ライモンシティを目指し、4番道路を歩くサトシ一行。4番道路は砂漠地帯だ。よって、最低8つもの中間地点を潜り抜けてライモンシティを目指す事が推奨されている。
3つ目の中間地点で休憩している一行。近くで野生ポケモンやトレーナーとバトルしているのだ。この時にクルマユはハハコモリに最終進化。ダンゴロをゲットしたのだった。
「それにしてもサトシさん。昨日はお見事でしたね」
「どうしてだ、メイ」
「だって、野生の状態のダンゴロと心を通わせて密猟者を撃退するなんて普通出来ませんから」
「その一件でダンゴロを友情ゲット。かなり特異だとオレは思うけどなぁ」
「ハハハ。そうかな?」
「もっと自分の事を誇っても良いと思うぜ!」
一時的に同行している、赤髪の大柄な少年がサトシにそう言った。
「ですよね、ケニヤンさん」
今の手持ちはピカチュウ、ガバイト、ジャノビー、ミジュマル、ガントル、ユニランの6体だ。アララギ研究所と連絡を取る場所があり、そこで定期的に入れ替えているのだ。
そして、この4番道路でケニヤンと出会い、バトルをして友人になった。彼もライモンシティを目指しているらしく、それならば一緒に行こうという事になったのだ。
『まあ、シゲルとシンジがいたのは予想外だったな。しかも、シンジの方はいつの間にかフシギダネ、ヒノアラシ、ミズゴロウ、タツベイをゲットしていて……フシギダネの方はオレのフシギダネとハルカのフシギバナの子供、タツベイは氷タイプの強力な耐性を持つ特異個体だったし』
シゲルの方はナナカマド研究所からの一定期間の所属、シンジに至ってはサトシ達と同じくジム巡りだ。
この時のシンジは、シンオウリーグでの自分とのバトルでリザードンやジュカイン、公式戦無敗のオニゴーリを使わなかった事が不満だったようで、今度バトルする時は3体と戦わせろと要求されたのだった。
それでも、知り合いがいるだけでも本当にありがたかった。ここ最近、イッシュのトレーナーからの小言や罵倒が多かったので、思った以上に神経を尖らせすぎていたのだ。それに、自分は今のチームのリーダーである。余計に、トウヤやメイに変な気を遣わせたくはなかった。だからこそなのだ。言葉には出さなかったが、サトシは2人には感謝していたのだ。
中間地点での十分な休息を取ってから、サトシ達は再び足を進めた。
「相変わらずの砂嵐ですね」
4人は今、ゴーゴーゴーグルを付けながら進んでいた。
「そうだ。この先には、砂風呂があるんだ。健康に良いらしいぜ。サトシ、メイ、ケニヤン。そこ行ってみないか?」
「砂風呂……か」サトシが呟く様に言う。
「良いな!それ!」ケニヤンは賛成の様だ。
「良いですね。サトシさん、最近ストレスが溜まってきているし。リラックスした方が良いですよ」
そんなわけで、砂風呂がある場所向かう事に。急いでいるわけではないので、ゆっくりと行った。
「もう少しだな……」
砂嵐もやみ、目的地までもう少しだ。
「ここまで来るのに少し時間が掛かって……キャァ!」
「メイ!」
トウヤが咄嗟に、落とし穴という名の砂地獄に落ちそうになったメイに手を伸ばし、何とか引き上げる事に成功した。
「ありがとう、トウヤお兄ちゃん」
「気にすんな。それより大丈夫か?」
「ええ」
「マズいな。ここ、落とし穴という名の砂地獄が所々にあるのか」
「ん?」サトシが何かを見つける。
それは、4足歩行の鰐の様な姿をしたポケモンだ。一瞬ワニノコかなと思ったサトシ。だが、すぐに別のポケモンだと判断した。
「メグロコか」トウヤが即答した。
「あいつらが落とし穴を作ったのかな?」
「どうしてあのメグロコは、サングラスをかけているんでしょうか?」
しばらく4人と、メグロコの見つめ合いは続いたが、やがてメグロコは踵を返した様に去って行った。
「とにかく、砂風呂へ向かおう」トウヤが言った。
しばらく歩くと、砂風呂をやっている店に到着した。だが……
「ひでえな、こりゃ」とケニヤン。
「仕切りテープが貼られているし、所々に穴があるぜ」
「しかもトウヤ。木も石も倒れている。悲惨だな」
「それ、メグロコの仕業さ」
そんな4人の後ろに、男の子がやって来た。
「あなたは?」メイが質問する。
「僕はダン。詳しい話は建物の中でするよ」
4人はダンの案内で、砂風呂を経営している建物内に入っていた。ただ、そこで意外な人物と再会する事になった。
「あ!お前は!」トウヤが男の向けて指をさす。
ジュナイパーを常に連れているデューンがいたのだ。シッポウ博物館で、聖杯と古代の王冠を盗んだ張本人だ。
「あの時のコソ泥さん!?」
「俺はコソ泥じゃねえよ、お嬢ちゃん。トレジャーハンターだっての」
デューンが、そんなものは聞き飽きたと言わんばかりの表情をしながら言った。
「うるせえ!テレジャーハンターだかブラジャーハンターだか何だか知らねえが、アレをコソ泥と呼ばずに何て言うんだよ!」
「落ち着けよトウヤ!メイが見ているだろ!!」
デューンに掴み掛ろうとするトウヤを羽交い絞めにして抑えるサトシ。そんな光景をメイは見ていた。トウヤに対して、侮蔑の視線を投げかけて。
「トウヤお兄ちゃん、最低」メイは、声のトーンを落としてそう言った。
「そんな……」
トウヤが落ち込む。それを慰めるのは、彼のポケモンの中でも最も付き合いの長いチャオブーとサンダースだ。
「言っておくが、あんな偽物に用は無いのさ。分かった瞬間、さっさと返しに行ったぜ」
「嘘つくな!」トウヤが吠える。
「嘘なんてつくメリットがあるか?俺は生まれつき、宝や金目の物に対する真贋を見抜く事が出来てね。まあ、そんな事はどうでも良い。今度こそ本物を手に入れようと、しらみつぶしにイッシュを駆け巡っていたのさ。目的の代物は2つ!飲めばどんな傷をも癒し、寿命すら僅かに引き伸ばす事が出来る命の水を作り出す『聖杯』。そして、波導の勇者アーロンがイッシュに遺した、精神波導を高める剣『デュアルブレード』を求めてな。そしてありそうな場所を特定した」
「アーロン……
「それってどこなんだよ?」ケニヤンが言った。
「この先にあるリゾートデザート。そこの古代の城という遺跡さ。そこを隈なく探したけど、見つからなかったよ。代わりに見つけたのは、化石2つさ。羽根の化石と蓋の化石」
デューンは、見つけたと言う化石を4人に見せた。実は、拾い物はこれだけではないのだが敢えて黙る事にした。
「これがポケモンの化石」サトシは、マジマジと見た。
「そしてもう1つ、これはショッキングな事があってな」
デューンはそう言って、ポケモンのタマゴを取り出す。
「これは何ですか?」
「これは、メラルバのタマゴさ。ただ、その入手方法は……」
「サトシ。タマゴって、放置されるものなのか?」トウヤが聞く。
「いいや。そんな事は無いぜ。デューン、何か訳アリって感じだな」
泥棒をするデューンではあるが、これらの話は本当だと感じたサトシであった。
「ちゃんと親はいたぞ。色違いの、メスのウルガモスがな。だが、俺が来た時には既にプラズマ団に殺されていたのさ」
「何て酷い事するんだそいつらは!」ケニヤンが憤慨する。
「救えなかったからな。せめてもの罪滅ぼしで、俺が引き取る事にした」
受け入れ難い話を聞いてしまい、4人はショックとなる。デューンは、それを見計らって話を進める。
「それでだ。話は大幅に変わるが、砂風呂の事だったな。メグロコは、こっちからちょっかいを掛けない限りは襲う事は無い。なのに暴れている。これは、何かを訴えかけているんだろうな」
「何ですか?それって」ダンが聞く。
「どうやらここの地形を調べてみたら、間欠泉がある事が分かってな。元々ここが海だったことが関係しているからなのかは分からないが……」
『ここ、昔海だったのか』サトシが思った。
「間欠泉?」メイが?マークを浮かべる。
「地面からお湯が出るって事だよ」ケニヤンが答える。
「そう。暴れ回っていたのは、熱湯がここら辺一帯に降り注ぐから、ここから離れろって事さ。大方ここに住んでいるポケモンの避難は終わっているが、まだ一部残っている。だから俺がやるんだ」
デューンが立ち上がって、建物から去って行った。
「どうする?サトシ」
「決まっている。オレはやるぞ!トウヤは?」
「元よりそのつもりだよ」
「オレもあんな事を聞かれたら、残っているポケモン達を助けるぜ!」
「私も、出来る事無いかも知れないけどやります!!」
4人は外に出た。
「ハトーボー、君に決めた!」
「頼む、ウォーグル!!」
「ダゲキ、オコリザル、出て来いやぁ!」
「ビクティニちゃん、お願い!!」
「「風起こし!!」」サトシとトウヤが同時に叫ぶ。
「ダゲキ、オコリザル。風に乗って、取り残されているポケモンを助けるんだ!」
「お前ら……」
「デューンの味方をするわけじゃない。取り残されているポケモンを助ける為だ」
「サトシ……それで良い。行くぞ、お前達」
デューンは、既に出しているジュナイパーを除く残りの5体を出した。その内訳は、バシャーモ、エンペルト、クワガノン、オンバーン、ミミッキュだ。
「バシャーモとエンペルト以外見た事の無いポケモンだ!あれ、よく見たらピカチュウがいるぞ?」
「とにかく今は、取り残されたポケモンの方を!サトシさん!」
「ああ、そうだったな」
デューンのポケモン達、そしてメグロコを始めとする4番道路とリゾートデザートを住処にしているポケモン達の協力もあって、取り残されたポケモンの救助に成功した。
その直後、水柱が発生した。ダンと彼の家族曰く、これからは温泉でやっていくつもりだとの事。余談ではあるが、サングラスをかけたメグロコは、サトシとピカチュウを終始凝視していた。
*
サトシ、トウヤ、メイ、ケニヤン、デューン、ダン、そしてポケモン達は温泉を楽しんでいた。
「サトシ。さっきの質問に答えるぜ。コイツはミミッキュってポケモンだ。ゴースト・フェアリータイプだよ」
デューンは、ミミッキュを撫でながら答えた。
「デューン、フェアリータイプって?」
「カロスで発見された新タイプだよ。最大の特徴は、ドラゴンタイプの技を無効化して、逆にフェアリーの技はドラゴンポケモンに効果抜群だ。他にも、格闘やイプや悪タイプに強い。だが、弱点も存在する。それは、鋼タイプや毒タイプには滅法弱いのさ」
『何か、ラングレーが欲しがりそうなタイプだな、それ』トウヤはそう思った。
「このイッシュだと、モンメンやエルフーンが持っている筈だったぞ」
「マジか!」トウヤが強く反応した。そしてモンメンを出す。
「聞いたか?お前、新しいタイプ持ってるんだってさ。フェアリータイプの技を一緒に覚えようぜ!」
モンメンは頷いた。
「さて、ここにも無かったからな。振り出しに戻っちまった。俺は行くぜ」
「なあアンタ。何で聖杯を欲しがるんだ?」ケニヤンが聞いた。
「さっきも言った筈だぞ。聖杯に入れた水を飲めば、どんな傷をも癒し、少し寿命を延ばすことが出来る。それだけの事だ」
デューンは、どこか寂し気な表情をしながら答えながら着替えて、温泉を後にした。
「何か訳アリって感じだな」
「少なくとも、私利私欲で聖杯を狙っているようには見えなかったし」
こうして、温泉でリラックスをしたサトシ一行は、再びライモンシティを目指して足を進めるのであった。
*
【……あの電気ネズミを連れたトレーナー、相当な実力者だな。ネズミの方も常識はずれだし】
サングラスのメグロコは、群れのリーダーを引き渡したのち、4番道路を後にした。無論、サトシとピカチュウを追って。