Fate/kaleid caster ドラまた☆リナ 作:猿野ただすみ
ちなみにサブタイトルには、ある法則があります。
穂群原学園小等部5年3組。只今授業中、なのだが浮かない顔をした生徒が一人。この物語の主人公、稲葉リナである。
(今のところ、街も学校も変わったところは見られないわね)
早めに家を出たリナは、街や学校を確認して回った。特に魔法の光が瞬いていた、そのすぐ下と思われる未遠川辺りは入念に、だ。
(ただ冬木大橋そばの川縁に、高校と同じような気配を感じたのは一体…)
リナは少し考え込む。
因みに広範囲をどうやって移動したのかといえば、まあ、後日謎の飛翔物の目撃談が話題になったということで。
(それにしても、巻き込まれたくないと思ってたのについ調べ回って…。とんだ野次馬根性ね)
自分がとった行動に苦笑いを浮かべていたとき、スパンッ! という乾いた音が聞こえてきた。
『たたかれた…』
『授業中に堂々と居眠りしないように!』
なんと、イリヤが
イリヤは授業態度がいいはずなのに、と訝しむリナ。
(まさか、ね)
胸のうちに浮かんだ疑念を自ら否定した。
「たたかれた…」
「授業中に堂々と居眠りしないように!」
うー、タイガに注意されちゃった。モンスターペアレントの槍玉に挙がっても知らないよ? …自分が悪いんだけどさ。
ミミが「珍しいね」なんて言ってきたけど、考え事があって寝付けなかったって事にしておいた。あながち間違いじゃないし。
そう、昨日の夜、わたしは運命と出逢ったんだ。しかも、割りと最低の。
昨日お風呂に入ってたわたしは、いろんなハプニングの末に魔法のステッキ[マジカルルビー]と契約して魔法少女になってしまった。
その後、元マスターだっていうリンさんと出会って、魔術? で造ったカードを集めるお手伝いをしなくちゃいけない羽目に。しかも戦闘もあるみたいだし。
まぁ、思ってたのとはちょっと違うけど、魔法少女、楽しんでみようかな?
放課後になってわたしは昇降口に急いだ。すると、
『ようやく放課後ですか。カバンの中は退屈でしたよー』
背負ったカバンからルビーがピョコッと出てきた。
「お待たせルビー。早く帰って魔法の練習しよう!」
『おっ、やる気ですねイリヤさん!』
「うん! せっかくだから楽しもうと思って」
なんて会話をしながら下駄箱の蓋を開けた。するとそこには、一枚の手紙が入ってた。
『おおっ! もしやこれは、アレですね!』
ア、アレって、アレだよね!? 所謂ラブなレター的な?
『さあさあ、早く中身を!』
「お、落ち着いてルビー! ここは冷静にいくべきところよ」
そうよ、冷静に。だいたいわたしにはお兄ちゃんが…。じゃなくて! と、とにかく中の確認を、って…。
今夜0時 高等部の
校庭まで来るべし
来なかったら殺す
帰ります
…リンさんからの呼び出し状でした。
「なに、イリヤ。ラブレターでももらったの?」
「はやあぁぁ!? リ、リナ?」
右肩のあたりからリナが顔を覗かせていた。
思わず飛び退きながら、手紙をポケットに捩じ込んだ。ルビーはわたしの髪の中に隠れている。
「なーにビックリしてんの」
「リナがいきなり声をかけたからじゃない」
ホント、未だにドキドキしてるよ。
「いやーゴメンね。で、どうすんの? 付き合うの?」
「…!! そんなの、リナには関係ないじゃない」
危ないアブナイ、つい声が跳ね上がりそうになっちゃった。
「うん、まあ、そうなんだけどね」
「じゃあわたし、用事があるから!!」
急いで靴を履き替え、わたしは駆け足で飛び出した。
ちょっとあからさまだけど、バレるのよりずっとマシ。だって恥ずかしいし。と言うか、バレてないよね!?
昇降口から飛び出して行くイリヤを見送って、あたしは呟く。
「やっぱり巻き込まれてたか」
イリヤが隠した手紙、バッチリ内容は見えていた。
0時に高校の校庭かぁ。絶対、例のやつ絡みだよねぇ。
イリヤの左肩にヘンテコな魔法の道具も有ったし、おそらくそいつが原因かしらね。もしそうだったら、後でシバいとこ。
「あれ、リナちゃん?」
考え事をしながら帰宅してると後ろから声をかけられた。振り返ってみると、赤い髪の見知った高校男子が。
「あ、士郎さん」
そこにいたのはイリヤのにーちゃんこと衛宮士郎さん。
「…って、どーしたの、その顔は!?」
なんと顔の中央、鼻の頭に絆創膏が貼ってある。なかなかに痛々しい。
「いやー、昨日風呂場に投げ込まれた石が直撃しちゃってさ。まあ、イリヤに当たらなくて良かったよ」
「ふぅん、そう…イリヤ?」
ちょっと待てや! それってイリヤも一緒にいたってこと!?
「い、今のは忘れてくれ! ちょっとしたアクシデントだったんだ!」
うん、まあ、だいたい察しはつく。多分、偶然が重なったハプニング、所謂ラッキースケベが起きたんでしょうね。で、石ってのがあの魔法の道具ってトコか。
やっぱり後でシバいとこ。
「そんな訳で顧問から『部活はいいから帰りなさい!』って言われてね」
「そりゃ仕方ないでしょ」
「まあ、こんな顔で部活に出ても、周りに気を遣わせるからね」
士郎さんはハハハと乾いた笑いを浮かべてる。
「あ、引き留めてごめんね」
「ううん、大丈夫。…ところで、また料理教えてもらってもいい?」
実は時々、士郎さんから料理を教わっているのだ。あたしが作り方を知ってるのは向こうの世界の料理、特に日本料理に似たものは、向こうではほとんど見当たらなかったからなー。
「もちろんさ」
士郎さんの快諾にあたしはちょっと嬉しくなった。
「ありがとう、士郎さん。それじゃあ失礼します」
「ああ、またね」
そう言ってあたしは士郎さんと別れた。
時間は進んで23時50分。高校の校庭脇にある繁みにあたしは潜んでいた。勿論、イリヤの手紙の件だ。
イリヤが巻き込まれたのは、明らかに魔法に関わること。他の人に相談なんて出来やしない。
だからと言って、友達が巻き込まれてるのに見て見ぬふりなんて、これも出来やしない。
そんな訳で、相手の出方を見るためにこうして身を潜めてるのだ。
しかし春とはいえ、この時間になるとさすがに冷える。誰か、早く来ないかなぁ。
そんな事を考えてると、校門の方から人影が。
年の頃なら十六、七。長い黒髪をツインテール、というか左右のサイドアップにしている女の人。
顔はよく見えないけど、親近感を感じるのはそのプロポーションのせいか。…女は胸じゃないやい。
その
当のイリヤはというと、0時ギリギリに現れた。
というか、何? そのピンクのヒラヒラの衣装は!? 手には柄が生えたあの魔法の道具が握られていた。もしかして魔法少女、魔法少女なの!?
考えてみたらあの道具、輪っかの両サイドに鳥の羽根を象った飾りがついていて、その中央には五紡星(ペンタグラム)を象った星が嵌まっている。そして今はその下部から長い柄が伸びているのだ。魔法のステッキ以外の何物でもない。
『ちゃんと来たわね』
『そりゃあんな脅迫状出されたら…』
うん、殺すって書いてあったもんね。消してあったけど。
『なんでもう転身してるのよ』
『さっきまでいろいろと練習してたんですよー』
ん? 第三者の声…。あのステッキが喋ってんのかな?
しかし練習って…?
『とりあえず基本的な魔力弾射出くらいは問題なくいけます』
なん、だと!
『正直かなり不安ではあるけど…、今はあんたに頼るしかないわ。準備はいい?』
『う、うん!』
「ちょーっと待ったぁ!!」
もう我慢出来ずに、あたしは飛び出した。
「うえぇぇえ! リ、リナ!?」
イリヤ、なんか今日は驚かせてばかりでごめんね。
「な、何、この子。イリヤの知り合い?」
「うん、わたしのクラスメイトの…」
「稲葉リナよ」
イリヤの言葉を引き継いで名のりをあげる。
「あんた、どうしてここに?」
「そんなの、事件に巻き込まれた友達が心配だったに決まってるじゃない」
すると女性がキッ、とイリヤを睨む。
「イリヤ、あんたまさか!?」
「ちょい待ち。あたしが勝手に手紙を覗き見ただけでイリヤは関係ないわ。むしろあんな、人の行き来がある場所でいかにもラブレターと間違えそうな方法、何でとる訳? あなたはうっかりさんか?」
「くっ、うっかりは遠坂家の呪いみたいなものよ!」
おい、ホントにうっかりさんかよ。
「あーもう、それはいいとして…」
いや、よくないぞ。
「これは一般人のあなたが関わるべきことじゃないの。だから…」
「
「なあぁぁあ!?」
あたしの放った術で焦げる遠坂孃。イリヤが眼を丸くしてあたしを見てる。
「リナ、それって…」
「あたしは天才美少女魔道士リナ=イン…じゃなくて、稲葉リナよ」
危ない、危うく前世の名前を言うとこだった。
『魔道士? 魔術師じゃなくてですかー?』
ステッキが尋ねてくる。丁寧な言葉遣いだけど、なんか胡散臭さを感じるわね。
「…魔法の認識が違う、別体系って事じゃない?」
『なるほど、確かに違うみたいですね』
あたしの発言でなんか納得したらしい。理由はわからないけど。
「そんな事よりそこのステッキ!」
『[マシカルルビー]ちゃんですよー!』
「じゃあルビー! さっきイリヤに魔力弾を教えたって言ってたわね!」
あたしが盗み聞きをしてた時の、アレである。
『確かに言いましたけど。何か問題でもあるんですか?』
「あるに決まってるでしょ! あたしは友達に危険な目にはあって欲しくないの!」
ホントむかつくわね、このステッキ!
しかしルビーはしれっと言った。
『まあ、リナさんの気持ちもわからなくはないですけどねー。わたしは自分の気に入った
「じゃあ何でこんな事に…」
『それは凛さんの、元マスターの都合ですね』
「そう、わたしの都合よ」
振り返ると遠坂…、凛さんがゆらりと立ち上がっていた。というか復活早いな。
「時間がないから簡単に説明するけど、ここ冬木の数ヵ所に特殊なカードが眠ってるの」
凛さんが一枚のカードを見せながら言う。
「そのカードを回収するためにそこの魔術礼装が必要だったんだけど…」
「イリヤに鞍替えしちゃったわけね」
凛さんが暗い表情になる。見るとイリヤも同じような表情だ。
まったく、仕方ないなぁ。あたしはひとつ溜め息を吐き、
「こうなったら、あたしも手伝うしかないわね」
この発言に一瞬の沈黙。そして。
「「ええーーーっ!?」」
二人の驚きの声が、深夜の校庭に響くのだった。
なんだか、士郎とリナに変なフラグが立ってるような気が。
次話でようやくあの子が登場です。
次回「いざ、戦いへ」
見てくんないと、あばれちゃうぞ!