Fate/kaleid caster ドラまた☆リナ   作:猿野ただすみ

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今回は誤字・脱字及び推敲箇所が多かったので、まだ不備な点が残ってるかも知れません。


「温泉オペラ」冬木交響曲第八番「温泉」より

≪イリヤside≫

一晩が経って。わたし達は現在、倉庫に置きっぱなしになっていたストーブと、同じく置きっぱなしになっていた灯油を保健室まで持ってきて、点火するかを試しているところだ。

 

「さーて、点くかしら?」

「ば、爆発、しないよね?」

『さー、何分ノーメンテですからー』

 

わたしが不安を言うと、ルビーが軽く不安を増長させるようなことを言う。気休めでもいいから、もう少し前向きなことを言って欲しいんだけど。

 

「心配なら転身すれば?」

『リナさんの意見には一理あります。確かにわたしの物理保護なら、多少の爆発には耐えられますよー』

 

なんか、それはそれで負けた気がする。って言うか、リナはわたしの転身シーンが見たいだけじゃ…?

そんな、くだらないことを言っている間にも、クロが何度か点火スイッチを押して。

 

ボッ!

 

「点いた!」

 

良かったぁ。……べ、別に、爆発しなかったからじゃなくって、これで少しは暖をとれるからで…!

 

『何だかイリヤさんが、心の中で言い訳めいたことを考えてるように見受けられますねー』

「よ、余計な詮索はしなくていいからッ!」

 

まったく、ルビーってば!

 

「それにしても、灯油もストーブもほったらかしだなんて、よっぽど慌てて逃げ出したみたいね。

……まあ、()()()()()()()()()()()()()()()()()()

 

……え?

 

「「隕石?」」

 

わたしとリナの声が綺麗に被る。

 

「あのでっかいクレーターの原因よ。5年前に隕石が落下したのが原因だって、街の人から聞いたわ」

 

うーん。でも、わたし達が聞いた原因よりかは現実味があるかな?

 

「ふーみゅ。どうやら情報操作がされてるよーね。因みにあたし達は、ガス爆発って聞いたわ」

「ええっと、麻婆ラーメンのあのおじさん。リナの話だと、聖堂教会の人みたい」

 

確か、言峰(コトミネ)綺礼(キレイ)だっけ?

 

「なるほど。教会が絡んでいたのですか。しかしあの男が…」

「あたしが知ってる…向こうと同一の存在なら、言峰綺礼って代行者よ」

 

バゼットさんの疑問にリナが答えると、とっても驚いた顔に変わった。

 

「彼が、言峰綺礼ですか! 教会の代行者の中でも、相当の実力者だったと聞いています。10年ほど前に亡くなったという話ですが、こちらでは生きていたのですね」

 

ふへぇ、そんなにすごい人なんだ。

 

「やる気の無い代行者なんてどうでもいいわ。それじゃあ、あのクレーターの原因は何かって事よ」

 

原因は、って…あ。そういえばあの時は、クロはいなかったんだっけ。

 

「……リナさん達にはもう説明してるけど、あれは聖杯戦争の失敗の、その余波だよ。それ以上のことは、僕にもわからないな」

 

ベッドに寝転がったギルくんが、わたし達に話したのと同じ説明をした。

 

「……ホントに?」

「疑り深いなぁ。本当だよ。僕がカードとして召喚されたのは数ヶ月前なんだ。それより前のことは、カードを介して流れ込んだ僅かな情報のみだからね」

 

そっかぁ。ちょっとズルいけど、もう少し情報があれば対策が立てられたかも知れないのに。

 

「まあ、この話は進展がないみたいだし、これくらいにしましょ。それよりも大事なことがあるわ」

 

話を切り上げたリナが、急に真剣な顔をした。ゴクリという、誰かが喉を鳴らす音が聞こえる。

 

「食事はどうするか、よ!」

 

……普段ならずっこけるか、やっぱリナだなーなんて思うところだけど、さすがに今回は、本当に食糧の調達は大問題だ。……さすがにもう、あそこのラーメンは食べたくないし。

 

「一応、リナの指示で家庭科室を漁ったら、いくらかのお米と小麦粉、それと調味料は見つかったけど。……5年以上前の物なのよねー」

 

うーん。確か小麦粉って、危険なカビが生える事があるって、生活情報バラエティで言ってた気がする。

 

「さすがに小麦粉はやめとくとして、お米は食べて調子悪くなったら、麗和浄(ディクリアリィ)っていう毒消しの呪文を使って対処しましょ。後は副菜だけど…。仕方がない。今から魚でも釣ってくるわ」

「えっ、今から!?」

 

さすがに、ちょっと大変なんじゃ。いや、わたし達のお誕生会の時はなんとかなったけど。

 

「その辺はなんとかなるから。ってわけでクロエ、釣り具一式投影してくんない?」

「リナ、アンタねぇ…。まあ、いいけど」

 

クロは文句を言いつつ、リール付きの釣り竿とルアー、後はクーラーボックスを投影した。更にリナのために、ライフジャケットも投影する。

 

「サンキュー、クロエ。ほんじゃ、ちょっとばかし行ってくるわ」

 

そう言ってリナは投影品を持って、保健室を飛び出していった。

 

 

 

 

 

そしておよそ30分後。

 

「うー、さぶさぶ。ただいまー。大漁よー」

「「早っ!」」

 

わたしとクロの声が被った。いや、だって本当に早いしっ。

 

「いやー、さすがに時間が惜しいから、入れ食いの呪文(仮)を使ったのよ」

「「何ソレ!?」」

 

またもやクロと被る。

 

「あ、言っとくけど、乱獲に繋がるから教えないわよ?」

「いや、それはいいから。気にはなるけど」

 

うん。わたしも気になる。魔術が使えないから教えてもらう意味がないけど。

 

「さて、とりあえず下処理しないとだけど、手も臭くなるし、何より体が冷えたから、出来たらお風呂に入れると有難いわね」

「お風呂かぁ。わたしも入りたいな」

 

もう、1日以上お風呂入ってないし。

 

「それなら準備しましょうか?」

「えっ、お風呂あるの?」

 

バゼットさんのおかげで、少し気分が浮上した。……んだけど。

 

「あー…、お風呂って言っても…」

 

そう言ってクロが、チョークで黒板に書いた絵は…。

 

「ああ、そういう…」

「ドラム缶風呂、ね…」

 

わたしとリナの声は、明らかにガッカリとしている。

 

「ん? お姉さん達、お風呂に入りたいの? じゃあ、屋上でいいかな?」

 

……はい?

 

 

 

 

 

「ま、まさか、屋上に温泉が出来ようとは…」

 

そう。学校の屋上には、露天岩風呂風の温泉が出現していた。

 

「温泉の宝具…? いくら何でもデタラメが過ぎる」

 

本当に、バゼットさんの言うとおりだと思う。

 

「せっかくだから、国風に合わせたデザインにしておいたよ」

「それについては大失敗してるけど許すわ!」

 

仕切られた先の男湯から言うギルくんに、クロがツッコミを入れた。確かに、外国人の間違った日本観って感じになってるけどね。

 

「うみゅ。一家に一台、子ギルって感じね」

「……リナさん。僕を便利アイテムみたいに言わないでくれる?」

 

でも、リナだもん。きっとゼロスさんの事も、同じ様に見てたんじゃないかな?

それよりも、そんなやり取りよりも気になるのは。

 

「バゼットさん。そのケガ…」

 

バゼットさんの身体中には、包帯やらガーゼやら、ケガの手当をした後が見られる。

 

「……先の戦闘のものです。治癒のルーンでほぼ完治しているので、気遣いは無用です」

 

そう、なんだ。でも、少し安心したけど、それでもやっぱり心配する気持ちは残ってる。

 

「イリヤ、心配する気持ちはわかるけど、バゼットさん自身が言ってるんだから、気にする必要はないわよ。彼女はプロよ? なら、共闘相手に不利になるような嘘はつかないはず。そうでしょ?」

 

リナはわたしを元気づけるように言った後、最後にバゼットさん自身に尋ねた。

 

「ええ。もう1日か2日で、傷痕も残らなくなるでしょう」

「……ね?」

「……うん。わかったよ」

 

そうだね。また危うく、ウジウジイリヤになるところだった。ミユを助けるまで俯かないって、決めたばがりなんだから。

 

 

 

 

 

「ふぅぅ…」

 

湯船に浸かったわたしは、大きく息を吐いた。

 

『イリヤさん。年寄り臭いですよー?』

「失敬な。湯船に浸かった時に大きく息を吐くのが、お風呂の醍醐味なんじゃない」

『さすがお風呂を、人類が産んだ至高の文化と言うだけはありますねー(さすがに呆れましたけど)』

「ルビー!? 久しぶりに本音が洩れてるよーッ!」

 

記憶違いじゃなければ、ルビーと出会った時以来な気がする。……羽根ルビーは除く。

 

「イリヤー、お風呂は静かに入るものよー」

 

あうっ。クロに正論で諭されるとは。

 

「……淑女らしく、粛々と入ろう」

「だから、淑女観間違ってるって…」

 

クロは呆れてるけど、こういうのは気分の問題だから。

……ん?

 

「リナ、どうしたの? なんか浮かない顔だけど。もしかして、まだホームシック?」

「ああいや、さすがにそれはないから。そうじゃなくって…ズーマはどうしてあんなに、あたしを恨んでいたんだろって思ってね」

 

ズーマ。リナ=インバースをつけ狙っていた、暗殺者。クラスカードになってもリナへの恨みのあまりに、使用者の意識にまで影響を与えた英霊(ひと)だ。

 

「……リナ。並行世界の知識だから役に立つかわかんないけど、時空の狭間から見ていた、ラドックさんの説明を話してあげる」

「え? そっちのラドックさんは説明してたの?」

「うん」

 

わたしは頷いた後、時空の狭間から見た、あの丘でアベルさんに話していた事を聞かせてあげた。その流れで、ズーマ…ラドックさんの最後まで。

 

 

 

 

 

「そう…」

 

リナはひと言呟いた後、難しい顔をして考え込む。

 

「……役に、たたなかった?」

「ん? あ、いや…。そう、ね。確かに今の話だと、あたしの経験とは辻褄が合わないけど」

 

やっぱり…。

 

「でも、無意味じゃないとは思うわよ」

「え?」

「あたしがラドックとしての彼と出会った時、その家族構成は全く同じだった。なら、彼の奥さんが亡くなった理由が、事件に巻き込まれての事であってもおかしくはないわね。何より、あたしを恨んでいたくらいなんだから」

 

リナは考え込むような表情で話してる。……そうか。今のリナはあくまで11歳だけど、前世は130歳まで生きてたんだ。思い出せなかったり、曖昧な記憶だってあるんだと思う。

 

「ただ、サイラーグの事件で、ってのはちょっと考えられないのよ。……あたしは、サイラーグでの事件の後にシルフィールをセイルーンまで送り届けたそのタイミングで、王城でのお家騒動に巻き込まれたの。その時に雇われてた暗殺者のひとりが、ズーマだったわ」

「つまり、逆恨みしたズーマがそんな短い期間で、リナにそこまで悪感情を募らせたとは思えない、ってわけね」

「そーいうこと」

 

割って入ったクロの意見を、リナが肯定する。

 

『では、こういうのはどうですか? リナさんの趣味は盗賊いじめです。それによって壊滅させた盗賊団の中に、事件を起こした犯人のひとり、もしくは複数人が含まれていた、というのは。

更に、リナさんがいくつもの盗賊団を壊滅させていたために、その内のいくつかにも同じ様に、別の犯人が紛れていた…』

「そう。あたしもその可能性に思い至ったのよ。だからこそ、イリヤの話は無意味じゃないってワケ」

 

そうか。ルビーの推測が当たってたら、仇討ちが出来なくなった原因は違うけど、どっちもリナが関わってたって事は同じ…ううん。むしろ、こっちのリナの方が深く関わってるって事だ。

 

「それにしても、そっちじゃアベルさんが死んでるなんてね」

「え? それじゃリナがいた方じゃ、アベルさん生きてる…生きてた?の?」

「ええ。彼が、ズーマの正体がラドックさんと気づいていたところまでは同じ。正体を知られたからにはアベルさんを殺さなくてはならない。だけどズーマ…ラドックさんは、親の情の方が勝っていた。必然的に攻撃に精細さを欠いて、あたしに倒されてしまった。ラドックさんの情の影響を受けていた、同化した魔族も一…緒……に………?」

「……リナ?」

 

どうしたんだろう。また何か、考え込んで…。

 

「あーーーっ!!」

「わひゃあっ!?」

「な、どうしたのよ!?」

「よーやくわかったのよ! 英霊のズーマに感じていた違和感の正体に!」

 

違和感?

 

暗殺者(アサッシン)ズーマ…、ズーマ=セイグラムは空間渡りができないのよ!」

「え? でも、ミユをさらったときも、昨日も、突然消えたり現れたりしてた…」

「ええ。だからこその違和感。ズーマと同化する前の、魔族セイグラムが空間渡りをよく使っていたことと、人魔と化した別の人物が空間渡りを得意としていたせいで、あたし自身が勘違いしていた。セイグラムはズーマと同化したせいで、空間渡りの能力を失ってしまったのよ!」

 

ええっ! わたしが見たズーマは、消えたようにいなくなったことがあったから、全然違和感がなかった。

 

「でも、それじゃあアイツは、どうして空間渡りをしてたのよ。言っとくけど、わたしが見た限りじゃアレは、転移魔術ではなかったわよ」

 

転移魔術の使い手であるクロが言うなら、多分そのとおりなんだろう。

 

「それは、わからないわ。それこそ、魔族と同化したって謂われが空間渡りとして具現化されたのかも知れないし、並行世界のズーマ=セイグラムがその能力を有してたのかも知れない。[英霊の座]に至った英霊は、至れる可能性の全てを資質として有してるのかも知れないし…。

ギル。こればっかりは、アンタを検索代わりにさせてもらうわよ?」

 

あ、そうか。ギルくんも[英霊の座]から召喚された英霊だもんね。

 

「……まったく。大人の僕だったら、殺されてるかも知れないよ? ……そうだね。リナさんの推測の、そのどれもが可能性としてあるよ。さすがに僕にも、そのどれが正解か…あるいはそれ以外に正解があるのかは、わからないけどね」

「……りょーかい」

 

既に気持ちを切り替えたんだろう。リナは落ち着いた調子で言った。

 

「……まあ、何にせよ、エインズワースとはもう一度やり合うことになるんだ。敵のアサシンがどうであれ、決着は着くよ。……近いうちに、ね」

 

そうだ。ズーマの謎も、ギルくんの真意も、ミユやリンさん達の安否も、わからないことだらけだけど。再戦までは、もう、きっとすぐだから…。

 

 

 

 

≪third person≫

街の中。ランドセルを背負って歩く、ひとりの女の子。年の頃なら6、7歳。明るい金髪をポニーテールに括っている女の子は、右の青い瞳に左の()()()、そのオッドアイを揺らしながら、呟くように言った。

 

「んゅー。どこに行けば会えるのかなぁ…。

イリヤお姉ちゃんと、リナお姉ちゃんに」




今回のサブタイトル
天地無用!魎皇鬼「 CDスペシャル2太陽系七つの秘湯」内楽曲から

という訳で、リナがズーマに感じていた違和感の正体はこういうことでした。

人魔と化した別の人物……原作第二部【ベゼルドの妖剣】及び【ソラリアの謀略】に登場した人物。本名不肖、コードネーム:ザイン。「(ヴォイド)」のかけ声も、本来はザインのもの。

最後に登場した女の子、明らかに原作からの改変を受けてます。

次回「エリカSOS」
見てくんないと、暴れちゃうぞっ!
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