Fate/kaleid caster ドラまた☆リナ 作:猿野ただすみ
『我は放つ、光の白刃!!』
−−−ズババァァ…ン!
「…ふみゅ。思いの外、面白い作品ね」
日曜日の午前中。あたしは借りたDVDの観賞をしてるんだけど。
…実は今見ているアニメ、レンタルショップでタイトルをみかけたとき、思わず手に取ってしまった作品なのだ。
【魔術士オーフェン】
タイトルでもわかるように、魔法少女ものではない。ないんだけど、なんか気になったのだ。
…なんでだろ?
まあ、面白い作品だったからいいけどね。
そして、ちょうど一話目が見終わった直後。
−−−あ、メールっぽい…
凛さんからメールが届いた。何事かとメールを開いてみると、エーデルフェルト邸へ来るように、という指示。
うわー、なんだか行きたくないなー。
ただ、文末に、「来なければ、諦めます」って書いてあるのがなぁ。イリヤへの手紙と似てるんだよなぁ。絶対これって「殺す」って打ち込んでから消してるよねぇ。
…仕方がない、行くか。
エーデルフェルト邸の前までくると。
「あれ、リナ?」
ちょうど出かけようとしたところなんだろう、イリヤが家から出てきた。
「なに、また呼び出されたの?」
「あたり」
言ってあたしはタメ息を吐く。
「そっかぁ」
イリヤは遠い目をしながら屋敷の方を見ている。
「なに、どうかしたの?」
「うん、まあ、驚くとは思うけど、暖かい目で見てあげてね?」
イリヤは言葉をぼやかしたまま、この場を去っていった。
なんだろう。あの、憐れみに満ちた表情は。…そんなの、行ってみりゃわかるわね。
あたしは門を通り過ぎ、扉の前に立つ。なんだかもう、これが当たり前の行動になってきたような。
呼び鈴を鳴らししばらく待つと、扉が開き、現れたのはメイド服姿の美遊。そして、…え?
「凛さん!?」
同じくメイド服に身を包む、凛さんだった。
「凛さん、どうして…?」
『ルヴィアさまの乗るヘリコプターを落とすのに、宝石を全て使いきってしまわれたそうです』
あー、宝石のない宝石魔術師って、意味ないもんね?
「更に雇われたのち、喧嘩の末にルヴィアさんを殴打した壷の弁償代も上乗せされてる」
うぉい、ここにある調度品って、どれも値打ちモンだぞ。思わずやっちゃったんだろうけど…。
「凛さん。そのうっかり、なんとかしないといずれ命取りになるんじゃあ…」
「くうっ、子供に諭されたっ!」
凛さんは右手に拳を作り、強く握りしめながら言った。
「ッ…! まあ、いいわ。
とりあえずついてきて。ルヴィアも待ってるから」
ここは、さすが魔術師といったところか。気持ちの切り替えが早い。
あたしは凛さんの後をついていく。
…おや。いつもの接客室じゃない?
「さ、この先よ」
そう言って扉を開けた先には、地下へと続く階段が。
「これって、魔術の研究施設?」
「そう。わたしたちは魔術工房って呼んでいるわ。
もっとも、ルヴィア個人の工房は別にあるはずだけど」
そりゃそうだ。個人の研究を、簡単に人目にさらしたりするハズがない。それは、魔道も魔術も変わりはないだろう。
あたしたちは階段を降りていく。すると、いつもの接客室よりも少し小さな部屋に出る。中央には作業テーブルがあり、それをはさんだ向こう側にルヴィアさんが立っていた。
「お待ちしていましたわ、
「…わざわざ工房まで連れてきて、なんの用なの?」
「リナ、まずはこれを」
言って、凛さんが近くの棚から出したもの。それは、あたしが改造した黒鍵だ。どうやら鏡面界脱出の時に回収してくれてたらしい。美遊が回収してくれたのはカードだけだったからなー。
しかし、その黒鍵に嵌め込まれていた四つの、硝子製の呪符は全て砕け散っていた。
「あんた、護符で礼装の強化なんてよく考えついたわね」
「…以前、魔力の増幅について研究したことがあったから」
まあ、前世の話だけどね。
「ところで黒鍵に嵌め込まれていた護符は、本当ならば宝石を使って造られるものでは?」
ほう。さすがは宝石魔術師、そこに気づいてたか。
「そうよ。硝子じゃ出力に耐えきれなくて砕けちゃったみたいだけど、あたしは繰り返し使えるアイテムとして設計してるから」
硝子の呪符をその都度造るなんて、非効率この上ない。
おそらくまだ、
あたしが思案に耽っていると。
「そこで提案があるのですけど」
ほ?
「我々が素材諸々を提供しますので、宝石の護符を造って戴けないかしら? それをこちらで販売させていただきますわ。
報酬は…、一般家庭の子供に現金や貴金属は不味いでしょうし、この工房とこちらで用意した素材を自由に使っていい、というのはいかがかしら?」
ほほう、なるほど。確かに提案としては悪くない。
はっきり言って、こっそりアイテム作りは大変なのだ。
「でも、これってルヴィアさんだけの考えじゃないでしょ。多分、凛さんも一枚噛んでるわよね?」
「あ、わかった?」
「とーぜん。だってルヴィアさんなら、一般家庭の子供でも平気で現金支給しそうだもの」
あたしの言葉に笑いを堪える凛さんと、苦虫を噛み潰したような顔をするルヴィアさん。一応自覚はあるみたいだ。
「実をいうと大師父から言われたのよ。『あの小さな魔道士の面倒も見ておけ』ってね」
そうか。それでギブ&テイクっていう名の等価交換を提示したわけね。
「ま、あたしとしてもありがたいし、その条件を飲みましょ。
…ただ、一つ訂正があるんだけど、黒鍵に嵌め込んでたのは護符じゃなくって呪符よ」
「「え?」」
まあ、驚くのも無理はない。護符はその名の通り「お守り」みたいなものだけど、呪符は「強化」だ。
「強化」の性質上、どれほど能力が弱くても、ある程度以上の魔力を注がなくてはならない。
硝子という脆い素材であれだけの呪符を造ったのだ。驚いて然るべきだろう(自慢!)。
ま、呪符の配置で更に能力の補強はしてんだけどね。
「ま、まあ、よろしいですわ。ここからは細かな契約内容の取り決めをしてまいりましょう」
こうしてあたしたちは雇用主と被雇用者という間柄となった。
それから三日が過ぎ、あたしはエーデルフェルト邸へとやって来たのだが?
「リナ、あんたすごいじゃない!」
「まさかこれ程とは思ってもみませんでしたわ!」
は? いったいなんの…。
「あんたが試供品として提供してくれた硝子の護符、わたしたちも身につけてたんだけど」
「
おいおい、ガンドってたしか、呪いを魔力の弾丸として指から撃ち出す、とか言ってなかったっけ? そんなもん誰にって、いつもの喧嘩か。
「護符は砕けたけど、硝子製っていうのを考えるとかなり優秀な礼装よ」
「事実、試供品を身に付けた魔術師からは、なかなかの評判をいただいてますわ」
いやいや、こんな短期間に護符のお世話になってるって、どんな魔術師たちに送ったの!?
「そんなわけで宝石の護符、期待させてもらいますわ、
…なんか、ちょっと早まったかもしんない。
まあ、それでも契約は契約。別に悪事に荷担してる訳じゃないし、気にしたら負けだ。
あたしは工房まで来て、家から持ってきた
特に薬品に関してはかなり手間取った。ただの小学生じゃ、薬品の入手なんて簡単にはできないので、天然素材に魔力的付加を加えて作り上げたのだ。使った市販薬は抽出素材のエタノールと防腐剤としてグリセリンくらいだろう。
「さて、始めますか」
あたしは早速、作業にとりかかった。
一時間後。あたしは五つの護符を完成させていた。素材はルビー。大きさは大人が親指と人差し指で輪っかを作ったくらいの大きさ。
前世では拳大のものを造ってたけど、こっちでのニーズにあわせて宝飾品にしやすいサイズにしたこと、そしてあたし自身の知識の蓄積による、性能はそのままに小型化することに成功していたのだ。
コツ、コツ…
そこへ階段を降りてくる足音。
「作業ははかどっていますか?」
顔を覗かせたルヴィアさんがあたしに訊ねてきた。
あたしは護符の一つを掴み、ルヴィアさんに投げ渡す。
「まあ、透明度の高いルビーに
当然! 前世が商売人の娘だから、そういったことにはうるさいのだ。
「一応言っとくと、ある程度の呪いの無効化と災厄よけ、あとほんのわずかだけど、火属性への耐性の向上効果があるわ」
「属性に対する耐性まで!」
「赤い護符や呪符には勝手に付加されんのよ。まあ、オマケみたいなもんね」
向こうじゃこんなことは無かったんだけどね。
この世界の特性なのか、はたまた調合した薬品の影響なのか。とにかく、あたしの持つ火の属性が反映されてるみたいなのだ。
もちろん、わざと属性を消したり付加させたりも出来るけど、付加に関して言えば、労力のわりに効果が低いので特に目的でもない限りわざわざやったりはしない。
「さて、今週のノルマはあと五つね。そっちは金曜日に仕上げるから、こっからはあたし自身の研究に没頭させてもらうわ」
「ああ、それでは
「うん。一時間したら誰か知らせに寄越して。それで今日の作業は終わりにするから」
「わかりましたわ」
そしてルヴィアさんは工房を出ていった。
そして二日後の金曜日。借りたDVDを郵送返却して、エーデルフェルト邸へやって来たら。
「よっしゃあ! このままいったれー!!」
「人格が崩壊してますわよ、
なんだか、凛さんが異様なテンションになってんだけど。
てか、いまの凛さんの声、なんか頭の端っこに引っ掛かるものが。
いや、今は関係ないことか。それよりも。
「美遊。これってなんの騒ぎなの?」
あたしは迎え入れてくれた美遊に尋ねた。
「リナが造った護符の注文が急増してる」
なんと。ルヴィアさんはまだ、試供品の発送しかしていないはずなのに。
『なんでも、評判が評判を呼んでいるとのことです』
いやー、それは有りがたいんだけどさ。
「えーと、ルヴィアさん?」
「あら、
「ああ、それはいいんだけど…」
「リナ!」
がしっ!
あたしに気づいた凛さんが、あたしの両肩を掴む。
「あんた、護符の生産量を倍に増やしなさい!」
「はあ!?」
なに言ってんの!?
そう思って凛さんの顔を見ると、その瞳が「
「あんたの護符の売り上げのうち0.5%が、わたしの借金の返済に充てられてるのよ!」
あー、そういやそういう契約になってたっけ。凛さんが持ち掛けた話だから、その見返りってことで。
…でも。
「やだ」
「なっ!」
あたしのストレート過ぎる一言に、二の句が継げられなくなる凛さん。
「生産量を増やしたら、あたしの身体が持たなくなるわよ」
今のあたしは小学生。親の庇護を受けている身としては、食欲に任せての魔力回復には限界がある。
…ただでさえ、あたしのせいでエンゲル係数がはねあがってんのに。
それに、魔力が回復しても、やはり疲労は蓄積される。そうなれば、魔術行使に必要な集中力だって低下するのが必然だ。
術の暴発はないにしても、製造する護符の品質に問題が出るのは目に見えている。そんなもの出荷したら、あたしだけでなく、エーデルフェルト家の名にまで傷をつけてしまう。
…これくらい、普段の凛さんなら気づきそうなもんだけど、どうやらカネに目が眩んで正常な判断が出来ないらしい。
「なに言ってんの!? 今こそまさに、一攫千金のチャンスなのよ!!」
…ほらね?
「いい加減になさい、
「うるさい! あんたに、お金の遣り繰りに四苦八苦してる宝石魔術師の苦労なんて、わかんないわよ!!」
あたしは、前世の経験で一応わかる。わかるけど、ことはあたしに関わることなので賛同はしない。
あの頃は、趣味を兼ねた盗賊いぢめで懐を潤すことも出来たしね。
「まったく、やはり言葉ではわからないおサルさんのようですわね!」
「やろうっての?」
二人が宝石を構える。
悲しいかな、凛さんの宝石が傷物の安物だったりするが。
だがここは。
「ちょい待ち。雇用主が口出すのはまだ早いわよ。
ここはあたしが
「
「へえ、わたしとやろうっていうの」
すうっと、凛さんの目がすわるのがわかる。
「リナ、大丈夫なの?」
「さあね。ただ、負けるつもりはないわ。
それに、実をいうと凛さんとは一度
こっちの世界の魔術師の実力が知りたいってのもあるけど、それだけじゃなくて、凛さんだからこそ闘いたいのだ。
ぶっちゃけると凛さんって、結構あたしと似てるところがある。お金にうるさかったり、うっかりなトコがあったり。
そういったところでドジを践まれると、自分の悪いとこを鏡で見せつけられてるような気分になってくる。所謂、同族嫌悪とゆーやつだ。
それでも普段はそんなこともないんだけど、さすがに今回はちょっとばかし目に余ったのである。
「さてと、凛さん。宝石の貯蔵は十分かしら?」
「生憎と屑石が数えるほどしか無いけど。それでもあんたと闘うには充分よ」
あたしの皮肉をさらりと受け流す。
「美遊。念のためどこかに避難するか、転身して防御結界でも張っていて。もちろんルヴィアさんも」
「わかった」
「当然ですわ」
そう言って二人は壁際まで下がり、防御結界を展開した。
「じゃあ始めましょうか、凛さん?」
「ええ。負けても恨まないでよね、リナ!」
凛さんは言い終わるのと同時に、二つの宝石を投げつける。
「
おい、こんな場所でそんな術使うか?
「
まあ、読んでたけど。
通常より爆炎の威力が落ちてたこともあり、風の結界で爆風を防ぐ。炎の熱は、ちょっとした裏技を使ってみた。
と、凛さんがあたしに向かって体当たりをかます。身体強化を施したんだろう、凛さんの体は風の結界を突き抜ける。
あたしは防御姿勢をとっていたから大したダメージはなかったけど、唱えていた烈閃槍の詠唱が途切れてしまった。
凛さんはバックステップを踏みながら、追い討ちをかけてくる。
「
宝石から生まれた風があたしの体を絡めとり、動きを封じられてしまった。
凛さんが左手の人差し指を立ててあたしへと向ける。
「リナ。術の詠唱の長さが仇になったわね」
その指先に魔力が集中していき。
「ガンド!!」
呪いの弾丸が、あたしめがけて撃ち出された。
ばぢぃっ!
「なっ!?」
凛さんが驚きの声をあげる。
まったく、そのうっかりもいい加減にしてほしいものだ。
誰が造ったと思ってるんだ、硝子の護符。
「ちっ!」
凛さんが宝石を投げようとするけど、こっちのが速い!
びっ!
指で弾いた黒い硝子玉が、凛さんめがけて飛んでいく。凛さんは避けようとするけど。
パチン!
あたしが指を鳴らすと同時に玉が弾け、黒い靄が凛さんを被う。[
さっきの爆炎弾にしてもそう。風の結界の発動と一緒に[弱冷気の魔法]を込めた硝子玉を3つ、使用したってわけだ。
「な、なに!?」
凛さんが一瞬パニックになっている間に、あたしは術を組み上げていた。
「
力あることばと共に黒い靄は消え、発動途中にあった宝石の魔力も消失する。
そしてあたしは。
ごりゅッ!
いい音を立てて、あたしの肘が凛さんの顔面に決まった。
そのまま凛さんは気を失って倒れてしまう。うみゅ。
「ビクトリー!」
あたしは美遊とルヴィアさんに向かってVサインをして見せた。
「う…、あれ? わたしは…」
ようやく凛さんが目を覚ます。
ちなみに凛さんのケガは、気を失っている間にあたしが「
「凛さん、あたしの勝ちね!」
「あ…」
あたしの言葉に、何をしていたのかを思いだし悔しそうな顔をする。
「…仕方がないわね。今回は諦めましょう」
タメ息を吐いて言う凛さん。でもね?
「残念だけど、それだけじゃ終われないのよねー」
「え?」
「周りを見てごらんなさい、
ルヴィアさんに言われて周りを見渡す凛さん。
その目に映ったのは、凄惨たる状況である。広間の調度品や美術品のいくつかが、修復不能なほどに破壊されていた。
「ええと、これって…」
「全て、貴女の魔術によって引き起こされたものですわ」
そう、あたしは物理的にダメージのある術は、意識して使わなかったのだ。
「フフフフ…、どうやらタダ働きの期日が延長されたようですわね、
「し、しょんなあぁ」
あまりのことに茫然自失となってる凛さんを放っておいて、あたしは工房へと向かった。
いやー、なんだか他人事じゃないってゆーか、明日は我が身みたいな?
なにしろ凛さんは、鏡に写った自分だかんね。それに思い当たったら思わず逃げてしまった。我ながら情けない。
…ちなみに凛さんの借金は1740万円になったそうだ。
あー、くわばらくわばら。
とりあえず、リナ作のアイテム回りの設定は独自のものです。
次回、すぺしゃる3「ねーちゃんと リナが慕う
見てくんないと、暴れちゃうぞ!