サトシのイッシュ冒険記 ~真実の救世主~   作:純白の翼

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EP19 創造神からの頼み

ここは、ライモン総合病院。サトシの担当医は、トウヤ、メイ、チェレン、ベル、ベルパパ、アララギ博士、シゲルに説明をしていた。

 

「彼は疲れ果てたのでしょう。かなり神経を尖らせていたのではないでしょうか?」

 

「恐らくは私が……」ベルパパは事情を話す。

 

「いいえ。それはきっかけに過ぎません。恐らく、もっと前からの筈です」

 

「実は、その事についてなんですけど」

 

トウヤが答える。旅の始まりからここまでの経緯を話した。サトシは行く先々で、イッシュのトレーナーから田舎者だとかもっと酷い差別的な発言をされていた事を。その度にトウヤとメイは大丈夫かと聞いた。サトシは大丈夫だと言っていたが、認識が甘かった。自分達が思っているよりも強くないのだと痛感させられた。

 

シゲルは、トウヤの懺悔とも取れる話を何も話さずに聞いている。だが内心は、心底穏やかでは決して無かった。

 

「成る程。彼は別の地方から来ただけで、そこまで蔑まされていたとは。酷な話としか言えませんね。ですが、明日にはきっと目を覚ましていると思います。それでも、1週間は安静にしていなければなりませんから。それでは、何かあったら私を呼んで下さい」

 

医師はそう言って出て行った。

 

「取り敢えず、サトシの様子は僕が見ています。トウヤ、メイちゃん。君達はどうするんだい?」

 

「オレ達も同行します。シゲルさん」

 

「分かった。もし1人だったら、どうなっていたか分かったものじゃないからね」

 

サトシの看病については、シゲル、トウヤ、メイが担当する事になった。サトシの病室には、ピカチュウが留守番していた。が、3人が来た時には既に夢の中にいたのだった。

 

*

 

「ここは?」

 

【サトシ!】

 

ピカチュウがサトシに駆け寄る。

 

「ピカチュウ!」

 

【良かったよ!いきなり倒れたからどうなる事かと思ったさ!】

 

「心配してくれてありがとうな。でもオレ、ベルのお父さんに勝って、そこからの記憶が全く無いんだよな。でも、本当にここどこなんだろう?テンガン山の槍の柱の様にも見えるけど……」

 

「ここは始まりの間と呼ばれる場所だ。サトシよ」

 

声がした。サトシは驚いた。何故このポケモンがいるのだろうと思ったのだから。

 

「アルセウス!」

 

「久しぶりだな」

 

「オレ、死んだのか?」

 

「イヤ。まだ死んではいない。お前とピカチュウの意識だけ、ここに私が飛ばして来たのだからな」

 

「そうだったのか」

 

【流石は創造神。やる事のスケールがデカすぎるよ】

 

「アルセウス。ここにオレたちの意識を飛ばして来たという事は、只雑談する為じゃないだろ?」

 

「そうだな。本題に入ろうか」

 

「……」

 

「この地より遠くにあるイッシュという地の事だ。今お前達はそこを旅しているのだろう?」

 

「そうなんだ」

 

「イッシュには今、悪しき者達が力を着々と身に付けている」

 

「プラズマ団の事か?」

 

「そうだ。王と呼ばれる者は、理想を司る黒き竜を従える気だ。その力を以って、人とポケモンの絆を引き裂こうとしている」

 

【……Nの事か。ポケモンを大事にしているのは分かるけど、僕とサトシを引き裂こうとしている。だからあいつは、敵なんだ】

 

「正直に言おう。イッシュのトレーナーでは、プラズマ団の征服活動を止める事は絶対に出来ない。それが例えチャンピオンでもな」

 

「そんな!」

 

「強いて言うならば、サトシと共に旅をしている少年は対抗しうる力を持ってはいるのだが、時間と経験が不足し過ぎる」

 

アルセウスの言う人物とはトウヤの事である。

 

「だったら、アルセウスが来てくれれば、何とかなるんじゃないのかな?」

 

「済まないなサトシよ。数百年前、ギシンによって負わされた傷が、今でも完全に癒え切ったわけではない。そうでなくとも、私はイッシュの地を救う事については反対だ」

 

「どうして?」

 

予想こそついていたが、それでもアルセウスの真意を知りたかったので質問する。

 

「人間はな、サトシよ。必ずしもお前の様な人間ばかりとも限らない。いや、寧ろ平気で他人やポケモンを傷つけたり、騙したりする輩の方が多い位だ。お前も、多くの地方を旅しているのであれば、それは嫌という程分かるであろう?」

 

「否定はしないよ。でも……」

 

「それでもだ。幾ら何でも、他者を露骨に見下したり、ゲットしたポケモンを平気で捨てたり、無理矢理進化させたりする者が余りにも多過ぎる。自分の欲を満たすだけの塊が大勢だ。だからイッシュの地が貪られても構わないと思っている」

 

「……でも、トウヤの様にこれからの未来を担うトレーナーも少ないけどそれなりにいる。直接じゃないにしても、そういう人達にチャンスをやって欲しい!虫のいい話ではあるけれど……」

 

サトシの嘆願により、しばらく考えるアルセウス。そして口を開いた。

 

「そうだな。今回の一件を機に、どこまでイッシュの地の者達が出来るかを見極めるのは良いかも知れぬ。それにだ。私も何かしらの形でサトシの力になれればと思ったのでな」

 

「アルセウス。一体何を?」

 

アルセウスは、自身の周囲に17枚のプレートを出現させた。その内、火の玉プレート、氷柱のプレート、緑のプレート、精霊プレートをサトシとピカチュウの目の前に配置する。

 

「これを渡すのか?」

 

「よく見ていると良い」

 

4つのプレートがアルセウスの放った聖なる光によって融合した。すると現れたのは、虹色に輝く小さな宝石だった。

 

「これは?」

 

「スピリット・ジュエル……お前とピカチュウのみ使う事が出来る。限界を超えた時、大いなる力を発揮する。これを貸し与えよう」

 

「そんな!出来ないよ!命の宝玉を作っただけでも、不死身じゃなくなったのに!また命を削ってまで作ったスピリット・ジュエルは受け取れないよ!」

 

「サトシよ。何故私が、命そのものと言えるプレートの一部を使ってスピリット・ジュエルを渡そうと思ったか分かるか?」

 

「え?」

 

「それはお前が信頼に値する者だと思っているからだ。本当ならば、イッシュの者達が蒔いた種は、その者達が解決すべき事。だが、もう自分達ではどうしようもない所まで来ている上に、サトシも関わっている。私が出来るのは、サトシの手助け位だ」

 

アルセウスが自分にスピリット・ジュエルを託した真意を聞き、サトシはジュエルをみた。そして、決意を決めた表情に変わった。

 

「分かったよ、アルセウス。スピリット・ジュエルはプラズマ団を、イッシュを蝕む闇を解決してから返すよ!その時に、意識だけをまたこっちに送ってくれないか?」

 

「分かった。それまでは、お前達の事を見守ろう。そして……」

 

サトシがアロエから貰った珠が独りでに浮き、アルセウスの前まで来た。アルセウスは、何かの力を送り込み、そしてサトシに返却した。

 

「それを対になるポケモンに持たせる珠の在り処が分かる様にした。近くまでくれば、自然の探知出来るであろう」

 

「ありがとう、アルセウス」

 

「礼には及ばない、我が友よ。それでは、健闘を祈る」

 

そして、サトシとピカチュウは目の前が見えなくなってきた。

 

*

 

「!?」サトシが起きる。

 

「確か、バトルに夢中になって、凄く神経使って……ううっ、そこからが思い出せない」

 

【サトシ……】ピカチュウも目を覚ましたようだ。サトシに駆け寄る。

 

「ピカチュウ、心配かけてゴメンな」

 

【気にしないで】

 

サトシの右手には、スピリット・ジュエルが握られていた。

 

「これ、オレとピカチュウだけしか使えないって言ってけど……今は仕舞っておこう」

 

サトシがスピリット・ジュエルをバッグに仕舞うと同時に、ドアが開いた。シゲルだ。

 

「ようやく起きたみたいだね、お寝坊さんのサ~トシ君」

 

「シゲル……どうして」

 

「決まっているじゃないか。お見舞いだよ」

 

「そうなのか。オレ、どの位寝ていたんだ」

 

「3日間さ。トウヤ君やメイちゃんはかなり心配していたよ。それに、お祖父様やママさんにも報告したよ。それでも、旅を続ける気なんだろう?」

 

サトシは沈黙するが、シゲルはそれを肯定と受け取る。

 

「ハア。そう言うとは思ったけどさ。今回みたいな事があると、余計心配になるよ。せめて、タケシの様な年上の旅の同行者がいれば安心なんだけだけどさ」

 

「無理矢理イッシュに来いなんて言えないよ。今、ポケモンドクターになる為の勉強をしているんだから」

 

「だったら、オレが同行しようか?」

 

赤い服の男が入って来た。デューンだ。その後に、トウヤとメイも入って来た。

 

「よお。サトシ」

 

「デューン」

 

「オレとしても、イッシュの非常識なトレーナーにはうんざりしてんだ。まあ、オレに歯向かった連中は全員、トレーナーとして再起不能にしてやったがな」

 

何の躊躇いも無く、物騒な事を言うデューンに対し、その場にいた全員はゾクッとした。

 

「偶には、それ位の思い切りも必要って事だ。現にシュークリームだったか?そいつも、己の実力も弁えずにお前に差別発言をしていたじゃねえか」

 

「シューティーだよ、コソ泥」

 

「トレジャーハンターだよ!」

 

「2人共、今はそんな事良いじゃないですか」メイが仲裁に入る。

 

「まあ、話を戻すぞ。元々、リーグの上位成績を叩き出しているサトシとは1度手合わせ願いたくてね。修行の傍ら、イッシュのクソトレーナー共を思いっ切り叩き潰せる。オレとお前なら……な」

 

「おい!それはオレもカウントしているってのか!それだけならまだしも、メイも!」

 

「……まさか。お前とメイちゃんはカウントするか。それ位の良識は弁えているっての」

 

「分かった。見返りは、デューンの目的の宝探しで良いんだな?」

 

「おっ。察してくれてどうも。そう、ここの奴等にはもったいないからな。メインターゲットの2つも手に入って無いし」

 

「聖杯だけじゃないのか?」

 

「まあな。波導の勇者アーロンが遺した秘宝『デュアルブレード』も狙っている」

 

「アーロンか……」

 

バトルフロンティア制覇を目指し、2回目のカントー地方巡りをしていた頃を思い出す。

 

「分かった。アーロンの遺した宝を見てみたいしな。協力する。ただ、こっちはジム巡りをしているから調整をしておきたい」

 

「交渉成立だな。よろしく」

 

というわけで、デューンが同行する事が決まった。

 

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