Fate/kaleid caster ドラまた☆リナ 作:猿野ただすみ
はっ!?
チュンチュン…
チーチチチ…
なんか、いろいろ恥ずかしいことがあった気がしたけど…。
「夢か…」
『おはようございます、イリヤさん! 昨晩はすごい友情パワーでしたね!』
…そんなわけ、ないよね。
『どうしたんですか、イリヤさん。昨晩はあんなにもリリカルでマジカルだったのに!
因みにリリカルでマジカルは、原作からのネタですね。リリなのじゃありませんよー』
「気持ちの整理があるからそっとしておいて」
って言うか、原作ってなに? あと、リリなのって?
『そんな時間ありませんよー』
わたしの心のツッコミに答えてくれるハズもなく。
ルビーの言うとおり、すでにそんな時間はなくって、目覚まし時計はわたしが本来起きる時間を報せている。
いつもと変わらない朝。昨日までの出来事が嘘のように爽やかで。
そう感じられるのはきっと、昨日までの自分と何かが違うからなんだろう。
うん、今日はいつもより心が軽い。
朝。気がつくとあたしは、豪華な部屋のベッドの上で寝ていた。ええと?
あ、そうか。あたしは昨夜、魔力の使いすぎで、バーサーカーを倒した直後にぶっ倒れたんだ。ということは、ここはエーデルフェルト邸の一室か。
コンコン!
扉を叩く音が聞こえる。
「どうぞ」
返事をすると、パジャマ姿の美遊が扉を開けて入ってきた。
「リナ、目が覚めたんだね。体調はどうなの?」
「あー、まだダルいけど、ご飯食べればすぐに良くなるわよ」
ご飯を食べて魔力回復。やることは
「ところで、ルヴィアさんやオーギュストさんは?」
そう、普通なら執事であるオーギュストさん、場合によっては当主であるルヴィアさんが一緒に現れるものだと思うのだが。
それにまだ早い時間とはいえ、美遊がパジャマ姿のまま、というのも…。
『ルヴィアさまたちは、ここにはいらっしゃいません』
「はい?」
答えてくれたサファイアに、あたしは間抜けな返事を返してしまった。
「ええっと、一体どーいうこと?」
「それなら昨夜の、リナが倒れてからのことを話した方がいいと思う」
なるほど。たしかにあたしも気になってはいたし、ね。
そして美遊は昨夜のことを語りだした。
わたしたちの攻撃によって敵、バーサーカーを撃破し、無事にカード回収を終えることができた。
ドサッ!
「「リナ!?」」
突然リナが倒れ、わたしたちは同時に声をあげる。
凛さんが駆け寄り、リナの様子を診た。
「大丈夫、魔力を限界まで使ったせいで気を失っただけよ。
ま、あんな強力な術を宝具に上乗せして放ったんだもの。当然の結果ね」
「しかし、この子の魔力量はどうなっているのかしら」
確かに。イリヤ程ではないにしても、この魔力量は異常だ。
「…
凛さんの言葉に一同が頷く。
『それでは参ります。
限定次元反射炉形成
鏡界回廊一部反転
わたしたちは
「[アーチャー]、[ランサー]、[ライダー]、[キャスター]、[セイバー]、[アサシン]、そして[バーサーカー]…。すべてのカードを回収完了。これでコンプリートよ」
カードの確認をしていた凛さんの言葉に、一同はひとつ、息を吐く。
ルビーがまた花火を上げようとしてたけど、それはイリヤが必死に止めていた。
「イリヤ、美遊。勝手に巻き込んでおいてなんだけど、あなたたちがいてくれてよかった。もちろん、そこで気を失っているリナもね。
わたしたちだけじゃ、たぶん勝てなかったと思う」
わたしとイリヤの間で横たわっているリナへと、視線を移して言う凛さん。
「三人とも、最後まで戦ってくれてありがとう」
凛さんにお礼を言われてわたしは、なんだか嬉しようなはずかしいような、変な気分がした。
「それじゃ、このカードはわたしが
そして、そこで事件は起こる。
凛さんが手にしていたカードを、ルヴィアさんがひょい、と横から奪い取った。
バババババ……!!
大きな音を響かせ、上空からヘリコプターがビルの屋上に接近し、縄梯子を下ろす。
「ホーーーッホッホッホ!!
最後の最後に油断しましたわね!
ご安心なさい! カードは全て
縄梯子に捕まり、凛さんを
「手柄を独り占めにする気か、このー!」
魔術で身体能力を極限まで強化した凛さんが、ルヴィアさんの後を追いかけていく。
わたしとイリヤは、その様子をただ眺めていることしか出来なかった。
…まったく、何してんのよ。あの二人は!
「それで、オーギュストさんがいないってのは…」
「ヘリコプターを操縦してたのが多分、そう。わたしの時もそうだったから」
わたしの時って…。あ、空飛ぶ特訓の時か。
しかし、ヘリの操縦も出来るオーギュストさんて一体…。
「ん? それじゃあ、あたしをここに運んだのは…」
「門の前まではイリヤが、そのあとはわたしが連れてきた」
あー、やっぱそうなるよね。
「なんか、余計な迷惑をかけちゃったみたいね」
「迷惑じゃない。だって、リナは、……友達、だから」
頬を染め、視線を逸らす美遊。こんな姿、クラスの男どもが見たら確実にハート鷲掴みだわ。
…と。
「そーいや、ここでゆっくりしてる訳にもいかないわね。いちど帰って、制服に着替えて…」
「それなら大丈夫。さっきリナの家に電話を入れたら、リナのお父さんが必要なものを持ってきてくれるって」
はやっ! なに、その要領のよさは? あたしが言うのもなんだけど、アンタ、ほんとに小学生!?
…まあ、それに関しては今更か。
そうね、あとは…。
「えーと、最後に確認だけど、美遊がいまだにパジャマ姿なのは、ルヴィアさんたちがいないのが原因なわけ?」
ぴくり
美遊が小さく反応して、再び頬を染める。
「…少し、だらけてしまって」
『たまには宜しいと思います。その方が子供らしいかと』
どうやらサファイアも、美遊の子供らしからぬ態度には思うところがあったらしい。
「…そうね。サファイアの言うとおり、たまにはいいんじゃない? しょっちゅうだったら、ただだらしないだけだけど」
「…うん」
美遊が恥ずかしそうに、小さく頷く。
くうぅっ! なんだ、この可愛らしい
「そ、それじゃ、朝食を作りましょうか!」
このままだとあたしも当てられそうなので、無理矢理話を変えることにした。
「え、それならわたしがすぐに…」
「あー、いいのいいの。泊めてもらったお礼みたいなもんだから」
そう言いながらベッドから降りたあたしは、扉に向かって歩きだしたが。
くいっ
あたしの右腕が引っ張られた。振り返ると、美遊が少し顔を俯かせ、上目遣いに聞いてくる。
「わたしも、手伝っていい?」
「別に構わないけど…」
あたしは可愛い反応するなと思いつつ、同時に嫌な、予感めいたものを感じた。
いや、気のせいだよね、気のせい…。
「なあイリヤ。あんたたち、昨日はケンカしてなかったっけ?」
教室でスズカが聞いてきた。うん、言いたいことはわかるよ。実際はケンカじゃなかったんだけど、昨日はミユに会わせる顔がなくて、一言も喋ってなかったからね。
ところが今朝は、ミユがわたしの右腕に左腕を通して、べったりと寄り添っている。
「えーと、昨日リナが仲裁に入ってくれて、仲直りしたってことで…」
「なるほど。それで反対側にはリナが」
そう。ミユは右腕を、リナの左腕に通している。
リナがひきつった笑顔を見せているけど、きっと今のわたしの顔も似たような感じになってるんだろうなー。
「二人に対してなんというデレっぷり…!」
「イリ子にリナ太め! 俺たちに内緒で、同時に美遊ルート攻略しやがったな! この落とし神!!」
「ま、まあ、仲がいいのはいいことだよ」
ナナキとタツコが、急速にわたしたちの仲が良くなったことにやや錯乱して、ミミがそれをとりなすようにしている。
うん、確かに仲良しなのはいいことなんだけどねぇ。
あとタツコ。わたしはギャルゲーマーじゃないからね。ゲームは好きだけど。
「まーいいや!
ミユキチも丸くなったってことで、今後とも仲良くしていこーぜっ!」
タツコがミユをバシバシ叩きながら言ってたけど。
「どうしてあなたと仲良くしなくちゃいけないの?」
ぴしぃっ!
今、あきらかに、空気が凍る音がした。
「わたしの友達はイリヤとリナだけ。あなたたちには関係ないでしょう?
もう二人には近づかないで」
「う…」
う?
「うおおアアアァァーッ!!」
タツコが泣いた!? この人でなし!!
って、そうじゃなくって!
「ちょっと、ミユーッ!?」
「龍子泣かせちゃダメじゃない!」
わたしとリナが、ミユに詰め寄ったけど。
「何を怒ってるの?
わたしの友達は、生涯イリヤとリナだけ。他の人なんてどうでもいいでしょ?」
いや、重いからそれっ! 友達ってそういうもんじゃないからっ!!
「オギャアアアァァァ!!」
タツコもマジ泣きしだしたし、もうカオスだよ!?
ん? リナ!?
なんか顔色が悪いんだけど…。
わたしとリナの視線が合う。するとわたしを教室の隅へ引っ張っていき、小声で言った。
「(イリヤ。美遊がマズイわよ)」
「(そりゃあ、クラスメイトにあんなこと言ったら…)」
「(イヤ、そうじゃなくて…)」
リナは一旦言い淀んで。
「(アレ、友情と恋愛感情がゴッチャになってるわよ)」
…え、なに? 言ってる意味がよくわかんないんだけど?
『(要するに、美遊さんはお二人にLOVEってことですね)』
ルビーが言葉を挟んできた、って。
はうぇえええ〜!?
ちょっと、それって大事じゃない!?
「(多分まだ、履き違えてるだけよ。でも、今のうちに何とかしてあげないと)」
「(う、うん。健全な友達関係を築くためにも!)」
わたしは、多分リナも、ミユとは友達であって、恋人同士になりたいわけじゃない。
うう、なんだろう。面倒ごとが増えた気がする。
ひょっとして、本当に大変なのはこれからなんじゃ…。
はぁぁぁぁ……
わたしたちはひとつ、長いタメ息を吐いた。
郊外に広がる森の中。パチパチ…と、何かが燃える音がする。
「は…?
どういう意味ですか、大師父」
凛はケイタイからの言葉に思わず聞き返していた。
『そのままの意味じゃ』
電話口から聴こえる宝石翁の言葉は素っ気なく、しかしその声は、なにかを楽しむかのようなニュアンスを含んでいる。
『カード回収はご苦労じゃった。これで冬木市の地脈も安定しよう。
約束どおり、お前たちを弟子に迎えるのもやぶさかではない。
だが、お前たちには一般常識が足りんようだ』
「なっ…」
『幸い日本は「和」を重んじる国じゃ。
…留学期間は一年。喧嘩で講堂をぶち壊すような性格を直してこい。
ついでに、あの小さな魔道士の面倒も見ておけ。
弟子にするのはそれからじゃな』
それだけ言うと、宝石翁は電話を切ってしまった。
「ふッッッざけんなーーーッッ!!」
凛は大声で叫びながら、持っていたケイタイを握り潰した。
クラスカードを手にし、煤汚れた凛の後ろでは撃ち落としたヘリコプターが燃え盛り、すぐ傍には気を失ったルヴィアの姿が。
結局、彼女らの日本在留は確定した。
ややこしくて騒がしい日々は、まだまだ続いていく。そう、物語はまだ、始まったばかりなのだ。
ルビー「リリなのじゃありませんよー」
いや、原作はリリなのからネタを持ってきたんだと思うんですけどね?
美遊のユリネタ、ようやく出せました(笑)。
まあ、美遊はあんまり拗らせませんよ? 精々原作でのレベルです。拗らせる人は他にいるので。
さて、次回から数話、短編を書いてから第二部に入ります。というわけで。
次回、すぺしゃる1「或る日のリナ −放課後徹底大追跡−」
見てくんないと、暴れちゃうぞ!