サトシのイッシュ冒険記 ~真実の救世主~   作:純白の翼

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EP35 リザードンVSリザードン

プラズマ団との戦いは終わった。余談だが、デューンも聖杯を手に入れられた。だが、その代償は余りに大き過ぎた。ボルトロスとトルネロスはゲーチスに確保され、ミロス島は壊滅寸前の状態に陥ったからだ。

 

「ひでえな、こりゃ」サトシが苦し気に言った。

 

「ランドロス。何とか出来ないか?以前みたいに戻せるか?」

 

【トウヤよ、申し訳ない。我だけでは無理だ】

 

「そんな……」ユウトが顔を青褪めた。

 

【本来、ボルトロスとトルネロスを含めた3体の力が必要。だが、今回は2体ともプラズマ団に捕らえられてしまった。つまり、我だけでは不可能だ】

 

「これでは、復活草が……」ユウトは膝を着いて深く落ち込む。

 

一方で、メイは何かを閃いたようで、ランドロスに提案する事にした。

 

「……ねえ、ランドロスさん。ここにいるポケモンの力なら、以前までとは言えなくてもある程度の再生をするんじゃないでしょうか?」

 

【確かに、その方法なら前のように行かなくても、それなりに再生出来る筈だ】

 

「トウヤ君、皆」ユウトが近付いて来る。

 

「ユウトさん、やりましょう!オレ達の手で!」

 

「ああ!頼むよ!」

 

こうして、ミロス島の復興作業が始まった。

 

*

 

全員のポケモンをまずは回復させた。役に立つ事が出来て、メイは嬉しそうだった。

 

【まずは土壌を潤そう。水の技を】

 

「だったら任せろ!ミジュマル、君に決めた!」

 

「カメックス、行ってくれ!」

 

「ラグラージ、バトルスタンバイ!」

 

「フタチマル!」

 

「ダイケンキ!」

 

「プルンゲル!」

 

「ヨワシ!」

 

「オーダイル、行って来な!」

 

サトシ、シゲル、シンジ、トウヤ、チェレン、シューティー、デューン、カーネルは水タイプのポケモンをそれぞれ出した。

 

「空に向けてハイドロポンプ!」

 

サトシがミジュマルに指示を出す。他全員も、空に向けて高威力の水技を出す様にした。それらは、雨粒程の大きさとなって地上に降り注ぐ。

 

【潤って来たな。ムンッ!】

 

ランドロスが光り輝く粒子を蒔いた。そこから、復活草が生えて来た。

 

【次は風を送って貰いたい】

 

「風か。分かったよランドロス!シンボラー、追い風よろしく!!」

 

トウヤはシンボラーを出す。

 

「リザードン、翼で風を起こして、シンボラーを手伝うんだ!」

 

「ケンホロウ、フライゴン。やってくれ!」

 

「バルジーナ、君もだ!」

 

「オンバーン!」

 

サトシ、シューティー、チェレン、デューンもトウヤに続いてポケモンを出し、風を仰ぐ。その程良い風は、復活草から出て来た種を土に落とす。

 

「小さいね」と、ベル。

 

【この小さな復活草は肥料として活用する。電気や炎のポケモンを出してほしい】

 

「そう言う事なら、ピカチュウ、チャオブー!君に決めた!リザードンは引き続き頼むぜ!」

 

「エンブオー、サンダース!行け!」

 

「じゃあ私も!エンブオー!」

 

「ビクティニちゃん、宜しく!」

 

「ヒヒダルマ、君もお願いするよ」

 

「ランプラー、行くんだ」

 

「マイヴィンテージ!!ナットレイ!」

 

「じゃあオレもやるとしますかね。リザードン!」

 

「お願い、ジヘッド!」

 

サトシ、トウヤ、ベル、メイ、チェレン、シューティー、デント、カーネル、ショウブがポケモンを出す。

 

「ピカチュウは10万ボルト!チャオブーとリザードンは火炎放射!」

 

「エンブオー、ヒートスタンプ!サンダース、電撃波!」

 

「エンブオー、炎の誓い!」

 

「ビクティニちゃん、Vジェネレート!!」

 

「ナットレイ、電磁波!」

 

「リザードン!火炎放射で焼きな!」

 

「ジヘッド、炎の牙!!」

 

炎と電気の技が、復活草を程良く焦がす。その焦げた復活草は、肥料となった。

 

【皆。これを何度も続けて行こう】

 

「分かった!」

 

*

 

それから、何回にもわたって島の自然の復興と復活草の量産を行った。始めの内はすぐに出来た。だが、何回、何十回と続けて行く内にポケモン体に疲労が現れる。その度に、メイがオボンの実とヒメリの実で回復していくが、それでも追いつかない。

 

「ピカチュウ。もう休んだ方が良い」

 

【島の復興の方が最優先だ!】

 

【イヤ。休んだ方が良い。このままだと、疲労で遅れるだろう】

 

ランドロスがピカチュウを諭す。

 

サトシ達がそんな会話をしていると、島のポケモン達がやって来た。そして、森だけでなく海からも。どうやら、手伝いに来たようだ。

 

そこからまた順調に進んだ。夜になり、皆は疲れ切っていたが、復活草は島中に生えていた。

 

*

 

「凄い凄い!」

 

「復活草がこんなに沢山」

 

「とっても綺麗!」

 

「努力した甲斐があったわ」

 

メイ、ショウブ、ベル、ラングレーの順に言う。

 

「これが……復活草」

 

「こんなに大きいものは初めて見たな」

 

次に言ったのは、シゲルとシンジだ。

 

「助かったよ、ランドロス!」

 

【いいや。我の力だけではない。皆の力あってこそだ。皆、協力してくれてありがとう】

 

ランドロスが礼を言った。夜空には、イッシュ本土よりも綺麗な星空が見えていた。しかも、優しい風が吹いており、復活草の花粉を運んでいる。

 

*

 

「人とポケモン。協力し合い、共存し合うのってこう言う事を言うのかな?オレにはまださっぱりだけど」

 

「かも知れないわね」

 

トウヤは、ラングレーと共に星空を見上げながら会話していた。復活草を手に入れて、後は本土に帰るだけ。そう思っていた。

 

「さて。一通りは片付いた事ってわけだ」

 

カーネルは、サトシの所へ向かった。

 

「確か、カーネル」

 

「名前を覚えてくれるなんて光栄だな」

 

「何の用だ?」

 

「決まっている。お前とリザードンにバトルを申し込みにな。勿論、オレもリザードンで行く。ついでに、コイツも使わせて貰うぜ」

 

カーネルは、サトシにキーストーンを見せる。

 

「ちょっとカーネル!勝手に」

 

ショウブが止めようとする。

 

「うるせえぞクソアマ!いつまでも、竜の里で縛り付けてんじゃねえ!言った筈だ!オレは、ババアに絶縁状を突き付けに行った!もうオレは、竜の里出身ですらない!」

 

カーネルは心底軽蔑した様な表情をショウブに見せる。ショウブは、ショックを受けて立ち竦んだ。

 

「……分かった。島の外れでやろうか」

 

*

 

ぞれから1時間後。島の外れの海岸にカーネルとサトシが向かい合う様に対峙している。

 

「オレの力が最強である事をここに示す!来い!」

 

カーネルは、色違いである黒いリザードンを繰り出す。

 

「リザードン、君に決めた!!!」

 

サトシもリザードンを出す。

 

「アイアンテール!」

 

「ドラゴンテールで対抗だ!!」

 

カーネルのリザードンの鋼鉄の尻尾が、サトシのリザードンに襲い掛かる。が、負けじと竜の力を纏った尻尾で応戦する。

 

やがて、カーネルのリザードンが吹っ飛ばされた。

 

「良いぞ、リザードン!」

 

「一筋縄ではいかないか。リザードンやるぞ!」

 

カーネルの持つキーストーンと、リザードンの持つリザードナイトが共鳴する。

 

「こっちも行くぜ!」

 

サトシも、自身が持つキーストーンとリザードンの持つリザードナイトが共鳴した。

 

「リザードン、燃え上がれ!メガシンカ!!」

 

「全てを焼き払え!メガシンカ!」

 

カーネルのリザードンは、角が1本になった。対して、サトシのリザードンは黒くなった。

 

「リザードンのメガシンカって、2つあったのかよ」トウヤが言った。

 

「オレンジの方は初めて見たな。そうだ!黒い方をメガリザードンX、オレンジの方はメガリザードンYって呼ぶか」

 

デューンが大きな声で言った。Yの特性日照りにより、夜にも関わらず昼間と同じ位の明るさになる。

 

「「火炎放射!」」

 

Xの青い火炎放射と、Yの赤い火炎放射がぶつかり合う。僅かにYのものが勝っていたが、最終的に相殺された。

 

「炎の渦で閉じ込めろ!」

 

「リザードン、焦らず雷パンチで破壊だ」

 

Yの炎の渦を、Xは雷パンチで破壊。

 

「ソーラービーム発射!!」

 

炎の渦はブラフだった。Yの技が、Xに直撃する。

 

『イヤ、デューンの言っている事が正しいとしたら、リザードンが倒れる事はない。黒の形態は炎とドラゴンになるって言っていたから。ソーラービームは25%に軽減される』

 

サトシの予測通り、多少のダメージこそ受けたものの、リザードンはまだピンピンしていた。

 

「やるじゃねえか。これ位やって貰わなきゃ困る。エアスラッシュ!!」

 

「リザードン、岩雪崩でエアスラッシュを防御だ!」

 

Yの放った技を、Xは技で防御。

 

「今だリザードン、気合いパンチ!!」

 

Xの重い拳が、Yの腹部に食い込む、吹っ飛ばした。

 

「これが……最強クラスのリザードンの力」カーネルは、僅かに狼狽えた。

 

「カーネル。1つ聞いて良いか?」

 

「……何だ?」

 

「お前は竜の里出身なんだろ?どうして同じ故郷のショウブに対して情け容赦のない態度を取るんだ?何かあったのか?」

 

まるで怒りや憎しみをぶつけるような戦い方をするカーネルとメガリザードンYに疑問を抱いたサトシ。竜の里で何かあったのかと思い、聞いてみる。

 

「良いぜ。教えてやらあ。竜の里がどんなに俺を虐げ、見下してきたかをな」

 

*

 

カーネルは語り始めた。元はブリーダーや育て屋等のポケモンを育成していく仕事をしたかった事を。だが、オババやシャガからはソウリュウのジムリーダー兼ドラゴンマスターになる様に強要された。

 

ポケモンバトルにおいては、自分は常に落ちこぼれだった事を突きつけられる結果となった。何をやっても大人たちに強く否定されて怒られ、その度に妹アイリスと比較されるような事を言われて来た事を。

 

リザードンにしても、ヒトカゲの時にイッシュのトレーナーにカントーでゲットされたは良いが、結局竜の里近くで捨てられ、カーネルが拾い上げて育てた。そして10歳になった時、今まで自分を格下と決めつけた里への決別として、ヒトカゲ共々出走し、他地方で地獄のような修業と獣同然の生活をした。イッシュに戻って来たのは、里に絶縁しに来たためだという。

 

*

 

「これが、オレの受けて来た屈辱だ」

 

【そうだ!オレ達を苦しめ、否定しておきながら、窮地に陥った瞬間に掌返して戻って来いだと!?ふざけんじゃねえ!!!】

 

「同情されるだなんて思っちゃいねえぞ。これが事実だ」

 

ショウブを除いた全員、カーネルの過去を聞いて絶句した。もし自分だったら、どうなっていたかと思うとゾッとしたから。

 

「誤解よカーネル!話しを聞いて!確かにオババ様はカーネルに厳しくはした!だけど、それはシャガ様の後任やドラゴンマスター以前に真っ当なトレーナーになって欲しかっただけなのよ!オババ様も後悔しているし、それについて謝罪したいって言ってるのよ!」

 

「うるせえ!今度オレに口答えしたら、その首を胴体に付いてない状態にして、竜の里に送りつけて宣戦布告してやる!!今の状態で、復讐をしに行かないだけでもありがたく思うんだな!!!」

 

「そんな!!」

 

「そうか……」サトシは、帽子を整える様に呟いた。

 

サトシは以前、アイリスを拘束した時にシャガと出会った。彼の性格からして、カーネルの言った事をやるとは思えない。これは、竜の里に行かないと判断のしようがない。恐らくは、カーネルの被害妄想の可能性が高いだろう。

 

ただ、里民の何気ない言動や行動が、劣等感を抱いていたカーネルの心を深く傷つけてしまった可能性が極めて高い。まして、あのアイリスと比較されたら、カーネルじゃなくても誰だってメンタルダメージは受けるのは確実だろう。

 

「お喋りが過ぎたな。始めるか。これで最後にさせて貰おうじゃないか!リザードン、ブラストバーン!!!」

 

Yが先に技を放った。巨大な爆炎衝撃波が、フィールドを焼き尽くす。

 

「リザードン、まだ行けるか?」サトシが問いかける。

 

【言われるまでもねえ!オレは平気だ!】

 

「最大パワーででフレアドライブ!」

 

炎の物理最強技で対抗するX。

 

【オレとお前は似てるよ。とてもな】

 

【どういう事だ?】

 

感傷に浸る様に語るXに対し、Yが聞く。

 

【前のトレーナーに捨てられ、今のトレーナーに育てられた。そして、人間に対する不信感を持っていた事も。イヤ。お前の場合は、カーネル以外の人間に対する憎しみと言った方が正しいかな?】

 

【……】

 

【だが、感情任せじゃ、オレには勝てねえよ。性格を治せなんて言わねえ。せめて感情を抑える術を身に着けるんだな】

 

【黙れ!カーネルとオレを苦しめる全てを、ぶち壊してやるんだよ!】

 

【そうか……ならもう、何も言わねえ】

 

Xがブラストバーンに、フレアドライブのラッシュを叩き込み始めた。だがその表情は、とても辛そうであった。

 

【オラァ!】

 

瞬時にブラストバーンが打ち破られた。

 

【何っ!?】

 

次はYの出番だ。

 

【オラオラオラオラオラオラオラオラオラオラオラオラオラオラオラオラオラオラオラオラオラオラオラオラオラオラオラオラオラオラオラオラオラオラオラオラオラオラオラオラオラオラオラオラオラオラオラオラオラオラオラオラオラオラオラオラオラオラ!!!】

 

【オラオラオラオラオラオラオラオラオラオラオラオラオラオラオラオラオラオラオラオラオラオラオラオラオラオラオラオラオラオラオラオラオラオラオラオラオラオラオラオラオラオラオラオラオラオラオラオラオラオラオラオラオラオラオラオラオラオラ!!!】

 

【オラオラオラオラオラオラオラオラオラオラオラオラオラオラオラオラオラオラオラオラオラオラオラオラオラオラオラオラオラオラオラオラオラオラオラオラオラオラオラオラオラオラオラオラオラオラオラオラオラオラオラオラオラオラオラオラオラオラ!!!】

 

【オラァッ!】

 

「これは……フレアドライブを使ったラッシュ攻撃?基本じゃないが、何て凄まじいんだ」

 

シューティーが驚いた。以前受けた事があるので、尚更だった。

 

カーネルのリザードンは倒れた。途端に、メガシンカも解けて通常形態に戻った。

 

「……グッ!」

 

「カーネル、お前がどんな過去を経験したのかオレには分からない。それが、本当に竜の里を憎悪する程のものだったとしても。だけどな、復讐心や怒りをぶつけるような戦い方じゃ、オレに勝つのは無理だぜ。それに、この世界にはオレよりも強い奴なんてごまんといるんだからな」

 

「知った風な口を利くな!……このバトル、負けは認める。だが、覚えておけ!見下され、途方もない屈辱を味わって来たオレの、竜の里に対する憎しみは消える事はない!永遠にだ!!!」

 

カーネルは立ち去っていた。

 

「どうしてこんな事に……アイリスはプラズマ団に堕ちちゃうし、カーネルは竜の里への復讐心を抱いたままだし……もう何が何だか!」

 

ショウブは訳も分からない様だ。

 

「リザードン。またカーネルが勝負を挑みに来たら、一緒に戦ってくれるか?」

 

【そんなもん。答えるまでも無い。やってやろうじゃないか!!】

 

こうして、サトシ達はミロス島からホモドエシティへと戻って行ったのだった。

 

*

 

「次やったら、免許剥奪ですって!?ふざけんじゃないわよ!アタシのテイスティングはSランクに匹敵するのよ!あの田舎のトレーナーが憎い!復讐してやる!」

 




これでミロス島編は終了となります。

12月は仕事が忙しくなりそうなんで、申し訳ございませんが1ヶ月ほど休載と致します。丁度話も区切りが出来ましたので。

そろそろストックが少なりなり始めたので、これを機に増やしていきます。

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