Fate/kaleid caster ドラまた☆リナ   作:猿野ただすみ

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本編がめちゃくちゃスランプなので、番外編。【魔術師殺し】の回よりちょっと未来、夏休み中のお話です。序盤に気になる単語が出てきますが、それはまた別のお話、ということで。


番外編
イリヤとリナと不思議なカード


≪イリヤside≫

夏休みに入って、しばらく経ったある日のこと。わたし達はルヴィアさんの家に呼び出された。

一体何だろ。ラグド・メゼギスの件はもう終わったし…。

 

「揃いましたわね。あなた方をお呼びしたのは、他でもありません。ここ数日、冬木市内で数か所、魔力の特異点が観測されているのですわ」

「魔力の…特異点?」

 

クロが聞き返すと、ルヴィアさんが深く頷いた。立て続けに、リナが疑問を投げかける。

 

「それって、クラスカードの時みたいのって事?」

「そうですわね。稲葉リナ(イナバリナ)の仰るとおり、クラスカードが散らばっていた時と似てますわね。

けれど今回は、鏡面界での出来事ではありませんの」

 

鏡面界じゃ、ない?

わたしが疑問に思ってると、ミユがルヴィアさんの説明を引き継いで言った。

 

「特異点は全て、こちらの世界で発生してる。そしてそれぞれの特異点では、何某かの異常現象が起きてる」

「異常現象?」

 

わたしが疑問を口にすると、ミユが幾つか事例を挙げてくれた。

 

「例えば、穂群原小のプールの水が突然噴き上がったり、柳洞寺の石段を上がっているだけなのに、何故か境内に辿り着けなかったり…」

「何処からともなく花が舞い散る、自分と瓜二つの人物と会った、などというものもありましたわね」

 

ほえ~。何だか学校の七不思議みたい。……ん? リナ?

 

「……ルヴィアさん。今、ありましたって言ったよね? ありますじゃなくて」

「さすが、細かいところにも気がつきますわね」

 

え? 何? ええと、「ます」じゃなくって「ました」だから、過去形? ……あ。

 

「もう、異常現象が起きてない?」

「イリヤー、気づくの遅いわよぉ?」

「まあまあ、イリヤだって自分で考えて答えを導いたんだから、そんな事言わないの」

 

茶化すクロに、わたしのフォローをしてくれるリナ。

 

「それでルヴィアさん、異常現象の沈静化は全てにおいてなの?」

「……いいえ。(わたくし)の話した二件と、美遊(ミユ)が話したプールの一件は観測されなくなってますし、魔力の残滓も正常値にまで下がってますけど、まだまだ異常現象が続いている場所は存在してますわ」

「それで今、凛さんとサファイア、ルビーで、特異点の調査に行ってる」

「あっ! なんか静かだと思ったら、ルビーがいないのか!」

 

そう言えばリナには言ってなかったっけ。

 

「今朝、凛さんが窓から入ってきて、ルビーを連れてったよ。理由は聞いてなかったけど、そんなワケがあったんだね」

「窓からって…」

 

わたしの説明に、リナが呆れてる。

 

「それでわたし達を呼んだって事は、異常現象の正常化をしろってこと?」

 

クロが核心を突くと、ルヴィアさんは一旦目を閉じて、再び開いたときには表情が引き締められていた。

 

「もちろんそれが第一の目的ですが、ひとつ問題があります。

この異常現象は、自然に沈静化するようなものではありません。つまり、我々とは違う、第三者の介入が考えられますわ」

「なるほど。あたし達は特異点の正常化とともに、第三者の目的の調査、場合によっては戦闘も受け持たなくちゃならない、……って事ね?」

「そういう事ですわ」

 

うう、戦闘かぁ。バゼットさんみたいのじゃなきゃいいけど…。

 

「それで、まずどこ行きゃいいの?」

「それは調査の結果次第…」

 

一瞬、フラグっぽいなー、なんて思った瞬間。

 

『ルヴィア、聞こえる!?』

 

突然、リンさんの声が聞こえた。ルヴィアさんが遠話球(テレフォン・オーブ)を取り出して、リンさんに返事をする。

 

「全く、聞こえてますわよ。どうかなさいましたの、遠坂凛(トオサカリン)?」

『急いで海まで来て! この間、イリヤ達と会った浜辺! 現在進行形で、異常現象が発生してるのよ!』

 

ガタタッ!

 

わたし達は一斉に席を立った。

 

「「ルヴィアさん!」」

 

わたしとミユが、ルヴィアさんを見る。ルビーとサファイアが向こうにいるから、転身して向かうことが出来ないから。

 

「オーギュスト、急いで車を!」

「お嬢様、畏まりました」

 

一礼して部屋を出るオーギュストさん。

 

「あたしは先に向かってるわ」

「わたしも」

 

リナとクロはそう言って、ふたりも部屋を出て行った。

……ふたりが行けば、大丈夫だよね?

 

 

 

 

 

≪リナside≫

あたしが翔封界(レイ・ウイング)で海に向かう後を、クロエがピコピコと屋根伝いに追いかけてくる。ううむぅ、いくら目立たないように高度を上げてるとはいえ、よくこのスピードに追いつけるもんだ。

因みにこの術(レイ・ウイング)、重量と速度と高度の総和が術者の力量に比例する。つまり、高度を上げた分だけスピードは落ちるのだ。

などと思考している間に、見えた! 地中へ掘り進める工事現場のすぐ横で、凛さんが大きく手を振ってる。おそらく何か、手を施したんだろう。辺りに人の気配は無い。

あたしは凛さんの前に降り立ち、術を解く。そして少し遅れて、クロエも到着した。

それにしても。

あたしは、少し離れたその場所に目をやる。そこには倒壊した、[海の家・がくまざわ]があった。

 

「嶽間沢家の人々…。惜しい人達を亡くしたわ」

「タツコ、わたし達が必ず仇を取ってあげるからね!」

「いや、生きてるから!」

 

もちろん、ただの冗談である。

 

『いやー、リナさんとクロさんは、なかなかお茶目ですねー』

「アンタに比べりゃ、大概の冗談はお茶目で済むわよ」

「ルビーの冗談は冗談じゃ済まないんだから! この間のお誕生会の…時だ……って………、うっ、頭が…」

『アハハ、サア、キモチヲキリカエテイキマショー』

 

クロエは頭を抱え、ルビーの体(?)が強ばり、声も固くなる。うん、サファイアの催眠電波はキッチリ効いてるようだ。

 

「ほら、あんた達。そろそろ本題に移るわよ」

 

手を打ち鳴らしながら言う凛さん。軌道修正、お疲れ様です。

 

「ここで起きた異変だけど、どうやら精霊の仕業みたいなのよ」

「精霊?」

 

ほう? それは中々に珍しい。精霊なんて本来、人前に姿を見せないものだ。そんな存在が冬木で異変を起こしてる。これにはどんな意味があるのか、ないのか。

 

『でも、少し気になることもあるんですよねー』

 

ん? ルビー?

 

『その精霊さん、何だか私達に、似てる気がしたんですよ』

「……つまり、輪っかの中に八芒星、トンボの羽根のついたカレイドステッキだったと」

『何ですかっ!? その、微妙にかわいくないデザインは!!』

 

ツッコむとこ、そこなんだ?

 

『……似ていたのはその存在です。このカレイドステッキに宿る私、マジカルサファイア、そして姉のマジカルルビーは人工天然精霊。人工にして天然の存在です。

……姉さんは、別の意味でも天然ですが』

『サファイアちゃん、ヒドいッ!?』

 

ルビーも、サファイアからの攻撃(口撃)には弱いからなー。……って、そうじゃなくて、その精霊は人工天然精霊のふたりに似ていた?

 

「別に、そいつが貴女達に似てたって関係ないわ。わたし達の目的は異常の正常化…、でしょ?」

 

……確かに、クロエの言うとおりね。今は事件の解決が優先だ。

 

「それで凛さん、その精霊は、今どこに?」

「今は姿を隠してるわ。一応、簡単なものだけど結界を張ってあるから、外に出たら感知できるはずだけど」

 

つまり、結界内で息を潜めてるって事か。

 

「でも、どうやって炙り出す? わたしが投影するモノには、そんな便利なものなんてないわよ?」

「私もこの範囲を探査系の魔術で探るのは、無理とは言わないけど、流石に厳しいものがあるわね」

 

クロエも凛さんも無理か。あたしはルビー達を見る。

 

『……私達はマスターがいて、初めて力を発揮できます。我々単体では、魔力砲のひとつも出せません』

『凛さまとゲスト認証して転身すれば、探査の魔術も精度が上がるでしょう。……ですが、結界内まで範囲を広げた場合、やはり精度に問題が出ると思われます』

 

そっかぁ。上手くはいかないもんだ。

 

「ううみゅ、仕方がない。あんまり使いたくはなかったけど、あたしが何とかするわ」

 

そう言ってあたしは、ポケットから目的のものを取りだしてから、呪文を唱える。

 

全ての命を育みし

母なる無限のこの大地

空と大地を渡りしものよ

優しき流れ たゆとう水よ

夜の静寂(しじま)を照らすもの

輝き燃える 赤き炎よ

空と大地を渡りしものよ

永久(とわ)を吹き過ぎ行く風よ

全ての心の源に

汝ら全ての力を集え

我が力 我が身となりて

世界を映す力となれ!

 

あたしは長い(しゅ)を唱え終え、[力ある言葉]を放つ。

 

精霊映視呪(マナ・スキャニング)!」

 

くっ!? やっぱりこの術は、負担が大っきいッ!

あたしは焦る心を抑えて、世界を覆う魔力(マナ)の流れを視る。

……

…………

………………そこッ!

 

青魔烈弾波(ブラム・ブレイザー)!」

 

術を込めた硝子玉を突き出し、[力ある言葉]を口にする。その瞬間、硝子玉は割れ、一条の青白い光の筋が放出された。

この込められた術、一旦硝子玉に込めたものを解放するという仕様のため、どうしても魔力のロスが発生する。何時ものように、直接ぶつけて発動させれば七割ほどの威力があるけど、もう一度術として発動させた場合は、精々が三割程度。弱い術なら、まともなダメージすら与えられない。

だけど利点もある。これを介してなら呪文を唱える事もなく、[力ある言葉]のみで発動が可能。つまり今回のように、術の制御をしながら遠距離攻撃が出来るのだ。

 

『!?』

 

見据えた空間に青魔烈弾波が届く瞬間、魔力が膨れ上がり、姿を現したそれが上空に舞い上がる。

……って、あれは!?

精霊映視呪を解いたあたしは頭に手を当て、それを見る。確かにあれは、精霊の類いだろう。けど、あれって…。

その時。

 

ギャギャギャッ!

 

ブレーキの音と共に、黒塗りのリムジンが飛び出してきた。

 

「「リナ!」クロ!」

 

止まったリムジンの扉が勢いよく開け放たれ、目をグルグルさせたイリヤと、意外と冷静な美遊が飛び出してくる。因みに、クロエの名前を呼んだのはイリヤだ。

 

「な…」

「あれが、精霊さん…?」

 

ふたりも初めて…ルビーとサファイアは除く。初めて見る精霊に、驚きを隠せないようだ。

 

『美遊さま!』

『ふたり共、ボヤッとしてる場合じゃありませんよー!』

 

ルビーとサファイアに言われて、思考力を取り戻したふたりが魔法少女に転身する。これでいい。これで必要な駒は揃った。

 

 

 

 

 

砲撃(フォイア)ッ!」

砲射(シュート)!」

 

イリヤと美遊の魔力弾を躱し、

 

「ハアッ!」

 

ぶわぉうっ!

 

攻撃を仕掛けるクロエを、爆風で吹き飛ばす。……やっぱりか。これの正体は…。

いや、今は。

 

烈閃槍(エルメキア・ランス)!」

 

あたしの術を、やはり躱す。どうやら推測どおり、純粋な魔力や精神世界面(アストラル・サイド)への攻撃、神秘を纏った武器ならダメージを与えられるようだ。

イリヤに美遊、クロエが尚も攻撃を続ける中、あたしは次の一手のための準備を進める。

そう。イリヤ達には今、闘いを制するための囮となってもらっているのだ。作戦はあらかじめ、遠話球(テレフォン・オーブ)を通して伝えてある。

イリヤ達は同じような攻撃を繰り返す。そして数度目、そのパターンが変化する。

またもや吹き飛ばされたクロエは空かさず弓矢を投影、それに狙いを定め。

 

最大の散弾(マクスィマール・ショット)!」

速射(シュート)!」

 

イリヤが相手の後方、美遊が上空から複数の魔力弾を射出し、それに合わせて正面からクロエが矢を射る。

三方向からの同時攻撃。躱して避けるのは、おそらく無理。

次の瞬間、それは風を纏い、全ての攻撃を防ぐ。この瞬間を待ってた!

防がれた魔力弾同士が誘爆し、矢を[壊れた幻想(ブロークン・ファンタズム)]で炸裂させて相手の視界が奪われた瞬間、あたしは術の効果範囲まで距離を詰めていた。

 

『!!』

 

向こうは気づいたみたいだけど、もう遅い。

 

霊縛符(ラファス・シード)!」

 

ランサー(アメリア)夢幻召喚(インストール)したあたしは、今の彼女が所持する数少ない、そしてあたしが使えない術を発動させた。この術は相手の動きを止め、呪文をも封じる効果が小一時間続く。

だけど相手は精霊、すぐに破られる可能性もある。なので。

 

「クラスカード[キャスター]限定展開(インクルード)!」

 

イリヤから借りたカードを限定展開する。

 

「……あなたは主と離れ離れになって、意思表示のために騒ぎを起こしてたんでしょう? でもその為に、みんなに迷惑をかけてしまってるの。だから今は、大人しくしてて。

……大丈夫。あなたの主は、必ず見つけてあげるから」

 

あたしはそう語りかけてから、手にした短剣を突き立て。

 

破戒すべき全ての符(ルール・ブレイカー)

 

真名を解放すると、精霊は姿が崩れ、一枚のカードになった。

 

 

 

 

 

「何よ、それ? まさかクラスカードじゃ…」

「どういうことですの?」

 

小走りに近づいた凛さんとルヴィアさんの疑問に、首を横に振ってあたしは言う。

 

「クラスカードじゃないわ。絵柄もデザインも類似性はないし、他の魔術理論で創られたものね」

 

そう言ってふたりに、カードの絵を見せる。

 

「[風]、[THE WINDY]…。ウィンディのカード、ということでしょうか」

「それに[SAKURA]…、サクラ?」

 

凛さんが複雑な表情をする。多分、桜ねーちゃんが思い浮かんだんだろう。

 

「とにかくこれは、あたしが預かるわ。気になることもあるし」

「な、リナ!?」

「戦利品の着服ですの!?」

 

人聞きの悪い。

 

「ちょっと、心当たりがあるのよ」

 

……はぁ

 

ふたりがため息を吐く。

 

「仕方がありませんわね」

「その代わり、後でちゃんと説明すること。いいわね?」

「ふたり共、ありがと。もちろん後で報告はするわ」

 

あたしはお礼を述べる。

 

『何だかルビーちゃん達、空気ですよねー』

「そだね」

 

……うん。なんかゴメン。

 

 

 

 

 

≪third person≫

そんなリナ達を、離れた岩場から見つめている少女がいた。その左隣には、翼が生えたオレンジ色の猫のぬいぐるみのようなものが浮いている。

 

「ほえぇ~、どうしよう。ウィンディのカードが回収されちゃった」

「ホンマは奪い返したいとこやけど、今んとこは様子見やな」

 

困り果てている少女に、翼猫が関西弁で言う。

 

「しかし、まさか()()()に、こない腕の立つ魔道士がぎょうさん()るとは思わんかったなぁ」

 

翼猫の発言に、しかし少女は小首を傾げ。

 

「でも、どちらかっていうとあのふたり、魔法少女って感じだと思うんだけど?」

 

イリヤと美遊を見ながらそう言った。




今回の番外編シリーズのサブタイトルは、あのアニメのサブタイトルと同じ法則です。

というわけで、いきなり始まった番外編です。クロスオーバーですが、ちゃんと名前が出てからタグに書くことにしますので、悪しからず。まあ、ウィンディのカードでバレバレですが。

次回「迷路ともう一人の魔法少女」

○○○と一緒に、○○ー○!
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