Fate/kaleid caster ドラまた☆リナ   作:猿野ただすみ

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前回の説明の続きと、悩めるリナの話。友達っていいね、って回です。


親友ともらった勇気

≪third person≫

穂群原学園小等部。昼休みの屋上。金網に寄りかかりぼんやりと空を見上げる少女、稲葉リナ。彼女はポツリと呟いた。

 

「あたしが、金色の魔王とねぇ…」

 

リナは昨夜のことを思い出していた。

 

 

 

 

 

自分が混沌の海と繋がっている。そんな突拍子もないことを聞いたリナがアメリアの胸ぐらをつかみ、力強く前後に揺さぶる。

 

「ちょっとアメリア、アンタなんの根拠があってそんなこと言ってんのよ!」

「根拠ならリナの方にあるんじゃない?」

 

あっさりと切り返したアメリアの言葉に、リナはハッとする。

 

「あたしの、憑依転生…」

 

そう、彼女の転生には謎が多かった。本来あり得ないはずの「稲葉リナ」との邂逅。その少女の記憶の流入。そして異世界への転生。その全てに関わったと思われるのが、金色の魔王だ。

 

「でもそれって、下手したらアレに乗っ取られるってことじゃ…」

「あ、だいじょーぶだいじょーぶ。向こうから魔術に必要な力を引っ張ってくる程度で、現状その心配はないって」

 

手をパタパタ振りながら言うアメリアに、リナはふと疑問に思う。

 

「ちょっとアメリア、どうしてそんなことがわかるの? アンタ達のカードを作った人がそう言ってたわけ?」

「あ、やっぱり気になる?」

「当たり前でしょーが!」

 

言いながらリナは、そう言えばこういう子だったなー、なんて思っていた。

 

「別に彼女たちが言った訳じゃないわ。教えてくれたのは…」

 

微妙な表情をしながらタメを作るアメリア。

 

「…ゼロスよ」

「ゼロス!?」

 

リナは驚愕の表情を見せる。

 

『…すみません、リナさま。そろそろわたしにも説明をお願いします』

 

ここに至ってリナは、サファイアが置いてけ堀になっていることに気がついた。

 

「あ、ごめん、サファイア」

 

一言謝って、サファイアへ説明する。

 

「うんと、[混沌の海]ってのはまさに混沌の空間、世界のすべてが生まれ世界のすべてが帰っていく場所、かな。ほら、この宇宙はなにも無いところから、ビッグバンによって誕生したってゆーじゃない? あれに似てるかもね」

『向こうの世界での認識でしょうか』

「…事実よ。まあ、それを知ってる()()はほとんどいないけど」

 

このことは、金色の魔王についての正しい知識がなくては理解できないのだが、ディルス王国の神官が口伝で伝えるものは解釈が間違っているため、正解にはたどり着けないのだ。

 

「…で、[金色の魔王]だけど、[魔王の中の魔王(ロード・オブ・ナイトメア)]って呼ばれたりもするけど、その正体は混沌の海の意志、つまり混沌の海そのものよ」

「へー、そうだったんだ」

 

このとおり、巫女であるアメリアをして、正しい知識を有していないのである。

 

『それではゼロスというのは…?』

「ゼロスは…。

金色の魔王の部下、赤眼の魔王(ルビー・アイ)が生み出した五人の腹心の一人、獣王(グレーター・ビースト)の直属の部下である獣神官(プリースト)。いわゆる魔族って呼ばれる存在よ」

『…敵ではないのですか?』

「敵よ。今回のことは何らかの目論見があってのことでしょうね」

 

実際リナは、前世において魔族の目論見に何度か巻き込まれている。

 

『ちなみにどの程度の強さなんでしょうか』

「うーん、ゼロスなら、あたし達が苦戦したセイバーを一瞬で消滅させられるでしょうね」

『…』

 

さすがに沈黙せざるをえないサファイアだった。

 

「さて、話を戻すけど、どうしてゼロスが関わってるわけ?」

「相手はゼロスよ。そんなの決まってるじゃない」

「「それは秘密です」」

 

アメリアに、リナが言葉を重ねる。

 

「やっぱりか」

「それでも一応、食い下がってはみたわ」

「ほう、それで?」

 

リナは身を乗り出した。

 

「『まあ、一種の保険ですよ。これ以上は本当に秘密です』だって」

「保険…」

 

ゼロスの真似をするアメリアの言葉に、一言呟き考え込むリナ。

 

「とりあえず、わたしが話せる情報はこれくらい…」

 

その時、アメリアの身体が光の粒子へと変換され始めた。

 

「どうやら時間みたいね」

「アメリア、黒化英霊のアンタもなかなか強かったわよ」

「そお? 正直、黒化状態の時の記憶って余りハッキリしてないから。

…でもリナ、()()()()()()()()()()()ね…」

 

そう言い残してアメリアは消え、ランサーのカードだけが残った。

 

 

 

 

 

(わかってるわよ、アメリア)

 

取り出した三枚のカードを見ながら、心の中で呟くリナ。

 

(アイツとの戦いは、多分アーサー王との戦いよりも厳しくなる…)

 

リナのカードを持つ手に力が入る。

 

「あ、こんな所にいた」

 

突然の声にリナはハッとする。視線を屋上の出入り口へ向けるとそこには。

 

「イリヤ」

 

少し心配そうな顔をしたイリヤが佇み、リナを見ていた。

 

 

 

 

≪イリヤside≫

校舎中を駆け回って、ようやくわたしはリナを見つけることができた。

 

「イリヤどうしたの?」

「どうしたの、じゃないよ。心配したんだから」

 

するとリナは、一瞬キョトンとした表情になって言った。

 

「あたし、なんかしたっけ?」

「何にもしてないよ。でも、昨日から様子がおかしかった」

 

昨日はあれで納得しちゃったけど、今日もまた雰囲気が変だ。業間休みの時も、時々思い詰めた表情をしてた。

でも、そこまで言うことが出来ない。だってそんなこと言ったら、昨日ミユに向けてた、あんな顔させちゃう気がしたから。

実際、今のリナは少し困った顔をしている。

…あーもう、仕方ないなあ!

 

「リナ、ケータイ借りるよっ」

「えっ、ちょっと、イリヤ!?」

 

わたしはリナの制服をまさぐり強引に携帯電話を奪い取ると、取り返そうとするリナから逃げ回りながら、急いで目的の人物(ひと)に電話を入れる。昼休みだし、着信ONにしてればいいんだけど。

 

『もしもし?』

 

わたしの望みは通じたらしく、電話は繋がった。

 

「お兄ちゃん!」

『えっ、イリヤか? どうしてリナちゃんの携帯から…』

「今日、リナ連れてくるから、料理教えてあげて! それじゃ!」

 

お兄ちゃんの疑問には答えないで、用件だけ伝えて電話を切る。

携帯をリナに返そうと振り返ると、リナは固まったまま動かなくなってた。あ、なんか珍しいものを見たかも。

 

「リナ?」

 

わたしが声をかけると、顔だけをぎぎぃ、とこちらへ向ける。

 

「イリヤ、一体なにを…」

 

動揺してるリナを見て、一瞬からかいたくなる衝動に駆られたけど、今はそれどころじゃないもんね。

 

「わたしが聞いてもリナは悩みを打ち明けてくんないよね」

「! それは…」

「責めてるんじゃないよ。きっと、それだけ複雑な事情なんだと思う」

 

自惚れかもしんないけど、わたしにも打ち明けられないことなんだと思うから。

 

「だけど、そんなリナは見ていたくないから。だからわたしは、わたしにできる方法で、少しでも気分転換してほしかったの」

 

リナは、ほんの少しだけ呆気にとられた顔をしたあと、溜め息をひとつして苦笑いを浮かべる。

 

「ごめん、イリヤ。気を遣わせちゃったわね」

「いいよ、別に。友達じゃない!」

「そっか。うん、そうだね」

 

今度はとびっきりの笑顔を見せた。うん、リナはこうじゃなくちゃ!

 

「あ、カード落としてるよ」

 

固まっちゃた時に落としたのかな? わたしはカードを拾い上げて、…ん?

 

「この二枚、色が違う?」

 

berserker、…バーサーカーとランサーのカード、今まで見たカードよりもピンクっぽい色してる。現にもう一枚、セイバーのカードはリンさん達のカードと同じ色だ。

 

「この二枚はあたしが回収してるやつよ。本来のクラスカードとは違うみたいね」

「へー、そうなんだ」

 

わたしはカードをリナに手渡しながらも、そのカードが気になってた。

確かにリナが言ったとおり、このカードはちがう。きっと、カードの存在意義そのものが…。

 

「イリヤ、何してんの。教室に戻るわよ」

「あ、すぐ行く」

 

わたしは()()()()()()()()()()()()出入り口へ向かう。

 

『しかしイリヤさんもやりますよねー』

 

なんだかあきれた声でルビーが話しかけてきた。

 

「友達を元気づけるのなんて当たり前じゃない」

『いえ、それは素晴らしいことですけど。リナさんを大好きなお兄ちゃんに近づけちゃっていいんですか?』

 

うん? それってどういう…。

 

「リナさん、士郎さんのこと少なからず想ってますよ? まだ、自分の気持ちに気づいてないみたいですが」

「ほえぇぇえ!?」

 

な、なんてことなの。リナがわたしのライバ…、あ、いや。

とにかく、最後にとんでもない爆弾が投下されました。

 

 

 

 

≪リナside≫

放課後、あたしは手を引かれながらイリヤの家へやってきた。中へ入るとセラさんがあたしにきつい視線を飛ばしてくる。

ただその視線は、今までよりもだいぶ和らいでいる気がした。どうやらこの間の話し合いが功をそうしたようね。

しばらく待っていると、士郎さんも帰ってきた。手には商店街で買ってきたと思われる、食材の入った袋がぶら下がっていた。

 

「急だったからね。今回はフライパンで出来る、簡単ブリの照り焼きにしよう」

 

ブリは四切れ、試食分とあたしん家への持ち帰り分だ。ちなみに食材費は後でちゃんと払ってる。

まずブリに塩を振り臭みを抜き、それを調味液に10分ほど漬け込む。

次に熱したフライパンにブリを置き、両面に焼き色をつける。

最後に漬けていた調味液をお玉に1〜2杯入れて、煮詰めながら照りを出す。

はっきり言って、メチャクチャ簡単だった。こんなんでほんとに美味しく出来るのかと思ったけど、身はふっくらとして、とても美味しかった。どうやら使った調味液、[煎り酒]のお陰らしい。

[煎り酒]は前に習ったから、今度は家で作ってみよう。

 

「今回は簡単レシピだったけど、今度は本格的なのにしようか」

「はい、お願いします」

 

あたしは元気に返事した。

 

 

 

 

 

深夜になり、こっそり家を抜け出したあたしはルビー、サファイアと共に三枚目のカードがある場所へと向かっていた。

そう、今夜はルビーも一緒である。

あたしがイリヤん家をお暇しようとしたら、

 

『今夜はわたしも連れていってください』

 

とか言ってついてきたのだ。なんだかもっともらしい理由を言ってたけど、ようは昨日のあたしの恥態を見られなかったのが悔しかったってことらしい。

 

『それにしてもリナさん、昼間よりずいぶんと元気ですね』

「いやー、あの時は我ながらずいぶんと悩んでたからねー」

『今夜のカードの事でしょうか?』

「まあ、そうね」

 

サファイアの疑問に首を縦に振り言葉を続ける。

 

「今度の相手、[セイバー]のカードの英霊はガウリイ=ガブリエフ。かつての旅の相棒で、超一流の凄腕剣士よ」

『それならばその剣筋も熟知しておられるのでは?』

 

軽く言ってくれるなぁ。

 

「言っとくけど彼、生前の、生身の人間でこの間のアーサー王と渡り合えるわよ。…ううん、彼だったら宝具の真名開放する隙すら与えないんじゃ」

『『な…』』

 

黒化してなかったらわかんないけど、あの時の彼女だったら勝つのはおそらくガウリイだろう。宝具の開放もタメが必要みたいだし。もちろん例外はあるんだろうけど。

 

『リナさん、あなたたちは本当に人間ですか?』

「失礼ねー。魔王相手にするよかよほどマシだってだけよ」

『『そうですか…』』

 

二人とも納得してくれたみたいだけど、きっと何かの比喩だと思っただろうなぁ。

普通、ホントに魔王と戦ったなんて思わない。あっさり信じられても、それはそれで嫌だけど。

 

「さて、イリヤから勇気ももらったし、必ず勝って帰るわよ」

『勇気ですか? 元気じゃなくて?』

「勇気よ」

 

そう。あたしはイリヤのお陰で思い出したんだ。強敵に立ち向かうときの心構えを。

あたしはイリヤ達のもとへ必ず戻る。だから、()()()じゃない、()()()で敵に挑むんだ。

あたしは決戦の場、その入り口、穂群原学園高等部の校門を前に強く心に誓った。




なまじガウリイの実力を知っているだけに、いつも以上に思い詰めていたリナでした。しかも秘密にしていることもあって、助けも求められないという。
リナが事実を打ち明けるのはいつのことか、って、一応決めてはいるんですが。

次回「金色(きん)の髪の剣士と世界を越えた想い」
見てくんないと、暴れちゃうぞ!
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