Fate/kaleid caster ドラまた☆リナ 作:猿野ただすみ
午前0時前の未遠川横の公園。リターンマッチの為に再び集まった魔術師と魔法少女たち。
凛はイリヤ、美遊、そしてリナとミーティングを始めた。
「ええと、まず最初にリナに確かめておきたいんだけど」
「ん? なに?」
「あんたの飛翔術で相手を引っ掻き回すことって出来る?」
「あー、そういうこと」
リナは納得顔で答えた。
「まあ、問題はないけど、風の結界のせいで中と外とでは声が届かないわよ」
「ええ、それでいいわ。それを踏まえてなんだけど、イリヤとリナには陽動と攪乱を担当してほしいの。突破力のある美遊は攻撃担当ね」
凛が魔法少女+αの役割分担をする。
要約すると、上空に飛んだらリナが敵の目を引きイリヤが弾幕をはる。陣形としてはイリヤ・リナと美遊とでの挟撃で、イリヤたちが敵の意識を引き付けているうちに、美遊が接近して必殺の一撃を撃ち込む、というわけだ。
「…以上よ。分かった?」
「「「了解」」」
三人の少女達は声を揃え返事をした。
「さて、リターンマッチね。もう敗けは許されないわよ!」
三人を鼓舞するように、凛は声を張りあげ言った。
鏡面界に現れたあたし達は一気に駆け出した。
状況は昨日と同じ。いや、むしろ昨日より魔法陣の数が増えてるような気がする。けど、そんなの上空にあがれば問題なし。
あたしは呪文を唱えながら美遊を見る。さて、どういう答えを出したのかしらね。
『いけますか、美遊さま』
「大丈夫」
ドゴォッ!!
派手な音と共に美遊が上空へと掛け上がる。
なるほど。「飛ぶ」じゃなくて「跳ぶ」できたか。おそらく魔力で足場を作ってんのね。
あたしには無理だけど、ステッキの力を借りればこういうことも出来るってことか。
さて、それじゃああたしも。
「
力あることばと共に、あたしは飛び上がる。
ん? そういやイリヤは?
ずどどぉっ!
結界を越えてまで聞こえる爆音。イリヤは敵の攻撃をかろうじてかわしながら、ようやく飛び立った。おそらく、美遊の移動方法に気をとられていたんだろう。
まったく何やってんのよ、あの子は。
あたし達は魔法陣の上へと飛び出す。
敵は魔力砲を飛ばしてくるが、あたしはその隙を縫うようにして相手に近づいてく。向こうは慌ててあたしへと攻撃をとばすけど、既にあたしは進路を変えてその場にいない。
そこへイリヤが、この間より範囲を抑えた散弾を放つ。
防御壁を張って防ぐ敵の、その後ろから美遊が接近。その左手にはクラスカード、たしか[ランサー]だったっけ? それを携えている。そしてカードをステッキにあて、限定展開しようとした、その時。
敵の姿が消えたかと思うと、美遊の真後ろに現れた。おい、まさか空間渡りか!?
敵は魔力を込めた錫杖で美遊を思い切り殴りつける。美遊はそのまま地面へと叩きつけられた。ってヤバい! このままじゃ!?
あたしは慌てて美遊に向かって飛んでいく。美遊のそばで一瞬だけ風の結界を弱め、美遊を抱き抱えてその場を離れた。美遊、どうやら足を怪我してるみたい。
間を置かず、先ほどの場所には敵の集中攻撃が降り注いでいた。まさに間一髪。
あたしのすぐ後ろにはイリヤの姿が。どうやらイリヤも美遊を助けに飛び出していたらしい。翔封界の飛行速度のほうがちょとだけ速かったんだろう。今は美遊を抱えてる分、スピードが落ちてるけど。
あたし達は再び魔法陣の上へ。敵とは距離をとっているためか、向こうも襲ってはこない。
「美遊、怪我は…?」
「問題ない。すぐ治る」
すぐ治るって、それもステッキの力か? すごいな、カレイドステッキ。
「それじゃあちょっとお願いがあるんだけど」
あたしは上空から、凛さん達が退避している冬木大橋の下へとやって来た。
「ちょっとリナ、なんであんただけ戻ってきてるのよ!」
「
二人が捲し立ててくる。あたしは人差し指をたてて。
「大丈夫。あの二人には作戦があるのよ」
「「作戦?」」
そう。あたしは作戦のたて直しのため、美遊に魔力の足場を作ってもらい風の結界を解いたのだ。なにしろ結界があると会話ができない。
結果、その作戦にあたしは邪魔になるのでこちらへ引きあげたのである。
「まあ見てなさいって。あと、攻撃の準備はしといてね」
そう告げると、あたしは上空を見上げた。
最初の戦略とはうって変わって、イリヤが敵の元へと討って出る。あたしの時のように攻撃の合間を縫って敵に近づいていった。
ある程度距離を詰めたイリヤは、下に広がる魔力指向制御平面に向かって特大の散弾を放つ。すると散弾は広範囲に散らすように反射される。
当たってもたいしたダメージは与えらんないけど、これで敵がどこに現れても動きを封じることができるわけだ。
はっきり言ってあたしが退避したのも、これの邪魔にならないようにである。
案の定、イリヤの後ろに現れた敵は、散弾に身動きがとれないでいる。
そのさらに上空、散弾の射程範囲の外にいた美遊が
敵は慌てて避けようとしたけど間に合わずに直撃をくらい、地面へと叩きつけられた。ちょうどさっきの美遊と同じ状況、見方によっては美遊がさっきの仕返しをしたようにもとれる。さすがにそれはないと思うけど。
さて、あたし達もこと、ここに到って指をくわえて見ているだけとはいかない。三人同時に飛び出し、
「
「
「「
ルヴィアさんと凛さんの魔術が、そして、
「
あたしの、
炎の爆風と精神を破壊する雷がおさまるとそこには何もなく。
上空を覆う魔法陣は消えてゆく。
なんか空にイリヤの顔の花火があがってるけど。きっとルビーの仕業ね。でも…。
「なんとかなったみたい…」
「まだよ!」
凛さんの言葉に被せるように、あたしは叫んだ。
そう、あたし達の攻撃はかわされている。
あたしには、術が決まったときの手応えを感じられなかった。何よりあたしは、ああいった状況で逃れる術をもった敵と何度も戦ったことがある。
魔族。向こうの世界での驚異となる存在。
そして今回の敵は、原理が同じかはわからないけど空間を移動する能力を持っている。ならば導き出される答えは…。
「あそこ!」
「まさか、転移されて…」
あたしが指差す先に、魔法陣を形成し魔力を高めている敵の姿が。ルヴィアさんは驚愕し、凛さんは、
「空間ごと焼き払う気よっ」
力あらんかぎりに叫んだ!
すると、その声に触発されたかのように美遊が敵に向かって跳び上がる。でも今からじゃ間に合わない! このままじゃ美遊が…!
ドンッ!!
強烈な音と共に大きな魔力弾が飛んでいく。って、イリヤ!?
「ミユさん! 乗って!!」
イリヤが美遊に向かって叫んだ!!
わたしは判断を誤った。迎撃ではなく脱出するべきだったのだ。
けれどももう、そのどちらも不可能だ。
ならばせめて、イリヤスフィールがみんなを脱出させて…。
そう思ったその時。後ろから迫ってくる魔力弾に気がついた。
『ミユさん! 乗って!!』
イリヤスフィールの声が届く。
わたしは魔力弾に足場を形成し、その勢いのままスピードをのせて敵に向かって一気に跳躍する。
「クラスカード[ランサー]、
サファイアに限定展開させた魔槍を構え、わたしは敵へと突っ込む。
「
真名開放した魔槍は相手の胸を穿ち貫いた。
地に降りたわたしはカードを回収する。
『クラスカード[キャスター]、回収完了です』
サファイアの言葉にようやく戦闘が終わったんだと息を吐く。
そんなわたしのもとへ、ルヴィアさん達のところから飛んでくるイリヤスフィールとリナを見て思う。
わたしは空を飛ぶイメージを持つことは出来なかった。わたしはただ魔力で足場を作り、強化の魔術で筋力を上げて跳躍しただけ。それだって、リナからヒントをもらっている。
それを口にすると、
『魔力の総合運用で考えれば、とても効率的な飛行法です』
サファイアがそう言ってくれた。けれど…。
「魔力砲を足場にするなんて発想、わたしじゃ思いつきもしなかった」
『…先日美遊さまは仰いました。カードの回収は全部わたしがやる、と』
確かに、言った。
『わたしにはあの時の美遊さまの真意はわかりません』
あの時わたしは、カード回収を軽く考えていたイリヤスフィールに無性に腹が立ったんだ。
『ですが、この勝利はお二人の連携がもたらしたもの。その連携もリナさまが助けてくださったからです』
そう、二人のおかげで、わたしは今ここにいる。
『イリヤさまにリナさま、お二人は信頼するに十分な方だと、そう思います』
「うん、わかってる。でも、わたしは…」
『美遊さま?』
「ミユさん!」
「美遊!」
イリヤスフィールとリナがやって来た。この話はこれでおしまい。
「あれ? どうしたの?」
「なんだか空気が重いわね」
「なんでもない」
「そう? ところで美遊、カードのクラスはなんだったの?」
訪ねてくるリナに、わたしはカードを見せる。
「ふーん、[キャスター]か」
リナは何か考え込み始めた。けれど。
ズドォン…!
突然の破壊音。振り返ったわたしたちが目にしたのは。
「ど、どういうこと、ルビー…?」
『最悪の事態です』
「サファイア、あり得るの? こんなこと」
『完全に想定外…。ですが現実に起こってしまいました』
「二人目の敵…!!」
そう、剣を携え漆黒の鎧を身に纏う、淡い金髪の女性が遠く離れた先に立っていた。その足元には…。
「リンさん! ルヴィアさん!!」
イリヤスフィールが叫ぶ。
まさしく、ルヴィアさん達が敵の足元に傷つき、倒れていた。
「リンさん!」
イリヤスフィールが飛び出した。でもダメ!
リンさんとルヴィアさんが!
わたしは居ても立ってもいられなくて飛び出していった。だけど。
「イリヤ!」
「イリヤスフィール!」
ずべどしゃあっ!
リナとミユさんに片足づつ掴まれたわたしは、顔面を地面に叩きつけられてしまった。
「あー、ごめんねイリヤ。でも少し落ち着きなさい。二人ともまだ生きてるから」
「へ?」
『確かに。二人とも生体反応があります』
よかったあ。でも、それならすぐに…。
「今、だったらすぐにとか思ったでしょ」
「それはダメ。こういう時こそ、冷静に、確実に行動しないと」
リナ、ミユさん。そうだ、わたしたちがやられたら、二人を助けることは出来なくなっちゃうんだ。
「納得したみたいね。それじゃあ作戦会議よ!」
うん、必ず二人を助けよう!
凛とルヴィアの魔術は宝石魔術。ルヴィアはお金持ちだけど凛は(涙) だから凛は五連止まり。
次回「セイバーの脅威」
見てくんないと、暴れちゃうぞ!