サトシ一行はコテツとの出会いから2日後にチェレン、ベルのコンビと再会した。2人共、アララギ博士の手伝いでここに来ている様だった。それは、ベルのチョボマキとアララギ博士のカブルモの交換というものだった。
サトシから交換の良し悪しを予め聞いたベルは、交換が終わった直後にアララギ博士に頼んで交換し直して貰ったのである。博士の方も、交換時のデータさえ手に入れば問題無しとの見解だったのでスムーズに行った。そして、チェレンとベルは先にフキヨセシティに向かう事にしたのだ。サトシ達の方は1日休んでから行く事にした。
電気石の洞穴の入り口に来たサトシ一行。その途中でラングレーと再会し、一時的に同行している。因みにだが、トウヤとラングレーは口を聞かなかった。尤も、仲が悪いのではなく恥ずかしいからだが。
「サトシ、デューンさん。この間、タマゴが孵ってアチャモが生まれたのよ!」
ラングレーはモンスターボールからアチャモを出した。アチャモは出てきた瞬間、踊り始めた。かなり陽気な性格なようだ。
【あのアチャモ、ワニノコみたいな性格しているね】とは、ピカチュウ談である。
「話はこれ位にして、行きましょうよ」メイが言った。
まず、トウヤとラングレーが先に入った。
「大丈夫みたいね」
「だな。皆!大丈夫だぜ!」
3人が入ろうとする。だが、途中でデンチュラの巣が貼られてしまった。
「トウヤ!ラングレー!」サトシが叫ぶ。
「私達は大丈夫よ!サトシ!」
「オレ達で先に安全ルートを確保するよ!だからまず、3人はデンチュラをどうにかしておいてくれ!」
「分かったよ、任せとけ!サトシやメイちゃんと協力して、この場を切り抜けるからよ!」
「行こうか、ラングレー」
「ええ」トウヤとラングレーは先に行った。
*
「さて。どうしたものか」
「デンチュラは確か、電気と虫タイプ。炎と岩の技が弱点だったな」
「なら、チャオブー。君に決めた!!」
「サイドン、行け!」
サトシはチャオブーを、デューンはサイドンを繰り出した。
「炎の誓い!」
「ロックブラスト!!」
巣を破壊しつつ、デンチュラを一掃した。余りの力の差に多勢に無勢と判断したデンチュラ達は、我先にと電気石の洞穴へ逃げて行った。
「ゴメンな」
「悪く思うなよ、こっちだってやりたくてやったわけじゃないんだからよ」
サトシ、デューンの順で言った。そこへ入れ替わるようにプラズマ団がやって来た。その数、7人である。
「貴様等か!ポケモン達を虐げているのは!」
「次から次へと面倒臭いのが現れやがって!」デューンが憤慨する。
プラズマ団の下っ端達は、ズルッグ、レパルダス2体、ヤブクロン4体、ミルホッグ2体、メグロコ3体を繰り出した。
「仕方ねえ。ミミッキュ。雑魚をとっちめて来い!」
【死にてえ奴はどいつだ!?ああっ!?】
デューンのミミッキュは、バトルになるとエンジンが変わるようだ。
「ピカチュウ、ガブリアス!お前達も行って来るんだ!!」
【うん!】
【久しぶりの出番だ!】
プラズマ団のポケモン達を、ミミッキュ、ピカチュウ、ガブリアスで挑む事に。
「仕方ないわね」
「何をする気だ、アンジー」
「決まってるじゃない。怪電波を使うのよ」
アンジーはスピーカーを取り出し、怪電波を放った。その途端、プラズマ団のポケモンは苦しみだし、各々の最終進化系まで到達した。
「あれってロケット団の!まさか、夢の跡地で言っていた、とあるルートって……」
プラズマ団は何も答えないが、サトシは確信を持てた様だった。
「そう。あいつら、ジョウトでロケット団が使った技術を盗んだってわけ」
「だからイッシュにオレ達は来たのさ」
「ロケット団以外の悪は殲滅あるのみニャ」
「ソーナンス!」
更にロケット団も現れた。
「何だ貴様等は!」プラズマ団の1人が高圧的に問いただす。
「なんだ貴様等はと聞かれたら」
「答えてあげよう、明日のため」
「フューチャー。白い未来は悪の色」
「ユニバース。黒い世界に正義の鉄槌」
「我らこの地にその名を記す」
「情熱の破壊者、ムサシ!」
「暗黒の純情、コジロウ!」
「無限の知性、ニャース!」
「「「さあ集え ロケット団の名の下に!」」」
「ソーナンス!!!」
「ジャリボーイ、ニャー達としてもプラズマ団は目障りなのニャ!」
「分かった。こいつら、片付けるぞ?」
「行くのよ、ツタージャ。ポカブ!」
「クリムガン、コイル。お前達もだ!」
ムサシ、コジロウも2体ずつポケモンを出した。
『ムサシがゲットしたツタージャとポカブも、前のトレーナーに捨てられたのか。イヤ、ツタージャの方は自分からトレーナーを捨てたと言った方が良いかも。ツタージャはムサシを見限る気配が無いし、例え悪に居場所を見出したとしてもそれで良いのかも知れないんだろうな。あいつらにとっては』
心の中でサトシは呟く。敵の時はこの上なく鬱陶しいが、味方だと心強かった。尤も、出会った時から完全に嫌いにはなれないのだが。もし別の形で出会っていたら……信頼出来る友としていられたかも知れない。そんな事を思っていた。
奇しくも、ムコニャ達も同じ事を思っていたのはサトシは知らないのだが。
「ピカチュウ、エレキボール!ガブリアス、流星群!」
「ミミッキュ、じゃれつく!」
「ツタージャ、グラスミキサー!ポカブ、熱風よ!」
「クリムガン、炎のパンチ!コイル、ミラーショット!」
それぞれが技を出し、1匹ずつポケモンを戦闘不能にした。残っているのは、ズルズキン、レパルダス、ダストダス4体、ミルホッグ、ワルビアルの1体ずつだった。
「ミミッキュ、あれやるぞ!」デューンは黒いZリングを掲げる。
「なあ、いつものZリングじゃないけど?」
「ッキュ!」
「こいつはな、余程の事が無い限りは使わないって決めてるんだ」
黒いZリングには、ミミッキュZは填め込まれている。デューンはポーズを取り、ミミッキュにZパワーを纏わせた。ミミッキュが解き放つ全力のZ技、ぽかぼかフレンドタイムを発動。
薄暗い森の中で相手の周りを飛び回り、怯えた隙に頭上からZパワーで拡張させた身体を覆う布に閉じ込める。そして内部で、ボコスカとタコ殴りにした上でふっ飛ばした。この攻撃でワルビアルとズルズキンが戦闘不能となった。
「まだ3体残っているか。ピカチュウ!」
サトシは、スピリット・ジュエルを取り出す。それを見て、頷くピカチュウ。
「トランス・オン!フレイム・ニンジャ!」
「ちょっと!ピカチュウの姿が変わったわよ!」
「でも、ジャリボーイの持ってる宝石の力みたいだ」
「ピカチュウ、飛び上がって炎魔手裏剣陣!!」
無数の炎の手裏剣が、プラズマ団の残りのポケモンに襲い掛かった。これでプラズマ団のポケモンは全滅した。
「反則レベルの強さだニャ」
「おのれええ!この借りは、必ず返してやる!」
プラズマ団は退散した。
「それにしても、何であんな場所にいるんだろう?」
「大方ここに、Nかゲーチスの野郎がいるんじゃねえのかな?」
サトシの疑問にデューンが考察する。
「サトシさん、デューンさん。トウヤさんとラングレーさんを探しに行きましょう!」
「そうだな」
「行くのか?」コジロウがサトシに聞く。
「ああ。仲間を探さなくちゃいけないからな。もう2時間経ってる。早くしないと夜になっちゃう」
「そうか……」
サトシ達は背を向ける。
「ジャリボーイ……生き残りなさいよ」
「言われるまでもないな。最初からそのつもりだ」
サトシ達は、電気石の洞穴へ突入した。
「じゃ、アタシ達も行くとしますか」
「折角プラズマ団を見つけたのに、振り出しに戻ったからな」
「地道に鍛えつつ、プラズマ団の足取りを辿るしかないのニャ。ただ、ゲットしたポケモンの報告については、サカキ様は褒めて下さったニャ」
「ソーナンス!」
サトシ達を追う様に、電気石の洞穴に突入する1体のコマタナがいた。
【私は、あの方の為に……】
*
トウヤとラングレーは電気石の洞穴を進んでいた。襲い掛かって来る野生ポケモンと、挑んでくるトレーナーを倒しながら。
「18時半か……」
「今日は休んだ方が良いかも知れないわね」
「だな」
トウヤは雑炊を作った。
「そう言えばアンタ、お父さんがカントー出身だって言ってたわね」
「ああ」
「イッシュだと、ハーフに対しても風当たりが強いからね、私からすれば凄くバカらしいんだけど」
「トレーナーになる前、露骨にやってたのシューティーだけだからな。問題は無かったよ。別に気にしてもいないし。だだ、どうしても許せなかったのは、サトシを田舎者の弱者だって言ったり、正論を言ったメイを殴ろうとした事だけは許さねえってだけだ。尤も、アデクの父つぁんが更生させてからは、勝手に負い目を感じて必要最低限にしか関わって来ないんだけどな」
「成る程ね。イッシュリーグ終わったら、今度はカントーに行くの?」
「まあね。カントーも、オレに所縁のある……」
そう言いかけた所で、トウヤがふらついた。
「トウヤ!」
「悪い。休みなしで探索に多数のバトルやってたからかな?」
「それなら休んだ方が良いわよ。私が見張っとくから」
「良いのか?」
「どうせ遅い時間だもの。アンタのポケモンも疲れているようだし」
「……」トウヤはふと、オノノクスが入ったボールを出す。
「万全なのは、オノノクスだけ。でも、完全に心を通わせてない。任せて。仲間を守れない程、柔な鍛え方はしてないわ」
「分かった。ラングレーの好意に甘えさせてもらうよ」
トウヤは地面に寝そべった。
「バカね。そんな寝方してると、風邪ひくし、服も汚れるじゃない」
ラングレーはタオルをかけてやり、トウヤを膝枕した。
『何でだろ?トウヤに友達以上の感情を持つなんて……デリカシーの無いバカなのに』
それでも、ツンベアーの件でトウヤにお姫様抱っこで助けて貰ったり、ミロス島で比較的多く行動したりした。トウヤの方も、顔を背けたり赤くしたりしていた事を思い出す。
『何だかんだ言って随分助けられて来たし、これ位悪くは無いわよね』
見張りをやる内に、ラングレーもウトウトしていき、夢の世界へ旅立った。