サトシのイッシュ冒険記 ~真実の救世主~   作:純白の翼

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遅れて申し訳ございません。


EP44 目覚めよチャオブー

次のジムがあるセッカシティを目指しているサトシ一行。途中、バトル大会が開催されると言うトアルタウンに来ていた。

 

「丁度良いな。この先、ネジ山があるんだ。そこを越えれば、すぐにセッカシティに到着する」

 

「要は買い出しをこの町でしようって事ですね」トウヤの発言を返すメイ。

 

「じゃあ、二手に分かれてやろうぜ」

 

話し合いの結果、デューンとメイ、サトシとトウヤのの2人組に分かれた。

 

*

 

買い出しが終わり、宿泊先のポケモンセンターへ戻る途中のサトシとトウヤ。

 

「はあ。メイやデューンも加わったけど、夢の跡地まではオレ達2人で旅してたんだっけな」

 

トウヤが思い出したかの様に呟く。

 

「ああ。本当に色々あった。いつの間にか、バッジも6つ集まった。後2つだもんな」

 

「……後は、Nさんだよなぁ」

 

「……あの人なりにポケモン達を救いたいって足を掻いているんだよな。でもオレは、例えNさんが伝説のポケモンを連れていたとしても勝ってやるぜ」

 

サトシは、スピリット・ジュエルを握り締めながら、力強く宣言する。

 

【そうだよね、サトシ】ピカチュウも同意見なようだ。

 

「あ。いたいた!お~い!トウヤ~!サトシく~ん!!」

 

「あ!チェレン!」

 

そこにチェレンがやって来た。ベル共々、バトル大会に参加する為にトアルタウンに来ていたらしい。しかも、宿泊先のポケモンセンターの部屋も近いという事が分かったので、一緒に行く事になった。

 

「え?」

 

「どうしたんだ?トウヤ」アホっぽい声を出したトウヤに声を掛けるチェレン。

 

「いや、シューティーがいるんだけど」

 

「……ミロス島で出会ってから雰囲気変わったもんなぁ」サトシが回想する。

 

「相変わらずフードは被ったままなんだね」

 

すると、シューティーは意を決したかのように、サトシ達の元へやって来た。

 

「サトシ……トウヤ……」

 

突然シューティーは、土下座の態勢になった。

 

「ど、どうしたんだよ!一体!?」

 

「僕が……僕が、愚かだった」

 

「……」サトシは黙って聞く。

 

「言い訳になるかも知れないけど、本当は、自分が間違っていた事位は心の底では分かっていたんだ。それでも、認めてしまったら僕が今まで信じて来た物を全否定されるんじゃないかって恐れた。全てを受け入れようともせず、ただひたすらに自分が正しいと言い聞かせて。許して欲しいだなんていわない。ただ、この罪滅ぼしは、ちゃんと行う」

 

「……シューティー。頭を上げてくれよ」

 

サトシに言われ、顔を上げる。

 

「お前、アデクさんに会ってから本当に変わったな。良いよ。気にもしてないって言ったら嘘になるけど……シンジから聞いた話を聞いたら、怒りが失せたのは本当だからさ」

 

「何があったんだい?」チェレンが聞く。

 

「サトシのリザードンと、シンジのコンビに僕のポケモンを全滅されて、そばにいたシゲルからもダメ出しを受けて、トレーナーとして再起不能になり掛けた」

 

シンジから、シューティーの顛末を聞いていたサトシ。

 

「……そうなのか」チェレンの顔が引きつった。

 

その時だった。女性の悲鳴が上がった。

 

「この声は……」と、シューティー。

 

「ベル!」チェレンが感情的な声になった。

 

「行こうぜ!チェレン!シューティー!サトシ!」

 

声のした方向に、サトシ、トウヤ、チェレン、シューティーの4人は向かった。

 

「イヤ!絶対に渡さない!エンブオーは私の最初のポケモンだもの!」

 

エンブオーを庇うかのように、ベルが1人の少年に立ち塞がっていた。トウヤがフキヨセシティで出会った、スワマだ。

 

「へッ!雑魚の分際で生意気な!とっとと寄こせっつってんだろ!このアマ!!」

 

何とスワマは、ベルの左頬を殴った。地面に倒れるベルは、殴られた左頬を抑えながらエンブオーを守ろうとまた立ち上がろうとする。

 

『チッ!しつこい女だぜ……ん?待てよ……クックック。良いこと思い付いたぜ』

 

「カモン!ファイヤーウォーリアーズ!エンブオー!クイタラン!」

 

スワマはエンブオーとクイタランを出す。だが、トウヤと出会った時に比べたら、余りにもその状態は異質過ぎた。2体共、腕にイーヴィルリングが装着されていたのだ。

 

「イーヴィルリング!?どうして……!!まさか、あなたは!」

 

プラズマ団の差し金と判断したベル。だったら尚更、エンブオーを渡すわけには行かない。

 

「何でこれを知ってるのか知らねえが、これはな。ポケモンを強く出来る道具があるって言ってた、どこかのオカルト宗教の教祖みたいなおっさんから貰ったんだよ」

 

「そんな!あなた、どれ程酷い事してるのか分かってるの!?ポケモンを洗脳させるだけじゃなくて、最悪死んじゃうかもしれないのに!!」

 

「ハッ!強いポケモンは、オレの所に来た方が幸せなんだ!オレの為に死んでくれる方が本望なんだよ!!」

 

そう言ってスワマは、あろうことかベルの着ている服を破き始めた。

 

「イヤ!放して!」

 

「良い事思い付いたんだよ。ひん剥いて慰みものにして、その後殺せば良いんだからよ」

 

「誰か助けて!!」

 

必死に抵抗しながら、助けを求めるベル。だが、スワマの力が強くて逃げ出せなかった。

 

「ダイケンキ、ハイドロポンプ!」

 

真っ先に来たチェレンがダイケンキを出して、ベルをスワマから引き離した。シューティーは、羽織っていたローブを脱ぎ、それをベルに被せた。サトシはジャノビーとチャオブーとミジュマルとピカチュウを、トウヤはエンブオーを出して、ベルを守る様にスワマに立ち塞がった。

 

その時だった。チャオブーが身を硬直させた。サトシとピカチュウ、ジャノビー、ミジュマルはそれに気づく。

 

【おい!大丈夫かよ、お前】

 

【チャオブー、どうしたっていうのよ?】

 

【あいつを見てから様子が変だよ】

 

【あいつは……スワマ!!】

 

「お前……スワマ!」トウヤが叫ぶ様に言った。

 

「ん?テメエは確か、フキヨセにいた下等新人トレーナーじゃねえか」

 

「マドカさんにやられて、まだ懲りてねえのかよ!」

 

「あんなものはまぐれだ。草タイプが、炎タイプに勝つなんざ反則以外の何物でもねえ」

 

「トウヤ、コイツの事を知っている様だけど。ちょっと良いかい?」

 

「え?あ、ああ。構わないけど」チェレンに言われ、トウヤが一歩下がった。

 

「よくもベルに程い事をしてくれたな!」

 

チェレンが激昂していた。サトシは勿論、トウヤとシューティーも驚いていた。ここまで激怒する事は無かったのだろう。

 

「何だテメエは!部外者は引っ込んでやがれ!」

 

「そう言うわけにもいかないね。彼女は、僕らの友達で同期なんだ」

 

「それに、聞き捨てならない言葉も聞こえたからな」

 

「ポケモンを寄越せとか、ほざいてたしよ」

 

シューティー、サトシ、トウヤの順で言った。

 

「当たり前だろ。何寝ぼけた事言ってやがる。こんな腑抜けた、雑魚女のポケモンになるよりは、オレのファイヤーウォーリアーズとして活用してやろうって言ってんだよ!」

 

「絶対にエンブオーは渡さない!」味方がやって来た事で、調子を戻していたベル。

 

「そもそも、お前のやってる事は他人のポケモンを奪おうという脅迫行為だが?」

 

そこへ、ジュナイパーを連れたデューンがやって来る。勿論、メイも一緒だ。

 

「テメエは……カラクサタウンの!」

 

「おやおや。カラクサタウンのバトルクラブで、オレとジュナイパーに無様にやられたクズじゃねえかよ」

 

どうやらデューンは、スワマと何かしら因縁があるようだ。

 

「それで、あの時のポカブはマシになったのか?」

 

デューンの何気ない一言でチャオブーが表情を強張らせた。

 

「舐めた事聞いてんじゃねえ。草タイプに負けるあのポカブなんざ、才能が無いから捨てたのさ。今頃、くたばっているだろうな」

 

スワマがニヤニヤしながら言った。

 

『カラクサタウン……ポカブ……まさか、コイツ!』

 

サトシの表情が険しくなる。

 

「……サトシのチャオブーを、ポカブの時に捨てたトレーナー。お前だったのか」

 

「何っ!?本当なのか、トウヤ!」シューティーが驚いた。

 

「嘘でしょ?あんなに強いサトシ君のチャオブーが、ポカブの時に弱いって理由で捨てられていたなんて」

 

ベルは、信じられないと言う表情を露わにしていた。

 

「チャオブーだと……?」

 

スワマの視線がチャオブーに移る。チャオブーは嫌そうながらも、スワマを睨む。

 

「ハッ!あの時の使えないポカブかよ!草タイプのポケモンに負けた奴が、よく進化出来たな!」

 

「成る程。本当に弱いのは、チャオブーじゃなくて奴だったという事か」

 

デューンが納得した様に言う。因みに、奴とはスワマの事である。

 

「チャオブーは弱くなんかない。オレ達のかけがえのない仲間なんだ」

 

【そうよ!ジム戦やプラズマ団とのバトルで活躍しているんだから!!】

 

【デューンの言う通り、弱いのはお前の方だ!!】

 

【サトシ……ジャノビー……ピカチュウ】

 

「何度もチャオブーとは手合わせしたが、時には負ける事だってあるんだよな」

 

【ああ。トレーナーが違うだけで、こうも強さが変わるとはな。オレもビックリだよ】

 

デューンとジュナイパーが頷く。

 

「それって、単純にこの人が、チャオブーちゃんの力を十二分に引き出せなかっただけですよね?」

 

「だな、メイちゃん。逆にサトシの方が、チャオブーの力を引き出すのに長けているんだよな」

 

メイにまで馬鹿にされるスワマは、殺してやろうかと思ったが、デューンの反則染みた強さ故に迂闊な事が出来なかった。

 

「くっ!だったら明日俺とダブルバトルだ!テメェみてぇな田舎のポケモンを連れた、冴えないトレーナーと弱いチャオブーなんざ、オレのファイヤーウォーリアーズで瞬殺してやらぁ!」

 

「……瞬殺か。出来るものならやってみるんだな」

 

サトシがこう切り返した。一瞬、スワマに悪寒が走った。だが、すぐに気のせいだと思い込んだ。

 

「サトシ君!駄目だよ!そんな最悪なトレーナーの誘いに乗っちゃ!」

 

「問題無いな。そもそも、イーヴィルリングに頼っている時点で、所詮そこまでの奴だって言ってる様なもんだ」

 

ベルがサトシにやめる様に言い張るが、デューンはサトシの実力を高く買っているのか、すぐに終わるだろうと判断している。

 

「ハッ!精々頑張るんだな!弱いチャオブーを持った田舎の冴えないトレーナー!」

 

【コイツ……】

 

サトシを完全に見下しつつ、スワマは立ち去って行った。ピカチュウは、すぐにでもボルテッカーのラッシュを叩き込みたい気分を抑えながらそれを見ていた。

 

「ムカつく奴だな。ポケモンの強奪や放棄もそうだけど……何よりも婦女暴行や殺人まで犯そうとするなんて」

 

チェレンが拳を握り締めながら言った。

 

「カラクサタウンで1度会ったが、腐った性根は相変わらずだったな」

 

デューンは呆れの表情だった。

 

「でも良かった。ベルもエンブオーを奪われるだけじゃなくて、尊厳を失って、最悪殺されるっていう事態にもならなかったし」

 

「う、うん。そうだね、トウヤ。でもサトシ君、勝てるかな?」

 

「デカいだけの隙だらけの力なんて、サトシには通用しないよ」シューティーが言った。

 

「さてと。明日のダブルバトルの準備しなきゃな」

 

「サトシ。さっき啖呵を切ったんだ。プレッシャーをかける形になっちまうが、勝てる勝てないの問題じゃねえ。このバトル、さっさと勝っちまえよ」

 

「分かってるぜ、デューン」

 

「僕も応援に行くよ」チェレンが真っ先に発言をする。

 

こうして明日のダブルバトルに備え、準備を始めるサトシ。

 

7人で夕食を摂り終えた頃、サトシは明日ダブルバトルに出すポケモンを決めていた。チャオブーは決めていたが、問題はパートナーを誰にしようかと悩んでいたのだ。

 

「さて。どうしたものか」

 

サトシの傍らにはリザードンがいた。

 

【サトシ。そのバトル、私がやるわ】

 

ジャノビーが志願した。

 

「ジャノビーが?」サトシがそう聞くと、ジャノビーはコクコクと頷く。

 

【そんな!無謀だ!】

 

【私は野生の頃、相性の悪い相手戦ってきて、立ち回って来た。今回も相性を覆すだけよ。それで、あなたはどうなのよ?】

 

【え?】

 

【あなたはこのままでいいの!?あんなクズ野郎に、自分を捨てたのは間違いだって見返すチャンスじゃないの!】

 

【そ、それは……】

 

消極的なチャオブーに対し、バトルをした方が良いと説得に応じるジャノビー。すると、リザードンが立ち上がった。そして、手をポンとチャオブーの方に乗せる。

 

【行ってこい。ジャノビーの言う通りだ】

 

【リザードンさん】

 

【いずれ奴とは、決着を付けなければならないんだ。それはお前自身が良く分かっている筈だ。その日が今、来たんだよ】

 

【そうだね。このまま逃げる事も可能さ。代わりのポケモンで、サトシが勝つだけだからね。それも良いかも知れない】

 

ピカチュウも参加して来た。

 

【だが、今逃げ出したら一生強くなる事なんか出来ない】

 

デューンのジュナイパーが言った。

 

「チャオブー。お前が、何を悩んでいるのか、薄っすらだけど分かるぜ。お前がやりたくないなら無理にバトルに出なくていいんだ」

 

【サトシ……】

 

「でもな。逆を言えば、あいつと戦った上で勝てたら、もっと強くなれるんだ。オレはそう信じているぜ」

 

【そうだね……逃げてちゃ変わらない。いつまでたっても弱いままなんだ。分かったよサトシ。リザードンさん、皆。オイラ、明日のバトル頑張るよ!】

 

「決まった様だな。明日は頼むぜ!チャオブー、ジャノビー!!」

 

【うん!】

 

【任せなさい】

 

「決まったみたいだな」

 

「ああ。デューン、調整頼むぜ」

 

「元からそのつもりだ。行くぞ!」

 

「サトシさん!ファイトです!」

 

「私も応援に行くから!」

 

「オレも」

 

「そう言えばシューティー。お前、カメラを持ってなかったっけ?」

 

チェレンがシューティーに問う。

 

「デジタルカメラがあるけど……」

 

「僕に考えがある。協力してくれ」

 

「分かった。何をすればいい?」

 

「それは……」

 

*

 

サトシはチャオブーとジャノビーを連れ、特訓に向かおうとしていた。その時、ミジュマルがチャオブーに声を掛けた。

 

【おいチャオブー】

 

【どうしたんだ、ミジュマル】

 

普段の仲は悪い2体ではあるが、ミジュマルが何時になく真面目だったので、チャオブーも素直に聞く態勢になる。

 

【言っとくけど、もうメンバー編成は変わらないよ】

 

【そんな事じゃねえよ!ただ、チャオブーに言いたい事があるだけだ!!】

 

【?】チャオブーは首をかしげる。

 

【明日のバトルで、あのスワマって野郎が卑怯な手を使ってきたら、オレがとっちめてやる。だから、周りを気にせず全力でバトルして来いよ!負けたら承知しねえからな!!!】

 

言いたい事を言って、ミジュマルは去って行った。

 

【不器用なラッコね】

 

【あいつなりのエールなのさ。そこは察してやりな】

 

リザードンがミジュマルのフォローに回った。

 

【もっと他に言い方は無かったのか?】デューンのエンペルトがミジュマルを見ながら言った。

 

【でもまあ、ミジュマルの言う通り、スワマが卑怯な手を使っても僕も全力で阻止するよ。それだけの事さ】

 

【そうだ!!オレだってやってやる!!】と、ズルッグ。

 

【皆……ありがとう】

 

【礼を言うのはまだ早いぞ。明日のバトルに勝ってからにしておけ】

 

デューンのバシャーモが言った。

 

それから、夜遅くまでチャオブーとジャノビーの特訓は続いたのであった。

 

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