Fate/kaleid caster ドラまた☆リナ   作:猿野ただすみ

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5話目。説明回ですね。


平穏を乱すモノ

≪リナside≫

その少女は静かに佇んでいた。

黒い髪にやや切れ長の目。

着ているのは競泳水着の様な衣装にスカートの様な飾り、そして先が別れた白いマント。

手にはルビーによく似たステッキ。ただし羽根の飾りは鳥ではなく蝶、嵌め込まれた星は六紡星(ヘキサグラム)だ。

うん、これはパターン的に見て、間違いなくライバルの魔法少女登場ってやつね。

あたしは取り敢えず声をかけてみようと思った。

思ったんだけど。

 

「オーッホッホッホッホ……!」

 

あたしの心を抉るような高笑いが、それを阻止した。

 

「あのバカ笑いは…」

 

ん? 凛さんの知り合い?

 

「無様ですわね、遠坂凛(トオサカリン)!」

 

そこに現れたのは金髪縦ロールのいかにもお嬢様風の女性。

 

「まずは一枚! カードはいただきましたわ!」

 

な、なんかこのひとって…。

 

「ここしかないというタイミングで如何にして必殺の一撃をいれるか。その一瞬の判断こそが勝負を分けるのですわ」

 

うん、言ってることは正しい。正しいんだけど…。

 

「だというのに、相手の宝具に恐れをなして逃げまどうなど笑止千万!! とんだ道化ですわね、遠坂凛(トオサカリン)!!」

「「やっかましいー」」

 

凛さんの延髄蹴りがきまり、あたしのスリッパが頭を叩く!

 

「レ、レディの延髄によくもマジ蹴りを!! …というか、なぜあなたまで攻撃を!?」

 

金髪縦ロール、面倒臭いので金ドリルは、器用にも凛さんと拳の打ち合いをしながら、あたしに聞いてくる。

ふむ、そんなの決まってる。

 

「アンタの言動が、昔の知り合いに似てて嫌なのよ!」

 

そう。言葉遣いこそ違うけど、その相手をバカにした態度が自称あたしのライバル、実質金魚のうんちだった、知り合いの女魔道士に似てたりする。

なにより、あの高笑い!

あんな笑い方をするやつがまっとうな人間であるはずがない。(断言)

 

「あら、リナ。わたしと気が合うみたいね」

「いや、凛さんも大概だと思う」

「「人の事言えるか(ませんわ)ーーー!!」」

 

なに、人の事常識はずれみたいに。あたしはいたって普通の小学生よ。

 

ぴしいっ

 

突然、何かがひび割れるような音がした。見ると、地面や空間の境界面に無数のヒビが。

 

「ルビー! なんか地面が割れて……、うわっ! 空も!?」

『あらー、原因(カード)を取り除いたので鏡面界が閉じようとしてるみたいですね』

 

イリヤの疑問にルビーが答える。

 

『凛さん、ルヴィアさん。脱出しますよー』

「くっ、仕方ないわね」

「美遊、頼みますわ」

 

二人は顔を付き合わせながらも返事をする。でも、お互いに睨み合ったまま動こうとはしない。

いーかげん、状況をわきまえなさいよ、おまいら。

 

「……サファイア」

『はいマスター』

 

美遊と呼ばれた少女に応えるステッキ・サファイア。

そして、サファイアが形成した大きな魔法陣によってもとの世界へと戻ってきた。向こうで破壊された箇所も、こちらではなんともない。

なんか、凛さんと金ドリル、ルヴィアさん? がクロスカウンターしてるけどそんなのは無視。

あたしが美遊の方に視線を移すと、向こうもこちらを見ていた。いや、正確にはイリヤを、か。

 

「この(わたくし)が攻めきれないとは…」

「単純なタックルがいつまでも通用すると…」

 

…なんか向こうでは肉体言語の会話が聴こえる。

魔道士の、いや、魔術師だっけか? そういった人たちの会話じゃないよなぁ。イリヤとルビーもあきれてるし。

 

「で、さっきから気になってたんだけど、そっちの子はなに? なんでサファイアを持ってるのよ」

「それはこちらのセリフですわ。どうしてあの白い子がルビーを? これではまるで…」

「まるで、ステッキに見限られたみたい?」

「ふっ…」

 

…なんだ、この舌戦は?

 

「ええ、そうですわよ! あの後サファイアを追いかけたら、既にこの子と契約完了してて『この方をマスターです』とかワケのわからないことを…ッ!」

「あー、もういいわ。だいたい何があったか想像つくから」

 

あー、なるほど。あたしも凛さんに何があったか想像がついたわ。

 

「…それと、そちらの赤い子は何者ですの? 見たことのない魔術を使うようですけど」

 

おっと、あたしにまでお鉢が回ってきたか。まあ、あんな術使ってたら仕方ないわね。

 

「あたしは魔道士の、稲葉リナよ」

「魔道士?」

「わたし達とは別体系の魔術らしいわ」

 

凛さんがフォローしてくれた。てか、爆煙舞で焦げてたときにもきちんと聴いてたみたいね。

 

「別の体系…。まあいいでしょう。イレギュラーはありましたが、勝つのは(わたくし)ですわ。覚悟しておくことですわね、遠坂凛(トオサカリン)!」

ルヴィアさんはそう言うと、美遊を引き連れ去っていった。

 

 

 

 

≪イリヤside≫

「ったくあのバカは……」

 

リンさんがご立腹です。

 

「あの人って味方じゃないの?」

 

わたしは気になって尋ねてみた。

 

「…そのはずだったんだけど、とりあえず今は対抗馬…、ってとこかしら」

「あー、あたしの昔の知り合いもそんな感じだったわね」

 

ふーん、リナの昔の知り合いかぁ。ちょっと見てみたい気がするな。

 

『それにしても、あの子が誰なのか聞きそびれちゃいましたねー』

 

うーん、確かに気にはなるんだけど…。

 

「…ねえ、リナ。あの子、わたし達と同じくらいの歳だったよね?」

「そうね。…あ、もしかして」

「うん、パターンでいくとこれって…」

 

わたしとリナは、ある確信を持った。

 

 

 

 

 

「美遊・エーデルフェルトです」

「はーい、みんな仲良くしてあげてねー」

 

次の日。ウチのクラスに転校生がやって来ました。なんていうか、ここまで予想通りだと笑えてくるなー。

 

「席は窓際の一番後ろね。イリヤちゃんの後ろのとこ」

 

ええっ、タイガなんて事を!? リナをチラッと見ると、「御愁傷様」って顔でこっち見てた。

見放された!? って、席が離れてるからどうしようもないよね。

うわぁ、自分でもパニクってるのがよくわかる。

しかも後ろのミユさんから、ちょー見られてるのが判るんですけど。

ルビーが『メンチで負けてはいけませんよー』なんて言ってるけど、はっきり言って視線のプレッシャーがキツイです。

 

 

 

 

 

休憩時間になって、ミユさんに色々と聞きたいこととかあったんだけど、当然というか、クラスメイトたちが押し寄せていた。

わたしと同じように、リナも困った顔をしてる。

 

『では、代わりにわたしがお話を伺います』

「わっ!?」

『サファイアちゃんも来てたんですねー』

「誰かに見られるとまずいわ。廊下に出ましょう」

 

うん、リナの言うとおり。わたし達はいそいそと廊下の窓際まで移動した。

ルビーとサファイアは携帯モードのまま、窓枠の外に浮いてる。なんかシュールな絵面だね。

 

『こちら、わたしの新しいマスターのイリヤさんです』

『サファイアと申します。姉がお世話になっております』

 

おお、ルビーの妹なのに礼儀正しい!?

 

「あんた達って姉妹なのねー」

『ええ。わたしとサファイアちゃんは同時に造られたんですよー』

『魔力を無限に供給し、マスターの空想を元に現実に奇跡を具現化させる。それがわたしたちカレイドステッキの機能です』

 

えーと、つまり、自分の思ったことを叶えてくれるってことかな? うん、なんかちょっと違う気がする。

 

『でも美遊さんも大したものですねー。初めてなのにいきなり宝具を使うなんて』

「宝具?」

「そう言えば凛さんも、宝具がどうとか言ってたわね」

『説明していないのですか、姉さん』

『…一度に説明しても混乱させるかと思いまして』

 

……そうかもしんないけど、さわり程度は言っといてほしかったなー。たしかあのライダーってのが使おうとしてたやつだよね。

そんなわけでルビーとサファイアが説明してくれたことによると…。

 

−−−わたしたちが集めてる[クラスカード]は突然ここ、冬木市に現れたらしい。そして魔術協会ってところが魔力がおかしいところを調べ始めたのが二週間くらい前。

で、回収したカードを調べたんだけど、ほとんどのことはわからなかったみたい。

ただひとつ、このカードは英雄の力を引き出せるらしい。…って、

 

「英雄?」

『神話や昔話にでてくるアレですよ』

『偉業を成し英雄と認められた者は、死後に[英霊の座]と呼ばれる高次の場所へと迎えられます…』

 

−−−英霊になった人たちは強力な武器を持ってて、それを[宝具]っていうらしい。

ルビーとサファイアはカードを使って少しの間だけ宝具を使えるんだって。昨日、ミユさんが使ってたのもそう。

刺し穿つ死棘の槍(ゲイボルク)]って武器で、放てば必ず心臓に当たる、ってかなり物騒だよね!?

 

「ひとついい?」

『なんですか、リナさん』

「宝具って必ず形あるものなの?」

『いえ、そんなことはありませんよ。強力な攻撃の魔術が武器、という英霊もいますから』

『ただ、そのような宝具はわたしたちでは発動できないと思われます』

「りょーかい」

 

? なんだったんだろ。

ま、とにかく話の続きだけど。

 

−−−あのライダーはカードによって現れた英霊だけど、かなりランクダウンしてて理性もほとんど無いみたい。

そして英霊を倒せばカードの回収ができるけど、ライダーには魔術が効かなくって、ルビーたちの出番。いろいろあって今に至る、と。

わたし、完全にとばっちりだね。わかってたけど。

カードは全部で7枚、残り4枚か。

イマイチ自信はないけど頑張ってみよう。

 

 

 

 

 

帰り道、わたしは落ち込みうなだれてた。

ミユさん、あの子は天才だった。

算数では高校で習うような式で問題を解き、図工ではピカソのような絵を描く。

調理実習ではハンバーグだけでなくいろんな料理をフライパンひとつで作り、50メートル走では学年トップだったわたしを抜いて1位に。

 

「ちょっと、そんなに落ち込まなくても…」

「リナはいいよ。ハンバーグ、ミユさんに勝ってたもんね」

 

ミユさん凄い! の雰囲気の中、リナが差し出したハンバーグを食べた先生が、「勝者リナちゃん!」と高らかに宣言した。

ミユさんもそれにはちょっと驚いてたみたい。

 

「…あたしは、あの短時間であれだけの量、あのクオリティでは作れないわ」

「えっ、そうなの?」

「あんたのにーちゃん並みの技能だよ、あれ」

 

へー、そうなんだ。やっぱりミユさんは凄いなぁ。

 

「…なにしてるの?」

 

えっ、ミユさん!?

 

「こ、これはどうもお恥ずかしいところを…。ミユさんにあらせましては今お帰りで?」

「なんで敬語?」

「こりゃ、イリヤ。なに卑屈になってんの」

 

だってー…。

 

「あなたもステッキに巻き込まれてカード回収を?」

「うん、成り行き上仕方なくっていうか…」

「そう。それじゃあなたはどうして戦うの?」

 

え、どうしてって…。

 

「…ホントのこと言うとね、ちょっとだけこういうのに憧れてたんだ。アニメとかゲームみたいじゃない?」

「ゲーム…?」

 

わたしはミユさんに、ワクワクしてるとか楽しんじゃおうかなとか話した。すると、

 

「もういいよ。…遊び半分で英霊を打倒できるとでも? あなたは戦わなくていい。カードの回収は全部わたしがやる。せめてわたしの邪魔だけは…」

「自分の意見だけ押し付けんじゃないわよ!」

「「!?」」

 

な、リ、リナ?

 

「どういった理由で戦うかなんて人それぞれ。あなたに何があるのかは知らないけど、それを否定する権利は無いんじゃない?」

「……」

 

ミユさんは押し黙ったまま、立ち去ってしまった。

 

「…ただね、美遊の言うこともわかるんだ」

「え?」

「楽しむのはいいけど、下手をしたら死ぬかもしれないって心構えは持っていてほしいな」

「死…」

 

わたしは頭を殴られたかのような衝撃を受けた。

 

 

 

 

 

そのあとうちへ帰ったら、お向かいに豪邸が建っていました。そしてその豪邸に入っていったのは、さっき別れたばかりのミユさんでした。

現実はゲームより奇なり、です。

 




雀花たちの出番、丸々カット。
イリヤは藤村大河のことを先生もしくはタイガと呼んでます。

次回「退っ引きならない魔術的事情」
見てくんないと、あばれちゃうぞ!
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