サトシのイッシュ冒険記 ~真実の救世主~   作:純白の翼

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あの女が出て来ます


EP13 ソムリエールとドラゴンバスター

サトシ一行はヤグルマの森を抜けて次の町、ヒウンシティに向かっていた。今は、スカイアローブリッジで休憩をとっている。

 

「次はヒウンシティか!一体どんなポケモンと会えるんだろうな~?」

 

サトシは次の出会いを楽しみにしながらも、昼食の準備をしていた。メイも、サトシの手伝いをする事に。トウヤは、今自分達の所にいるポケモンの面倒を見ていた。

 

「皆楽しそうだな……ってアレ?」

 

トウヤはある光景を目にした。それは、綿の様なポケモンを、ハゲワシの様なポケモンが苛めていたのだ。

 

「あのポケモン達は?」

 

綿の様なポケモンはモンメン、ハゲワシの様なポケモンはバルチャイと分かった。

 

「サンダース、バルチャイに電撃波!」

 

サンダースの攻撃を受け、バルチャイは逃げ出す。

 

「酷い怪我だな。早く治療を!」

 

トウヤはそう言ってモンメンを抱えてサトシ達の所へ戻って行った。

 

*

 

すぐにモンメンの手当てに入ったサトシ達。幸い、命に別状は無く、安静にしていれば全快になる程だった。

 

「よかったな、モンメン」

 

トウヤはモンメンを撫でる。すると、背景が夕日になった。

 

「もう16時になってますね」

 

風が少し靡くように吹いており、サトシ達はモンメンを連れてスカイアローブリッジを歩く。この時のモンメンは、トウヤが抱っこしていた。

 

夕日がバックになり、とても綺麗に見える。その直後、スカイアローブリッジから風が巻き上がって、他のモンメン達が飛び上がる。

 

「凄いな!」

 

「わあ!綺麗……」

 

夕日と風に乗る沢山のモンメンが、何とも言えない美しい光景を作りだす。

 

「モンメン。お前、このまま仲間と行くんだろ?」

 

トウヤがそう言った。だがモンメンは、トウヤから離れようとしない。

 

「どうした?モンメン?」

 

トウヤが問いかけると、サトシが答えた。

 

「そのモンメン、もしかしたらトウヤの事を気に入ったのかもな」

 

「そうなのか?」

 

トウヤがそう尋ねると、モンメンはそうだと言わんばかりの嬉しそうな顔をする。

 

「良いんじゃないですか?それにトウヤお兄ちゃん、まだ草タイプのポケモンを持っていなかったし」

 

メイが言った。

 

「なあモンメン。お前、本当に良いのか?オレと一緒に行くって事で」

 

モンメンは頷く。そして、サンダース、チャオブー、ワシボン、ミジュマルの側に来る。

 

「分かった、一緒に強くなろうぜ!行け、モンスターボール!」

 

トウヤはボールをモンメンに当てた。すぐにポン!と言う音が聞こえた。

 

「モンメン、ゲットだぜ!」新しくモンメンが仲間に加わった。

 

*

 

ヒウンシティを目指す途中で、大きなフレンドリィショップに立ち寄っていた。品揃えは豊富だ。ここでサトシ一行は、買い出しをする事にした。

 

「と言うわけで、アララギ博士。ハトーボーとクルミルの事をお願いします」

 

サトシはこの後に、アララギ博士へ連絡を入れた。ポケモンを預けるのと、預かっている彼らが特訓出来る様にオーキド研究所にいる自分のポケモンの内の数体を送って貰う為だ。

 

「任せて頂戴!後、オーキド研究所から何体かこちらの方に送って貰うよう手配しておくわね。これなら、イッシュで捕まえた彼らも特訓出来る筈よ」

 

「ありがとうございます!」

 

アララギ博士との話を終えたサトシ。

 

「おや、サトシ君じゃないか!お久しぶり!」

 

サトシを呼ぶ声がした。

 

「あなたは……」それは、意外な人物だった。

 

*

 

トウヤとメイは自由行動していた。サトシとの待ち合わせ場所に向かっている。

 

2人が向かっている途中、すれ違ったピンクの髪のボーイッシュな女の子が落し物をしたので、それを返しに声を掛けた。

 

「君、これ落としたよ」

 

トウヤは、落とし物を渡す。

 

「え?あ、ありがとう!」

 

少女は、どうや他1つのモンスターボールを凝視していたらしく、落とし物をした事に気付かなかったらしい。そして彼女の隣には、イーストイッシュに生息する数少ない他地方のポケモンの1体、プクリンがいた。

 

「その、プクリン……もしかして」

 

「イーストイッシュでゲットしたわけじゃないわ。スクールの卒業祝いに行ったアローラ地方で出会ったププリンを育てたのよ」

 

「成る程な」

 

「お姉さん、顔色が悪いですよ?何かありましたか?」

 

「うん。ちょっとね」

 

「いっその事、吐き出した方が楽になるよ。話聞くからさ」

 

取り敢えず3人は、落ちつける場所に座った。そして自己紹介に入る。少女の名はラングレー。ドラゴンタイプを倒しまくる、ドラゴンバスターを目指すトレーナーだ。

 

「トレーナーになってすぐ、竜の里が出身の、確かカーネルとかいうトレーナーに負けてから、ドラゴンバスターを目指していたんだけど……」

 

ラングレーはそう言って、1つのモンスターボールをトウヤとメイに見せる。

 

「最近努力して進化したツンベアーが、私に攻撃してくるようになったの」

 

トウヤは図鑑でツンベアーを調べる。

 

「おお!カッコいいじゃん!それに、進化前のクマシュンは可愛い!まるで、ジョウトに生息するヒメグマとリングマだ!」

 

「ヒメグマとリングマ?」

 

「これさ」トウヤはメイとラングレーに、ポケモンのカードを見せた。

 

「確かに似てるわね。タイプはノーマルみたいだけど」

 

「でもラングレーさん。ツンベアーが攻撃してくるってどういう時ですか?」

 

「モンスターボールから出した時よ、怒ると暴れ出すのよ」

 

「クマシュンの時はどうだったんだ?」

 

「クマシュンの時はよく私に抱きついてきたわ。それが日課だったの」

 

「それでその後は?」

 

「ソムリエールに診断しに行ったのよ。でも診断結果は……『相性最悪ね!総入れ替えしなさい!!そしてプクリンは主に田舎に生息しているんだから、イッシュのトレーナーはイッシュのポケモンを持つべきよ!すぐに捨てなさい』って」

 

「なんだそりゃ?」

 

「流石にそれは……」

 

そのソムリエールの診断結果を聞き、絶句するトウヤとメイ。そこへ、サトシが来た。何故かデントと一緒に。

 

「2人共、ここにいたのか!」

 

「サトシさん!?」

 

「サトシか。あれ、何でデントさんがいるんだ?」尤もな質問をするトウヤ。

 

「実はさ、この近くで用があるんだって」

 

「トウヤ。デントさんはともかく、そこの彼は?」

 

「ああ。紹介がまだだったな」

 

サトシは、ラングレーに自己紹介した。そして、ラングレーの悩みを聞いた。ソムリエールの診断結果もだ。

 

「デントさん。ソムリエってそういうものなんですか?」

 

「Aクラスソムリエの僕の言葉から言わせて貰うと、ノーだね。幾ら相性最悪だからって、総入れ替えをしろなんて絶対に言わない。ましてや、他地方に住んでいるポケモンだから捨てろなんて以ての外だよ。確かに僕も、悪い所があったらキッパリとそれを言うよ。だけどね、それと同時に改善しようとアドバイスをする。それがソムリエの在り方なんだ」

 

「……」サトシは、ツンベアーの事を聞いて何か心当たりがあるという表情をした。

 

「サトシさん。どうしたんですか?」

 

「ケースが違うかもしれないけど、もしかしたらって思ってさ」

 

「お願い!何でも良いから教えて!」ラングレーはサトシの両肩を掴み、必死に頼んだ。

 

「分かった。でも、参考になるかどうか分からないけど」

 

「構わないわ!」

 

*

 

サトシ、トウヤ、メイ、デント、ラングレーの5人は周りに被害が出ない様に、場所を移動した。

 

「ツンベアーを出すわよ」

 

「何時でも良いぜ!」

 

【一応、オレ達はサトシに危害が及ばない様にスタンバイする事になった】

 

【怪我でもさせたら、半殺しにするまでさ】

 

【ピカチュウ。アンタ、ドス黒い笑みでとんでもない事を言ってるわよ】

 

サトシが何かあった時の為に外から出ているピカチュウ、ガバイト、ツタージャ。

 

ラングレーはツンベアーを出した。

 

【ラングレー!】

 

ツンベアーは、ラングレー目掛けて突進。吹っ飛ばしてしまった。

 

「危ない!」

 

ラングレーをキャッチするトウヤ。お姫様抱っこになっている。

 

「あ、ありがとう」ラングレーが頬を赤らめる。

 

「礼には及ばねえよ」

 

だが、ツンベアーがまたやって来た。

 

「ツンベアー、止まってくれ!」

 

トウヤとラングレーを庇うかのように、サトシが割り込んだ。サトシはツンベアーを受け止めた。

 

『やっぱりな。あいつと同じだ』

 

「なあツンベアー。お前、ラングレーに甘えたいだけなんだろう?」

 

サトシの言葉にツンベアーはピタッと止まった。周りも驚き固まった。

 

「えっ?甘えるってどういう事なの?」

 

「ラングレーの話を聞くと、クマシュンの時からラングレーに抱きついてきたんだろ?ツンベアーになった今でも変わらず同じように甘えたいだけなんだ」

 

「そうか!攻撃じゃなくて、愛情の意味を込めてじゃれつきたいだけなのか!」

 

トウヤが答えた。

 

「そうだぜトウヤ。ツンベアーはクマシュンと同じようにラングレーに接していただけなんだ」

 

「そうなの?」ラングレーがツンベアーに聞く。ツンベアーは首を縦に振った。

 

「だけど、ラングレーが怒った事で自分が嫌われたと思って暴れた、そうなんだろう?ツンベアー」

 

【うん】

 

ツンベアーはサトシの言葉にうなづいた。

 

「そういう事……ごめんなさいツンベアー。私ったら、そうとは知らず、あなたに……」

 

「でも、それはかなり危険なスキンシップだね。だから、手加減する様に訓練すべきだね」

 

「しょうがないよ。ツンベアーは最近進化したばかりだから、まだクマシュンの時の感覚が抜けないんだろうな」

 

「何でサトシさん分かったんですか?」メイが聞く。

 

「うん。ジョウト地方でゲットしたチコリータもさ、ベイリーフに進化して以前と同じようにスキンシップを行ってたんだ。今は軽くのしかかりをするような形に落ち付いたんだ」

 

「だから分かったのか。流石、今まで5つの地方を旅して来ただけの事はある。僕も見習わないとね」

 

「ツンベアー。ごめんなさい、私、ちゃんと理解しないで怒鳴ったりして」

 

【こっちこそゴメンなさい。ラングレー】

 

ラングレーとツンベアーは仲直りした。プクリンも一安心した。これで一件落着……5人はそう思っていた。

 

「そこのあなた!」

 

サトシを呼ぶ声がした。紫の髪の少女だ。

 

「はい?」

 

「あなたのポケモンの相性をテイスティングしてあげ……あ~!!」

 

少女はラングレーを指差した。ラングレーの方も、大変驚いた表情となる。

 

「どうしたラングレー」トウヤが聞く。

 

「この女よ!私のツンベアーを診断したのは」

 

「あなたは、さっきのツンベアーのトレーナーじゃない!総入れ替えはしたの?プクリンは捨てたの!?」

 

「もうその必要は無いわ。ここにいる人達が協力して、解決したから」

 

「ふざけるんじゃないわよ!私の行ってる事は絶対よ!たかがクマシュンなんてそこら辺にいるんだから!」

 

「それは聞きづてならないね。ポケモンソムリエは、トレーナーとポケモンの関係をより良くする為にアドバイスする職業だ。だからこそカベルネ、君は総入れ替えではなく、ラングレーとツンベアーの仲をどうすれば良くなるかアドバイスするべきだった」

 

デントが反論する。どうやらカベルネを知っている様だ。

 

「デントさん。この人知ってるんですか?」メイが聞く。

 

「前にサンヨウジムに挑戦して来たんだ」

 

デントは説明する。簡潔に述べると、カベルネはかつてサンヨウジムでデントに負けて以来、悔しさの余り、デントを見返すべくソムリエールの資格を取ったそうだ。だが、カベルネはまだCクラスのソムリエールだという事が明かされた。

 

「ちょっと待て!テイスティングが出来るのはAランクからじゃないのか!?」

 

「そうだよ。カベルネのテイスティングにより、トレーナーをやめたりポケモンを手放す人が増えたという報告がされているんだ。そして、苦情も来ている。事態を重く見たソムリエ協会は、カベルネを尋問にかける事にしたんだ」

 

「私は、何も悪い事をしてないわよ!」

 

「それを差し引いても、本来はテイスティングは出来ない。人のポケモンに干渉する権限は持ってない。総入れ替えだという場合は、まだポケモンを持ってない人にアドバイスする時だけ適用されるのさ」

 

「ふざけないで!私は、未来のSランクソムリエよ!」

 

「まだCランクの癖に」メイが言った。

 

「出鱈目だったのね!」ラングレーは憤慨した。

 

「解決出来たから良いものの、ツンベアーが捨てられていたらどう責任を取るつもりだ!」

 

「うるさいうるさいうるさい!バトルで私が正しいんだって事を証明してやるわ!」

 

「仕方が無い……」デントはモンスターボールを持つが、サトシが止めた。

 

「オレがやります」

 

「分かった。サトシ君に任せるよ」

 

サトシ対カベルネのバトルが始まった。

 

「田舎者なんて瞬殺よ!マイビンテージ、シキジカ!」

 

「ガバイト、君に決めた!」

 

「イッツテイスティングタイム、シルブプレ!そのガバイトと言うポケモン、見るからに間抜けそうじゃない!捨てなさい!」

 

「ガバイト、炎の牙!」

 

カベルネのテイスティングを無視して、サトシはガバイトに指示を出す。シキジカを瞬殺した。

 

「ちょっと何するのよ!」

 

「Cランクが粋がるなよ……」

 

冷静ではあるが、激怒しているサトシ。メイは今にも泣きそうなっているし、ラングレー、デント、トウヤは冷や汗をかく。カベルネに至っては、本能的な恐怖を感じていた。

 

「マイビンテージ!ハーデリア!」

 

カベルネはハーデリアを繰り出した。

 

「突進よ!」

 

「アイアンヘッドで迎え撃て!」

 

ガバイトの方が圧倒的だ。ハーデリアは立ってこそいるが、もう満身創痍だ。

 

「今だ!ドラゴンクロー!」ハーデリアは倒れた。

 

「戻ってくれガバイト。ピカチュウ、頼むぜ!」

 

【うん!】

 

「認めない、認めないわ!田舎のトレーナーに!まして、ソムリエでもない新人トレーナーに負けるなんて許されないわ!」

 

何とカベルネは、ダルマッカとフタチマルを繰り出して来た。

 

「カベルネ!それは反則だ!!」デントが声を荒げる。

 

「うるさい!勝てばよかろうなのよ!」

 

「ピカチュウ、ボルテッカー」

 

ピカチュウは、時を止めたかのような超スピードでダルマッカとフタチマルにラッシュを仕掛ける。

 

【無駄無駄無駄無駄無駄無駄無駄無駄無駄無駄無駄無駄……無駄ァ!!!】

 

ダルマッカとフタチマルは倒れた。後にこの2体は、サトシのピカチュウの事を黄色い悪魔と呼ぶ様になり、それはイッシュの殆ど全てのポケモンに浸透していったという。

 

「凄いわ、あのピカチュウ。2対1と言うハンデをものともせず、カベルネのポケモンを一方的に秒殺したわ。それにガバイト、サトシは私にドラゴンタイプの戦い方を教える為に」

 

「そ、そんな。田舎のトレーナーと、見るからに弱そうな雑魚電気ネズミに負けるなんて……」

 

呆然とするカベルネ。

 

「あの女の敗因はたった1つ……サトシを怒らせたことだな」

 

「ですね、トウヤお兄ちゃん」

 

その後、カベルネはソムリエ協会に連行された。ただ、デント曰く初犯なので剥奪は無いだろうとの事。精々ペナルティだけだろうといった。ちなみにデントもソムリエ協会に赴いたのだった。

 

「ありがとう。サトシと出会わなければ、ツンベアーとは別れていたかもしれないし、トウヤがいなかったら怪我してたわ」

 

「別に良いよ」

 

「良かったじゃんラングレー。ツンベアーとの関係が修復出来てさ」

 

サトシ、トウヤの順で言った。

 

「そうね。しばらくは、ツンベアーにプクリンと向き合ってみるわ」

 

ラングレーは時々、トウヤをチラリと見ていた。トウヤは少しだけ顔をそむけた。

 

「サトシ、今度会ったらガバイトとお手合わせ願いたいわ」

 

「良いぜ!受けて立つ!」

 

ラングレーと別れ、サトシ一行はヒウンシティを目指して旅を再開したのだった。

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