フキヨセシティにやって来たサトシ一行。その間にバトルを挑まれた結果、メグロコはワルビルに進化したのであった。
ジム戦は後日やる事にして、今日はゆっくりと休む事にした。
「ポケモンの回復をお願いします」
サトシ達は、ジョーイさんにポケモンの回復を頼む。そんな中、トウヤのフタチマルは遠くから何かを見ていた。
「マドカ。それで、今はどうなの?」
「だいぶ良くなったって主治医から言われたよ、ツカサ。ただ、もうトレーナーとしてやっていくのは難しいだろうってね」
「そう」
フタチマルが見ていたもの、車椅子に乗っている黒髪の青年と、そんな彼の身を案じている茶髪の女性が会話をしていたのだ。
《マドカ。どうして……生きていたんだったら……》
フタチマルは、深呼吸をしてから車椅子の青年の元へ向かって行った。
「どうしたんだ?フタチマル!」トウヤが声を掛けるが、聞こえていない様だ。
「どうした?」サトシが聞いて来た。
「悪い。フタチマル追いかけて来る」トウヤは走り出していった。
*
「ねえマドカ」
「ん?どうしたの、ツカサ」
「ホタチ3枚を持ったフタチマルがこっちに来ているわよ」
恋人であるツカサからそれを言われた瞬間、マドカはハッとなる。
『まさか、ミジュマル……君なのか?』
そして、マドカの面前にフタチマルがやって来た。フタチマルは、マドカを睨み付けるように見ている。
「フタチマル~!待ってくれよ~」そこへトウヤがやって来た。
「成る程な。そこにいる彼が今のご主人様で、フタチマルに進化出来たってわけだね。まさか、ここまで強くなるとはね。驚いたよ。あの時、僕にもこれ位の実力があれば或いは……」
「あ、あの~」
「悪いね、自分だけの世界に入り込んでしまったよ。僕の名前はマドカ。で、こちらがツカサさ」
「トウヤです、宜しくお願いします」
「トウヤ君。そのフタチマル、どこでゲットしたんだい?」
「夢の跡地です。おかしいですよね、本来初心者用ポケモンは野生にいる筈が無いし。後、トウヤで良いです」
「……やはりそうか」
「やっぱり、元々はトレーナーのポケモンだったのか……でも、どうして捨てたんだよ!」
「マドカは捨てたんじゃないわよ。間違っても、自分の欲望の為に捨てる様な輩と一緒にしないで頂戴」
「ツカサ」
「あなたが言っても、この子は信じやしない。だから私が言うの」
「……」
「マドカはプラズマ団に襲われ、その時に全てのポケモンを逃がしたの。自分のポケモン達が、プラズマ団に悪用されない様に」
「そうか。だから夢の跡地で、プラズマ団と戦った時に団員を殺そうとしたのか。そうなんだな、フタチマル」
トウヤがフタチマルに問いかける。黙ってばかりだが、沈黙は肯定と受け取った。
「申し訳ない事をしたよ。もう僕は、日常生活すら異常をきたす程になってしまった。それ位の重傷を負わされたんだ。担当医からは、これで生きているのが不思議だって言われるまでにね。迎えに行けなかった」
マドカは頭を下げた。フタチマルは絶句した。自分が逃がして、その後に迎えに来てくれなかった事に怒っていた。プラズマ団程では無いにしても。
《迎えに行かなかったんじゃない。出来なかった!それなのに、私は……私は……マドカの復讐と言いながらもマドカを憎んでいた!何て愚かだったの!!》
だが、実際は違ったのだ。マドカは、自分の命を懸けて守ったのだ。もしかしたら、あの時に死んでいたかも知れない。でも、後遺症を患いながらも生きていた。
「フタチマル。何を思ってるのかは分からないよ、オレ。でも、マドカさんは生きてたんだ。そして、きっかけは偶然だけど再会出来た。それで良いじゃないか」
トウヤが、何とかフタチマルを励ます。
「それで、どうする?」
【何が?】トウヤの問いに、フタチマルは首をかしげる。
「折角会えたんだからさ。このままマドカさんの所へ戻っても良いんだぜ」
「トウヤ、君は何を言って……」
「今、フタチマルのトレーナーはオレですけど。もしフタチマルが望むのならば、マドカさんに返しても良いんじゃないかって思ってるんです。まあ、旅に出る前ならそんな事は一言も言わなかったんですけどね。今、一緒に旅をしている仲間の考えに影響されたんですよ」
《確かに、サトシの影響を1番受けているのはトウヤだものね。納得だよ》
《だな》
何時の間にか出ていたエンブオーとサンダースがそんな事を思っていた。
*
だが、この雰囲気を壊す者は突如として現れた。
「おいおい。最終進化もしてねえザコポケモンじゃねえか。これなら、オレが率いるファイアーウォーリアーズでも楽勝だな。それに……」
いきなりやって来た男は、ニヤリとトウヤのエンブオーを見る。
「そこのエンブオーは使えそうじゃねえか。フッ」
「誰だよ、いきなり」トウヤが冷たく言った。
「あぁ~?俺はスワマだ……ってサンダース?ヘヘッ、こりゃ傑作だ。田舎者のポケモンじゃねえかよ。使えねぇ。宝の持ち腐れだな。なぁ、エンブオー?オレと来いよ?ポカブじゃ使えねえから捨てるが、進化系なら良く働いてくれるだろうしよ」
突然そんな事を言い出した男。スワマ。
『……まさかね』
サトシのポカブは、スワマに捨てられたという仮説を立てたトウヤ。だが、確証が無いので黙っておく。だが後日、その仮説は最悪の形で当たってしまう事になる。
「何勝手な事を言ってるのかしら?エンブオーは、トウヤ君のポケモンよ」
「ハッ!こんな雑魚の所にいるポケモンが可哀想だから引き抜いてやろうと思っただけだ!邪魔するなら潰すぞ!」
スワマはツカサに殴りかかろうとする。だが、マドカが受け流して背負い投げで地面に叩き付けた。
「相当腐っているな。君みたいな奴がいるなら、プラズマ団がのさばるのも納得だね」
「何だテメエは!何訳分んねえ事言ってる!?大したことないくせに随分いい態度しやがって!」
「年上には礼儀を弁えるべきだ。僕は18だよ」
マドカにそう言われて、スワマは苦虫を噛む。因みにだが、スワマは14歳である。
「なら、拳じゃなくてバトルで白黒つけようじゃねえか」
「……分かった」マドカとスワマは互いに睨みつける。
「いくぜ!ファイヤーウォーリアーズ!エンブオー!クイタラン!Fooooo!!!!」
「……行こうか!ジュカイン!マフォクシー!」
「おお!ジュカインは知っているけど、隣のポケモンは始めて見るな!」
「あの子は、カロス地方の初心者用ポケモン、フォッコの最終進化系よ。炎タイプとエスパータイプを持ってるわ」
「へえ」ツカサからそう教えられるマドカ。
「珍しいポケモンじゃねえか。勝ったらオレが連れて行くぜ」
「出来るんだったらな」
「ほざけ!その減らず口、聞けなくさせてやる!『ついでにあの女も、オレのものにしてやろうか!勿論、ファイヤーウォーリアーズに新人トレーナーとくたばり損ないを殺させてな!!』エンブオー!アームハンマー!クイタラン!乱れひっかき!」
「ジュカイン、岩雪崩。マフォクシー、サイコキネシス」
マフォクシーはエンブオーに浮かして叩きつけてを繰り返し、ジュカインはクイタラン目掛けて岩による無差別攻撃を行った。
スワマのポケモンは、一撃で戦闘不能となった。
「な、ななななな」スワマは腰が退けてしまった。
「どうした?僕の減らず口を聞けなくするんじゃなかったのか?だとすれば、とんだ見掛け倒しだな」
マドカは、道端に佇む汚物を見る様な目でスワマを見る。スワマは、涙目になり、引き腰のまま逃げ出す。
「ハア……ハア……」マドカが膝をつく。
「マドカさん!」
「マドカ!!」
「これで分かったろ?フタチマル、このままトウヤの元で強くなるんだ。分かっていたんだ。このまま、成功率50%の手術をしないと生きていけないって」
【!?】
「今の状態ですら、やっと体を動かすのがやっとだったんだ。だけど、手術をした所で失敗したら死ぬんだ。もう、どう足掻いても絶望しかないんだよ、僕の所に戻っても」
「そんな事はない!」トウヤが反論した。
「一筋だけど、まだ希望は残っている!半分は成功して生きていられるじゃないか!」
「このままでも、只々死ぬだけ。マドカ、あなたは自分ん元へ戻って来られたジュカインとマフォクシーを、死んだら私に託すと言った。でもね、生きていて欲しいって1番願っているのはあの子達よ!」
「ジュカ!」
「マフォ!」
「……」
「手術を受けて、マドカ。あなたが生きようって気力さえあれば、出来る筈!何だってあなたは、今まで天才って呼ばれてきたんだから!」
「……トウヤ、改めて言っておくよ。フタチマルの事、頼めるかな?」
「フタチマル、お前はどうしたい?」
フタチマルはしばらく考えた。そして……
「分かった」トウヤは顔を俯かせる。
フタチマルはマドカの側へ行った。
「どうして……?」
【トウヤには、感謝しきれない位の恩がある!でも、折角マドカと再会出来た!もう離れたくない!!】
「……もう、トウヤの時みたいに余りバトルに出せなくなるけど、それでも良いのかい?」
マドカの問いにフタチマルは涙を流しながら頷く。
「マドカさん……これを」トウヤは、マドカにモンスターボールを手渡した。
「フタチマルは、君のポケモンとして預かる」
「今度こそ、フタチマルとお幸せに」
トウヤは走り去っていった。エンブオー、サンダースはフタチマルと向き合う。
【トウヤの事、宜しく頼むわ】
【当たり前だ】と、エンブオー。
【お前こそ、達者でな。また会おうぜ】
エンブオーとサンダースはトウヤを追いかけて行った。
「行きましょう、マドカ。トウヤ君。あなたには感謝してもしきれないわ。偶然だけど、マドカとフタチマルは再会出来た。マドカに生きようという気力と希望が宿った」
マドカとツカサは病院に入って行った。そして、翌日トウヤがジム戦を始めたと同時にマドカの手術も始まったのであった。
*
時は少し遡る。マドカにやられたスワマは相当苛立っていた。
「あの死に損ないがあああぁぁっ!!」
「お困りのようですね、ファイアウォーリアーズを率いるスワマ」
そんなスワマの背後に、ゲーチスがやって来た。
「何だ?おっさんは?」
「私はゲーチスと言うものです。以後、お見知り置きを」
ゲーチスは名刺をスワマに渡す。プラズマ科学研究所の所長と書かれていた。
「実はですね。無作為に選んだトレーナーに研究所で作ったポケモンの潜在能力を無限に引き出す道具を作りましてね」
イーヴィルリングを見せるゲーチス。
「只の黒いリングじゃねえか」
「まあそう慌てずに……どうやら、招かれざる客も来たようですね」
そこへやって来たのはブラックエンペルトと呼ばれる暴走族集団だった。
「やっと見つけたぜスワマ!」
「テメエ、まだトレーナーにもなってねえ総長の妹を、炎ポケモンを奪うだけに飽き足らず、強姦をして精神崩壊に追いやりやがったな!」
「クックック。ああ、あったなそんな事。元気でやってるか?」
スワマが意地の悪い笑みを浮かべながらブラックエンペルトの面々に聞く。
「家に戻って来て3日後に自殺したんだよ!」
「そりゃ良いや!クズの掃き溜めにいる奴の家族なんて、何やったって許されるんだからよぉ!」
「あの野郎、どこまで腐ってやがる?」
「落とし前付けさせてやらぁ!!」
ポケモンを繰り出すブラックエンペルトのメンバー。それを見たゲーチスは、イーヴィルリングの良い宣伝になると判断した。
「丁度良いでしょう。リングの力をお見せします。キリキザン、行くのです!チンピラ共に格の違いと言うものを教えてあげなさい!!ハサミギロチン!!」
ゲーチスはキリキザンを繰り出す。イーヴィルリングが装着されていた。
*
7分で片が付いた。ブラックエンペルトには、もう戦えるポケモンは全くいない。
「あのキリキザン、強過ぎる」1人が悔しそうに言った。ゲーチスはそれを足蹴りにする。
「とまあ、こんな感じです」
「スゲエ。これで、強大な力がオレの物に!」
スワマはイーヴィルリングを手に取った。
「では、特別価格で1つ1000円を」
「ツケだ」
「いえ。お金を……」
「払わねえとは言ってねえだろ!いつ払うか決めてねえだけだ!!そんな事分からねえのか!このクソジジイ!」
スワマはゲーチスの腹部にローキックをかました。ゲーチスはそのまま倒れ込む。それをスワマは足でゲーチスの顔を踏む付ける。
「お客様は神様って奴だ。分かったな?」
「……」
「そうだ。良い事思い付いたぜ。おいおっさん。オレの名前、言ってみろよ。大きな声で、分かりやすくな。さあ、オレの名前を言ってみろ」
「うっ……スワマ……」
「何ぃ!?」
凄んだ顔でもう1度だけチャンスをやると言わんばかりの態度を取るスワマ。
「スワマ……スワマ様ァァァァッ!!」
「そうだ!それで良い!フッハッハッハッハッハ!!!」
『おのれぇぇっ!この小僧!私が平身低頭に接して来た事を言い事につけあがりよって!!この屈辱は、たっぷりと礼をさせて貰うぞ!!』
スワマに無理矢理屈服させられたことにより、いつか復讐をしてやると心に誓ったゲーチスであった。