Fate/kaleid caster ドラまた☆リナ 作:猿野ただすみ
「ノックしてもしも〜〜〜し!」
『オッパァアアア〜〜! って、何やらせるんですか!?』
『ですが姉さんも、結構ノリが良かったように思われますが』
いきなり何をしてるんだ。そう思った方もいるだろう。実は今、あたしたちは通話用魔術礼装の実験中なのだ。
放課後。礼装の効果を早く知りたいあたしは、いつぞやのイリヤのように教室を飛び出し、現在いつもの林の中にいる。
そしてルビーは、あたしは行ったことないけど更に奥にある洞窟へ、サファイアはルヴィアさんちで、それぞれ待機してもらってる。もちろん二人にはすでに、術式の読み込みを済ませてもらって、だ。
そしてこの配置も意味あってのこと。ルビーは遮蔽物による、サファイアはエーデルフェルト邸とここ、二つの結界によるそれぞれの影響を見るために。
実験の手順は、まず最初に洞窟の奥へ移動したルビーからの通信、続いてサファイアからの通信に、最後はあたしから。で、冒頭のマンガネタにルビーがノってくれた、というわけだ。
「ふむ。遮蔽物や結界による影響はなし。誰から通信を開始しても問題もなく、複数人による同時通話も可能。
あたしとしては満足のいく出来だけど、あなたたちから見たらどうなの?」
『そうですね。術の性能としても、わたしと姉さんのテレフォンモードにさほどひけをとらないものと思われます』
『出来ればテレフォンモードと組み合わせられれば、かなりの魔術阻害でも通話できるんでしょうが、まあこれは無い物ねだりでしょうねー。
あとは強いて言うなら、ネーミングセンスでしょうかね?』
ぐっ、痛いとこを…。
『
うるさい、そんなの自分でもわかってらい!
「その方がわかりやすくていーじゃない?」
『まあ確かに、お子様たちにはわかりやすいでしょうねー。
……わかりました、そういうことにしておきましょう』
うわっ、ムカつく! いや、確かにこんなんで誤魔化せるとは、思ってもないけどっ!
「っもういいから! ルビーはあたしと合流して帰るわよ!!」
『はいはーい』
『了解しました』
全く。こんなのが相棒じゃ、イリヤも苦労するわね。
ルビーと合流し帰る途中、なんかとんでもないものを目撃してしまった。
十字路でブロック塀に隠れながら前方を覗き見る、凛さんとルヴィアさん。
その少し先では電柱に隠れ、やはり前方を覗き見る、ゆるふわ系美人のひと。
そしてその先には、士郎さんと桜ねーちゃんが仲良くお話ししながら歩いてる。
『あはー、これはまたトンデモないことになってますねー。
士郎さんを取り巻く美女たちが、思惑入り乱れての恋の駆け引き大捜査線ですかー』
コーフンしながら言うルビーに趣味が悪いなーと思いつつも、あたしも少しは興味があったり。そこはまあ、複雑な乙女心とゆーやつで。
というわけで、とりあえずは。
「こっそり後をつけて覗き見なんて、優雅さの欠片もないわよ?」
声をかけられた魔術師二人は、びくりと身をふるわせてこちらへふり返る。
「リ、リナ!? ルビーまで!!」
「貴女方、どうしてここに!?」
「新しく作った礼装の実験した帰りよ」
驚く二人に簡単な説明をする。
「それで二人は……、って見失うといけないから、事情は尾行しながらにしましょ?」
「「え、ええ…」」
あたしの意見に二人は頷き、尾行を再開させる。
「……で、二人は士郎さんにまとわり着くお邪魔虫が気になってんの?」
「えっ、な、な、な、なにを言ってるのかしら!!?」
「当然! シェロの周りの害虫は、全て駆除いたしますわ!!」
『見事に両極端な反応ですねー』
ほんとにね。凛さんなんて典型的なツンデレ対応だし。
「んー、でもあたし、個人的には桜ねーちゃん応援してんだけどな」
「「『桜ねーちゃん?』」」
三人の声が見事にハモる。そーいや桜ねーちゃんのこと、話したことなかったっけ。
「リナ。さ…、間桐さんのこと、知ってるの?」
ん? 一瞬、凛さんの様子がおかしかったような?
「桜ねーちゃんはあたしの友達よ?」
浮かんだ疑問をお首にも出さずに答えたあたし。それには三人? も目を丸くする。
「ず、随分年の離れたお友達ですわね」
うんまあ、確かにそうだけど、ホントなんだから仕方がない。
「それよりも。あの士郎さんたちをつけてる、ゆるふわさんは誰?」
ピンクがかった髪色で糸目の、パッと見おっとりした感じの美人さん。なんか見たことある気がするんだけど…?
「彼女は
おや、モリヤマ・ナナミ? あれ、もしかして…。
「那奈亀のねーちゃん!?」
『いやー、まさかゆるふわ系美少女さんが、リナさんのお友達のお姉さんだとは。
それに献身系美少女の方とリナさんが、お友達ということにも驚かされましたねー』
「ちょい待てや!」
あたしはルビーをはしっ! と鷲掴みにする。
「アンタ、彼女たちのこと、知ってたの!?」
『はい。士郎さんに気のある女性は粗方。
わたしの
な、セラさんまで!?
『さらに! ……あ、いえ、この方は内緒にしておきましょう。その方が面白そうですし』
「な……!!」
危うく大声を出しそうになって、慌てて口をつぐむ。そして一旦気持ちを落ち着かせ、あらためて尋ねようとしたら。
「シェロと
ルヴィアさんの言葉に意識を切り替えて見てみると、確かに二人が公園に入っていくところだった。って、ここ、あたしと桜ねーちゃんが出会った公園じゃない。
二人のあとには那菜巳さんが入っていき、こっそりと植え込みの陰に身を潜ませる。
そしてあたしたちは、公園入り口の門に潜み、覗き見る。うん、端から見たら怪しいことこの上ないだろう。
士郎さんたちはベンチに腰掛け、一息つく。と、桜ねーちゃんが懐かしそうな顔になって話はじめる。
「わたし、ここでリナちゃんと…」
おっと、あたしと出会ったときの話ですか。
さすがに細かい描写はしてないけど、その経緯はちゃんと伝わるように話している。
「リナちゃんはわたしを変えてくれた、恩人の一人なんです」
「一人? 他にも恩人がいるんだ?」
その言葉に一瞬ぴくりと身体をふるわせて、頬を染めて士郎さんを見つめる。
むむっ。この雰囲気はもしかして? あたしと同じように気配を察したんだろう、ルヴィアさんがイライラとし始め…?
凛さん? なんだろう。少し思い詰めた表情をして…。
「先輩。わたしのもう一人の恩人は…!」
意を決した桜ねーちゃんが思いを告げようとした、そのとき。
「士郎君。ぐ、偶然ね?」
あたしたちとは反対側から現れた那菜巳さん。いつの間にか、植え込みに隠れながら反対側に回ったらしいけど、膝が汚れてるし頭や大きな胸には枯れ葉が貼りついてる。
「森山? どうしてここに?」
そんな不自然さに、気づいているのかいないのか、那菜巳さんに尋ねる士郎さん。
「え? えぇと、そのぅ…」
咄嗟に飛び出してしまったのだろう、適当な理由が思いつかないのか、両手で挟むように頬にあてて身体をうねうねさせてる。
あれって男子から見たら可愛いんだろうけど、女子から見たらあざとくて、イラッとするやつだ。
「まったく、仕方ありませんわね。利害の一致する、今回だけは助けてあげますわ」
ルヴィアさんはそう言うと、今一乗り気じゃない凛さんを引っ張って出ていった。
『リナさんはどうします?』
「ん、あたしも付いてってみるわ」
そう答えて、ルヴィアさんの後をついていく。
「お待たせしましたわね。
「えっ、ルヴィアに遠坂、リナちゃんも!」
「ッ! 遠坂先輩」
おや、今度は桜ねーちゃんの様子がおかしいような?
「なんだ? 森山と待ち合わせでもしてたのか?」
「ええ。
「あたしはたまたま二人に会って、ついてきただけよ」
うん、思惑はどうであれ、見事なくらいホントのことしか言ってないぞ、あたし。
「遠坂先輩は、リナちゃんと知り合いだったんですか?」
「……ええ。ルヴィアが引き取った少女が、リナや衛宮くんの妹さんとお友達なの。だからルヴィアのお屋敷に出入りしてるわたしとも必然的に、ね」
なるほど。原因こそ違うけど、確かにその関係性に間違いはない。実際、士郎さんはこの説明で納得して頷いてるし。
「……ん? もしかして、桜と遠坂も知り合いなのか?」
士郎さんの疑問に強ばった表情になる桜ねーちゃん。一方の凛さんは顔色ひとつ変えないけど、さっきまでの様子だと知り合い同士なのは間違いなさそうね。
「そうね。
まあ、決して仲が良かったとは言えないけど」
「……お爺様が亡くなられてからは、疎遠になってますから」
……桜ねーちゃん、まさか。
「なんか、聞いちゃ不味いことだったか?」
「構わないわよ。変な勘繰りされるよりよっぽどマシよ」
言って凛さんは、すっと振り返って出入り口の方へ去っていく。
「……先輩。わたしも、今日はこれでお邪魔します」
「えっ、ああ、そうか…」
桜ねーちゃんを見送る士郎さん。桜ねーちゃんは門のところに立つ凛さんと、軽く目配せをして去っていった。
「さて、
「ふえっ!?」
うあ、あざといくせにアドリブ弱っ!
「じゃ、士郎さん。あたしもこれで」
そう言ってあたしは、那菜巳さんの背中を押していく。
「……あれ? なんか、俺だけ取り残されて?
……なんでさ!?」
公園を出たあたしたちは、凛さんの家に向かって歩いている、らしい。……だってあたし、凛さんとこ行ったことないし。
エーデルフェルト邸だと再び士郎さんとバッタリ、なんてこともあり得るし、とりあえずは時間潰しと遠坂邸の所在の確認を兼ねたのだ。
まあ、あたしは帰っても問題ないんだけど、自分だけ仲間はずれってのもなんかヤだし。
「……あの、さっきはありがとう」
ようやく状況が整理出来たんだろう、那菜巳さんがルヴィアさんにお礼を言った。
「勘違いなさらないでくださいまし。
ルヴィアさんのツンデレ、じゃなくて本気で言ってるな、あれ。
「そんな、邪魔をするつもりなんて!
……ううん、そうね。確かにそういう気持ちがあったのは事実だわ。わたし、なんてことを…」
「鬱陶しいわぁッ!!」
すっぱぁん!
「痛っ!?」
あたしのスリッパが決まり、頭をおさえる那菜巳さん。
「那菜巳さん。アンタ、素か狙いかわかんないけど、行動があざといのよ!
男性からは『かわいいなー』とか『守ってあげたいな』なんて思わせる行動も、あたしたち女性陣から見たら鼻につくの!」
もちろんあたしたちだって、あざといこともするけど、なんてゆーかそういう行動をコンボで決められると、無性にイラッと来るわけだ。
「わたし、そんなつもりは…」
「つもりはなくてもそう感じるの! 同性との付き合いを無視すんなら別に構わないけどっ」
さっきから散々言ってはいるけど、いちおー心配はしてるのだ。曲がりなりにも友達のねーちゃんだもんね。
「言っとくけど、あざといことを否定してるわけじゃないわよ? ただ、立ち居振舞いに気を付けないと、敵もたくさん作ることになるわよってこと」
ここではあえて言わないけど、下手したら勘違いする男だって出てくるかも知れないのだ。那奈亀の姉ならフィジカルやパワーも無駄に高そうだけど、それでもやっぱり女の子たからね。
ふと周りを見ると、三人が三人とも唖然とした表情をしている。
「ちょっとリナ、あんたほんとに小学生?」
凛さんが代表して、あたしに疑問をぶつけてくる。やば、ちょっと語りすぎたか? でも、今更態度を変えるのもわざとらしすぎる。
「それ以外の何に見えるっての? あたしは穂群原学園初等部五年の、稲葉リナよ」
「ひっ!?」
開き直ってあたしが答えたとたん、那菜巳さんが小さな悲鳴をあげた。一体どうした?
「もしかして、『身体は子供、心は魔王』の稲葉リナ!?」
「なんじゃその二つ名はーーーッ!!」
前世でも「
「那奈亀ちゃんから聞いたの。雀花って子が考えたって」
おのれ雀花、許すまじ!!
こらーっ、そこの魔術師二人! 腹かかえて笑ってんぢゃないッ!!
……まあ、話が逸れたからいいけど!
「あの、わたし、ここでお邪魔します」
怯えた目であたしを見ながら那菜巳さんは言った。いや、さすがにそういう反応されると、少し落ち込むんだけど。
「なら、
「え? ルヴィアさんも?」
てっきり凛さんの家まで来るのかと思ったんだけど。
「元々時間潰しという意味合いの方が大きいですから。それに…」
あたしの耳元にそっと。
「(誤解、とは言いませんけど、彼女に貴女のいいところも説明しておきますわ。貴女には感謝してますから)」
ルヴィアさん。……でも、「魔王」は否定してくんないのね。
「それでは皆さん、ごきげんよう」
「ハイハイ、ごきげんよう」
別れの挨拶に軽く返す凛さん。その事に心の底からのため息を吐き、ルヴィアさんは那菜巳さんと共に去っていった。
「それで? リナはどうするの? ついでにルビーも」
『ルビーちゃんをついでとか、ほんとに失礼な人ですねー。元マスターのくせに』
「いや、お互い様でしょ。
あたしは行くわよ。ちょっと話したいこともあるし」
「話したいこと?」
「立ち話もなんだし、歩きながら話しましょ?」
あたしの提案にコクリと頷く凛さん。
「……それで話って言うのは?」
歩いてく中、何も喋らないあたしに、業を煮やした凛さんが尋ねてきた。
あたしは意を決して凛さんに聞いてみる。
「凛さん。間桐ってもしかして、魔術師の家系なの?」
と。
今回のサブタイトル
天地無用! シリーズのキャラクターソングから
今回久しぶりに、リナのモノローグオンリーでした。もしかしたら次回もそうなるかも。
そしてようやく、ゆるふわ系美少女こと森山那菜巳、登場させられました。出番はたぶん少ない。
あとは柳洞一成かぁ。海までには一度登場させたい。
次回「夢 終わるとき」
見てくんないと、暴れちゃうぞ!