ジム戦からの帰りの事。サトシは1体のポケモンに出会った。
「このポケモンって……」
図鑑を開くと、ユニランと表記されていた。だが、体色が違った。特殊な液体が水色だったのだ。
「色違いか」
ユニランはサトシを睨んでいる。そして、突然エスパー技で攻撃を仕掛けてきた。
「うわっ!?」
サトシはユニランの念力を、スーパーマサラ人の身体能力で避ける。
「いきなりどうしたんだ?ユニラン」
ユニランはサトシを笑って挑発する。
「そうか。構って欲しいのか。ならズルッグ、君に決めた!!」
サトシはズルッグを出した。ユニランとバトルが始まる。
*
1時間が経過した。ユニランはもう倒れそうになっている。ズルッグは悪タイプなので、自分のサイコパワーが全く効かないのだ。
「ユニラン。やっぱお前は強いぜ」
サトシがそう言うと、ユニランも笑った。イタズラをする時のものではなく、純粋に心からのものだった。
「オレ達と一緒に行こう!」
サトシがモンスターボールを向けると、ユニランは自分から入って行った。揺れていたが、あっさりゲット出来た。
「ユニラン、ゲットだぜ!」
「凄いですサトシさん!」
*
そんなサトシとユニランの光景を、1人の壮年の男性が見ていた。
「あの少年。イタズラ者で有名な色違いのユニランを心を通わせたか。彼はいずれ、ワシを超える。イヤ、それどころかポケモンの世界を良い意味で変えてくれる存在となる」
男性は、別の場所を振り向く。そこには、トウヤに敗れ、シゲルとシンジから容赦ないダメ出しを受けて、トレーナーとして再起不能寸前に陥ったずぶ濡れのシューティーが路上に座り込んでいたのだ。
「さて。ワシも行くとするか」
男性はシューティーの元へ行く。これが、シューティーの人として、そしてトレーナーとしての大きな転換期になるのであった。
*
その翌日、トウヤもジム戦に挑戦した。モンメン、サンダース以外のメンバーで挑み、残り1体になりながらもどうにかしてビードルバッジをゲットしたのであった。
そして、ヒウンシティ南東。ここに、サトシ、トウヤ、メイの3人はいた。サトシが持つリバティチケットで、リバティガーデン島へ行く為だ。
「おや。それはリバティチケット……リバティガーデン島へ行かれますか?」
「はい!」
「丁度いいタイミングですね。そろそろ出航時間なので、乗船してお待ちください」
船員の指示に従い、乗船。3分後、船はリバティガーデン島へ出発した。
「どんな場所なんだろうなぁ」サトシがワクワクさせながら言った。
「リバティガーデン島。これから向かうその島は、昔富豪が所有していたんだよ」
「トウヤお兄ちゃん、詳しいんですね」
「まあ、何処へ行くにも計画を立てて、事前に情報収集するのは好きだからさ。話を戻すよ。その富豪のペットして、幻のポケモンが飼われていたという噂があるんだ」
「幻のポケモン!?」サトシが目をキラキラさせていた。
「飽く迄噂に過ぎないけどな」
【あ。これは……】トウヤの奴、フラグ立てたなと思ったピカチュウであった。
【ピカチュウどうしたの?何かを察した様な顔しちゃって】
ツタージャが話しかけて来た。
【どうもこうも無いよ。恐らく、サトシのポケモンホイホイが発動するんだって思っただけさ】
【差し支えなければで良いけど、教えて欲しいわ】
【信じて貰えない前提で言うよ。僕ととサトシは、結構な頻度で伝説のポケモンに会ったりするんだ。そして、その度に騒動に巻き込まれる】
【堪ったものじゃないわね。まあ、しょっちゅうプラズマ団と戦ったり、この地方の非常識トレーナーをフルボッコにしてるから驚かないけど】
【ありがとうツタージャ。それにね、初めて旅立った日だって、ジョウト地方の伝説のポケモンホウオウを見たんだからさ】
【初めてよ。彼の様なトレーナーって。まあ、トウヤもかなり感化されている様だけど。だって、私達に進化を強要しないし、バトルだって例え相性が悪くても戦いたいって意思を出せば、それを汲み取って的確な指示を出して圧勝しちゃうんだから】
【それがサトシだよ。サトシのポケモンには訳アリが多くてね。中には、チャオブーみたいに弱いからって理由で捨てられた子もいるんだから。そして、僕みたいに進化を望まないポケモンのもいるし。そんなポケモンばかりゲットしていたら、ああなるよ】
【でしょうね。フシギダネさんやリザードンさん、ゼニガメさんにゴウカザルさんのお話を聞くと】
【君の場合は自分から切り捨てたんでしょ?】
【ええ、そうよ。元は金持ちの女のポケモンだったわ。しかも、性別メスで隠れ特性持ちって理由で引き抜かれたけど、自分の利益の為の道具としてしか見てなかったわね。しかも、したくもないオスのジャノビーと政略結婚させられそうになったから逃げだそうって考えたの】
【君も君で濃い経歴を送っているね】
【あなただけには言われたくないわよ】
【それで結局どうなったの?】
【その女の実家が経営する企業が起こした不祥事で破産よ。私は、これ幸いにとモンスターボールを破壊して逃げたわ。それからはあなた達と出会うまで野生で生きてたわ。その女、今は路頭に迷った挙句に風呂に沈められたって風の噂で聞いたわ】
【リザードンが聞いたら、『俺もヒトカゲの時にそれだけの度胸があれば』って言いそうだ】
そんな会話しながら、リバティガーデン島の到着を待つピカチュウとツタージャであった。
*
そして、リバティガーデン島に到着した。
「ここがリバティガーデン島……」メイが呟く。
「観光地なのに湿気てんなぁ。もっと栄えているってのに。人が1人もいねえじゃん」
「取り敢えず行ってみようぜ、トウヤ、メイ」
3人は歩き出した。しばらくすると、人がいた。
「古い灯台しかない記念公園で、何をしようとしているのかしら?プラズマ団って人達は」
「すみません。プラズマ団もここにいるんですか?」
「ええ、灯台の中に用があるって」若い女性が答えた。
「うわーん!白い服の人達怖いよー!」
「わしの孫を泣かせたんじゃ!年寄りだと思って舐めてたら……フガフガ」
「プラズマ団の奴ら、酷い事をするんだ」男性が言った。
「島を占拠して何をしようって言うんだ?全く以って怪しい連中だ!」
サングラスの男性も憤慨している。
「本官のポケモンでも太刀打ち出来なかった。プラズマ団め!」
職員の男性が悔しそうに言った。
「行ってみよう」トウヤが言った。
3人は灯台へ向かって行った。途中プラズマ団が襲い掛かって来たが、トウヤとサトシはそれをものともせずに圧倒的な実力差で倒してしまった。これには観光客も、島を警備する職員も驚いた。
「彼らは一体何者なんだ?」
「本官でも敵わなかったプラズマ団を、こうもあっさりと……」
「まだ子供なのに……」
「何が目的だ?答えろ」
有無は言わさないと言わんばかりの威圧感を以って、サトシはプラズマ団に尋問する。
「こ、ここには200年前に作られた灯台の地下で幻のポケモン『ビクティニ』が眠っている!身勝手な人間がビクティニを苦しめるから、我らが救済しようとしているだけだ!」
「ポケモンの意思を蔑ろにして、無理矢理解放しようとする奴等が言っても何の説得力にもならねえな。サンダース、電撃波」
プラズマ団を失神させた。そして、灯台の中へと入って行った。
「ああ!ミネズミ、ズルッグ!」
「勝負あったな」
灯台内部でもプラズマ団がいた。だが、複数のリーグに出ているベテランのサトシは余りにも相手が悪過ぎたとしか言いようがない。
「ビクティニのエネルギーを浴びると、あらゆる勝負ごとに勝てるというのに……無念だ」
「だったら尚更、渡すわけにはいかないな。お前達からビクティニを守るぜ」
そして奥へ進む。ビクティニがいた。今まさに捕まえようとしていた所だ。
「ビクティニはプラズマ団が有効活用させて貰う!ついでに、お前達のポケモンも開放してやるぞ!」
プラズマ団はミルホッグを出す。
【サトシ。ここは私にやらせてくれないかしら?】
「ツタージャ、お前がか?」
【ええ】
「分かった。任せるぜ」
「居合い切り!」
「リーフブレードで応戦だ!」
ミルホッグとツタージャの技がぶつかり合う。僅かにツタージャが押していた。
「何故、能力ではミルホッグの方が上だ!なのに、進化もしていないツタージャが押しているだと!?有り得ない!ましてトレーナーを平気で切り捨てる、冷徹で自分以外は虫けらなんだってくらいプライドが高い性格で有名なツタージャが」
【この男】
「確かにツタージャをバトルに出して勝った時もあるぜ。でもオレは、掴み取った勝利を自分だけのものにはしないし、ポケモンが持つ力を自分の力だって錯覚しない。仲間と一緒にたたっかからこそ勝てたんだって姿勢を絶対に忘れない。それに、仲間の言葉にも耳を傾ける。それがオレのやり方だ。絶対にそのスタンスは変わらない。今のバトルも、ツタージャが出たいという意思を組んでバトルしてる。だからこそ、オレはツタージャが勝てる様に精一杯出来る事をやるだけさ。それに……」
【?】
「ツタージャは冷徹なんかじゃない!バトルだけじゃなくて、生まれたばかりのズルッグの面倒を見てくれたりする、仲間思いの優しい奴だ!そんなツタージャがオレは好きなんだ!上辺だけでオレのポケモンの事を分かった気になるな!」
一瞬、ツタージャの顔が赤らめた。だが、すぐに気を取り直した。自分が志願したのだから、無様な敗北は許されない。絶対にサトシを勝利に導いて、ビクティニを助ける。改めてそう決意したツタージャは目を閉じる。その瞬間、体が光り始めた。
「ここに来て進化だと!?」
ツタージャはジャノビーに進化した。
「クソ!催眠術で眠らせろ!」
「竜巻で押し返せ!!」
竜巻は催眠術を飲み込み、ミルホッグに襲い掛かる。ミルホッグは眠ってしまった。
「起きろミルホッグ!それにしてもジャノビーはどこへ……」
竜巻が収まると、ジャノビーがどこかに消えていたのだ。
「ジャノビー、最大パワーでリーフストーム!!」
何とジャノビーは真上にいた。そこからリーフストームを叩き込み、ミルホッグは戦闘不能となった。
「チクショウ!」
「やったぜジャノビー!それに、進化おめでとう!!」
【礼には及ばないわよ】でも、悪くないわねと感じるジャノビーであった。
ビクティニはメイに助け出されて、すぐさま仲良くなった。
*
その後、プラズマ団は全員逮捕された。警官に交じって、アララギ博士がやって来る。
「トウヤ君、サトシ君。ありがとうね」
「別に大丈夫です」
「ビクティニは幻のポケモン。その小さな体からあふれ出るエネルギーは、ポケモンや人が触れるといつも以上に力を発揮出来るのよ」
「だから、その力を自分の野望の為に悪用する連中ものさばって来たと」
「そうよサトシ君。ここを所有していた富豪は、本気でビクティニを助けようとしたんだと思うわ。この灯台の地下に隠すという形で。勿論、部屋に閉じ込めるってやり方は間違っていたけど」
「成る程なあ」トウヤが空を見上げながら言った。
「さて。私はそろそろ行こうかしら?」
「待ってください博士!」
「どうしたの、トウヤ君」
「何でビクティニのイッシュ図鑑のナンバーが0なんですか?」
「その質問をしてくれて嬉しいわ。それはね、ポケモン図鑑を持って旅するトレーナーに、ビクティニの勝利を齎すパワーが与えられる様に……そんな願いが込められているという話があるのよ」
「博士!高速警備船にプラズマ団を全員乗せました!すぐにお乗りください!」
警官が駆け付けてそう言った。
「はーい!すぐに行きます!」
アララギ博士は高速警備船へと向かって行った。
「ポケモンの能力、その凄さに心を惑わされて悪用しようとするだなんて……でも、正しい心で向き合って行けば明るい未来が待っている筈!オレはそう信じているぜ」
「そうですね!サトシさんの言う通りです!」
「それでビクティニ。どうするんだ?もう自由なんだぜ?」
トウヤがそう聞くと、ビクティニはメイに寄り添った。
「そうか。分かった」トウヤはメイにボールを渡した。
「これでビクティニをゲットしてやりなよ」
「良いの!?」
「世話、ちゃんとしろよ」
「ありがとう!」ビクティニ自らメイの持つモンスターボールに入って行った。
「宜しくね、ビクティニちゃん」メイはモンスターボールにそう語り掛ける。
「じゃあ行くか。ヒウンシティに戻って、次はライモンシティだ!」
「そうだな!トウヤ、メイ。行こう、次の冒険へ!」
こうしてリバティガーデン島を後にしたサトシ一行であった。