Fate/kaleid caster ドラまた☆リナ   作:猿野ただすみ

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美遊VS桜ンスロット~ギルくんの件(くだり)までは、バッサリカットです。


ズーマ

≪リナside≫

「う…そ…」

 

それは、目を疑う光景だった。士郎さんがジュリアンを斬りつけようとしたその時、泥の中から現れた人物…顔の上半分を覆う黒いマスクに、露出度の高い黒い甲冑をまとった女性…が、双剣の片割れである莫耶を掴み取り、更にはそれで士郎さんの腹部を斬りつけたのだ。

だが目を疑ったのはそっちじゃない。そもそも士郎さんは剣の担い手ではない。あたしが驚いたのは。

 

「どう、して?……桜ねーちゃん?」

 

それを為したのが、桜ねーちゃんだったことだ。

そんな呆然としたあたしの横を、金ピカな衣装を纏った美遊が通り過ぎていく。そうか。アンジェリカからの排出されたカードを使ったのか。そうだ。あたしも士郎さんを助けないと。でも、桜ねーちゃんと戦うなんて、そんなこと…。

 

「「リナッ!!」」

 

突然、声をかけられて。

 

がぎゃぎゃん!!

 

何かが砕かれる音と共に、あたしは思いきり腕を引かれていた。その視界に映り込んだのは、あたしの背後に現れた葛木…ズーマが手を突き出した姿と、その手に砕かれた二枚と受け止めた一枚の物理保護壁。あたしの腕を引いたのはクロエである。

 

「ちょっと、何呆けてるのよ! あなたらしくもない!」

 

クロエがキツめに叱咤してくるが、今回は致し方ない。

 

「ごめん。士郎さんを斬りつけた人物に、動揺してたわ」

「あの女の人?」

 

イリヤもあたしの横まで来て尋ねた。もちろんあたし達は気を緩めてはいない。ズーマは虎視眈眈とあたしを狙っているのだから。

 

「……桜ねーちゃんよ。おそらくこっちの世界の」

「「ええっ!?」」

 

やっぱりイリクロは気づいてなかったか。あたしは桜ねーちゃんの黒い部分もちょくちょく見てたから、あそこまで狂気じみていようともすぐに気づきもできたけど。

……狂気? まさか桜ねーちゃん、バーサーカーのカードを!?

……くっ、落ち着けあたし。今あたしが優先すべきはあっちじゃない。

 

「……それでズーマ。あんた、さっきまで黙(だんま)り決め込んでたのに。ひょっとして隙でも覗ってたのかしら?」

「……それも否定はしない。だが、俺への命令権があるアンジェリカが敗れたからな。ジュリアンからは好きにしろと言われたから、ここに来た」

 

な、なるほど。意外と律儀な理由だった。

と、その時。

 

ごっ!!

 

という重い音と共に、頂部から弾き出される士郎さんの姿が!

 

「まずい! 落ちるわ!」

「ここはわたしが!」

 

クロエに言われ、イリヤが夢幻召喚を解き、士郎さんを助けに行こうとするが。

 

「ジャリ共が! あたしのジュリアンさまに近づくんじゃねェッ!!」

 

そう言って飛び降りてきたベアトリスが、大鎚をイリヤの目の前に振り下ろす。いや、ジュリアンに近づく気なんてなかったんだけど?

 

「あン? 何だ、ハリボテかよ」

 

ベアトリスが言うとおり、イガリマの内側は空洞になっていて、大鎚で叩いた部分から折れて、崩れ落ち始める。

 

「崩れ落ちる! クロ!」

「バカ! それよりお兄ちゃんが…」

「それなら凛さん達に任せましょう?」

 

あたしは、地上で何か行動を起こそうとしている凛さん達の姿を確認して言った。

 

 

 

≪third person≫

地上では、バゼットが右拳を大きく引き、その拳の上に凛が乗っている。

 

「……永久(とわ)を吹き過ぎ行く風よ

我が身を纏いて 天空(そら)を渡りし力を与えよ!」

 

凛が詠唱を行うと、ルヴィアもまた詠唱を紡ぐ。

 

「永久(とわ)を吹き過ぎ行く風よ

我が手に集いて烈風となれ!」

 

この場にリナがいれば、目を丸くしたことだろう。そう。彼女達が紡いでいたのは、「混沌の言語(カオスワーズ)」による詠唱だったのだから。彼女達もまた、日頃から研鑽を積んでいた証である。

バゼットが拳を突き出し。

 

「翔空陣(エア・ドライブ)!」

 

凛が発動させたのは翔封界(レイ・ウイング)の下位互換魔術。風の結界を纏い飛行をするが、飛行魔術のひとつエーテルセイル帆船法より少し早い程度のスピードしか出せない。また翔封界同様、総重量と速度と高度の総和が術者の力量に比例する。

以上のことから、今から士郎を助けに行くのには向かない術なのだ、が。

 

「烈風撃(ベルステン・シュトルム)!」

 

ルヴィアが発動させた魔術。これは風裂球(エアロ・ボム)の強化アレンジ、もしくは風波礫圧破(ディミルアーウィン)の下位互換魔術に位置する術で、術の発動基点に圧縮空気を作り上げ、任意の方向へ指向性を持った烈風を放つものである。人ひとりを吹き飛ばす威力はあるが射程距離は短く、また人を遠くまで打ち上げるほどの威力はない。普通なら。

だが、翔空陣とぶつかり合うと。

 

ぱあぁぁぁん!

 

破裂するような音と共に、凛は途轍もないスピードで打ち出された。僅かなブレを翔空陣を操り軌道修正し、風の結界を緩めて士郎をキャッチする。

この異常なスピードは、翔空陣と烈風撃の相互干渉による反発である。

この世界に飛ばされる前、凛は[スィーフィード世界]の魔術を研究、翔空陣を組み上げ触媒(ほうき)無しの飛行を実際に使ってみせルヴィアに自慢したのだが、キレたルヴィアはフヨフヨと近寄ってきた凛に、同じく[スィーフィード式]で組み上げていた烈風撃をぶつけ、その瞬間にお互いが物凄い勢いで弾かれた。そして以前にリナとナーガの術が引かれ合い消滅したことを思い出し、相互干渉現象であると気づいたのである。今回はそれを応用したというわけだ。

アンカーアトラクションアセンション(トーコトラベル)の様な異端なものを除いたもうひとつの飛行魔術、ジェット飛行法と比べても遜色なく、風の結界による空気抵抗の減少と翔空陣の推進力によって、急激な進路変更でもしない限り減速も少ない。消費魔力量に関しては遥かに低コスト。あくまで反発力を利用した一時的なブーストでしかないことと、最低でも二人ひと組にならなければならないという欠点はあるが(バゼットは補助的なカタパルト役)、今回ならば明らかに有効な手段である。まさに時計塔主席候補の面目躍如であろう。

 

 

 

 

≪リナside≫

「リンさん…」

 

凛さんが士郎さんをキャッチして、安堵の声を漏らすイリヤ。もちろんあたしだってそうだが、腹部を斬り裂かれたうえに、打ち出されたときのあの衝撃音。あくまでひとまずの安心であって、まだまだ予断は許さないはずだ。

っと。それより今は、あたしが予断を許さないじょーきょーである。崩れる足場からいーかげん脱出しないと。あたしは呪文を詠唱して…。

 

「貴様…、わたし…ごと…」

 

突然、絞り出すような声で喋り出したアンジェリカ。とはいえ、当然あたしにではない。

 

「……あんたを助けろとは言われてねェんで。じャーな。用済みのお人形さん」

 

アンジェリカは非常にも切り捨てられる。……あーもう、しょうがないなぁっ!!

 

「翔封界(レイ・ウイング)!」

 

あたしは術を発動させるとアンジェリカのところまで行き、風の結界を弱めてその手を取ると、崩れ落ちるイガリマから飛び立った。

 

「……何故?」

「あのまま見捨てたら寝覚めが悪いじゃない。言っとくけど、下に連れてくだけだかんね!」

 

あたしはツンデレのようなことを言うと、そのままクレーターの端に着地した凛さんから少し離れた場所へ降り立つ。

 

「あんたはそこで大人しくしてなさい」

 

それだけ言うと、あたしは急いで凛さん、そして先に降り立ったイリクロの許へ駆けつける。

 

「リンさん!」

「お兄ちゃんは…!?」

「無事…とは言えないわね」

 

凛さんの答えは、予想していたとはいえあまりいいものではなかった。

 

「ああ、もう! 治癒魔術は苦手だってのに!」

 

凛さんの気持ちが痛いほどわかる。あたしだって、復活(リザレクション)が使えたらという想いが、心の中を激しく駆け巡っているのだ。

 

「何とか繋いでみるわ! 時間稼ぎをお願い!」

「……って言われてもねぇ。こんなの、1分も持たないわよ?」

 

泥の英霊が押し寄せてくる現状に弱音こそ吐かないものの、クロエは愚痴をこぼす。……と、その時。

 

「邪魔だ」

 

そのひと言と共に数体の英霊が吹き飛び、葛木(ズーマ)が姿を現した。

 

「決着をつけるぞ。リナ=インバース」

 

やれやれ。敵を吹っ飛ばしたのが、もっと厄介な敵とはね。とはいえ。

 

「……ええ、わかったわ。あたしもこんな状況で命狙われ続けるのに、いーかげんうんざりしてたのよ」

 

……若干軽口を入れているが、実際こんな状況が続くと、あたしの精神が先にすり切れてしまう。リスクが高かろうと、今ここで勝敗を決する方がいいのは間違いない。

 

「ちょっと待って」

 

……え? イリヤ?

 

「ひとつ…ううん、二つ聞かせて欲しいんだけど」

「……質問に答える義理などないが」

「そうかも知れないけど。でもリナは、前世であなたを倒した後も謎が謎のままになっていて、わだかまりが残ってた。だから、少しくらいは答えてほしいよ!」

 

イリヤ…。

 

「……質問とは何だ」

 

ズーマは短く告げる。やっぱ、イリヤはすごいと思う。

 

「あなたは、アベルさんを殺したあなた? それとも、親の情が勝ってリナに倒されたあなた?」

 

これは、あたしの過去の出来事に近い世界か、イリヤが見た並行世界での出来事に近い世界か、という事か。

 

「俺は、リナ=インバース敗れた。それでわかるはずだ」

 

つまりはあたしのいた世界に近いということか。

 

「それなら、なんであなたはリナを狙うの? そりゃわたしだって、倒されてスッキリしました、なんて事はないのはわかってるよ? でも、倒されて、親の情が勝っていたって理解して、それを受け入れてたんだよね? それなら恨みは残ってても、そこまで執着してるのもおかしいかなって思ったんだ」

 

……人間の心は、イリヤが言うほど単純ではない。けど、確かに前世の彼と何ら変わらない執着心というのも、若干の違和感がある。

 

「……今の俺は、確かにリナ=インバースに敗れた俺が基本となっている。だが、お前が言った『アベル(息子)を殺した俺』もまた、英霊の座で統合されている」

「な…。つまり、イリヤが時空の狭間で見た『アベルを殺したズーマ』の因子も含んでるって言うの!?」

 

あたしが驚きを含めて言うと、ズーマは小さく首を縦に振った。

 

「更に俺の伝承と魔と融合した事実、他の人魔の伝承が融合して、今の俺を構成している。つまり、貴様に倒された人魔共の恨みの念もこの身は受け継いでるということだ」

 

そういう事か。

かつて、ルヴィナガルド王国で起きた不祥事を、あたしと金魚のうんちその他1名によって暴かれたため、沿岸諸国連合からの糾弾にあい王国は解体、ルヴィナガルド共和国となった。逃げ延びた王族とその部下は落ち着いた先であるソラリアを乗っ取り、性懲りもなく同じ事をしていたところを、偶然居合わせたあたしとガウリイその他数名によって叩き潰されたのだ。その時の王族と部下達は、自らを人魔へと改造していたのだが、同じ魔族との合成という謂れでズーマと変な風に混じって座に登録されたということらしい。

だがこれで、使えなかったはずの空間渡りが出来た理由も納得がいく。まさに部下のひとりが使っていた能力が、ズーマの能力として引き継がれてしまったということか。

 

「さあ、これで満足か?」

「満足じゃないけど、理解は出来たわ。結局あんたら全員、逆恨みであたしを狙ってることがね!」

 

そう。ズーマはおそらく、仇を倒したあたしへ代償行為として。人魔共は自分達の悪行を棚に上げて。

 

「……否定はしない。だが、それでも」

 

それもわかっている。人間の心は、簡単には割り切れないものなのだから。

 

「……イリヤ。クロエ。二人は手出ししないで。って言うか、今はズーマの圧で攻めてこないだけで、あたしがズーマと戦いだしたら、泥の英霊達も再び攻めてくるはずだから」

「……しょうがないわね」

 

クロエは渋々了承し。

 

「リナ。負けないで」

「……うん。絶(・)対(・)大(・)丈(・)夫(・)だ(・)よ(・)!」

 

イリヤには、さっき彼女が言ってくれた魔法の言葉で返すあたし。

 

 

 

 

 

あたしは腰の後ろに差していた[烈光の剣(ゴルンノヴァ)]のレプリカを引き抜き、光の刃を編む。クラスカードの方は、侵入直後の戦いで限定展開していたため、使用不能(アク禁中)なのだ。

 

「……行くぞ」

 

そう告げて駆け出すズーマ。やっぱり、素早い!

あたしは剣を横薙ぎに振るうが、ズーマはその下をかいくぐり、あたしの首めがけて手を伸ばす。

 

ざっ!

 

「!?」

 

ズーマの腕が軽く斬り裂かれ、慌てて手を引く。その脇を通り抜け、その背後に。

 

「烈閃咆(エルメキア・フレイム)!」

 

精神を破壊するレベルの術を放つ。だがこれは。

 

「空(ヴォイド)!」

 

空間渡りで躱された。もちろんあたしもそれを想定して、反撃を食らわないように大きく右へと移動する。

 

「……なるほど。黒鍵か」

 

呟くように言うズーマ。そう。あたしは[烈光の剣(ゴルンノヴァ)]を薙いだ直後、右手で黒鍵を取り出し刃を編み、ズーマの腕を斬りつけたのだ。

ズーマが再び、こちらに向かって駆け出す。あたしは剣を構え…、ズーマの姿がふっと消え失せた。空間渡りではない。急激に移動方向を変えたせいで、あたしの目が追えなかったのだ。

く、呪文を唱える暇はない。あたしは勘を頼りに、再度右へと飛び退く。その直後、左手側からズーマの右手が、あたしの首のあった位置に突き出してるのが見えた。あ、あぶねー。左はとーぜん、前に避けてたとしてもズーマに捕まってたかもしんない。

 

 

 

 

≪凛side≫

ちょ、何よあれ。あれが自我を持った英霊(アサシン)の、本来の戦い方だっていうの?

始めて戦った思考する敵クロ。封印指定執行者バゼット。二枚目のアーチャー(ギルガメッシュ)。そしてアンジェリカとベアトリス。確かに誰も彼も強敵だった。むしろあの英霊は、それらに比べれば能力的に、1段階から2段階は低いと思う。だが、戦い方は遥かに洗練されている。戦闘のプロであるバゼットですら手を焼くだろう。

リナもよく対応できている。だがこれは、彼女の戦闘経験によるものもあるだろうけど、どちらかといえば以前に戦った相手だから対応できている、という方に比重が傾いてる気がする。実際、攻めるアサシンに対して、リナは守備がメイン。反撃もするけど、決め手と言うにはほど遠い。最初は軽くダメージを与えていたけど、今じゃ完全に見切られている。

リナ。どうする気なの?

 

 

 

 

≪リナside≫

く…、やっぱり強い。そりゃそうだ。ガウリイですら簡単にはひと太刀を入れられない相手、充分に理解してたはずじゃないか。あたしの記憶にある彼の戦い方と、それを踏まえての防御策で何とかしのいでいるが、さすがにこのままではジリ貧である。

ならば攻撃に転じたいところだが、ただ仕掛けに行っても相手の思う壺、反撃食らってあの世行きなんて、シャレにもなりゃしない。

そんな思考を巡らせているとズーマ、今度は正面から迫ってきた。あたしは黒鍵を投擲するが、ズーマはそれを手で弾き。

 

「黒霧炎(ダーク・ミスト)」

 

しまった! 晴れない闇を生み出す術かっ!

迷う暇(いとま)もあらばこそ、あたしはストンと腰を落とし。

 

「爆裂陣(メガ・ブランド)!」

 

相手の隙を作ろうと唱えていた術を発動させる。

 

「くっ…」

 

吹き上げた土石をくらい、短く声を上げるズーマ。その声を頼りに術を込めた硝子玉を向け。

 

「青魔烈弾波(ブラム・ブレイザー)!」

 

[力あることば]と共に解き放つ。

 

「!?」

 

今度は声を上げなかったが、術が通った手応えは感じた。あたしは慌てて黒霧炎の効果範囲から飛び出し、再び闇を向いて剣を構え…。

 

「空(ヴォイド)」

 

その闇の中からかすかに聞こえた声。あたしは、ガウリイがかつて魔族に対してやったように、片足を軸にして独楽のように回転しながら剣を横に薙い…。

 

がっ!

 

腕に痛みが走る。その衝撃で、思わず剣がこぼれ落ちる。しまった、攻撃を読まれてた!?

あたしの腕を殴りつけた体勢のズーマ、息が荒く、動作が少しばかり遅い。青魔烈弾波が効いたようだが、こちらも剣を落とし、術も完成していない。……ままよ!

あたしはゴミ捨て場から回収した剣を引き抜き、ズーマへと斬りかかる。だがズーマは、その刀身を指でつまむようにして受け止めた!

 

「残念だが、刃に触れなければ何の問題もない」

 

かなり切れ味がいいはずのその剣も、ズーマの機転で傷つけることは出来ず、彼は何でもないように力を込める。

 

ぴしり

 

刀身にヒビが入り、やがて。

 

ぱきぃぃぃん!

 

澄んだ音と共に砕け散り。中からひとまわり細い刀身が現れる。その一瞬のラグで、刀身はズーマの指からすり抜けて。

 

「!?」

 

さくり、と。ほとんど抵抗なく、その剣はズーマを袈裟懸けに斬り裂いた。ズーマはがくりと膝をつき、そのまま前のめりに倒れ込む。

 

「……なんだ、……それ、は…」

「これは[斬妖剣(ブラストソード)]。周囲の魔力を糧に切れ味へと転換する、[光の剣]と並ぶ伝説の剣よ」

「なる、ほど…。油断…大敵…だった…な……」

 

それだけ言うと、葛木の身体からカードが排出された。

 

「……葛木、宗一郎?」

「ああ。朽ち果てた…殺人鬼の成れの果て…だ」

 

そう答えた彼からは、さほどの感情も感じられない。それは、異空間から覗き見た彼よりも如実である。

 

「ズーマを倒すためとはいえ、悪かったわね。多分、あなたはもう…」

「構わない…。もとより、私は既に死んでいる…。この身体は…、ただの器に過ぎない…」

 

え? それってどういう…。

 

「リナ=インバース…いや、稲葉リナ…か。私を…眠らせてくれて…あり…が……」

 

そこで力尽き、その瞬間に葛木の姿は一体の人形に変わる。

 

「これは!? まさか、置換魔術で…!?」

 

エインズワースは、死者の意識までも置換するというのか? だとしたらそれは、死者への冒涜に他ならない。

あたしは自分が善人だとは思わないが、……それでもこの所行を許す気にはなれなかった。




今回のサブタイトル
神坂一「スレイヤーズ」アサッシンの名前から

当初の予定していた倒し方と違いますが、ようやくズーマと決着がつきました。倒すタイミングはここか過去編の後かで悩みましたが、斬妖剣の事もあったのでこちらにしました。
因みに当初予定していた方法は、ダブル光の剣(二回目の魔王討伐のダブル神滅斬のオマージュ)です。斬妖剣を手に入れるタイミングを考慮して、今回のパターンに変えました。

葛木が死ねることに礼を言うタイプかは微妙ですが、まあ、さすがにいい加減楽になりたいと思っていた、ということにしといてください。

次回「黄昏よりも昏きもの」
見てくんないと、暴れちゃうぞっ!
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