Fate/kaleid caster ドラまた☆リナ   作:猿野ただすみ

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アニメ版ロスユニ、続き作ってたらどんな感じになってたんでしょうね?


夢 終わるとき

≪リナside≫

 

この日、工房(アトリエ)宝石の護符(ジュエルズ・アミュレット)の製作をしていたんだけど、どうも調子があがらない。

理由はわかってる。先日の凛さんとの会話のせいだ。

 

 

 

 

 

「凛さん。間桐ってもしかして、魔術師の家系なの?」

 

あたしの問いに、わずかばかりの動揺を見せる凛さん。

 

「なんの根拠があって言ってるのかしら?」

 

しかしすぐに、余裕の表情で聞き返してくる。さすがに感情の切り替えが早い。

よし、それなら。

 

「そんなの、凛さんがうっかりやらかしたからに決まってんじゃない」

「な!?」

 

煽ってやればいいだけのこと。

 

「あんな『遠坂(うち)と間桐は以前から…』、なんて言っといて、尚且つ仲がいいわけじゃないなんて、利己主義で秘匿主義な魔術師どうしの繋がりを疑ってもおかしくないでしょうが。

個人的な繋がりなら、幼馴染みとか、先輩後輩として、くらいのほうが凛さんらしいし」

 

凛さんって、聞いた限りでの一般的な魔術師に比べて変に人間くさい分、わざと一般人と壁を作って巻き込まないようにするタイプだと思う。それなのに、わざわざ家族ぐるみでの関係を明かしている。

 

「……それだけ、『妹』との関係を軽くしたくなかったってこと?」

 

凛さんがあたしの肩をがっしりと掴み。

 

「あんた、どうしてそれを!?」

「やっぱりそうだったんだ」

「え、あ…?」

 

あたしがカマをかけたことに気づいて、間抜けな声をあげる。

顔を背けた凛さんが再び歩き出し、あたしはその後をついていく。

しばらくの沈黙のあと、今度はあたしから口を開く。

 

「実は桜ねーちゃんから、養子だってのは聞いてたの。だから、もしかしたらって思ったんだけどね。

ねえ、凛さん。よかったら相談に…」

「残念ね」

 

立ち止まった凛さんが、あたしに向き直って言う。

 

「タイムアップ。ここがわたしの家よ」

 

凛さんが背にする先には、古びてはいるもののなかなか立派な屋敷があった。……エーデルフェルト邸と比べると遥かに見劣りはするけど、あっちが異常なくらい立派なだけだ。

凛さんは背を向けて家へと向かうが、すぐに足を止め、振り返らずに言った。

 

「リナ。貴女の想いはありがたいけど、これはわたしたちの問題なの。だから、これ以上は…」

 

凛さんは最後まで言わずに再び歩き出し、今度こそ家の中へ入っていった。

 

 

 

 

 

その日以降もお互い、今までどおりの対応をしてるけど、少なくともあたしは気持ちがモヤモヤしてる。お陰で仕事がはかどらないこと、はかどらないこと。

なんとかいつもの数を仕上げたけど、とても自分の研究なんて出来たもんじゃない。

 

「しょうがない、これで切り上げるか」

 

そう言ってあたしは、道具を片付け始めた。

 

 

 

 

 

階段を上がり扉を抜ける。

 

「あら、リナ。今日はもう終わりなの?」

 

そこには、たまたま通りかかった凛さんがいた。

 

「うん、まあ、ちょっと作業に身が入らなくて、ね」

「……そう」

 

凛さんも理由を察したのか、それ以上はなにも言わず、玄関の大広間に向かって歩き出す。あたしもそのあとについていく、と? なんだろう。なんか騒がしい?

 

「もちろん構いません。

シェ…、イリヤの家族なら、(わたくし)の家族も同然…」

 

ルヴィアさんのテンションが高いんだけど。第一、イリヤのことをイリヤスフィールって呼ばない辺りでいつもと違うし。

……って、イリヤに士郎さん、セラさん、リズさん!? 衛宮家のみんなが何で!!?

そんなあたしの心の声が聞こえたわけでもなかろうに、セラさんが説明を始めてくれた。

 

「すみません、突然大勢で押しかけてしまって。

給湯器が何者かに破壊されたとしか思えない壊れ方をしまして…」

 

あー、お風呂を借りに来たのか。しかし破壊って、ひょっとしてイリヤか? さっきから挙動不審だし。

なんてやってる間に凛さんが走り去っていく。士郎さんにメイド姿を見られたのが、そうとうショックだったようだ。

 

「あれ、リナ?」

 

イリヤがあたしに気がついた。

 

「リナちゃん」

「リナさん」

「やっほー」

 

士郎さん、セラさん、リズさんも声をかけてくる。

 

「話は聞いてたわ。きっとお風呂場に石を投げ込んだ人と関係あるんじゃない?」

「ああ! そうかも知れないな」

 

あたしの意見に納得する士郎さん。こないだから思ってるけど、ちょっとチョロ過ぎよ?

ちなみにイリヤは視線をそらしてる。

 

美遊(ミユ)、浴場まで案内してあげなさい。

それとリナ。貴女もよろしければどうぞ。美遊(ミユ)も一緒に入るといいわ」

 

おお、まさかあたしまで。

今日はお母さんがご飯作る日だから、電話を入れれば少しくらい遅くなっても大丈夫だし…。

 

「それじゃあ、お言葉に甘えて…」

 

実はちょっと期待してるのだ。エーデルフェルト邸の浴場の大きさを。

やっぱり大きな湯船でゆったりしたいからね!

 

 

 

 

 

いやー、ルヴィアさんちのお風呂は、自分の想像を遥かに越えていた。それこそ、マンガやアニメに出てくる豪邸のお風呂だ。まさかリアルでこれ程のものが存在するとは…。

ちなみに士郎さんは、オーギュストさんと使用人用のお風呂だ。ここよりも小さいって話だけど、それだってもしかしたら、銭湯くらいはあるんじゃ…。

ふと。大浴槽を泳ぐ人影が見えた。その正体がわかった瞬間。

 

どっぱぁぁん!

 

イリヤが人影に向かってダイブした。

そっかぁ。すっかり忘れてたわ、クロエのこと。

 

「お風呂に飛び込むとは何事ですか!?」

 

うん。この様子だと、みんなにはバレてないみたいね。

水面から頭半分出してるクロエがこちらの様子を伺い見たかと思うと、すいーっと泳ぎながら近づいてきた。湯船に建つ柱の影から、クロエを止めようとするイリヤだけど。

 

「泳ぐのもマナー違反ですよ」

「はーい」

 

後ろに目でも着いてんじゃないかっていうタイミングで注意するセラさん。それに返事をするクロエに足蹴にされて、イリヤは柱の裏へ追いやられていた。

 

「ク、クロ!?」

 

ここに来て、ようやく美遊も気がついたみたいだ。

 

「(ミユ、リナ! クロを止めてー!)」

「そ、そう言っても…」

「あたしは基本、中立だし」

 

ま、バレそうになったら何とかするけどね。

 

 

 

 

 

「あら?」

 

湯船に浸かろうと、浴槽のふちに腰を掛けたセラさんがクロエに声をかける。

 

「イリヤさん、日に焼けました?」

「セラってば、お約束だなぁ」

 

かけられた疑問を軽く受け流すクロエ。なかなかいい度胸してるわね。

 

「ねー、リズお姉ちゃん」

 

こんどは背後から、湯船に浸かるリズさんに抱きついたかと思うと、掌をリズさんの大きな胸にあて。

 

「相変わらずおっきーねー。

サイズいくつだっけ?」

 

揉みしだきながら言った。

 

「92」

 

答えるんかい。

 

「いいなー、わたしも欲しいー」

 

あたしだって欲しい。と、その時。

 

とぽん!

 

クロエが水中に引きずり込まれた。どーやらイリヤが実力行使にでたみたいね。……ん?

 

どっばあぁぁぁ!!

 

突然、巨大な水柱が吹き上がり、雨のようにあたしたちに降り注ぐ。

これは、結構たまってたみたいだなぁ。あの子、普段から感情を表に出すタイプだから、ここまでの大爆発は滅多にないんだけどね。

 

ザバァ…

 

湯船の中から現れたイリヤは、ニッコリと笑い。

 

「セラとリズは先に上がってて。

わたしはもう少し入ってるから」

 

笑顔とは裏腹のその迫力に、抗えるものは一人もいなかった。

 

 

 

 

 

「もう、多少のことは多目に見るけど、あんまり引っかき回すようだったら容赦しないからね!」

「すでに容赦してないじゃない」

 

強力な魔力砲をくらったクロエが、ぶつくさ文句をいう。どうでもいいけど、背後からあたしに抱きつくのはやめろ。

 

「あら、貴女たちだけ?」

「げっ、クロ!?」

 

そこに現れたのはルヴィアさんと凛さん。

……何でこの二人といい、セラさんリズさんといい、こうも格差があるんだろう。

 

「……なんかさー、セラもリンも、大平原の小さな胸って感じよねー」

 

をいこら、クロの字。

 

「リナは将来、どうなるのか、し…ら……」

 

あたしの胸へと移動するクロエの手をバシリと叩き、ゆっくりと振り返る。途端にクロエの表情がひきつり後退さった。

 

「クロエ。あたしとO・HA・NA・SHIする?」

「いえ、……って言うか、ごめんなさい」

 

うん、素直でよろしい。

 

『さすが、身体は子供、心は魔王の稲葉リナ、ですねー』

『姉さんは、わざわざ煽らないでください』

 

安心して、サファイア。ルビーとはいつか、みっちりO・HA・NA・SHIするつもりだから。

 

「全く…。でも、ちょうどいいわ。棚上げにしてたことを話し合う、いい機会ね」

 

そう言って、凛さんが話を切り出した。

 

「ねえ、クロ。そろそろ話してくれる気にはならない?」

「うーん、そうやってすぐ答えを得ようとするのは、先生、好きじゃないなー。

……でも」

「あたしは聞かないからね」

 

ここでホイホイ聞いた後、一体何を要求される事か。

 

(わたくし)たちにとって、焦点はクロではありませんわ。問題は、クラスカード『アーチャー』が消えたこと」

 

カードが消えた? ということはやっぱり…。

 

「イリヤ。大空洞であの時、カードで変身してたわよね?」

 

凛さんが言う大空洞ってのは、おそらく洞窟の奥にそういう場所があるのだろう。

 

「あんなカードの使い方、わたしも、協会ですら把握してないわ。一体どうやって…」

 

「そう言われても…」

 

イリヤは一旦言葉を区切り。

 

「実はあれが初めてじゃなくて、セイバー戦の時も一度変身してたの」

「え!?」

 

凛さんは驚き、ルヴィアさんが目をむく。

 

「上手く説明できないんだけど、どうしようもなくなった時、どうにかしたいと思ったら、どうしたらいいのかが何となく浮かんできて、気がついたらどうにかなってる、みたい、な…」

「説明になってませんわー!!」

 

ルヴィアさんが喚きながらイリヤに掴みかかる。

 

「……今は?」

 

凛さんが尋ねた。

 

 

「クロが出現して以降もそういうことがあった?」

「え、ないけど?」

 

……どうやら凛さんも、ある程度の推測がたったらしい。

 

「……前にも話した通り、クラスカードは一種の召喚器と考えられるわ。

高位の武装・礼装を媒体にして、英霊の力の一端たる宝具を具現化させる。……協会が解析できたのはそこまでよ。

なのに貴女は、自分の身体を媒体に英霊の能力を召喚した」

「はあ、そうなんですか…」

「とんでもないことをしたって自覚がないわね」

 

うーみゅ。あたしや美遊も夢幻召喚出来るのは、やっぱり黙ってた方がいいみたいね。

 

「イリヤ。貴女はどうしたい?

私たちの目的は、リナのものを除く全てのカードを協会に持ち帰ること。それさえ果たせるなら、他のことは構わないって訳。だから、収拾の形はイリヤの意思に従う。

聞かせて。貴女の望みを」

 

凛さんに聞かれ、イリヤは少し考え。

 

「そんな大した望みなんてないけど…。

ただ、()()()()()()()()()…、かな」

 

な、馬鹿イリヤ! そんな言い方じゃ…!!

 

「……そうでしょうね。了解し−−」

 

パァン!

ビキッ…

 

クロエがタオルで浴槽の柱をひっぱたき陥没させる。おそらく強化の魔術がかけられてるんだろう。

 

「了解しないわ。勝手に結論を出さないでもらえるかしら。

…イリヤ、『元の生活』って何を指してるの? 『元の生活』に、わたしはいた?」

 

そう。イリヤのあの言い方じゃ、そうとられても仕方がない。

もちろんあたしは、イリヤがそんなつもりで言ったんじゃないのはわかってるけど…。

 

「早まらないで、クロ!!

まだ、貴女をどうするか決まったわけじゃ…」

「嘘。 リンたちの望みは何? カードでしょ?」

 

クロエは右手で、胸の辺りを触れ、言った。

 

「カードは、ここにあるのよ」

 

……やっぱりか。

イリヤから別れたクロエ(イリヤ)。けれどもその肉体はひとつ。ならばどうやって存在を維持しているのか。

……消えたクラスカードにクロエが扱う魔術、さらに隙あらば仕掛けてくるドレインキッス。

そう、その内にカードを取り込んだクロエは、半ば英霊として存在しているんだ。そしてその身体を維持するための魔力を、ドレインキッスで補う。

けど、相変わらず大きな謎が残る。そもそも、何故そんなことがおきたのか、だ。

 

「……潮時、かな。

茶番はおしまい。どのみちわたしに先はないみたいだし、それなら最初の状態からやり直しましょうか」

『イリヤさん、構えて!!』

「えっ!?」

 

ルビーが急遽、イリヤを転身させる。

 

「つまり、わたしとあなたは敵同士よ」

 

英霊の衣装をまとったクロエが、黒い洋弓にドリルのような螺旋の矢をつがえ、イリヤに向かって放つ!

あたしはイリヤに抱きつき。

 

翔封界(レイ・ウイング)!!」

 

イリヤごと風の結界を纏い、イリヤはルビーを前に突き出して矢を受ける。

矢は反れ、天井に命中。大穴を開け、爆風とともに瓦礫が落ちてくる。

風がおさまったとき、そこにはすでにクロエの姿はなかった。

 

「逃げられた…?」

「なんちゅー威力よ…」

 

ルヴィアさんと凛さんが毒気が抜けた声で言った。

 

「もう一回アレ捕まえろっての?」

「せめて、家を破壊せずに出ていってほしいですわ」

 

いや、ルヴィアさん。確かにそうだけど、問題点はそこじゃないと思うんだけど…?

……ん? イリヤ?

 

「クロ…」

 

イリヤは神妙な面持ちで呟いていた。




今回のサブタイトル
神坂一「ロスト・ユニバース」5巻タイトルから

今回はかなり難産でした。なんか気分があがらなかったり、資料である原作マンガ、家に忘れたり仕事場のロッカーに忘れたり。
代わりに書きかけの別作品、1話分書き上げたりしましたが(笑)。

次回「キズナノユクエ feat. 美遊」
見てくんないと、暴れちゃうぞ!
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