Fate/kaleid caster ドラまた☆リナ 作:猿野ただすみ
6時30分。あたしはいつもどおり目を覚ました。
カーテンを開けると、朝の日差しが差し込んでくる。うん、今日もいい天気だ。
ベッドから降りたあたしは、扉を開けて部屋から出た。
「おはよう、お母さん」
キッチンへ顔を覗かせながら朝の挨拶をすると、お母さん…、稲葉サナさんがこちらに振り返り、
「おはよう、リナ。先に顔を洗って来なさい」
「はーい」
お母さんの言葉に返事をするあたし。これがいつものやり取り。
お母さんに言われたとおり洗面所で顔を洗い、寝癖のついた部分だけ先に髪をすく。あたしとしては、寝癖より癖っ毛の方を何とかしたいトコなんだけど。
そんな悩み事にちょっとだけ更けりながらも支度を終えてテーブルにつく。すでに朝食の準備は出来ていた。お母さん、相変わらず手際がいいなあ。
「おはよう、リナ」
おっと、お父さん…、稲葉一也さんもやって来た。
「おはよう、お父さん」
あたしが挨拶を返すとにっこりと笑い、向かいの椅子に腰掛ける。そこへ洗い物を終えたお母さんがやって来て、お父さんの隣に座った。
「それでは…、「「頂きます」」」
お父さんの号令のもと、家族団らんの朝食タイムが始まった。うん、やっぱり家族揃っての食事って良いよね!
あたしがこの身体に転生してから6年の歳月が過ぎた。今では小学5年生、今年で11歳になる。
最初は、リナちゃんの代わりが務まるのか心配だったけど、それは杞憂であることがすぐに判った。
実はリナちゃん、なかなかのお転婆だったのだ。さらには、好きなことにはトコトンのめり込むオタク気質でもあったらしい。あー、耳が痛い。
でもそこんトコは素でいけるので大変有り難かった。まあ、リナちゃんが好きだったらしい魔法少女もののアニメに、あたしもハマっちゃうとは思ってもなかったけど。
ただ、勿論あたしと違うところもあった。あそこで出会ったときも思ったけど、とても優しい子なのだ。あと正義感がとても強い。
そりゃああたしだって、人並みの優しさや正義感は持ち合わせている。誰が何と言おうと、あるったら、ある。
けれどリナちゃんの場合、みんなが「そうだ」と納得してしまうような子なのだ。
しかも某正義のお姫さまとは違って、場を弁える賢さを持ち、無茶はせず、
実際あたしも見習って実践してるけど、つい昔の癖で突っ掛かっていってしまうことが多い。我ながら血の気が多いなぁ。
とにかく、あたしはあたしなりに、二度目の人生を生きている。
「いってきまーす!」
そう言ってあたしは勢いよく家を出る。別に、遅刻しそうな訳じゃない。
実は今、ある目的の為に基礎体力を養っているところだ。もう2年ほど続けている。
最初はすぐ息切れしてたけど、今ではたいして苦にならない。同じ学年なら持久走であたしの右に出る者はいないだろう。……まあ、小学校で持久走なんてあんまりやらないけどね。
あたしが校門の近くまでやって来たとき、仲の良い女子四人組の後ろ姿が見えた。
「おっはよー。穂群原小の四神+α」
「おっ、リナ。おはよう」
「おはよー」
「オッス! リナリナ!」
「+α!?」
いつもどおり、それぞれの反応が楽しい子達だ。取り敢えず挨拶を返してくれた順に説明すると。
長身、黒髪で眼鏡をかけた、一見優等生っぽい腐女子の
ピンクがかった髪色で糸目、一見おっとりしていそうで頭の回転の早いソフトS少女の
小柄で金髪童顔、男っぽい言葉づかいの残念アホの子、
ショートの黒髪、善くも悪くも普通の子、影の薄い
ちなみに美々を除く三人が、穂群原小の四神だ。雀花が朱雀、那奈亀が玄武、龍子が青竜に相当していて、担任でもある『冬木の虎』こと
「いつも思うけど、リナは朝から元気だな」
「なに、雀花。元気のないあたしを見てみたいの?」
今更のように言う雀花におどけて返すあたし。すると、
「いや、いい。そんなの見た日にゃ、人類存続が危ぶまれるからな」
「アンタ、あたしをなんだと思ってんの!?」
「ハッハッハッ! 俺はいつでも元気だぜっ!!」
「龍子は少し大人しくしなさーい!」
スパーン!
「おぶぅっ!」
あたしの背中をバンバン叩きながら言う龍子に、懐(?)から取り出したスリッパで思わず頭をひっぱたいていた。うん、リナちゃんへの道程は遠いなぁ。
「ねー、リナ。どうしてスリッパ持ってんの?」
「わたしは、リナちゃんがどうやってスリッパを忍ばせてたのかが気になるよ」
那奈亀、その質問は前世で散々聞いたぞ。
「どうしてって、その方が便利だからに決まってるじゃない。美々の方は、企業秘密ってことで!」
あたしは、立てた人差し指を口に当ててそう言った。
教室で、あたしは若干落ち込んでた。人差し指を口に当てて「秘密」って、どこのパシリ魔族だっての!
狙ってやったんならまだしも、自然に出た行動だってのが余計に悔やまれる。
「おっはよー! ……あれ? リナ、なんだか機嫌が悪い?」
「あー、イリヤ。おはよ」
「リナが落ち込んでる!? 天変地異の前触れ!?」
「だからアンタ等はどーゆー目であたしを見とるんじゃ!」
まったく揃いも揃って、あたしをバカにしてんの? ……あ、でも少し気分が浮上したかも。
彼女の名前はイリヤスフィール・フォン・アインツベルン。銀髪で赤い瞳、白磁の肌の美少女。あたしと同じように腰の辺りまで伸ばした髪の毛は、あたしとは違いサラサラで癖の一つもない。
べ、別に、羨ましくなんか無いんだからね! なんてツンデレの真似事をしてみても虚しいだけだしやめておこう。
「まったく。別に大した事じゃないわ」
「? そう? ならいいんだけど」
今だ訝しげに見てるけど、取り敢えずは納得してくれたみたい。
「あっ、そうだ。この間の『マジカル☆ブシドームサシ』なんだけど!」
お?
「もしかして、イオリと喧嘩してタクアンがおろおろしてるやつ?」
「そう、それ!」
追記。
あたしとイリヤは、魔法少女アニメ好きという絆で結ばれた親友である。あたしたちは藤村先生が来るまでムサシ談義に花を咲かせていた。
放課後。イリヤは一人、走り去っていった。おそらく士郎さん、……イリヤのにーちゃんと一緒に帰るつもりなんだろう。
あたしはと言うと、少し間を置いて人が少なくなってから下校する。みんなと一緒に帰らないのは、これからのあたしの行動を知られたくないからだ。
途中、穂群原学園高等部の前を通りかかる。ここは数日前から気になっている場所だ。
この敷地から、瘴気のようなものを感じるようになったのだ。そう、ようなもの。前世で魔族が放っていたそれとは些か毛色がちがう。
だからと言ってそれが何なのか迄は判らない。それ故今のあたしは静観しているしかないのだ。
高校の前を通り過ぎ、しばらく歩き続けて行くと長い階段の前へ出る。柳洞寺というお寺へと続く階段だ。
階段を上って行き、その途中で左手の林の中へ入る。そのまま奥へと進んで行くと少し開けた場所に出た。
あたしはここで、剣と魔法の訓練をしている。
実をいうと、ここを見つけたのは単なる偶然だった。
2年ほど前のお正月、初詣で疲れたあたしが階段の脇に腰掛けたとき、林の方に人避けの結界が張ってあるのに気が付いた。そして後日、確認しに来てここを見つけたのだ。
そう、あたしが体力作りをしているのはここでの訓練のため。結界がある、つまりは魔法が存在しているってこと。ならばあたしも魔法が使えるのではと試してみたらあっさりと発動した。
だからって剣術や魔法の訓練をする必要は無い、なんて普通は思うだろう。
だが、甘い。それは大甘である。
この世界の一般常識では 魔法なんか存在しないことになっている。つまり魔法による事件が起きても気づかれない、或いは隠匿されているとも考えられるのだ。
高等部のこともあるし、ただでさえ前世で散々事件に巻き込まれてきたこのあたし。防衛手段の一つや二つ、持っておくべきでしょう?
てな訳で訓練始め!
……剣術の訓練を終えたあたしは、引き続き魔法の訓練を始めた。
「
「
続けて唱えたのは水属性の術。複数の氷の針が敵を襲う。殺傷力はないがやたら痛い。
「
次に唱えたのは火属性の術。小さな複数の光球を 飛ばし小爆発させる。やはり殺傷力はないが、痛いし焦げる。
「
これは風属性の術。複数の風の刃で相手の肌を浅く切る。殺傷力はないが当然痛い。
「
そして精神属性の術。光の槍を放つ。物理ダメージはないが、極度の精神衰弱を引き起こす。
ここまでくれば判ると思うけど、あたしは四大精霊に精神を足した五大属性の精霊魔術を試していたのだ。
実をいうと、魔法に関しては能力のチェック程度しかしていない。現在の最大魔力容量、つまり魔力量の最大値および最大出力を含めての確認である。
さきの精霊魔法の感触で出力の安定を確認する。そして次にすることは、
「……
これによる魔力の消費量から最大容量を、術の威力から最大出力を推し量っているのだ。
大体の目安程度にしかならないが、魔力尽きるまでぶっ放し続けるわけにもいかない。と言うか、そんなことしたくもない。
第一、下手に大きな術を使ったらやたら目立つし自然破壊にもなりかねない。
この世界でそれは不味い。まったく不便な世の中だ。
そんな訳で一とおりの魔法を使っての感想なんだけど、
「随分と魔力量も上がったなぁ」
そう、出力に関しては全盛期に近い状態、魔力量もかなり増えてきた。とは言っても、全盛期にはまだ及ばないけど。
おそらく今のあたしでは、竜破斬は一発しか撃てないと思う。
まぁ、現代社会で竜破斬のお世話になる事なんてそうそうないとは思うけどね。
「さてと」
魔法関連の確認も終わったし、訓練は切り上げて帰りましょうか。
「ただいまー!」
家に帰ってきたあたしは、お風呂のセッティングをしてから部屋着に着替えてキッチンへ。マウント深山商店街で買ってきた食材で夕食の準備をする。
我が家はお母さんもパートタイムで仕事をしてるので、夕食の支度はあたしがしてる。はっきり言って、ねーちゃんに仕込まれて料理の腕には相当の自信があるのだ。……まあそんな事、人に言えやしないけど。
因みに献立はチーズ入りメンチカツにレタスのトマトスープ、千切りキャベツは敢えてコールスローに。
これが結構白いごはんに合うのだ。
ガチャリ
「ただいま、リナ」
あ、お母さんが帰ってきた。
お父さんもそろそろ帰ってくるし、スープを暖め直しましょうか。
夕食後、お風呂を戴いてから自室へ戻る。宿題がある日は勉強机に向かうワケだけど、今日は無いので窓から星空を見上げながらくつろいでいた。
「うーん、なんかいいカンジ? こんな日常が続けばいいんだけどね」
思わず口についた言葉。これがいけなかったんだろうなぁ。所謂フラグってやつね。
視界の端、空に光が瞬いた。
ん? あれって…。
眼を凝らし光を観察して、そして気がついた。
あれって多分、魔法で戦ってるんだ。
……はぁ、儚い想いだったなぁ。
出来れば、あたしはあの騒動に巻き込まれませんように。
本当は剣術の訓練シーンも書きたかったんですが、モノローグが長くなるので断念。
取り敢えず今回で、リナ視点オンリーはおしまいです。ですが、主人公はあくまでリナなので、リナ視点が多くなるとは思います。
次回からはいよいよ、プリズマ☆イリヤ本編に突入します。
次回「動きだした運命」
見てくんないと、あばれちゃうぞ!