Fate/kaleid caster ドラまた☆リナ 作:猿野ただすみ
ウィンディのカードを回収した日の夜。わたし達は柳洞寺の梺までやって来た、けど。
「うう、やっぱり夜だと、薄気味悪いね」
わたしは長い階段を見上げながら言う。これが初詣とかお祭りの時なら人通りや灯りもあって、まだそうでも無いんだけど。
「でも一成さんは、毎日ここを通ってるんだけど」
あうっ、リナの言うとおりだ。お兄ちゃんのお友達の
「あと、担任の
リンさんの、……ということはお兄ちゃんの先生も、柳洞寺に住んでるんだ。
『そんな重要そうに見えて関係ない情報はいいので、さっさとやる事やっちゃいましょー!』
「ルビーって、興味のない事にはホント無関心よねー」
クロってば、何を今更。それに、ルビーの言う事にも一理あるし。ということで。
「ルビー」
『はいはーい』
「……サファイアも」
『はい、美遊さま』
わたしとミユは、視線を合わせて頷き合い。
『『コンパクトフルオープン!
鏡界回廊最大展開!!』』
ルビーとサファイアが呪文を唱えると、わたし達の姿が魔法少女の衣装に変わる。
『カレイドの魔法少女プリズマ☆イリヤ&美遊、見参です!』
「おおー」
パチパチパチ!
感嘆の声をあげて拍手するリナ。
「いやー、最近演出無しの変身ばかりだったから、こういうの改めて見ると感動するわね!」
……魔法少女モノオタクの、面目躍如だね?
「ホラ、オタク魂燃えあがらせるのは後にしなさい!」
「異常現象の沈静化。それが
はい。全くもってそのとおりです。
『……なーに言ってるんですかねー、このふたりは。クラスカードの回収って目的も果たさずに、私達の力を使って大ゲンカしてたのは、どこの誰でしたっけねー?』
「「う、うるさい」ですわ!」
……どこかに、このふたりが仲良しな世界って無いものだろーか?
「そ、それじゃあ、行くよ?」
気を取り直したわたし達は、わたしの号令で一斉に階段の一段目に足を踏み出した。その途端に、鏡面界に
「な、何ですの!?」
「空間操作型の結界? まさか固有結界!?」
固有結界?
「ふみゅ。魔族が張る結界に、雰囲気は似てるわね」
「ふぅん。それで脱出は?」
クロが興味深そうに聞く。
「……中位魔族くらいのなら、外の空間と繋がりを持たせただけで、あっさり脱出出来たけど」
「それですわ!」
「リナ! 今すぐそれを試すのよ!」
話を聞いたルヴィアさんとリンさんが、すぐに実行に移すよう促したけど…。何だかリナは、乗り気じゃないみたい。
「……まあ、やってもいいけど。成功するかわかんないし、成功したとしても…、どうなっても知らないわよ?」
そう言った後、クロに何か囁いてから呪文を唱え始める。クロはわたし達の近くまで移動すると。
「(リナが合図を送ったら、どこでもいいからリナに掴まるのよ)」
そんな事を言ってきた。もちろん訳はわかんないけど、きっと何か意味があるはず。
そしてリナがこっちを見て。わたしは右、ミユは左の袖口を掴み、クロはリナの腰に抱きつく。……クロ、もう少し自重しよう?
「
リナが術を発動させると、一羽の白い鳥が現れ、同時に空間が歪み。
「……巨大迷路?」
ミユが呟いた。そう。わたし達はいつの間にか、巨大迷路の中にいた。そして、リンさんとルヴィアさんの姿が見えなくなってた。
「やっぱりこうなったか」
やっぱり?
「ねえ、リナ。もしかして、こうなるってわかってたの?」
「まあね」
リナは頷いて、続きを話す。
「今これをやってるのはメイズ。その名の通り、迷路を創り上げる精霊よ」
「迷路、ねえ」
クロがやや呆れ気味だ。
「でね、メイズはインチキが大嫌いなのよ。例えば上空から行こうとすると、全力で邪魔をしてくるわ」
「つまり、さっきは結界を解こうとしたことに怒って、迷路を本格的に展開した…?」
「あ、そうか。やっぱりミユは、理解が早いなー」
わたしが誉めると、ミユは少し頬を染めて顔を背けた。ううっ、なんかそそられるモノが…。
……ハッ、いけない! 危うくヘンなスイッチが入るトコだった!
ふっ…
あうっ!? クロとリナに鼻で笑われたッ!!
『イリヤさんはいつでも、笑いを忘れませんねー』
「ルビー、やめてっ! わたし笑わせてんじゃなくて、笑われてるだけだからっ!! しかも、冷ややかな方っ!!」
ううっ、自分で言ってて恥ずかしくなってくるよぉ。
「さてと。イリヤをからかうのはこれくらいにして…」
「からかわないでよっ!」
「リナ。そろそろ説明してくれないかしら?」
……え?
「あなた、この騒動の原因に心当たりがあるんじゃないの?」
クロのこの発言に、リナは軽く笑って。
「いやー、やっぱりバレたか」
イタズラがバレたかのような表情で、あっけらかんと言った。
「そりゃね。リン達もさすがに気づいたと思うし」
「え、ええっ!? どういうこと!?」
「全く。気づいてないのはイリヤくらいよ?」
「えええっ!?」
そんなバカな! ……と思ってミユを見ると、すっごく申し訳なさそうな顔をしてた。なんでさ。
「リナはさっきから、相手の正体を知らなきゃ出来ない言動をしてるでしょうが。特に[メイズ]なんて、知ってるからこそ言い当てられるとしか考えられないじゃないの!」
「……全くその通りでございます」
うう…、また
「ふぅ…。それでリナ、説明はしてくれるんでしょ?」
「そうね。詳しい説明は後にするとして、とりあえず知っといてほしいのは…」
そう言って例のカードを取り出し。
「この子達とその主は、
「「「えっ!?」」」
わたし達は揃って声を上げる。なのはちゃんは異空間で出会った、他の世界の魔法少女。でも多分、リナが言った「同様」は別の意味で…。
「
どッごぉぉん!
クロが言い切る前に、大きな爆発音がした。
「これってもしかして、リンさん達?」
「……いや」
わたしの疑問に、リナは少し考えてから首を横に振った。
「おそらく、主さまの登場よ!」
リナの表情には期待の色が浮かんでる。やっぱり間違いないみたいだね?
「さて。目的は同じはずだし、あたし達もこの子達とご対面と行きましょうか。
……問題は、主じゃないあたしに応えてくれるか、だけど」
そう言って限定展開に使ってる黒鍵を取り出して、その柄尻でカードを叩き。
「『ウィンディ』!」
名前を唱えると、精霊さんが姿を現す。
「……応えてくれて、ありがと。しんどいかもしんないけど、あたし達を案内してくれる?」
精霊さんにそう尋ねると、かすかに頷いたように見えた。
精霊さんが先頭を進み、わたし達が後をついて行く。しばらくは誰も喋らなかったけど、沈黙がちょっと重い。だから、わたしはリナに尋ねてみることにした。
「ねえ、リナ。精霊さんに言った『しんどいかもしんない』って、どういうこと?」
「……この子達は本来、主…、カードの本当の所持者にしか扱えないのよ。そしてこの子達が必要とする魔力は、その主のものでないといけないの。
だけどウィンディは、あたしに応えてくれた。魔力の供給が出来ないのに、ね」
「そうだったんだ…」
何だか、優しい精霊さんだね。
更に進んでいくと、曲がり角の手前でウィンディが立ち止まった。ということは。
「どうやらこの先にいるみたいね」
リナはそう言うと。
「ありがとう、ウィンディ」
ウィンディにお礼を述べる。するとウィンディはカードに戻っていった。
「それじゃあ行くわよ。三人とも、心の準備はいい?」
「うん」
「ええ」
「もちろん」
わたし達が応えると、リナは深く頷いた。
そしてわたし達が一歩踏み出すのと。
ドゴオォ!
少し大きなその空間の、反対側の壁が破壊されたのはほぼ同時だった。壁に開いたその穴から現れたのは。
「イリヤ!リナ!」
「
リンさんとルヴィアさん。けれどふたりより一歩前に、可愛らしい衣装を身に着けた、同い年くらいの女の子がいた。その左にはオレンジ色の翼の生えた猫の様なものが浮かんでる。ひょっとして、アニメとかでもよく見る、魔法少女のパートナー的な?
そして次の瞬間。
「ホンモノだーーー!!」
そう叫んだかと思うと、猛ダッシュでその子に抱きつくリナがいた。
「ほええええ!?」
あの子も突然のことで、パニックになってるみたい。
「……ルビー」
「……了解です」
ルビーですら呆れるリナに近づいて。
「ハリセンモード・薄口!」
スッパァーン…
わたしはハリセンで、思いっきり引っ
「それで、
頭を抱えてうずくまるリナを後目にクロは、ちょっとした部屋になったここの中央に浮かぶ、メビウスの輪のようなそれを指差して言った。
「ううん。その子は『ループ』、『メイズ』じゃないよ」
「「「えっ!?」」」
その子の言葉に、わたしとミユ、クロは驚いた。リナと言ってることが違う?
「……最初の無限階段を引き起こしてたのは、ループの仕業よ」
立ち上がりながら、そう切り出すリナ。
「ただ、ループは出口が無くなるはずなのに、巻き込まれた人は最終的に外へ出られた。
それで思ったのよ。ループとメイズ、ふたりの力で無限階段は形成されてたんじゃないか、ってね。
後は美遊が言ったとおり。違うのは、あたしの術で解体できたのは、ループの能力だけだったって事」
うう、何時も思うけど、リナってばよくそんな推理が立てられるなぁ。
『なるほどー。これで合点がいきました』
「へっ、ルビー?」
『リナさんが「今これをやってるのは…」と、わざわざ「今」を入れたのは、その前はループが関わっていたからなんですね?』
「昼間のルヴィアさんのセリフじゃないけど、細かいとこまで聞いてるわね」
ホントにそうだ。わたしなんか言われても、思い出せすらしないのに。
「ちょっと、あんた達だけで納得してんじゃないの!」
「ループ、でしたか。早く何とかしませんと」
そうだ。リンさん達の言うとおり、早く何とかしないと。
昼間は
わたしは女の子の方を向いてい言った。
「えっと、お願いできますか?」
「えっ、いいの?」
女の子がちょっと驚いた顔をした。
「……だって、大切な子達なんでしょ?」
「うん! ありがとう!」
「アンタ、とんだお人好しやなぁ」
「関西弁!?」
パートナーキャラなら喋るとは思ってたけど、まさかの関西弁とは!
……女の子はゆっくりとループに近づいていく。
「……待たせちゃってごめんね」
そう語りかけてから、手にしていた杖を掲げて。
「汝のあるべき姿となれ。主、さくらの名のもとに」
その詠唱に応えて、ループはカードに姿を変えた。そのカードを女の子…、さくらさん? が手にすると、迷路が崩れだして元の、柳洞寺の長い階段の途中にいた。
「……って、何で迷路が消えたの?」
「メイズの迷路は本来、出口を抜ければ消えるんだけど、今回はループのカードを手にするのが、ゴールの条件だったって事ね」
なるほど。……って、メイズがまた迷路を造り始めて…!?
「汝のあるべき姿となれ。主、さくらの名のもとに!」
さくらさんが再び呪文を唱えて、メイズをカードに変える。凄いなー。なんか手馴れてる感じだし。
「さくらちゃんの活躍、やっぱり素晴らしいですわ!」
うん、ホントに素晴らしい…。
「って、誰!?」
突然の声にそっちを見れば、ハンディカムを構えた長い黒髪の女の子がこちら…、というか、明らかにさくらさんを撮影していた。
「い、いつの間に…」
「あら、私はさくらちゃんと、ずっと一緒におりましたわ」
な、何ですとぉ!?
「ルビー、気づいてた?」
『いいえ、全く…』
ルビーでも気づかないなんて!
わたしがみんなを見ると、クロやミユも首を横に振ってた。
「仕方がありませんわ。私、さくらちゃんの邪魔にならないよう、壊された壁の裏からこっそりと撮影していましたもの」
「そ、そうデスか」
なんて言うか、ストーカー?
『なんだかストーカーみたいですねー』
ルビーってばハッキリ言っちゃた!?
すっぱああああん!
「ストーカー言うんじゃない! 知世ちゃんのそれは、さくらちゃんへの愛によるもの! さくらちゃんの活躍を記録するため、日夜献身的に動いているのよっ!」
スリッパでルビーを引っ叩き、これでもかと熱弁するリナ。でもそれって、やっぱりストーカーだよね?
「えっと、知世ちゃんはちゃんと私に断ってるから、ストーカー行為じゃないよ?」
「せやな。まあ、確かに微妙なラインの気ィもするけど」
まあ、さくらさんとパートナーの猫(?)が言ってるんだから、それでいいけど。
「あの、少々疑問があるのですが」
黒髪の女の子、知世さんが言う。
「そちらの方は、何故、私の名前をご存知なのでしょうか?」
『あっ!?』
意味合いはそれぞれ違うだろうけど、知世さん以外のみんなが一斉に声をあげた。
ループの破り方だとか、独自解釈(ループくらい強力でも破れるのか)が入って悩んでたけど、開き直りました。とりあえず、リナの方法で破れる!
一応辻褄合わせとしては、メイズとの複合発動だったため、ループの能力に綻びがあったって事で。
次回「さくらと甘いお菓子」
さくらと一緒に、レリーズ!