Fate/kaleid caster ドラまた☆リナ   作:猿野ただすみ

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今回は少し長くなりました。筆がのるのも考えものです。


白き巫女、正義の(こぶし)

≪美遊side≫

教室。わたしが一人、窓の外を眺めていると。

 

「お早う、美遊」

 

リナが声をかけてきた。

 

「…おはよう」

「おうっ、やっぱ機嫌が悪いわね」

 

…声に、感情が出ていたのだろうか。でも、あんなことされて怒らない方がどうかしてる。

 

「ええと、とりあえず言い訳してもいい?」

 

リナはわたしの様子を見ながら尋ねた。わたしも、理由も聞かずに拒んだりする気はないので首を縦に振る。

 

「昨日、美遊に[訳あり]って言ったじゃない?」

 

? いきなりなにを…。

 

「実を言うとあたしも訳ありなんだわ」

「…え?」

「誰にも言ってない、ううん、軽々しく言えないような秘密があんの」

 

軽々しく言えない…。それは、わたしも同じ。()()()は簡単に言える類いのことじゃない。

 

「それで昨日の敵なんだけど、あたしの秘密にメチャ関わってんのよねー」

 

え? 英霊が関わってる?

それってどういう…、あ、それが秘密だったっけ。

 

「サファイアには立場上話してはあるんだけど」

「サファイア!?」

『すみません、美遊さま。ですが私も、軽々しく口外するべきではないと判断しました』

 

わたしの髪の中に隠れたサファイアがコッソリと告げた。サファイアがそう言うんだからその通りなんだろうけど、なんだかモヤモヤする。

 

「…いつか話すから」

「え、リナ?」

「イリヤと美遊には知ってもらいたい。でも、まだその勇気がないの。だから…」

 

いつでも強気なリナが、今は見る影もなく沈んだ顔をしている。

 

「もう、いい。わたしも似たようなものだから」

「美遊…」

 

わたし達の間に沈黙が流れる。

 

「リナ、ミユ、おはよー!」

 

それを打ち破ったのはイリヤだった。

 

「あれ、なんか変な雰囲気だね。二人でなに話してたの?」

 

それは…、なんて答えればいいんだろう。

するとリナは、立てた人差し指を口許に持ってきてこう言った。

 

「それは秘密です!」

「あーっ、ずるーい! わたしにも教えてよ」

「仕方ないわねぇ」

 

リナは顔をイリヤの耳元に近づけて小声で言う。

 

「実は新しく三枚のカードが見つかって、ルヴィアさんからあたしが回収するように言われたの」

「え?」

「それで、その事に関係した意見交換をしてたのよ」

「そっか、ミユはルヴィアさんのとこに居るんだもんね」

 

すごい。リナは一切ウソを言っていない。今回のリナの秘密だってカード回収に関係してるし、あの言い訳も拡大解釈すれば意見交換だ。

しかもルヴィアさんの名前を出すことで、わたしとの意見交換を自然なものに見せて、間違った解答へ導いてる。

こういう質問のかわし方があったなんて。

 

『まるで詐欺師のようです』

 

…そのとおりだけど、さすがにちょっとひどいと思う。

 

 

 

 

≪リナside≫

あたしは今、深山町の外れにある竹林の中にいる。もちろんカード回収のためだ。

ただし今回連れてきたのはサファイアのみ。美遊は学校での説明のお陰か、あっさりと了解してくれた。むしろ凛さん、ルヴィアさんを説得するのに骨が折れたくらいだ。

とりあえず今わかっているのは、あの二人の大師父、宝石翁って二つ名らしいけど、彼はあたしがどういった存在か知ってるみたいだってこと。

実はあたしがカードを回収するに当たって、報酬が設定されていた。その報酬というのが、回収したカードなのである。

おそらくだけど、これはあたしにカードをを渡すための段取りじゃないかと思ってる。だってあたしに報酬をちらつかせるなんて、あたしの性格を知ってるとしか思えないし、何より英霊の正体が正体だ。あながち間違いでもないだろう。

 

「さてと、ここらでいいかな? サファイア、お願いね」

『はい、リナさま。

限定次元、反射炉形成

鏡界回廊一部反転

接界(ジャンプ)

 

あたしはサファイアによって鏡面界へと移動した、ら?

目の前に、それなりに大きな胸があった。むむっ、あたしの敵ねっ! って。

 

「黒化英霊!!」

 

ぶおっ

 

繰り出された右フックを身を屈めてかわし、相手の足を払うように蹴りを出す。しかし彼女は後ろに跳んでそれを避けた。さすがに今回は、そう簡単にはいかないか。

 

「今回はアンタが相手って訳ね。アメリア!」

 

あたしが投げかけた言葉に、しかし無言のまま構えをとる。むう、ノリの悪い。…いや、この子のノリが良いと、それはそれでめんどくさいけど。

 

「■■■■■!」

 

ゼルと同じように黒い衣装を身に纏ったアメリアがこちらに向かってくる。

あたしはサファイアを剣のように構え、迎え撃つ姿勢をとった。

と、アメリアの拳が淡い魔力の光に被われている。なっ、まさか!?

 

がごぉっ

 

『!?』

 

アメリアが振るった拳を、サファイアを盾にして防ぐ! ごめん、サファイア!!

 

炎の矢(フレア・アロー)! GO!」

 

あたしとアメリアとの間に出現させた炎の矢を撃ち出すが、彼女は後ろに飛び退きながら拳で矢を打ち落としてく。

 

狙射(シュート)!」

「■■!?」

 

アメリアは魔力弾の直撃を食らい、大きく後ろへ吹っ飛んだ。

あたしは呪文を唱えながらアメリアの元へ駆け出す。

一方のアメリアもすぐに体勢を立て直し、迎撃準備に入っていた。

アメリアの右があたしの顔めがけて降り下ろされる。

 

霊王結魔弾(ヴィスファランク)!」

 

がぐぎゃっ!

 

二人の拳がぶつかり合う!

…っっっったああ!

やっぱ元々の身体の出来が違う上に、向こうは今や英霊だ。()()()の打ち合いじゃ勝ち目はないか。

あたし達は共に、後ろへ身を引き距離をとる。

 

「■■■!」

 

アメリアは掌に生まれた光球を投げた。

 

狙射(シュート)!」

 

あたしは魔力弾を光球にぶつける。

 

ちゅごどぉん!

 

光球は爆炎をあげてはぜた。やはり火炎球(ファイアー・ボール)だったか。

今のアメリアは正常な発声をしてないので、どんな術が来るのか判断が難しい。いや、それ以前に詠唱すらしてないよーな。

アメリアは爆煙を突き抜け、あたしに襲いかかってくる。あたしはサファイアに魔力を通して刃を編み、アメリアの胴を狙って水平に薙ぐ。しかし彼女は、肘と膝で刃を挟み受け止めた。

あたしはすぐに刃を消してアメリアの横をすり抜け、

 

爆煙舞(バースト・ロンド)!」

 

振り返らずに呪文を発動させる。もちろんこんな術で、あの頑丈娘を倒せるなんて思っちゃいない。ただの目眩ましと時間稼ぎだ。そう、あたしは竹林の奥へ身を隠した。

 

 

 

 

 

「これでとりあえず、少しは時間が稼げるでしょ」

 

あたしは太めの竹の根元に座り、寄りかかって一つ息を吐く。

ここへ来るまでの間に竹を薙ぎ倒し、あちこちに黒霧炎(ダーク・ミスト)…暗黒の霧を作り出してバラ蒔いたりと、色んな工作をしている。今のアメリアなら充分引っ掛かってくれるはずだ。

 

「さ、今のうちに情報の整理をするわよ」

『ではリナさま。お聞きしますが、あの英霊ともお知り合いなのですか?』

 

やっぱりそこが気になるか。

 

「うん、あの子はアメリア=ウィル=テスラ=セイルーン。見てのとおり、拳で戦う正義の巫女よ」

『正義の巫女が肉弾戦、ですか…』

 

あ、さすがに少し退いてるみたいね。

 

「でも彼女のお父さんなんか、拳で折檻する平和主義者だったし、まだましな方だと思うけど」

『…』

 

ついに黙っちゃったか。あまりにもの事に声が出ないのか、はたまたあたしがからかってると思ったか。

まあ、どっちでもいいか。

 

「それでなんだけど、彼女のクラス、なんだと思う?」

『イリヤさまが使っていた剣術が得意な[アーチャー]のこともありますから、肉弾戦が得意な[キャスター]ではないでしょうか?』

「んー、あたしもそれは思ったんだけどね」

『何か気にかかることでも?』

 

あたしが難色を示したので気になったんだろう、サファイアが尋ねた。

 

「使ってる術がショボいのよ。あの子精霊魔術に長けてたのに」

 

霊王結魔弾は強力だけど、体術と併せて実力を発揮する術だしね。

 

『それでは、まだ判明していないクラスでは…』

「それも多分、違うと思う」

 

これはあたしの推測だけど、最後のクラスは暗殺者(アサッシン)ではないかと思っている。

いや、単純に性質が重複してない有名どころといえば暗殺者くらいしかないなー、と思っただけなんだけど。

でも、もし想像のとおりなら、これほどアメリアに似合わないクラスはないだろう。

 

「ああもう、せめてクラスがわかれば、もう少し対策の立てようがあるんだけど」

 

どうやらクラスによって能力の振り分けに変動があるらしい。昨日のゼルも攻撃は単調だったけど、パワーはむしろ上がっていたように見えた。

つまり、もしアメリアが[キャスター]なら魔力の値が高くなっている可能性があるって訳だ。

 

ガサッ

 

なっ、もう来た!? 思ってたより早い!

そーいやあの子、勘が鋭いとこがあったけど、まさかこのタイミングで発揮してくるとは…!

とりあえずまだ気づかれていない今のうちに。

あたしは小声で呪文を唱え始める。

 

「!!」

 

こちらへ振り返るアメリア。気づかれたみたいだけど、こっちの呪文も唱え終わっている。

 

螺光衝霊弾(フェルザレード)!」

 

螺旋に渦巻きながら突き進むこの術は、簡単にはかわせない。アメリアは避けようとはせず、拳を術に叩き込んだ!

 

バシュアァッ!

 

何かが破裂するような音をたてながら、それでも術はアメリアに直撃した。

だが、アメリアは立っている。霊王結魔弾で効力を削ぎ、英霊としての潜在能力で耐えきったか?

 

「■■■■■!」

 

拳へ再び魔力を纏わせたアメリアは腕を引き、いつでも突き出せるよう構えをとる。それと同時に彼女自身の魔力も上昇した。

やばっ、まさか宝具か!

 

「…平和…主義者…」

 

って、それが宝具かい!?

 

「アメリア! 今のアンタ、全然正義の味方っぽくないわよ!!」

 

それは苦し紛れに言った言葉。その筈だったのだが。

 

「■■■!?」

 

…なんか動揺しまくってんだけど? 確か理性はほとんどないハズよね。まさかあの子の正義を愛する心(笑)は、本能レベルで刻み込まれてる?

 

『リナさま、もっと動揺させて敵を討ちましょう』

「もっと動揺…? それってどーいう…」

 

なんだか嫌な予感しかしないんだけど?

 

『もっと正義の味方っぽい台詞を連呼すればよいかと』

「だあーっ、やっぱそれか! アンタ、さっきのこと根に持ってるでしょ!?」

『リナさま、時間がありませんよ?』

 

こいつ、怒らせるとルビーより厄介なんじゃあ…。

 

「…わかったわよ」

 

あたしは溜め息を吐き、気を取り直し、サファイアをビシッとアメリアに向けて声高らかに言った。

 

「悪に堕ちたる白き巫女よ! 正義の使者リナの名において聖なる裁きを与えん!」

 

あたしはセイバーのカードをサファイアに限定展開し、[約束された勝利の剣]を展開する。

 

「さあ、アナタにまだ、正義を愛する心があるのなら、我が一撃を自ら受け入れなさい!」

「■■■■!!」

「くらえ! 直至の閃光(ロイヤル・ストレート・フラッシュ)!!」

 

あたしは剣先をアメリアに向け突進。彼女は両手を広げ、なんの反撃も見せず、すべてを受け入れた。

…お願い、今までの言動には触れないでください。

 

 

 

 

 

あたしは現れたカードを手に取り、そのクラスを確認した。

…は?

 

「[ランサー]? あの子のクラス、[ランサー]なの!?」

『拳での攻撃を、槍に見立てたのでしょうか?』

「にしたってムリヤリ感ありまくりでしょーが!」

 

などと言い合っていると、例によってカードが光りだした。

数秒ののち、そこに現れたのは先程と同じ姿の少女。ただし、身に纏う衣装の色は白。

 

「やっほー、リナ。久しぶりっ!」

 

そして、挨拶はやたらと軽かった。

 

「『久しぶり』、じゃないわよ。なに? アンタのクラス」

「やだなー、別にわたしの意思でこのクラスになった訳じゃないのに」

「そーかもしんないけど!」

「それより、わたしの持つ情報は聞きたくないの?」

 

くっ、こいつ、なかなか痛いところを突いてくる。仕方がない、今はアメリアの話を聞くこととしよう。

 

「わかったわ、アメリア。それで一体、どんな話を聞かせてくれるの?」

「あなたの事よ、リナ」

 

…はい?

 

「リナ、あなた気になってたんじゃない? どうしてこの世界で向こうの術、特に黒魔術が使えるのか、って」

「!? それは…」

 

確かに。あたしの使う魔法は、向こうの世界の法則によるもの。精霊の力を引き出す精霊魔術や白魔術なら、こちらの精霊の力を向こうの術式に変換して使ってるって解釈もできる。

けれど黒魔術は、向こうの世界の、魔族の力を借りた術である。本来なら、こっちで使えるハズがないものなのだ。

 

「はっきり言うわ。今のリナは、[混沌の海]と繋がってるの」

「混沌のって、金色の魔王!?」

 

おいこら、言うに事欠いてアレと繋がってるだと!?

なんなのよ、この突拍子もない展開はっ!?




見事なくらいの尻切れ蜻蛉。さすがにこれ以上は長くなりすぎるので、もう少し詳しいことは次回、回想というカタチで。

ちなみに「ロイヤル・ストレート・フラッシュ」は中の人ネタ、「直至の〜」は日本語当てようとして偶然出てきただけ(笑)

次回「親友ともらった勇気」
見てくんないと、暴れちゃうぞ!
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