サトシのイッシュ冒険記 ~真実の救世主~   作:純白の翼

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EP20 理想の帝王(前編)

サトシが目を覚ましてから、1週間が経った。医師からもう退院出来ると言われ、すぐに病院を出る準備を始める。アララギ博士とシゲル、ベルパパはカノコタウンへ、チェレンとベルは一足先にホモドエシティに向かう事となった。

 

一時的とはいえ、入院したサトシはお金を払おうとした。だが、既にベルパパによって入院費用は支払われていたのだった。仕事という事でカノコタウンに戻る際、サトシに伝えて欲しいとトウヤにこんなメッセージを残していた。

 

『サトシ君のとのバトルを通して、失った若い頃の熱さを思い出した。自分は過保護過ぎたと今は思っている。親はただ、子を信じて見守るだけで良い。そして、子供の自立を喜ぶ。そんな当たり前の事すら忘れていた。ベルにはもう、信頼出来る友人がいる事を知った。だからこそ、この旅では見守って、1人でも平気と判断すれば外の世界に送り出そうと思う。サトシ君、トウヤ君、チェレン君、メイちゃん。ベルをよろしく頼むよ』

 

サトシは、ライモンシティの観光を楽しむために、トウヤ、メイ、デューンと合流する。待ち合わせ場所では、トウヤとデューンが練習試合を行っていた。デューンはバシャーモを、トウヤはチャオブーを繰り出している。

 

「バシャーモ、飛び膝蹴り!」

 

「アームハンマーで迎え撃て!」

 

バシャーモの力の方が強く、チャオブーは吹っ飛ばされて戦闘不能になった。

 

「チャオブー、戦闘不能!バシャーモの勝ち!よってこの練習試合、デューンさんの勝ちです!」

 

「やっぱ、アローラ地方でトップに立ったデューンじゃ、オレもまだまだって事か」

 

「それでも、よく食らい付いた方だよ。今までのイッシュのトレーナーよりは歯応えがあったぜ」

 

「上から見てるのが気に喰わないけど、取り敢えず誉め言葉として受け取っておくよ。それに、他のトレーナーの愚行はオレでも目に余るからさ」

 

「あ!サトシさん!」

 

「皆……」

 

「もう大丈夫そうだな。バトルと言いたい所だが、今日はゆっくりと観光しようか」

 

デューンは朗らかな笑みでサトシにそう提案した。

 

「そうだな」

 

それから4人は地下鉄に乗ったり、バトルトレインに挑戦したり、食事をした後にベースボールやアメフト、サッカーの試合を見たりした。

 

この時にオタクの聖地『インフィニティー』に行った際、トウヤがポケキュアシリーズのファンだった事を知った一同であった。しかも、マニアックな所まで知っていたのだ。

 

「こう見ると本当に娯楽施設が多いんだな」

 

「確かに……」アローラから来たデューンもサトシの発言に賛成だ。

 

「ええ!楽しい町ですよね!これを人間とポケモンで造り上げるなんて凄いです!」

 

長年プラズマ団で雑用をしていたメイも同意見だ。

 

そんなこんなで、観光1日目は終了した。2日目は、遊園地に行った。

 

「凄い人だかりだな」

 

従業員曰く、開園10周年を記念したイベントをやっているのでそうなっているとの事。

 

4人は、何とかアトラクションに乗ったり、ショーを見たり、ジムリーダーのカミツレのファッションショーを見たりした。もう夕方になっていた。

 

「最後は観覧車で締めるとするか」

 

「トウヤ。いいな、それ」

 

というわけで、観覧車に乗る事にした。すると、そこには青年がいた。

 

「サトシ君、トウヤ君。お久しぶり。いつの間にか、2人の旅仲間が出来ているみたいだね」

 

「Nさん……」と、サトシ。

 

「……」

 

トウヤも、モンスターボールを持って身構えた。メイはNを見ておろおろしているし、デューンはNを警戒している。

 

「そう身構えないで。実は、さっきプラズマ団を見掛けてね。どうだい?観覧車から探さないかい」

 

「そうですね、そうしましょうか」意外にも、トウヤが真っ先に賛同した。

 

5人は観覧車に乗り、プラズマ団を探した。だが見つからない。半分を過ぎた頃、Nは決意したかのような表情に変わった。

 

「初めに言っておくよ。ボクは……」

 

「プラズマ団の帝王……そう言いたいのですね、N様」メイが先に答えた。

 

「ボクの言いたい事を先に言ってしまうとは。流石……雑用とは言え元々所属していただけの事はあるね」

 

Nは、メイを咎めるどころか逆に感心した様な態度になる。

 

「なに!?」

 

「この人がか!?」トウヤとデューンはボールを構える。いつでも戦闘態勢に入れる為に。

 

『道理でプラズマ団の思想に賛同していたのか……納得だな』

 

サトシは、薄々感じ取ってはいた様だ。

 

「このイッシュ地方はポケモン、人間の2つの存在で生まれた様な物だ」

 

Nがいきなり語り始めた。

 

「スクールで学びますよ。イッシュ建国の歴史でね」トウヤが相槌を打つ様に言った。

 

「でもボクはいつも疑問に思っていた。どうしてポケモンは、人間と生きる道を選んだのだろうと。そして、何でポケモンという素晴らしい存在は、悪の存在に操られ、虐げられ、苦しまなければならないのか」

 

「人間全体を悪と定義するのか?世の中、そんなに単純じゃねえぞ」デューンが言った。

 

「プラズマ団はポケモンを救う為に作られた組織。イッシュのトレーナーがこの有様だからね。だからボクは、ポケモンだけでなくプラズマ団も守る」

 

「……」サトシとメイは、黙ってNの言葉を聞く。

 

「前にも言ったけど、ボクはポケモンと人間を完全に分割して互いに同等の存在にする。それこそ真に我々人類やポケモンの理想郷になる。この意味、君達4人は分かるかい?」

 

Nの考えを聞き終え、サトシはしっかりと意思の込もった目で彼を見つめる。ピカチュウはサトシの方から降りて、Nを見つめる。そしてガバイトも、自分からモンスターボールから出て来た。サトシに寄り添うように、Nを見つめる。

 

「ポケモンと人間を無理やり引き離す。Nさん、その先に一体何があるというんですか?

ポケモンにはポケモンの考えが!人間には人間の考えが!オレにはそれぞれあると思っています!」

 

「ポケモンの為なら、人間は幾らでも踏み躙って良い。そう言う捉え方もできるとオレは感じていますけど」

 

トウヤが続け様に言った。彼からすれば、ポケモンの幸せの為という目標には共感は出来る。だが、やり方が納得出来ない。否、認められない。その為ならば、トレーナーを殺してでも無理矢理解放するなんてあってはならないと思っているし、戦力確保の為にメイの様な子供を物心つく前に両親を殺して引き離すなんて以ての外だからだ。

 

「でも、Nさん。オレ自身、貴方の言葉には共感出来る部分もあるのは事実です。現にオレの仲間になったポケモンの中には、チャオブーの様にトレーナーに弱いという理由で捨てられたポケモンもいました。オレはそう言うポケモン達を救いたい。人間から解放じゃなくて、人間と手を取り合い生きていく。それがオレの理想であり、真実です!」

 

Nはサトシの答えをしっかり受けとる。

 

「君らしい考えだ。誰もが、サトシ君の様な考えが出来れば良いのに」

 

デューンは、サトシの右肩に手を置いた。

 

「だな。折角できたポケモン達との絆を、みすみす手放す気は無いな」

 

「もっと早くに出会えていれば、こうはならなかったかもね。でもやはり、相容れない事が分かったよ」

 

Nはヒヒダルマを出した。サトシはジャノビーだ。

 

「「こんなバトル、出来ればしたくないですよ/けどね」」

 

Nとサトシ、ポケモンを思いやる似た者同士でありながら、決して交わることが出来ない2人のバトルが今、始まった。

 

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