「あなた達も、手を休めたら私を殺すんでしょう?役に立つから殺さないで……」
何かに怯え、訴えかける様にメイは言う。
「ピカチュウ、電気ショック」
サトシの意図を悟ったピカチュウは、微弱な電撃をメイに浴びせた。メイは気絶する。
「これ以上は、もう……」
だが、メイはすぐに起き上がった。
「あっ、気絶しちゃった。ゴメンなさい。でも泣かなかったから、殺s」
「泣けば良いだろう!」サトシはメイの両肩を掴んだ。
「サトシの言う通りだ!キミは物心つく前に家族を殺されて、プラズマ団に誘拐されたんだ!!そしてそこで、奴隷同然の扱いを受けた!!!これでケロッとしている方がおかしいんだ!」
「オレはメイを殺さない!こうなったからには、絶対に救うって誓う!!!」
「泣いたって良いんだ!悲しい事は全部!また心から笑えば良いんだから!」
「希望が持てないなら、オレたちがその希望を与える!メイは1人なんかじゃない!」
2人の言葉が心に響いたのか、目が潤んでくるメイ。
「戦うんだ、メイ。お前自身の運命と!自分の幸せを勝ち取る為にだ!生きたいんだったら、生きる為に戦え!自分が何者なのかを知りたかったら、それを知る為に!……オレも、トウヤも、ピカチュウも一緒に戦うから……だから」
「オレ達はメイの友達だ!仲間、味方なんだ!もう2度と、『役に立つから殺さないでくれ』なんて言ってみろ!本当に許さないんだからな!」
メイの涙腺が崩壊した。
*
それから3日後の事。メイは、トウヤの実家に養女として籍を入れる事になった。ただ、サトシとトウヤ以外には心を開き切っていない事、本人の希望により、旅に同行する事になった。
「宜しくお願いします!」ペコリとお辞儀するメイ。
メイの服装は変えた。プラズマ団の団員服は、警察を通じて国際警察に回収されたのだ。今の彼女は、スポーディで爽やかな格好をしており、ラグランTシャツの下にリボンが付いたタンクトップらしきものを着ており、スカート風ショートパンツとタイツを履いている。
「ああ。じゃあサトシ」
「さあ行こうぜ!次の冒険へ!!!」
3人はサンヨウシティを後にした。
サトシのポケモン
ピカチュウ♂
ガバイト♂
ミジュマル♂
マメパト♀
ポカブ♂
トウヤのポケモン
ポカブ♂
サンダース♂
ワシボン♂
ミジュマル♀