Fate/kaleid caster ドラまた☆リナ   作:猿野ただすみ

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今回は短い話を三本。各話のタイトルは単なるお遊びです?


すぺしゃる4・ドラまた☆リナ おむにばす

衛宮士郎

の陰謀

 

朝、6時30分を少し回ったくらい。俺、衛宮士郎はとある家の前に立っている。

塀にかこまれ、大きく立派な門を構えた日本家屋。これだけ見れば、かつてはこの地域の豪族だったって言っても通用するだろう。大きく「藤村組」なんて書かれていなければ。

そう、「藤村」である。

 

「ごめんください!」

 

俺は門の前から大きく声をかける。暫くすると門が開き、一人の男が顔を出す。

 

「おや、衛宮さんとこの士郎さん」

「朝早くからすみません。藤ねえ、じゃなくて藤村先生に用があって来ました」

「そうですか。あ、どうぞ御上がりください」

「それじゃあ失礼します」

 

俺は遠慮なく上がらせてもらう。通してもらった客間で待っていると。

 

「おう、久し振りだな」

「あ、雷画さん、お久しぶりです」

 

藤村先生の祖父、藤村雷画(ふじむら・らいが)さんがやって来た。

 

「それで、今日は何の用だ?」

「はい、じつは…」

「やっほー、おまたせ士郎!

…ってお祖父ちゃん、どうしてここに!?」

 

騒がしく現れた藤村先生が、すでに俺と会っている雷画さんにビックリしている。

 

「いや、久し振りなもんで挨拶をな」

「ははは…。あ、藤村先生、おはようございます」

「ちょっと士郎、なんでいつもどおり『藤ねえ』じゃないのよ」

「通学途中に寄ったから、一応場をわきまえてだよ。『藤ねえ』はそういうところ、気にするだろ?」

「むぅ、確かに、そーだけど」

 

普段の砕けた調子で言うと、藤村…、いや、藤ねえも納得はしてくれたみたいだ。

 

「…それで『衛宮くん』はどうしてここに?」

「はい、昨日は急用で約束が守れなかったから、お詫びにと思って」

 

そう言って俺は、持ってきた風呂敷の包みを差し出した。受け取った藤ねえは風呂敷を解く。そこには、俺が作ったぼた餅が複数のタッパーと、一つのお弁当箱に詰められて入っていた。

 

「お弁当箱に入ってるのが先生の分で、後は藤村組の皆さんに」

「わあ、士ろ…げふん。衛宮くん、ありがとね」

 

藤ねえは満面の笑顔をうかべて喜んでいる。けど、俺の用事はそれだけではない。

 

「喜んでもらえて何よりです。

…ただ、部活の指導で生徒にあたるのは、さすがに如何なものかと」

 

ピシィッ

 

一瞬にして辺りの空気が凍りつく。

 

「…おい、その話聞かせてくんねぇか?」

 

雷画さんが有無を言わせぬ雰囲気を醸し出して言う。俺は、自分が原因だからと前置きして、昨日電話で桜から聞いたことをかいつまんで話した。

 

「…ほう、そんなことが」

「あーっと、わたしそろそろ出勤の準備をしなくちゃ!」

「大河よ」

 

雷画さんがドスを利かせて。

 

「帰ったら、話がある。覚悟しとけ」

「ひいぃっ」

 

普段は孫に甘い雷画さんがにらみを利かせて放った言葉に、藤ねえはムンクの「叫び」のような表情で悲鳴をあげた。

 

「あー、じゃあ俺も学校があるので失礼します」

 

俺はそう言って席を立った。

 

 

 

 

 

玄関で靴を履いていると、雷画さんがやって来る。

 

「おう、今日はわざわざ済まなかったな」

「いえ、俺のほうこそ朝早くに突然お邪魔して、すみませんでした」

「わざわざ、この時間にしたんだろう?」

 

あ、やっぱり雷画さんは気づいてたみたいだ。

この時間帯に来れば、藤ねえには覚悟を決める時間が、雷画さんは冷静になる時間が持てる。

俺は雷画さんに、軽く笑顔だけを返した。

 

「…ああ、それからあの家はうちが管理してるが、必要ならいつでも言ってくれ。所有者はそちらのままにしてあるからな」

 

あの家というのは十年前に、オヤジが雷画さんから購入して一年ほど暮らしていた武家屋敷のことだ。

結局は今の家に移り住んだんだけど、藤ねえとはその頃からの知り合いだ。まあ、さすがにイリヤは覚えてないみたいだけど。

 

「ありがとうございます。オヤジが帰ったら、そう伝えておきます」

 

そう言って俺は、藤村組をお暇した。

 

 

 

 

 

それにしても今回は、リナちゃんに感謝だ。

じつは桜からの電話のあと、リナちゃんからも連絡が来た。桜から話を聞いて電話をくれたらしいんだけど、そのとき俺は、思わずリナちゃんに相談してしまったのだ。藤ねえに反省してもらう方法を。

はっきり言って俺がいくら言っても、藤ねえは反省した素振りしか見せないだろう。だから他の人の意見がほしかったんだ。

イリヤや桜が、リナちゃんは時々年上みたいな気がするって言ってたけど、今回その意味がわかった。リナちゃんがたてた計画は正に的を射ていたのだから。

やれやれ、今度リナちゃんに何かお礼でもしなくちゃな。

俺はそんなことを考えながら、学校へと登校するのだった。

 

 

 

 

 

稲葉リナ

の溜息

 

穂群原学園小等部。あたし、稲葉リナは体育の授業を受けていた。

 

「いっけえ、どりぃむぼぉる!」

 

すぱぁん!

 

よくわからない掛け声とは裏腹に、イリヤの投げたごく普通のストレートがキャッチャーミットに吸い込まれる。

本日はチームを別けてのソフトボール。ピッチャーのイリヤが二回表を終わって六連続三振を築いている。けど、あたしも負けてはいない。打たせて取るピッチングで一回裏を三者凡退で抑えてる。

しかしここで、一つめの障害が立ちはだかる。

美遊・エーデルフェルト。ルヴィアさんの義妹。その身体能力はイリヤをも上回る。

バッターボックスに立つ美遊に対してあたしは、緩急をつけた投球で上下左右のコースギリギリをつく。

…どうでもいいけど、審判役の美々の見極めがなかなかいい。藤村先生みたいな勢いはないけど、地味にいい仕事をしてくれる。

さて、2ボール・2ストライクまで追い込んだけど。

 

「…うん、大体わかった」

 

美遊が呟いた。ふむ、どうやら今まで、球筋やあたしの癖を見極めていたようだ。よし、それなら…。

あたしは内角ギリギリ、美遊の胸元近くに投げ込む。

 

キィ…ン!

 

美遊は腕をたたみ、上手いこと球を打ち返した。

 

パシィッ!

ずざあぁぁ

 

ライナー性の当たりを、あたしは飛び付きながらダイレクトにキャッチ、そのまま地面をスライディング。うん、いたい。

 

「嘘、どうして…」

 

美遊が驚きながらあたしを見る。でも実は、たいしたことじゃないのだ。

あたしの後ろ、二塁を守ってるのはタッツンこと龍子。いわば守備の穴になっている部分だ。

あたしのコースをついた投球で、長打を切り捨てていた美遊はその穴をねらい、捕球のしにくい、グラブをしていないあたしの右側へ打ち返したのだ。

けど、あたしはそれを読んでいた。ルビーが言うところのコチコチの頭である美遊だからこそ、想定どおりの場所を想定どおりに打ち返してくれたのだ。

まあ、それなりの代償もあったけど。

 

「いつつ…」

「リナ、膝から血が…!」

 

駆け寄った美遊が緊張した声をあげる。

 

「ああ、こんなのたいしたこと…」

「だめよ、稲葉さん。きちんと保健室へ行ってきなさい」

 

藤村先生が優しい声で言ってきた。うわあ、らしくねー。

おそらく、今晩待ち構えているだろうお説教タイムに、恐れをなして畏縮してんだろう。あたしの入れ知恵だけど。

まあ、とはいえ仕方がない。人前で治癒の術をかけるわけにもいかないし。

 

「わかりました。保健室へ行ってきます」

 

 

 

 

 

考えてみると、あたしって保健室に行ったことないのよね。ウチのクラス連中、あたしも含めて病気知らずの怪我知らずだからなぁ。多分あたしが初めてご厄介になるんじゃないかな?

 

「失礼しまーす…」

 

念のため、声のトーンを落として挨拶をする。と?

 

「あら、元気そうね。帰ってもいいわよ」

「うぉいっ! あたしは一応怪我人よ!!」

 

思わずつっこむあたし。

怪我した足を前に出し、膝っ小僧の擦り傷を見せた。

 

「…これくらいなら、唾でもつけとけば治るでしょう?」

「アンタ、まがりなりにも養護教諭(保健の先生)でしょうが!?」

「ここは保健室よ。もう少し静かにできないものかしら」

 

うあっ、この女すげぇムカつく!

 

「…まあ、いいでしょう。消毒くらいはしてあげる」

 

なんていうか、向こうの世界に結構いたよな、こーゆーひと。

とりあえずあたしは促されるままに椅子に座る。先生はオキシドールを脱脂綿に染み込ませてあたしの膝の傷口に当てる。

 

「…この泡が発生するごとに、あなたの赤血球は破壊されていくのね」

「をい。今ここで言うことか?」

 

いや、あたしも知識としては知ってるわよ? 知ってるけど、さすがにそんな言われ方したら気分を害するから。

しかしその後は、普通に治療が進んで行き。

 

「はい。これでいいわよ」

「…ありがとうございます」

 

あたしは、いまいち納得がいかないながらも、取り敢えずお礼をのべた。

 

「全く、本当に無駄な手間をかけさせてくれるわ」

「ちょっと、そんな言い方っ」

「あなたならその程度、簡単に治せるでしょうに」

 

なっ!?

 

「…アンタ、いったい何者!?」

「あら、さっきあなたが言っていたじゃない。

わたしはここ、穂群原学園初等部の養護教諭」

 

ああ、なるほど。あいつと同じって訳ね。嘘は言わないけど、それが真実ではない、と。

 

「りょーかい。今はそれでいいわ。

ところで一応名前を聞いときたいんだけど」

「…華憐よ。折手死亜華憐(おるてしあ・かれん)」

 

わざわざ、漢字で名前を書いた紙を見せて彼女は言った。てか、明らかに当て字だ。

 

「そう。それじゃあ改めて、華憐先生。怪我の手当て、ありがとうございました」

 

再びお礼を言って、あたしは保健室を後にした。

 

 

 

 

 

はあ。なんちゅーか、また厄介なのが現れたわね。

彼女の言動からすると、監視や観察が目的みたいだけど、その理由がわからない。今のところ敵対する意思が見られないのが救いか。

 

「リナ!」

「大丈夫なの?」

 

イリヤに美遊。そういやさっき、チャイムが鳴ってたっけ。

 

「大丈夫、ただのかすり傷よ。美遊はちょっと心配しすぎね」

「破傷風や溶血性連鎖球菌をなめたらいけない」

 

だから、無駄に知識が多いってば、この子。

 

「…今のところ大丈夫だから。

それより二人とも、保健室には近寄らない方がいいわよ」

「え? どして?」

「あそこの保健の先生、性格破綻者だから」

 

嘘は言ってない。

取り敢えず、なるべく二人を彼女には近づけない方がいいだろう。

でも。

折手死亜華憐。結局は、いずれ関わることになるんだろうなぁ。

あたしは一つ、タメ息をついた。

 

 

 

 

 

イリヤスフィール

の暴走

 

『イリヤさんが大好きな、お兄ちゃんについてなんですが』

 

突然切り出してきたルビーに、わたし、イリヤスフィール=フォン=アインツベルンは冷静に切り返した。否定をせずに兄として好きだって。変に否定したらからかわれるっていうのはもう学習した。

 

『…士郎さんですけど、イリヤさんと似てませんよねー』

「お兄ちゃんは養子だからねー」

『はい?』

 

あれ、ルビーには話してなかったっけ?

そんなわけでアインツベルン家の家庭事情を説明すると。

 

『なんとエロい!!』

 

これだもんなー。

 

『血の繋がらないハーフ小学生妹と同棲だなんて、それこそアレなゲームでしかお目にかかれないようなレア設定ですよ!』

「妄想しすぎだって…」

 

てか、アレなゲームって…。伏せてあるけど、小学生に向かってその発言はどうなの?

それでも会話は続き、セラとリズの説明を始めたんだけど。

 

『そんな、実は何でもないような設定はいりません!

兄の話をしましょう!』

「兄のって言われても、普通のお兄ちゃんだよ」

 

そう、普通のお兄ちゃん。料理上手は変わってるかもだけど、それだってイマドキは料理男子だっているわけだし、そこまで珍しい訳じゃない。

 

『…うかうかしてると、他の方に取られちゃいますよ?』

 

……は?

 

「どゆこと?」

 

『やれやれ、気づいていませんでしたか』

 

気づいてって…?

 

『まず、凛さんとルヴィアさんですが、留学扱いで士郎さんと同じ学校に通ってるんですよ。

そして、故意か不可抗力わからないお色気ハプニングを起こしつつ、士郎さん相手にいろんなフラグを、立てまくっているとかいないとかー』

 

なにそれ、聞いてないよー!?

 

『それから、クラスメイトのゆるふわ系美少女の方とか、後輩の献身系美少女の方なんかは明らかに気がありますねー。

しかもお二方とも、いいものを持ってますよ。主に胸』

 

いや、その情報は要らないから!

 

『さらにダークホースのセラさん』

 

ファッ!?

 

「え、だって、いつもお兄ちゃんに怒ってばかりで…!?」

『嫌ですねー。好きな相手にキツくあたるなんて、おもいっきりテンプレじゃないですか』

 

い、言われてみれば確かに!?

 

『そして、忘れてならないのがイリヤさんの大親友、リナさん!』

 

そ、そうだった。リナもお兄ちゃんのこと…。

 

『このままだと、どなたかが彼女さんになるかもしれませんねー。

いや、もしかしたら士郎さんてば、同時攻略(ハーレムエンド)を狙ってくるかもー?』

 

お、お兄ちゃんは、そんなことしないよ! って声に出せない自分が悔しい。

 

『さて、イリヤさんはどうするんですかー?

ああ、でも、「普通にお兄ちゃん」ですものねー。妹がどうこう言う問題では…』

「ルビー!」

 

わたしはルビーをわしっ!と掴む。

 

「契約する前、言ってたよね。

こ、『恋の魔法』がどうたらって…」

 

そう、初めてルビーと出会ったあのとき。わたしを魔法少女に勧誘するために、こう言っていた。

 

−−−楽しいですよー、魔法少女!

−−−羽エフェクトで空を飛んだり!

−−−必殺ビームで敵を殲滅したり!

−−−恋の魔法でラブラブになったり!

 

と。

 

『…ええ。

実際には魔法ではなく魔法薬、いわゆるホレ薬の調合ができますが。

…やりますか?

 

ルビーが、ニヤリと笑った気がした。

その、悪魔の誘惑にわたしは。

 

「た、ためしにひとつ!」

 

抗うことが出来なかった。

 

「か、勘違いしないでよねっ!

これはあくまで、お兄ちゃんを魔の手から守るための行為で…!」

 

わたしは、無駄とは知りつつも、言い訳を述べる。

 

『テンプレなセリフは置いといて、さっそく準備に取りかかりましょう!

わたしのオクスリなら、士郎さんもイチコロで、メロメロでガクガクですよー!』

 

それを聞いて、ちょっびり期待してしまう自分がいる。

ごめんね、お兄ちゃん。わたし、悪い子になっちゃった。

……その後、お兄ちゃんがどうなったのかは、また別のお話です。




解説
【衛宮士郎の陰謀】
前回の後日譚。たまには大本の作品(Fate/stay night)の主人公で話を書きたかった。もちろん、性格の差異はありますが。
雷画さんの口調や大河の「お祖父ちゃん」呼びが合ってるかはわかりません。捏造です。
あと、大河はちゃんと反省しますよ? そう見えないだけで。



【稲葉リナの溜息】
リナとカレンを絡ませたくてフライング登場させました。
リナも言ってますが、スィーフィード世界にはこんな癖の強いキャラ、たくさんいますよね?
もう少しカレンの性格破綻ぶりを見せたかった…。



【イリヤスフィールの暴走】
原作の番外編の話に少しだけアレンジを加えたもの。
セラは入れるか迷いましたが、こういう説もあるので入れることに。
当初はネタで一成(いっせい)も入れようかと思いましたが、思い止まりました。
ちなみに本文に書き忘れましたが、イリヤとルビーは家の自室で会話してます。

なお、この三本それぞれに今後の伏線があります。捻ってはないので、伏線だと思ったところが伏線であってると思います(笑)。

さて、次からはついに第二部が始まります。ただ、他作品も書きたいので、少し間が空くかも(予定は未定)。

次回「イリヤスフィールの分裂」
見てくんないと、暴れちゃうぞ!
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