サトシのイッシュ冒険記 ~真実の救世主~   作:純白の翼

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お久しぶりです。

スケジュールに一先ずの区切りがつきましたので投稿致します。


EP37 ゴビットとトウヤ

ホモドエシティの外れ。ここに、3階建ての1軒家があった。

 

「リューコ先生!有難う御座います!」

 

「良かったわね」

 

患者らしきサラリーマンと、医師らしき白衣を着た20代後半の女性がいた。

 

「難病だからという理由で病院に見放された時は、どうしようかと焦っていました!」

 

但し、只の診療所では決して無かった。訳アリで医師免許を剥奪された女性医師が運営をしている。

 

病院や、通常の医師に見捨てられた患者は、そろって彼女に法外の金を持ってやって来るのだ。尤も、要相談とされているが。このサラリーマンも、日本円で8桁の大金を払ってから治療して貰ったのだ。

 

手術の成功率は100%とされる超一流の闇医者。彼女の名は、リューココリーネ。

 

「あなたはまだ良い方よ。中には、自分をごまかして手遅れのレベルまで放置する人もいるのだから」

 

サラリーマンは礼をして、そのまま診療所を去って行った。

 

*

 

ジム戦を前日に終えたサトシとトウヤ。今日はゆっくりする事となった。

 

「市場には色々とあったな」

 

「流石に、復活草はまだ出回って無かったけどな」サトシ、デューンの順番で言う。

 

「ここ、2年後にはポケモンワールドトーナメント。略してPWTの会場が出来る予定なんですね」

 

「しかも、サザナミでプロトタイプのジュニアカップを近い内にやるって言ってたし」

 

「ここからだと遠いな。やるとしたらバッジを全部集めたらにしようか」

 

その時だった。何かの会話が聞こえた。

 

「おい聞いたか?冷凍コンテナの外側に、ゴビットがいるって!」

 

「マジか!ホドモエにいるなんて珍しいな!行こうぜ!」

 

2人の少年がそんな会話をしていた。

 

「ゴビットか……」

 

「そう言えばトウヤお兄ちゃん。欲しいって言ってたでしょ?もしかしたらゲット出来るかも」

 

「かもな。行ってみようか」

 

という事で、サトシ達は冷凍コンテナに行く事にした。冷凍コンテナの外れの洞窟にそこにいるとの事。

 

「おい、あれ」トウヤが指をさす。

 

「家だ!3階建ての家がある!!」

 

「診療所……なのか?」表札を見たデューンは小さく呟く。

 

「あら、お客さん?」

 

診療所の入り口のドアから、白衣を着た女性が出て来た。ランクルス、チルタリス、ゴルーグを連れている。

 

「いえ。ここにゴビットがいるって聞いたので……」メイが答えた。

 

「ああ。そう言う事……」女性は、サトシの事を意味深に見ている。

 

「まさかね。マサラタウンのサトシがいるなんて」

 

「おばさん。サトシ知ってるのか?」

 

デューンが聞いた。だが、おばさんと呼ばれて殺気立ち、診療所の近くの洞窟の壁にひびを入れた。そして、女性の身長と同じ位の巨大なハサミを持ち、狂気を含んだ笑みを浮かべて……

 

「アタシは、リューココリーネって名前なの。愛称はリューコだけど。まあ、今度おばさんなんてほざいたら、このオリハルコン製の巨大ハサミで刻むわよ?マリエシティ出身の盗賊デューン」

 

デューンは表向き平然としていたが、内心冷や汗をかく。

 

「盗賊じゃねえ。トレジャーハンターだよ!」それでも言い返した。

 

「それで、リューコさん。どうしてオレの事を?」

 

「仕事の関係上、他の地方には行くからよ。だから、基本しか取り柄の無い無能や自分達こそ至上と思い込んでいるカス共と違って、メガシンカやZ技の知識等は持っているの。それに、サトシの事は、特にカントーやジョウト、ホウエン、シンオウではとても有名。知らない方がおかしい程の知名度になっているのよ」

 

「成る程……」

 

「良かったら案内しましょうか?アタシのゴルーグも、そこでゲットしたから」

 

*

 

その頃、別の場所では……

 

「何やってんだクズ共!それでもファイヤーウォーリアーズか!?さっさと立ちやがれ!ゴミ共!!」

 

エンブオーとクイタランが色違いのゴビットに負けていた。

 

「クソが!覚えてやがれ!!!」

 

その後も、ゴビット達(特に色違いの個体)をゲットしようと勝負を挑んだトレーナー達は、その圧倒的な戦闘力を前に全滅してしまった。

 

*

 

ゴビット達が生息する洞窟の入り口へとやって来たサトシ一行とリューコ。そこには、確かにゴビットがいた。それも色違いの。

 

だが、多くのトレーナーに狙われていたのか、今にも倒れそうだ。それでも尚、洞窟に逃げて行った仲間たちに近付けさせまいと、サトシ達を見つけて戦闘態勢を取る。

 

「ちょっと待ってくれ!」

 

トウヤが前に出て話しかけて来た。メイから、オボンの実とヒメリの実を受け取っていて、それを両手に持っている。

 

「傷ついてるじゃないか。ゲットはしたいけど、そんな状態じゃするのも気が引ける。だからさ、取り敢えずはこれを食べてくれよ。それから、お医者さんもいるから治療して貰おう」

 

自分は飽く迄敵ではないと態度を取るトウヤ。木の実を地面に置いて、後ろに下がった。ゴビットは警戒心を剥き出しにしながらも一先ずは木の実を取った。そしてそれを食べる。しばらく考えてから手招きをした。

 

「ついて来いって事かしらね」

 

色違いのゴビットに誘導され、サトシ達は洞窟の中へ。

 

「ここは!?」

 

まさに、生活の場を兼ねたトレーニングルームとなっていた。その全てが、ゴビットに合わせて作られている。

 

「す、凄い!」

 

闘技場らしき場所では、ゴビット同士が拳を合わせてバトルしている。といっても、これはトレーニングではあるのだが。

 

色違いのゴビットもひたすらトレーニングに打ち込んでいる。どうやら今は、冷凍パンチとロックカットの練習をしている様だ。だが、成果は余り芳しくない様だ。

 

「それだけ練習に打ち込んでいるって事は……勝ちたい奴がいるのか?」

 

トウヤが聞くと、ゴビットはコクりと頷く。

 

「特訓、手伝おうか?ちょっと気になった事もあるし」

 

そんなわけで、トウヤとゴビットの特訓が始まった。その間、トウヤ以外の3人はリューコのポケモン治療の手伝いをしていた。

 

*

 

そして3時間後。ゴビットは、2つの技を習得した。そして、闘技場に向かって行った。もう一方は既に到着している様だ。

 

バトルが始まった。通常色はシャドーパンチを放つ。色違いの方は守るで防御。その後、ロックカットでスピードを上げる。

 

通常色は呪いを使用。色違いが呪われる様にするが、すかさずジャイロボールを使用して回避。通常色は動揺を隠せない様だ。色違いはナイトヘッドを使って体力を削る。そしてまた、ロックカットで素早さを上げた。

 

しびれを切らした通常色はシャドーパンチで速攻でケリを付けようとする。だが、色違いの方は通常色の背後に回り、冷凍パンチを浴びせた。倒れる通常色。色違いが勝った。

 

「やったな。ゴビット!」

 

色違いのゴビットは、トウヤとハイタッチをする。

 

「これで技をモノに出来たんだ。じゃあな」

 

「良いのか?散々カッコいいと言ってたのに、ゲットしなくて」

 

「良いんだ。ここにいる方が幸せなんだろうし」

 

*

 

洞窟から出た一行。

 

「リューコさん。有難う御座いました」

 

「礼を言うのはこっちよ。あなた達がいなければ、ここまで短時間でゴビット達の治療が早く出来なかったから。それで、次はどうするの?」

 

「フキヨセに行こうかと思ってます」サトシが言った。

 

「それなら、6番道路と電気石の洞穴を通過すれば着くわよ」

 

「分かりました」

 

リューコとはここで別れ、サトシ達は歩き出した。

 

リョーコと別れた直後、色違いのゴビットがトウヤの元にやって来た。ファイティングポーズを取っている。

 

「バトルしてくれってか?」

 

ゴビットは頷いた。

 

「モンメン。頼む!」トウヤはモンメンを出す。

 

シャドーパンチをして来るゴビット。

 

「痺れ粉!」

 

モンメンはゴビットを麻痺させる。

 

「エナジーボール!」

 

モンメンは技を放つものの、ゴビットも負けじと冷凍パンチで相殺する。

 

「そう来るって読みが当たるとはな」

 

トウヤはニヤッと笑う。ゴビットの背後には、モンメンがいた。

 

「マジカルシャイン!!」

 

フェアリータイプの技をぶつけ、一時的に動けなくさせた。

 

「暗くなり始めているな……これを使うのも良いかも」

 

トウヤはダークボールを使った。ゴビットが吸い込まれ、あっさりとゲット出来た。

 

「ゴビット、ゲットだぜ!!」

 

トウヤがモンスターボールを掲げながら言った。

 

「良かったな、トウヤ」サトシが祝福する。

 

「おいおい。よりによって色違いかよ。羨ましい」

 

「デューンさんだって、色違いのミミッキュいるじゃないですか」

 

4人でやいのやいのやった後、ポケモンセンターへ帰ろうとする。トウヤはモンメンを戻そうとした時……

 

「見つけたわよ!田舎のトレーナーに、三流の新人トレーナー!」

 

そこに割り込んで来たのはカベルネだ。

 

「カベルネ……」サトシが声のトーンを落とす。

 

「サトシ、何だこのクソビッチのアバズレは?」

 

カベルネの事を知らないデューンが質問する。

 

「Cランクのポケモンソムリエールです。でも勝手にテイスティングして、トレーナーをやめたりポケモンを手放す人が増えるっていう事をやらかしたんです」

 

「碌でもねえな」

 

「アタシは未来のSランクソムリエールなのよ!!」

 

「まだC級だろ?アバズレ」

 

ボロクソに言われたカベルネが激昂するが、デューンはそんなものは意味ないと言わんばかりに言葉攻めを行う。

 

「グヌヌヌヌ……あら?それよりも、アンタのモンメン。何か微妙ね。相性も悪そう。アンタと合わないに決まっている。変えることを薦めるわよ」

 

「テメエ……!」

 

カベルネは意地の悪い笑みをニターッと浮かべながら、モンメンに近付く。余りの出来事に4人は動けなかった。

 

「アンタ達はアタシに逆らった。これからやるのは復讐よ。雷の石が見つからなかったのは癪だけど。でも、これからやる事に感謝する事になるでしょうねぇ!」

 

カベルネが取り出したのは太陽の石。そのまま怖がるモンメンの所に行く。

 

「あいつ!まさか!」

 

我先にと駆け出したトウヤ。フタチマルを出し、ホタチを投げて太陽の石を弾く様に指示を出す。

 

「仕返しも兼ねて進化させてやる!」

 

すると、トウヤの許可なしにモンメンに触らせた。カベルネが行った事。それは、カベルネ自身の勝手で、トウヤのモンメンを無理矢理進化させたのだ。ホタチはあと一歩のところで届かなかった。

 

モンメンはエルフーンに進化させる。だが、自分の石ではない急激な進化、それに伴う体の変化、そして進化させてはいけないタイミングで進化させてしまったのだ。

 

「テメエ!なんて事をしてくれたんだ!!」

 

「フッ!アハハハハハハハハハハハハハハ!!!何言ってるのかしら?大した力も無い新人に、キャリアのあるアタシが力添えをしてやっただけじゃない。寧ろ感謝しなさいよ!かんsy」

 

 

カベルネの言葉は続かなかった。トウヤ達の方を向いて狂ったように笑いながら言っていた。これが意味するものとは……

 

トウヤのフタチマルが投げたホタチが、カベルネの右眼に直撃したのだ。目はつぶれていないが、大きな傷が出来ている。カベルネは血の涙を流していた。

 

「アアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアッ!あ、アタシの眼が!アタシの眼がああああああああ!ううっ!痛い!この暴力男!ポケモンは進化こそが全てなのよ!それよりもこの結果って……訴えて、アンタを破滅させてやるううううううっ!!!」

 

カベルネは右眼を押さえつけながら逃げて行った。

 

「ううっ!貰いゲロしそう!」

 

「待ちやがれ!」トウヤが追いかけようとするがサトシが制止した。

 

「それよりもエルフーンだ!力をコントロールしきれていない!」

 

サトシが引き留める。

 

「何でだよ!あいつ、モンメンを無理矢理進化させたんだ!」

 

「あの女の事なんて今はどうでも良い!それよりも、あんなクソ女に執着して、エルフーンを蔑ろにする気か!?」

 

トウヤは、納得出来ないと思いながらも渋々エルフーンの事にとっかかる事にした。サトシのジャノビーが無理矢理抑え付け、デューンのタブンネが癒しの鈴でエルフーンを大人しくさせた。正気を取り戻したエルフーンは、安心したかのように眠りについた。

 

「何で……何でなんだよ!どうしてこの頃、オレにばかり!」

 

今まで抑えていたトウヤの不満がここで爆発した。無理はない。キバゴは進化した瞬間言う事を聞かなくなる、そして今度は、モンメンはカベルネの愚行で強制的な進化をしてしまい、暴走。

 

何て言えばいいのか、分からなかった。トウヤは動揺し、どうすれば良いのか分からなかった。

 

「……ピカチュウ……」

 

小声でピカチュウに微弱な電気ショックの指示を出す。トウヤを眠らせる為に。ピカチュウはその通りに動いた。トウヤは気絶した。

 

「トウヤ……お前は何もかも背負い過ぎだったんだ。こんな状況を経験するには、まだ荷が重かったんだ。何て言えばいいのか、オレは分からない。でも、今は眠って気持ちを落ち着かせてくれ」

 

【我が運ぼう】独りでに出て来たランドロスが、トウヤを運ぶ事を請け負う。

 

「頼むぞ、ランドロス」と、デューン。

 

サトシ達は、気絶して眠ったトウヤを連れてポケモンセンターへ戻って行った。

 


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