サトシのイッシュ冒険記 ~真実の救世主~   作:純白の翼

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2話投稿の後編となります。ご注意下さい


EP43 エアバトル!羽ばたかない翼

ポケモンセンターでサトシ達3人と合流したトウヤは、事のあらましを伝えた。

 

「成る程な。フタチマルにそんな過去が……」と、サトシ。

 

「ジム戦が終わったら、そのマドカって人の所へ行きましょう」

 

「ああ。そうだな」

 

「サトシ、トウヤ。明日も早いんだ。今日はゆっくり休息を取った方が良いぜ」

 

デューンに奨められ、夕食を摂ってから就寝した2人であった。

 

*

 

翌日、ジムに向かうべくロビーへ行ったサトシ達。

 

そこには、意気消沈のケニヤンと、そんな彼を慰めていたデントとルークがいた。

 

「お~い!ケニヤ~ン!」サトシが手を振りながら声を掛ける。

 

「ああ、サトシか。久しぶり……」

 

「どうしたんだ、ケニヤン。随分と落ち込んでいる様だけど」

 

トウヤは心配そうにしていた。

 

「ちょっとフキヨセジムで色々とありましてね……」と、ルーク。

 

「負けたのか?」デューンが聞く。

 

「そうなんだけど、そうじゃないんだ」

 

「何かあったんですか?」メイが尋ねた。

 

「僕から説明しますよ」

 

ケニヤンはとても説明出来る状態ではない。ルークが説明する事にした。デジタルカメラを使って。

 

*

 

映像が再生された。ケニヤンのジム戦を再生したのだ。

 

そこに映ったのは、フキヨセジムのジムリーダーフウロと、彼女の前に挑戦者であるケニヤンが立っていた姿だ。

 

そして両者ジム戦に使う5体のポケモンを出した。

 

ジムリーダーフウロはスワンナ、ココロモリ、ケンホロウ、エアームド、ファイアローに対し、ケニヤンはゼブライカ、ダゲキ、レパルダス、オコリザル、カメールを出した。

 

今迄お互いのポケモンを見せ、バトルするジムも幾つかはあった為、これからバトルが始まるのかと全員が思っていたのだ。

 

だが。事態は予想を上回る方向で進んでいった。最悪の形で。

 

「それじゃあバトルをお願いします!」

 

「じゃあ行くよ!エアバトルスタート!」フウロが指パッチンをする。

 

「は?」ケニヤンは唖然とした。

 

そう言うとフウロは目を瞑る。しばらくすると、目を開けた。すると……

 

「あ~ダメね。私の勝ち!だからジムバッチは渡せないわ。ゴメンね!」

 

ジム戦もせず勝敗を決めたフウロに対して、その場にいた全員が信じられない光景だった。

 

特に同業者であるデントは、フウロのこの暴挙に対して怒りを露わにしている。

 

「ちょっと待ってくれよ!ここのジムのやり方って、こうなのか!?」

 

「そうよ!この方が効率良いし!すぐに勝敗が決まるから、一石二鳥よ!!」

 

「バトルをせずに勝敗を決めるなんて、おかしいじゃないか!」

 

「そうは言ってもね~ダゲキは相性でこっちが有利だし、ゼブライカもレパルダスも押しで負ける。そこの見た事が無い2体も、瞬殺。間違いないわ!」

 

「そんな!バトルもしていないのに!!あんまり過ぎる!!!」

 

「は?何?ここでは私がルールなのよ!ジムバトルは君の負け!ジムバッチも渡せない!ほら!分かったらさっさと出て行って。次の挑戦者が待ってるから!そんなに嫌なら、他のジムに行けば良いじゃない!!!」

 

ここで映像は終わった。

 

*

 

ジムリーダーフウロの態度にその場の空気が沈黙した。

 

「フン。随分とまあ、ふざけたジムリーダーがいたものだな」

 

遠くから見ていたのか、シンジがやって来た。

 

「シンジ」サトシが呟く。

 

「これ、挑戦者に対する冒涜以外の何ものでもないじゃんか。まだヤーコンのおっさんがまともに見える位だ」

 

戦術に難癖は付けて来ても、ちゃんとジム戦をやってくれたヤーコンの方がマシだと思ったトウヤであった。

 

「それでケニヤンは落ち込んでいたのか」

 

「実際にバトルしたならまだしも、想像でバトルして自分には勝てないって言われたら、俺は何の為にここまで努力してきたのかがわからなくなってさ」

 

「確かに同じジムリーダーとして捨て置けないね」デントがキッパリと言った。

 

「やっぱりそうなんですか?」ルークが聞く。

 

「うん。まず一つ、ジムリーダーは新人トレーナーの越えなくてはならない壁になる。一つ、挑戦者にはいつでも全力でバトルする。一つ、悪の道に行くトレーナーは我々が正しい道に戻す、そして最後に、トレーナーの言葉にはいつでも聞く。これがジムリーダーの役目なんだ。例え相手が不利なポケモンを出したとしても、全力でバトルするのは当たり前なんだよ」

 

「だが、そんな事を言ってもあの女が態度を改めるとも思えんがな」シンジが言った。

 

「お前、まさか……」

 

「余りに度が過ぎる様なら、こちらもそれ相応の手段に出るまでだな」

 

ポケモン監査官への連絡先を皆に見せるシンジ。

 

「シンジ。それは飽く迄最終手段として残しておけ。でも、どうしてそんな風に?」

 

サトシはシンジをそう言いつつ、そうなってしまった背景を聞いた。

 

「元々、フキヨセジムはフウロさんの祖父、マイルさんが勤めていたんです。しかし、良いバトルをする為にと、孫娘のフウロさんに引き継がれたそうなんです。フウロさんは凄腕の飛行タイプの使い手として、当初はイッシュ地方中から沢山の挑戦者が集まるようになりました。ですが、それと同時に好きな飛行機に乗る時間が取れなくなり、以来効率よく挑戦者を捌いて自分の時間を確保するため、エアバトルでジム戦をするようになったそうです」

 

「そうだったんですね~」メイが言った。尤も、納得出来ていないが。

 

「ルーク、それ、誰から聞いたんだ?」トウヤが聞く。

 

「ワシがルーク君に教えたんじゃよ」

 

フウロの祖父、マイルがやって来た。

 

「あなたが、マイルさんですか。僕はサンヨウジムのデントです」

 

デントが真っ先に挨拶をした。

 

「サンヨウジムの……これはどうも」

 

「それで、フウロさんの事なんですが」サトシが切り出す。

 

「フウロの事……ケニヤン君には大変申し訳ない事をした」

 

「爺さん。説得出来そうか?」デューンが質問する。

 

「フウロはあの様子じゃからのお」

 

「これ以上続けるようなら、ポケモン監査官に報告をした方が良いかも知れない。エアバトルなんてものは、ジムリーダーの役職を冒涜する以外の何ものでもないだろう。早かれ遅かれ、オレがやらなくても誰かがやるだろうからな」

 

シンジがキッパリと言った。

 

「そ、それは……」マイルが狼狽える。幾らシムリーダーとして問題があっても、それ以前に自分の孫娘なのだ。

 

「マイルさん。フウロさんを庇いたい気持ちも分かります。でも、シンジの言う通りいつか誰かがやります。今、改善しないとフウロさんは最悪の事態に陥る可能性が極めて高いです」

 

「……」

 

「爺さんの方から、正式なジム戦をするように頼めば良いんじゃないか?普通にやったって、エアバトルだのオレルールを適用しかねないからな」

 

「だが、フウロは相当な実力者じゃ。簡単に勝てる相手ではないぞ」

 

「オレだって、イッシュリーグの為に生半可な努力はしていません。それに俺だけじゃない、ここにいる皆もそうです。だからお願いします」

 

サトシが頭を下げる。

 

「分かった。ワシの方からフウロに掛け合ってみよう」

 

マイルはそう言って、立ち去った。

 

「オレを牽制してまで、ジム戦をすると言ったんだ。敗北は勿論だが、無様なバトルは許さん。何故ならオレが、リーグでお前を倒すんだ。シンオウリーグのリベンジって事を差し置いても」

 

「分かってるさ。明日のジム戦、絶対に勝つぜ!」

 

サトシは早速準備に取り掛かった。フウロの使うポケモンは5体なので、手持ちの調整の為にだ。

 

「なあ、デューン」

 

「どうした?サトシ」

 

「ファイアローってどんなポケモンなんだ?」

 

「飛行タイプの他に炎タイプを持ってる。特性は炎の身体だ。ただ……」

 

「?」

 

「極稀に、夢特性『疾風の翼』を持つファイアローがいる。体力が十分にあるとき、飛行タイプの技を出すと先攻出来るのさ」

 

「そんな特性が」

 

「場合によっては、オーキド研究からやって来たポケモンを使った方が良いかも知れねえぞ」

 

「大丈夫さ。イッシュで仲間になったポケモン達なら出来るって、オレは信じているからさ」

 

サトシが明日ジム戦で出すポケモンは、ハトーボー、ジャノビー、ランクルス、ワルビル、ピカチュウだ。

 

*

 

その頃、アララギ研究所では……

 

【初めてパーティから外された!!】

 

ミジュマルが叫ぶが、ジュカインのリーフブレードが当たった。

 

【よそ見するな。バトルだったら、すぐに戦闘不能だぞ】

 

【先輩、もう少し手加減してくれ~!】

 

【駄目だ!5分後、今度はラグラージが水タイプの技を強化する特訓をするからな。オレは次、ハハコモリの方を見なきゃいけねえし】

 

【宜しくお願いします】

 

【ハイドロポンプの出力を上げるよ~】のんびりとラグラージが言った。

 

ミジュマルはジュカインとラグラージにしごかれていた。一方、チャオブーは……

 

【やぁ!】

 

【段々技の精度が上がってきているようですね、チャオブー】

 

リザードン、ゴウカザル、バシャーモが面倒を見ていた。今特訓に付き合っているのは、バシャーモだ。

 

【どうしたんですか?リザードンさん】

 

【ああ。ゴウカザルか。オレ達、何の因果か分からんが元々他のトレーナーに捨てられてサトシに拾われたんだよなぁって思うとな。イヤ、ゴウカザル。それでも、シンジは大分マシだったな。強くなる為には妥協しねえし】

 

【そろそろ、ズルッグの方に行かなきゃ】ゴウカザルはズルッグの方へ行った。

 

その他にも、ギガイアスとガマガルはカビゴンとドダイトスに、ペンドラーはヘラクロス、モノズはオニゴーリとゲンガーに修行を付けて貰っていたのだった。

 

「皆。差し入れ持って来たわよ」

 

そこにやって来たのはラティアスだ。大皿には、ポケモン専用の木の実タルトが盛ってある。今のラティアスは、能力で人間になっている。赤い髪の、メイド服を着た美少女姿だった。因みに、この状態だと普通に人間と会話が可能だ。

 

【メシだ~~~~!!!】早くもミジュマルがとっついて来た。

 

【ミジュマルは絶対に、ワニノコやヘイガニ路線だな】ヘラクロスがぼやいた。

 

【オレもそう思うぜ】

 

リザードンが同意した。何で水タイプは問題児ばかりだ。ブイゼルとゼニガメとエンペルトは個人プレーに走るし、ラグラージはのんびりし過ぎだ。まともなのがキングラーとラプラスしかいねえ。もっと草タイプを見習ってほしいものだ、とリザードンは思ったのであった。

 

*

 

そして翌日、サトシ達はフキヨセジムへ来た。マイルの説得が効いたのか、フウロは正式にジムバトルをしてくれる事となった。

 

ケニヤンの時と同様に、お互いのポケモンを出すサトシとフウロ。

 

フウロはスワンナ、ココロモリ、ケンホロウ、エアームド、ファイアローを出し、対するサトシはハトーボー、ジャノビー、ランクルス、ワルビル、ピカチュウを出した。例によらず、またエアバトルをするフウロ。

 

「ん~、私の勝ちね。ジャノビーとランクルスは相性不利だし、ハトーボーとワルビルなんて論外、ピカチュウは押しで負ける。うん、間違いないわ!」

 

「御託はそれだけですか?早くバトルの方を始めましょう」

 

「え~!やっぱりバトルしなきゃダメ?私が勝つのは決まっているのに」

 

『サトシ、顔には出してないが相当ブチギレているな。絶対に容赦のないバトルをするに決まってるぜ』

 

トウヤは冷や汗をかいた。

 

「フウロ。昨夜正式にサトシ君とバトルすると言っただろう。もう覆すのか?」

 

マイルが厳しく言った。フウロは舌打ちしながらも……

 

「ぶ~!分かったわよ!速攻でケリを付けてやるわ!」

 

バトルに応じる事となった。そんな光景を、観戦していたサトシの関係者たちは呆れ顔だ。

 

「本当にふざけたジムリーダーだな」シンジが吐き捨てる。

 

「サトシさん。大丈夫でしょうか?」

 

「問題ないだろう。相性不利を覆せないほどサトシは弱くないからな」

 

「随分とサトシさんの実力を買ってますね」

 

「シンオウで何度もバトルをして来たからな。しかも、あの女は本気の強さにしている。だが、幾度となく修羅場を潜り抜けて来たあいつが、ジムリーダなどというぬるま湯に浸かっていたあの女に対して、そう簡単にやられはしない」

 

「最初はトリプルバトル。後半は2体2のシングルか……」デューンが呟いた。

 

観戦者が見守る中、いよいよジムバトルが始まった。

 

「ぶっとべ!ココロモリ!スワンナ!ケンホロウ!」

 

「行け!ランクルス!ジャノビー!ハトーボー!!」

 

「ココロモリ、ハートスタンプ!ケンホロウ、燕返し!スワンナ、熱湯!」

 

「ランクルス、ハートスタンプをサイコキネシスで弾き返せ!ジャノビー、燕返しを回転で回避!ハトーボーは熱湯を風起こしで包み込め!!」

 

ランクルスはサイコキネシスを使い、ハートスタンプの軌道をずらしてココロモリに当てた。ジャノビーはコンテストの要領で華麗に躱し、ハトーボーは熱湯を合した風起こしでスワンナに当て、火傷を負わせる。

 

「嘘でしょ!トリプルバトルなんて初めてなのに!」

 

「ランクルス!ココロモリにチャージビーム!」

 

フウロが狼狽えた瞬間を見逃さず、ランクルスの技が当たったココロモリは戦闘不能となる。

 

「ココロモリ!」

 

「ジャノビー!蔓の鞭でケンホロウを捕まえるんだ!」

 

【それ位、お安い御用よ!】

 

躱した時にケンホロウの背後にいたジャノビーは、蔓でケンホロウを縛った。

 

【え?狙いは俺!?】ケンホロウは慌てる。

 

【それ以外にいるんだったら教えて欲しいものね】

 

そう言いながらジャノビーは縛りをきつくした。

 

【ああ!もっとやって!】このケンホロウ、マゾなようだ。

 

《コイツ、ドが付く程のマゾなの!?》ジャノビーはドン引きした。

 

「ケンホロウ何やってるの!マゾなのは分かっていたけど、これはバトルなのよ!縛り付けられて嬉しそうにしないで脱出して!ああもう!スワンナ!ケンホロウを助けるのよ!」

 

「させるか!ハトーボー、ランクルス!スワンナを押さえつけてくれ!」

 

【は~い!】

 

【かしこまりました】ランクルス、ハトーボーの順で言う。

 

【こいつらの連携が凄まじい!】スワンナが言った。

 

「今だジャノビー!メロメロ!」

 

至近距離でメロメロを食らったケンホロウ。

 

「考えたな。ケンホロウのスピード、普通ならメロメロをしても当たらない。だからサトシは、翼ごとつるのムチで縛って、身動き出来ない所にメロメロを繰り出したわけか」

 

シンジが解説をする。

 

「尤も、フウロのケンホロウがマゾだったのは想定外だったけどな」

 

デューンは苦笑しながら言った。

 

フウロのケンホロウはと言うと、もっと縛ってくれと叫ぶ。流石のジャノビーも、気が引けてしまった。

 

【もう二度とコイツの相手なんかしたくないわ!】

 

「連続でアクアテールと目覚めるパワーを繰り返せ!!」

 

アクアテールと目覚めるパワーの繰り返し攻撃を食らったケンホロウ。恍惚の表情のまま、戦闘不能に。

 

「よし、あとはスワンナだけだ」サトシはガッツポーズをする。

 

「スワンナ!アクアリングで火傷回復よ!その後にブレイブバード!」

 

スワンナは火傷を直し、ハトーボー目掛けて突進して来た。

 

「ハトーボー、影分身!」

 

ハトーボーは影分身を発動するが、スワンナの方が1枚上手だった。ハトーボーに技がヒットする。

 

「ハトーボー!」

 

「これで1勝は頂くわよ!スワンナ!バブル光線!」

 

バブル光線がハトーボーに決まり、地面に押し付けられた。だが、ハトーボーも負けていない。よろめきながらも立ち上がった。

 

「そんな!まだ立ち上がって来るの!」

 

「ジャノビー、毒々!」

 

スワンナは猛毒となる。

 

「何度やっても無駄よ!アクアリングで回復しなさい!」

 

「ランクルス、サイコキネシス!」

 

スワンナは猛毒を治そうとするが、ランクルスの妨害を受けた。そのままじわじわと体力を削られて行く。

 

《ジャノビーさんや、ランクルスさんやここまでやってくれた!だから私もやりましょう!!》

 

 

ハトーボーは咆哮を上げる。すると、身体が光り始めた。

 

「ここに来て進化か!」ケニヤンが驚く。

 

「これはシャッターチャンスですよ!」ルークはカメラ撮影を行う。

 

【ここに来て進化なの!凄い凄い!】

 

【サトシの思いに応えたのね】

 

ハトーボーの身体が大きくる。フウロのオスのケンホロウとは異なる姿、メスのケンホロウへと進化を遂げた。

 

「ケンホロウ、進化したんだな」

 

「まさか、ここで進化するなんて……でも勝つのは私よ!スワンナ!ブレイブバード!」

 

「ケンホロウ、影分身だ!!」

 

スワンナのブレイブバードが迫るが、進化したケンホロウはハトーボーの時とは違い、躱していく。それだけでなく、猛毒に冒されていて、思うような動きが出来ないのだ。

 

「メスはオスに比べて、飛行能力が格段に高いと聞いているが……」

 

「ここまで卓越しているケンホロウは見た事ないな」

 

デューン、トウヤの順で言う。

 

「ケンホロウ、ゴッドバード!!」

 

影分身がまだある状態で技を発動するケンホロウ。スワンナは、疲れ切っている。そして、無数の攻撃を食らい、遂に戦闘不能となった。

 

「スワンナ!」

 

「ココロモリ、ケンホロウ、スワンナ!戦闘不能ぞな!」

 

前半戦のトリプルバトルに勝利したサトシ。

 

「やった!最初のバトルはサトシさんが勝ちましたよ!」

 

「レベルも上なのに……相性も良かったのに」

 

「それがあなたの敗因に繋がったんですよ。エアバトルで、バトルのシミュレーションをするのは大いに結構ですけど、実際のバトルはそうやすやすと思い通りにはならない。ポケモンには無限の可能性を秘めているんですからね」

 

「次は2体2のシングルバトルぞな!」マイルが高らかに宣言した。

 

30分ほどの休憩が入った。この時にデントは、自分のヤナップをミジュマルで倒してバッジをゲットしたという事を全員に伝えた。殆どが驚いていたが、シンジとデューン、トウヤは全く驚いていなかった。

 

*

 

次はシングルバトルだ。

 

「まだよ!エアバトルは正しいんだから!ぶっ飛べ、エアームド!」

 

「ピカチュウ、君に決めた!」

 

【任せて!!】

 

「エアームド、鋼の翼!」直線状に突っ込んでくるエアームド。

 

「今だ!雷パンチ!」

 

タイミングよく電撃の拳を当てるピカチュウ。効果は抜群だ。だが、フウロは特に取り乱していなかった。

 

「何なんだ?」トウヤが呟く。

 

すると、エアームドの強固な鎧が砕け散って、明らかに速さを重視した鎧が露わとなった。

 

「エアームドの夢特性、砕ける鎧よ。物理技を受けると、防御力が落ちる代わりに素早さが大幅に上昇するの」

 

「そんな特性があったのか」

 

更に、ピカチュウが痛がる素振りを見せた。何の攻撃技を受けていないにも関わらず。

 

「ゴツゴツメットを持っているのか!」

 

「行きなさい!ブレイブバード!!」

 

段違いの速度でブレイブバードをかますエアームド。

 

「『なら、特殊技だ!』ピカチュウ、10万ボルト!」

 

ピカチュウは10万ボルトを発射する。だが、躱されてしまい、逆にブレイブバードのダメージを受けた。

 

『どうする?何か手はある筈だ……ハッ!そうだ!』

 

「次で止めよ!ブレイブバード!」

 

「ピカチュウ、波乗り!」

 

ピカチュウは水の塊をぶつける。咄嗟にエアームドは躱した。一瞬、ピカチュウが見えなくなったが、大した事は無いだろうとフウロとエアームドは高を括る。

 

「何度やっても同じよ!」

 

エアームドはピカチュウに衝突。ピカチュウは倒れた。

 

「まずは1勝ね!やっぱり私は正しいんだわ!」

 

だが、サトシは不敵な笑みを浮かべる。

 

「何がおかしいの?」

 

「よく見て下さいよ」

 

サトシが指差した方向には、ピカチュウがいた場所には何もいなかった。というより、ピカチュウは消滅していた。

 

「嘘!どうして!」フウロは動揺する。

 

すると、エアームドは何かに掴み掛られた。

 

「どういう事!?」

 

「あの波乗りは囮だったんですよ。身代わりを発動する間。気を逸らすことが出来ればよかった」

 

「そんな!こんな攻略法が!」

 

「ピカチュウ、10万ボルト!!!」

 

【食らえええええええええええええええっ!!!】

 

電撃が直撃し、エアームドは倒れた。その寸前、エアームドは何かをした。

 

「エアームド、戦闘不能!ピカチュウの勝ちぞな!」

 

「何でなのよ!あのポケモンは未進化なのに!こっちが有利なのよ!」

 

「どんなに有利な状況でも、作戦1つで幾らでも引っ繰り返せる。だから、バトルは面白いんだ!それをエアバトルだけで判断するから足元を掬われた。それだけの事ですよ。実力を碌に引き出せずに敗北認定される、それ程屈辱的な事はないですよ。それに、ピカチュウは最終進化じゃないけど、既に進化したポケモンですから」

 

「確かにそうだな。オレもジム戦の為、半端な気持ちで挑んじゃいねえな」

 

「サトシの意見に同感だ。じゃなきゃ、オレだってわざわざ他地方に足を運んだりはしない」

 

トウヤとシンジは、サトシの言葉にすぐに同調した。

 

「そんな挑戦者がいるからこそ、僕達ジムリーダーも向上心を忘れてはいけないんだ。ポケモンの可能性は、トレーナーの数だけ無限に広がるからね」

 

デントが言った。

 

「フウロさん。最後のバトルを、お願いします」

 

「……分かったわ!」

 

こうして最後のバトルが切って捨てられた。

 

「ぶっとべ、ファイアロー!」

 

「ワルビル、頼むぜ!」

 

フウロはファイアロー、サトシはワルビルを繰り出した。ワルビルは、まきびしのダメージを受けた。だがワルビルは、特性の威嚇でファイアローの攻撃を下げた。

 

「エアームドの最後のあがきよ」

 

「ワルビル、ストーンエッジ!!」

 

「鋼の翼で壊しなさい!」

 

ファイアローは、鋼鉄と化した翼で、石の刃を落としていく。

 

「ニトロチャージ!」

 

「穴を掘るで躱せ!」

 

咄嗟にワルビルは、地面に潜って攻撃をやり過ごす。

 

「地面技はファイアローには効かないわよ!」

 

「誰が当てるといいましたか?そのままストーンエッジ!」

 

真下からワルビルが出てきて、ファイアローにストーンエッジを叩き込んだ。4倍のダメージを受けるものの、まだ倒れていない。

 

「まだ倒れないか!ワルビル!砂嵐!」

 

サトシは、今度はそのまま砂嵐を巻き起こしてダメージを稼ぐ。

 

「まずいわ!鎌鼬で破壊して抜け出すのよ!」

 

ファイアローは、鎌鼬で砂嵐を消し去る。

 

だが、既にワルビルはファイアローの真下にいた。

 

「ストーンエッジで止めだ!」

 

ワルビルのストーンエッジが炸裂し、ファイアローは落下。戦闘不能となった。

 

「ファイアロー、戦闘不能!ワルビルの勝ちぞな!よって勝者、チャレンジャーサトシ!」

 

マイルが叫んだ。

 

「やったぜ!サトシが勝った!」

 

「流石だね」

 

ケニヤン、デントの順でサトシを称賛する。

 

「お陰で凄い映像が撮れたよ!僕達も負けてられないな~!」

 

ルークは興奮していた。

 

「私のエアバトルが……勝ちの筈なのに」まだ現実を受け止められていないフウロだった。

 

「実際にバトルした結果ですよ。エアバトルにうつつを抜かして、トレーニング不足してるって分かりましたから」

 

「そんな!トレーニングはやったわ!」

 

「なら実戦は積ませたんですか?」すかさずサトシが質問する。

 

「!?そ、それは……」

 

「やっていないみたいだな。シミュレーションとバトルは違う。対策を立てても、トレーナーはその先を行く。ピカチュウの身代わりによる囮作戦や、ケンホロウの進化とかな。アンタのポケモンなら、本当ならばエアバトルなんてやらなくても、そこら辺のチャレンジャーんんて、すぐにねじ伏せられる位には強かったんだ」

 

「スワンナ達も、相性にも負けるようなポケモンじゃないし、それを勝手に決めつけていいものじゃないってことだ」

 

デューンとシンジがサトシに援護射撃をする。

 

「フウロ。サトシ君やデューン君、シンジ君の言う通りじゃ。お前のバトルは、多くの挑戦者の心に焼き付けた」

 

マイルが観客席を指差す。観客は今のバトルに満足していた。

 

「ジムリーダーとして、フィールドに羽ばたく当初の姿。それがワシは嬉しかった。どうか考えを改めて欲しい。世界はお前が思っている程狭くは無いのじゃ」

 

「ここでサトシに負けたのは却って良かったかもしれない。あのままエアバトルを続けていれば、早かれ遅かれポケモン監査官に報告が入って、最悪フキヨセジムが閉鎖されていたかも」

 

「そんな!」トウヤの言葉にフウロは青ざめた。

 

「フウロさん。貴方がジムリーダーを辞めたくないと言うなら、これからは、ちゃんとジム戦を行って下さい。今観客席にいる皆だって、貴方に挑戦するのを心待ちしているんですから。お願いします」

 

「……そうよね。私ったら、バカみたい。自分だけの時間が無くなると思って、自分の事しか頭に無かった。それで、挑戦者だけじゃなくて、おじいちゃんやスワンナ達の事ちゃんと見ていなかったわ。そんなんじゃ、ジムリーダー失格よね。決めた。私、これからはちゃんとバトルする。今回の事を教訓に、またジムリーダーとして1からやり直す為にも」

 

そう言って、サトシにジェットバッチを渡した。

 

「ありがとうございます。」

 

「これで、フキヨセジムも、ちゃんとジム戦が出来る様になるね」と、デント。

 

「良かったよ。流石にエアバトルで決められてちゃ、オレだって納得出来なかったから」

 

もし改心しなかったら、ランドロスでフルボッコにしてやろうかと考えていたトウヤだったが、その必要も無くなったので、安心した。

 

「相変わらずぬるい奴だな。だが、悪くない。あいつだからこそ、人やポケモンを変える力があるんだろうな。ここのジムリーダーを正してくれた事。それについては感謝する」

 

シンジは、ゴウカザルの事を思い浮かべ、微笑みながら言った。

 

「よーし!オレもフウロさんに改めて挑戦するぜ!」ケニヤンは意気込んでいた。

 

「そうだね。僕もジム戦に備えとこう」と、ルーク。

 

こうしてフキヨセジムでのバトルに勝利したサトシ。

 

後日、サトシはケニヤン、ルーク、シンジ、トウヤのジムバトルを見届けた。そして、手術が成功したマドカのお見舞いに行き、次の目的地であるセッカシティに向かった。

 

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