Fate/kaleid caster ドラまた☆リナ   作:猿野ただすみ

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3話目です。
ちなみにサブタイトルには、ある法則があります。


動きだした運命

≪third person≫

穂群原学園小等部5年3組。只今授業中、なのだが浮かない顔をした生徒が一人。この物語の主人公、稲葉リナである。

 

(今のところ、街も学校も変わったところは見られないわね)

 

早めに家を出たリナは、街や学校を確認して回った。特に魔法の光が瞬いていた、そのすぐ下と思われる未遠川辺りは入念に、だ。

 

(ただ冬木大橋そばの川縁に、高校と同じような気配を感じたのは一体…)

 

リナは少し考え込む。

因みに広範囲をどうやって移動したのかといえば、まあ、後日謎の飛翔物の目撃談が話題になったということで。

 

(それにしても、巻き込まれたくないと思ってたのについ調べ回って…。とんだ野次馬根性ね)

 

自分がとった行動に苦笑いを浮かべていたとき、スパンッ! という乾いた音が聞こえてきた。

 

『たたかれた…』

『授業中に堂々と居眠りしないように!』

 

なんと、イリヤがタイガ(藤村先生)に注意されていた。

イリヤは授業態度がいいはずなのに、と訝しむリナ。

 

(まさか、ね)

 

胸のうちに浮かんだ疑念を自ら否定した。

 

 

 

 

≪イリヤside≫

「たたかれた…」

「授業中に堂々と居眠りしないように!」

 

うー、タイガに注意されちゃった。モンスターペアレントの槍玉に挙がっても知らないよ? …自分が悪いんだけどさ。

ミミが「珍しいね」なんて言ってきたけど、考え事があって寝付けなかったって事にしておいた。あながち間違いじゃないし。

そう、昨日の夜、わたしは運命と出逢ったんだ。しかも、割りと最低の。

昨日お風呂に入ってたわたしは、いろんなハプニングの末に魔法のステッキ[マジカルルビー]と契約して魔法少女になってしまった。

その後、元マスターだっていうリンさんと出会って、魔術? で造ったカードを集めるお手伝いをしなくちゃいけない羽目に。しかも戦闘もあるみたいだし。

まぁ、思ってたのとはちょっと違うけど、魔法少女、楽しんでみようかな?

 

 

 

 

 

放課後になってわたしは昇降口に急いだ。すると、

 

『ようやく放課後ですか。カバンの中は退屈でしたよー』

 

背負ったカバンからルビーがピョコッと出てきた。

 

「お待たせルビー。早く帰って魔法の練習しよう!」

『おっ、やる気ですねイリヤさん!』

「うん! せっかくだから楽しもうと思って」

 

なんて会話をしながら下駄箱の蓋を開けた。するとそこには、一枚の手紙が入ってた。

 

『おおっ! もしやこれは、アレですね!』

 

ア、アレって、アレだよね!? 所謂ラブなレター的な?

 

『さあさあ、早く中身を!』

「お、落ち着いてルビー! ここは冷静にいくべきところよ」

 

そうよ、冷静に。だいたいわたしにはお兄ちゃんが…。じゃなくて! と、とにかく中の確認を、って…。

 

今夜0時 高等部の

校庭まで来るべし

来なかったら殺す

帰ります

 

…リンさんからの呼び出し状でした。

 

「なに、イリヤ。ラブレターでももらったの?」

「はやあぁぁ!? リ、リナ?」

 

右肩のあたりからリナが顔を覗かせていた。

思わず飛び退きながら、手紙をポケットに捩じ込んだ。ルビーはわたしの髪の中に隠れている。

 

「なーにビックリしてんの」

「リナがいきなり声をかけたからじゃない」

 

ホント、未だにドキドキしてるよ。

 

「いやーゴメンね。で、どうすんの? 付き合うの?」

「…!! そんなの、リナには関係ないじゃない」

 

危ないアブナイ、つい声が跳ね上がりそうになっちゃった。

 

「うん、まあ、そうなんだけどね」

「じゃあわたし、用事があるから!!」

 

急いで靴を履き替え、わたしは駆け足で飛び出した。

ちょっとあからさまだけど、バレるのよりずっとマシ。だって恥ずかしいし。と言うか、バレてないよね!?

 

 

 

 

≪リナside≫

昇降口から飛び出して行くイリヤを見送って、あたしは呟く。

 

「やっぱり巻き込まれてたか」

 

イリヤが隠した手紙、バッチリ内容は見えていた。

0時に高校の校庭かぁ。絶対、例のやつ絡みだよねぇ。

イリヤの左肩にヘンテコな魔法の道具も有ったし、おそらくそいつが原因かしらね。もしそうだったら、後でシバいとこ。

 

「あれ、リナちゃん?」

 

考え事をしながら帰宅してると後ろから声をかけられた。振り返ってみると、赤い髪の見知った高校男子が。

 

「あ、士郎さん」

 

そこにいたのはイリヤのにーちゃんこと衛宮士郎さん。

 

「…って、どーしたの、その顔は!?」

 

なんと顔の中央、鼻の頭に絆創膏が貼ってある。なかなかに痛々しい。

 

「いやー、昨日風呂場に投げ込まれた石が直撃しちゃってさ。まあ、イリヤに当たらなくて良かったよ」

「ふぅん、そう…イリヤ?」

 

ちょっと待てや! それってイリヤも一緒にいたってこと!?

 

「い、今のは忘れてくれ! ちょっとしたアクシデントだったんだ!」

 

うん、まあ、だいたい察しはつく。多分、偶然が重なったハプニング、所謂ラッキースケベが起きたんでしょうね。で、石ってのがあの魔法の道具ってトコか。

やっぱり後でシバいとこ。

 

「そんな訳で顧問から『部活はいいから帰りなさい!』って言われてね」

「そりゃ仕方ないでしょ」

「まあ、こんな顔で部活に出ても、周りに気を遣わせるからね」

士郎さんはハハハと乾いた笑いを浮かべてる。

 

「あ、引き留めてごめんね」

「ううん、大丈夫。…ところで、また料理教えてもらってもいい?」

 

実は時々、士郎さんから料理を教わっているのだ。あたしが作り方を知ってるのは向こうの世界の料理、特に日本料理に似たものは、向こうではほとんど見当たらなかったからなー。

 

「もちろんさ」

 

士郎さんの快諾にあたしはちょっと嬉しくなった。

 

「ありがとう、士郎さん。それじゃあ失礼します」

「ああ、またね」

 

そう言ってあたしは士郎さんと別れた。

 

 

 

 

 

時間は進んで23時50分。高校の校庭脇にある繁みにあたしは潜んでいた。勿論、イリヤの手紙の件だ。

イリヤが巻き込まれたのは、明らかに魔法に関わること。他の人に相談なんて出来やしない。

だからと言って、友達が巻き込まれてるのに見て見ぬふりなんて、これも出来やしない。

そんな訳で、相手の出方を見るためにこうして身を潜めてるのだ。

しかし春とはいえ、この時間になるとさすがに冷える。誰か、早く来ないかなぁ。

そんな事を考えてると、校門の方から人影が。

年の頃なら十六、七。長い黒髪をツインテール、というか左右のサイドアップにしている女の人。

顔はよく見えないけど、親近感を感じるのはそのプロポーションのせいか。…女は胸じゃないやい。

その女性(ひと)は腕時計を見ながら校庭の真ん中に立っている。当然イリヤを待っているんだろう。

当のイリヤはというと、0時ギリギリに現れた。

というか、何? そのピンクのヒラヒラの衣装は!? 手には柄が生えたあの魔法の道具が握られていた。もしかして魔法少女、魔法少女なの!?

考えてみたらあの道具、輪っかの両サイドに鳥の羽根を象った飾りがついていて、その中央には五紡星(ペンタグラム)を象った星が嵌まっている。そして今はその下部から長い柄が伸びているのだ。魔法のステッキ以外の何物でもない。

 

『ちゃんと来たわね』

『そりゃあんな脅迫状出されたら…』

 

うん、殺すって書いてあったもんね。消してあったけど。

 

『なんでもう転身してるのよ』

『さっきまでいろいろと練習してたんですよー』

 

ん? 第三者の声…。あのステッキが喋ってんのかな?

しかし練習って…?

 

『とりあえず基本的な魔力弾射出くらいは問題なくいけます』

 

なん、だと!

 

『正直かなり不安ではあるけど…、今はあんたに頼るしかないわ。準備はいい?』

『う、うん!』

「ちょーっと待ったぁ!!」

 

もう我慢出来ずに、あたしは飛び出した。

 

「うえぇぇえ! リ、リナ!?」

 

イリヤ、なんか今日は驚かせてばかりでごめんね。

 

「な、何、この子。イリヤの知り合い?」

「うん、わたしのクラスメイトの…」

「稲葉リナよ」

 

イリヤの言葉を引き継いで名のりをあげる。

 

「あんた、どうしてここに?」

「そんなの、事件に巻き込まれた友達が心配だったに決まってるじゃない」

 

すると女性がキッ、とイリヤを睨む。

 

「イリヤ、あんたまさか!?」

「ちょい待ち。あたしが勝手に手紙を覗き見ただけでイリヤは関係ないわ。むしろあんな、人の行き来がある場所でいかにもラブレターと間違えそうな方法、何でとる訳? あなたはうっかりさんか?」

「くっ、うっかりは遠坂家の呪いみたいなものよ!」

 

おい、ホントにうっかりさんかよ。

 

「あーもう、それはいいとして…」

 

いや、よくないぞ。

 

「これは一般人のあなたが関わるべきことじゃないの。だから…」

爆煙舞(バースト・ロンド)

「なあぁぁあ!?」

 

あたしの放った術で焦げる遠坂孃。イリヤが眼を丸くしてあたしを見てる。

 

「リナ、それって…」

「あたしは天才美少女魔道士リナ=イン…じゃなくて、稲葉リナよ」

 

危ない、危うく前世の名前を言うとこだった。

 

『魔道士? 魔術師じゃなくてですかー?』

 

ステッキが尋ねてくる。丁寧な言葉遣いだけど、なんか胡散臭さを感じるわね。

 

「…魔法の認識が違う、別体系って事じゃない?」

『なるほど、確かに違うみたいですね』

 

あたしの発言でなんか納得したらしい。理由はわからないけど。

 

「そんな事よりそこのステッキ!」

『[マシカルルビー]ちゃんですよー!』

「じゃあルビー! さっきイリヤに魔力弾を教えたって言ってたわね!」

 

あたしが盗み聞きをしてた時の、アレである。

 

『確かに言いましたけど。何か問題でもあるんですか?』

「あるに決まってるでしょ! あたしは友達に危険な目にはあって欲しくないの!」

 

ホントむかつくわね、このステッキ!

しかしルビーはしれっと言った。

 

『まあ、リナさんの気持ちもわからなくはないですけどねー。わたしは自分の気に入った主人(マスター)と契約したかっただけですから』

「じゃあ何でこんな事に…」

『それは凛さんの、元マスターの都合ですね』

「そう、わたしの都合よ」

 

振り返ると遠坂…、凛さんがゆらりと立ち上がっていた。というか復活早いな。

 

「時間がないから簡単に説明するけど、ここ冬木の数ヵ所に特殊なカードが眠ってるの」

 

凛さんが一枚のカードを見せながら言う。

 

「そのカードを回収するためにそこの魔術礼装が必要だったんだけど…」

「イリヤに鞍替えしちゃったわけね」

 

凛さんが暗い表情になる。見るとイリヤも同じような表情だ。

まったく、仕方ないなぁ。あたしはひとつ溜め息を吐き、

 

「こうなったら、あたしも手伝うしかないわね」

 

この発言に一瞬の沈黙。そして。

 

「「ええーーーっ!?」」

 

二人の驚きの声が、深夜の校庭に響くのだった。




なんだか、士郎とリナに変なフラグが立ってるような気が。
次話でようやくあの子が登場です。

次回「いざ、戦いへ」
見てくんないと、あばれちゃうぞ!
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