Fate/kaleid caster ドラまた☆リナ 作:猿野ただすみ
スイートを回収してから三日が経った。さくらちゃん達は拠点をエーデルフェルト邸に移している。
さすがに彼女達は賓客として扱われ、メイドになって働かされたりはしていない。……いや、メイド服姿のさくらちゃんや知世ちゃんも見てみたいし、執事服姿の雪兎さんにも興味はあるけどもっ!
ともかく。それでも対価というものは必要で、ルヴィアさんと凛さんはケルベロスから向こうの魔道…、クロウ・リードの術について根掘り葉掘り聞いている。
まあ、世界は違うし、クロウの術自体が特殊だから簡単に扱えるものではないはずだけど。あとはふたりが、どこまでこちらの魔術に落とし込めるかにかかってくるわけだが…。お手並み拝見、と言ったとこだろう。
そして残りのさくらカードだけど、あたし達もこの三日、ただ無為に過ごしていたわけじゃない。手分けをしてあちこちを探し回っているんだけど、これといった情報が入ってこないのだ。
凛さん、ルヴィアさんを除くあたし達は、公園で落ち合うと会議を始めた。
「うーん、こんだけ探しても見つからんっちゅう事は、カードの力自体が発動しとらん可能性もあるな」
ケルベロスの推測に、なるほどと思う。
「それに残りの三枚の内一枚は、発動してない方がありがたいしね。見つけるのが大変だけど」
残り三枚の内訳を聞いているあたしは、ため息を吐き言った。残りの三枚。それは…。
「ええと、残りの三枚って確か、ソードとシールド、アローだっけ?」
「うん。シールドは大人しい子だけど、ソードとアローはちょっと攻撃的なんだ」
「ソードは『ちょっと』で済むんかぁ?」
確認するように尋ねるイリヤに、答えるさくらちゃん。そして、それに突っ込むケルベロス。イリヤ達はそれで、あたしの言った意味を理解したのか、苦い顔で「あー…」とかつぶやき頷いた。
「それで、探索は続けられるのですか?」
「んみゅう、そーねぇ…」
知世ちゃんに聞かれたものの、言葉に詰まるあたし。ハッキリ言って、既に手詰まり感が強くなっている。とは言え、さくらちゃん達をいつまでもこの世界に留めているわけにはいかない。
まあまずは、送り返す方法を考えなくちゃなんないんだけど、それがわかってもカードが全て回収できなければどーしようもないのだ。
あたしがあーだこーだ頭を悩ませていると。
「お、イリナクロ美じゃないか!」
「なんじゃ、その人名みたいなまとめ方はああああ! ……って、雀花!?」
「それと那奈亀、龍子、あと…………」
「ミミ!」
美遊のフォローをするイリヤ。
「よお」
「ども」
「オッス!」
「わたしまだ、覚えられてないんだね…」
美々はご愁傷様。しかし、まさかこのタイミングで、
「ん? そいつらダレだ?」
ちっ、普段空気読まないくせに、龍子はこーゆー時目聡いでやんの。ちなみにケルベロスは、さくらちゃんの膝の上でヌイグルミのフリしてる。
「え、えーと…」
さくらちゃんが言いあぐねてる。多分どこまで説明したらいいか悩んでるんだろう。こりは助けてあげなければ!
「こちらはさくらちゃん、知世ちゃん、そして雪兎さん。美遊の知り合いよ」
あたしがそう言うと、美遊が驚きの表情に変わる。それでも無言を貫いてくれてるのは有難い。一方さくらちゃんは。
「ほええっ!?」
例の口癖で驚いている。いやー、やっぱさくらちゃんはさくらちゃんだなー。
「……なんだか、ムチャクチャ驚いてる気がするんだが」
雀花がジト目で言い返す。おっと、さくらちゃん見てほっこりしてる場合じゃなかったわ。
「さくらちゃんは感情表現が豊かだから」
「確かにそのとおりですわ。でも、そんなさくらちゃんだから愛らしいのですけど」
「ホント、さくらちゃん見てるとほっこりしてくるものねー」
「……リナちゃんとは気が合いそうですわ」
「あたしも、よ」
この瞬間、あたしと知世ちゃんの間で、何かが繋がった気がした。
「……やっぱりリナって、拗らせてるわねー」
うるさいクロエ、いらんこと言うなっ!
この時のあたしは、美々の熱い眼差しに気づくことはなかった。
雀花達には「さくらちゃん達は余所から来ていて、ルヴィアさんの家に泊まってる。今は冬木市を見て廻っている」という旨を伝えて、お引き取り願った。まあ、お引き取り願うまでにも、色々とごねられたが。主に龍子に。
「ハァ、疲れた」
「まあ、タツコが大概トラブルメイカーだからね」
イリヤがそう、労ってくれる。あたしもその意見には賛成だが、あたしも人のことは言えないからなー。
「しかしまあ、上手いこと口車に乗せとったなぁ」
「いや、ちょっと待て。口車って、あたしは1ミリも嘘なんて吐いちゃいないわよ?」
「え、でも…」
ケルベロスの意見に反論するあたし。これにはさくらちゃんも納得いかないようだが、さすがにここは引く気などない、などと思ったら。
「嘘は吐いてないけど、真実全てを語ってない。これはリナが得意としている言い回し」
美遊がフォローに入ってくれた。
「ああ、なるほど。確かにリナちゃんは、嘘は吐いてないみたいだね」
「え、雪兎さん?」
爽やかな笑顔を浮かべながらに言う雪兎さんに、さくらちゃんが尋ねた。
「そうだね…、今のさくらちゃんは、美遊ちゃんの知り合いだよね?」
「うん、モチロン! ……あ!」
そう。これであたしが言った、「美遊の知り合い」というのはクリアした。あたしは昔からの知り合いなんて、一言も言ってないんだから。
「そして僕達は、別の世界っていう余所から来た訳だし、カードを探すために町中を見て廻ってる」
「そうですわね。確かに重要な情報は一切口にしないものの、嘘偽りも一切仰ってませんわ。むしろ知らない人がリナちゃんの話を聞かれたら、私達が美遊ちゃんに会いに来たか、もしくは観光に来たと思われるのではないでしょうか」
まさに雪兎さんと知世ちゃんが言うとおり。あたしは、雀花達がそう勘違いするような言葉をチョイスしてきたつもりだ。
「ほえ~…」
どうやらさくらちゃん、驚いて言葉にならないみたい。ま、さくらちゃんは素直な性格だから、こーいったやり口は思いもしなかったんだろう。
「で? これからどうするの? さっきはスズカ達が来て、尻切れトンボになってたけど」
ああ、そうだ。クロエが言ってくれなきゃ忘れたまんまだったわ。
……んー、そーねぇ。
「よし、一旦エーデルフェルト邸に戻りましょ。もしかしたら凛さんかルヴィアさんが、何か情報を得てるかもしんないし」
そう。凛さんは冬木の
「それじゃあルヴィアさんトコに…」
「あ、リナちゃん?」
あたしが話を締めようとした、そのタイミングで声をかけられる。ってか、この声は…。
「あれ、そちらの方達は…?」
「……桜ねーちゃん」
「ほえ?」
いや、さくらちゃんの事じゃないから。……ああ、こりゃまた説明が面倒だわ。
あたしはひとつ、ため息を吐いた。
ようやく、……ホントにようやくって気分でエーデルフェルト邸に戻ってきたあたし達。すると一般口から屋敷に入ったあたし達の前にオーギュストさんが現れる。
「皆様、お待ちしておりました」
「ん? 何かあったの、オーギュストさん?」
あたしが尋ねると、オーギュストさんは頷き言った。
「はい。実は只今来客中なのですが、その用件がおそらく、さくら様のカードと関わりがあるのでは、というのがお嬢様の考えでございます」
「え…」
オーギュストさんの説明にさくらちゃんが声を漏らす。
「わかった。オーギュストさん、お願いします」
「はい」
オーギュストさんは恭しくお辞儀をしてから、あたし達を連れ立って歩き出した。
「お嬢様、美遊様達がお戻りになりました」
「わかりました。みんなをこちらへ」
ルヴィアさんの許可を得て、あたし達は部屋へと通される。
部屋の中には、ルヴィアさんと凛さん、そして白を基調とした和装に身を包む五分刈り頭の、17、8の男性がいた。それにしても、あの衣装ってもしかして。
「あの、エーデルフェルトさん、この子達は?」
「おそらく、貴方の仰る異変の関係者にして、解決に導けると思われる子達ですわ」
「ええっ、この子達が!?」
男性の問いにルヴィアさんが答えると、彼は素直に驚いた。ま、どう見ても小学生のあたし達が事件を解決できるかも知れないって聞いたら、そりゃあ驚くわね。
「ちょっと、わたし達が子供だからって見くびらないで!」
とは言え、クロエには我慢ならなかったみたいだけど。
「ああ、ごめん! 妹と同じくらいの歳だったから、ちょっと驚いちゃって」
妹? それって…。
「あ、ええと、自己紹介がまだだったね。俺は
「え、黒神って、陰陽道黒神流の…」
「ウチの事、知っててくれたんだ」
美遊の呟きに、彼、聖名さんがにっこりと微笑んだ。やっぱり彼の衣装は、陰陽師の正装だったか。
「それで、ルヴィアさんに相談に来るような異変って?」
そう尋ねると、聖名さんは表情を引き締める。
「実は依頼を終えた俺が家へ帰ると、俺でも解けないような強力な結界が張ってあって、敷地の中へ入れなくなってたんだ」
結界!? それに、中に入れないって、まさか!
「シールド?」
当然さくらちゃんも、同じ考えに行き着いた。
「やっぱりね」
腕を組み頷いてる凛さん。
「彼から話を聞いて、桜…、んんっ! 彼女のカードの可能性は大きいと思ったわ」
やっぱり凛さんは、さくらちゃんの名前を呼ぶのに、ぎこちなさそうにしている。
「そこへちょうど貴方達が帰ってらした、というわけですわ」
なるほどね。
「ねえ、カードの場所がわかったんなら、早く行こうよ!」
「そうそう。面倒事は可及的速やかに解決するべきでしょ?」
「さくらのカードに、これ以上の被害を出させない為にも」
イリクロと美遊が言う。
「ありがとう。そう言ってくれると嬉しいよ。結界の中には妹がいるはずだから、出来るだけ早く助けてあげたいんだ」
陰陽師は魔術師とはまた違うって話だったけど、確かに彼は、随分と人間くさく感じる。……なんて言っても、あたしが知ってる魔術師は、魔術師にしてはお人好しばかりだけど。
「……わかりましたわ。貴方達は黒神家に向かいなさい」
「貴方達に全て任せるわ」
え?
「凛さんとルヴィアさんは?」
あたしが疑問をぶつけると。
「カードはまだ二枚あるんでしょ?」
「それに、
あ、そうか。……うん、あたしの知り合いの魔道士がお人好しばかりで、本当によかった。あたしは心からそう思った。
あたし達は黒神家を目指し、竹林の中を歩いて行く。この竹林は、あたしが持つ
やがて竹林を抜けると、旧衛宮邸とは違う、和風の建造物が目に入る。だけど。
ごいん!
「あだっ!?」
見えない壁に、思いきりぶつかるイリヤ。
『イリヤさんってば、相変わらず面白おかしいですねー』
言ってあげるな、ルビー。
「ふーん、これがシールドの結界…」
「うん、そうだよ」
額を擦りながらのクロエの呟きに、答えるさくらちゃん。
「試しに[転移]で…」
「あ、クロエ…!」
あたしが止める間もなく、転移するクロエ。そして。
ばじゅっ!
「あばっ!?」
予想どおり弾かれた。
「こっちの[魔法使い]クラスの魔術干渉をはじき返せるほどなんだから、転移魔術は望み薄よ?」
「もう少し早めに言ってほしかったわ…」
愚痴るな、クロエ。アンタの短絡的行動が原因なんだから。……ん? あたし? そんなの、棚上げするに決まってる。
「それじゃ、ルビー!」
「サファイア!」
『はいはーい』
『了解です、美遊さま』
『『
……ちっ! 省略バージョンか。
「
「
どおおおおおっ!!
ふたりの攻撃が炸裂するが。
「うそ…」
「ビクともしない!?」
驚愕するふたり。
「こういう時になのはちゃんの、星光集束斬・改[スターライト・ブレイカー]があれば…」
イリヤ、無い物ねだりするんじゃないの。いや、確かに使えたら、うれしーけどもっ。
「次はわたしの番よ!」
そう言ってクロエは、投影した捻れた剣の矢…、確か
「チィッ!
クロエは慌てて向きを変えて矢を放ち。
「
炸裂させて、複数の矢を弾き飛ばす。しかし更に、第二陣の矢が降り注ぎ。
「
クロエの光の盾がそれを防ぎきった。
「これって、アローの攻撃!?」
「さくらちゃん、戸惑ってる場合じゃないわ! イリヤ達とアローをお願い!」
「えっ、でも…」
さくらちゃんは結界を見た後、知世ちゃん、そして聖名さんを見る。
「結界はあたしがなんとかするわ。聖名さんは、自分の身は守れますよね?」
「ああ。あの矢は強力すぎて、範囲を広げると無理だけど、自分ひとりくらいなら」
うん、素直で結構。こんな時に変に見栄を張られると、不要な被害が出かねない。
「クロエはあたしと、当然あなた自身を! そして知世ちゃんは、
あたしが声をかけた瞬間、雪兎さんが白い翼に包まれ、それが展開すると
「「「えええっ!?」」」
イリクロと美遊が驚きの声を上げるが、今は無視。
「お願い、出来ますか?」
「……私の主はさくらなのだが。しかしさくらの大事な友達だ。全霊をもって守らせて貰おう」
「ありがと!」
あたしはウィンクをし。
「
知世ちゃんは笑顔で言った。
「
「
イリヤと美遊が上空から複数の魔力弾を、矢の飛来してきた辺りへと撃ち込んでいく。すると今度はそこへ目がけて矢が飛来する。
「物理保護・
美遊の前に出たイリヤが、物理保護の錐形展開で矢を躱していく。
「
一方、ようやく納得してくれたさくらちゃんが、フライを発動して上空へ飛び立つ。今度はそこを狙って矢が飛来するが。
「
イレイズのカードを使い、飛来する矢を
「せめてアローが、どこにいるのかわかれば、封印できるんだけど」
「ん? アローの姿が見えればいいって事だよね?」
さくらちゃんとイリヤのこの会話、ここまで聞こえるわけじゃなく、ルビーから送られてきた音声を
「あのー、聖名さーん! 竹林の一部、破壊してもいいですかー?」
「え? うーん…、わかった!俺の責任で許可するよ!」
大きな声で聖名さんに確認を取るイリヤ。わざわざそう聞いてきたって事は、あたしがあげた、アレを使う気ね。
イリヤが何かを取り出す仕草をする。そう、確認こそ出来ないけど、あたしが創った、術を封じ込めた
ここからだと竹がスクリーンになって下までは見えないけど、イリヤは硝子玉を、アローがいると思われる辺りに投げつける。
どぐわしゃあっ!!
「
硝子玉が地面に触れた、と思われる瞬間、盛大に土砂が巻き上げられた。イリヤがあたしのマネして言ったとおり、硝子玉には爆裂陣が込められてたんだけど…、イリヤってば、三つ全部使ったわね?
本来、竹のように地下茎が張り巡らされてたら、土砂を噴き上げても地下茎が支えになって倒れない。いくら
だが、本来の七割程度とはいえ、三つ使えば単純計算で2.1倍。実際はも少し減少するだろうけど、2倍近い威力となる。そのせいで竹が一緒に吹き飛ばされたのが、ここからでも確認できた。
……アレ? もしかして硝子玉大量に同時使用すれば、コピー・レゾがやったくらいの威力も出せるのでは?
などと、下らないことまで思考し始めたところで、さくらちゃんが突如急降下した。竹に姿が隠された辺りで。
「
という声が聞こえる。……どうやら後は大丈夫みたいね。
ここから先は劇場版一作目で見た、アローをカードに変えるシーンに似た展開になるはずだ。相手も一度経験してるとはいえ、イリヤと美遊が一緒だからなんとかなるだろう。
さて、それじゃあこちらも、さっさと片付けるとしましょうか!
あたしはクラスカードと改良黒鍵を取り出す。さすがに
「クラスカード[セイバー]、
カードを宛がった黒鍵が[光の剣]に姿を変える。
「光よっ!」
刀身を外し、光の刃を生み出すと、あたしは剣を上段に構え。
「ハッ!!」
裂帛の気合いと共に、一気に振り下ろす。すると結界は軽い抵抗があったものの、光の刃にあっさりと切り裂かれた。
結界は消え、そして…?
あたしは違和感を憶える。
「わあ、本当にシールドの結界を破ったんだ!」
アローを回収したんだろうさくらちゃんが、こちらへと駆けつけてくる。
「……ん? リナ、どうかしたの?」
イリヤは、あたしの様子がおかしいことに気がついたようだ。
「……結界を破ったのに、カードもシールド本体も出て来ないのよ」
「え?」
「ホンマか?」
尋ねるさくらちゃんとケルベロスに、あたしは頷いた。
「……それは、あの少女に聞いた方が早いかも知れないな」
え?
「……[
そう言いながら現れたのは、あたし達と同年代の少女。
「……
聖名さんが戸惑いながらに言う。そう、その少女の長い髪は、まるで銀糸のよう。しかしながら顔だちは、明らかな東洋人のもの。
「[
「そういう、こと…」
まったく、回りくどいことを。
「要はソードと力試しをしろ、って事でしょ? ね? キャナル!」
あたしは彼女に言うのだった。
さすがに今回は、イリヤ達とさくらにも活躍して貰いました。
今回登場のオリジナルキャラクター黒神
そして最後に登場した人物。リナが言った、「キャナル」という名前。ヴォルフィードは付きません。神話の方の彼女です。
何故彼女がここにいるのか、の説明のため、外伝小説二話分も、別作品としてあげました。
↓↓↓
https://syosetu.org/novel/234529
まだ、序盤もいいところなんですけどね。
次回「さくらと天使と天才魔道士」
さくらと一緒に、レリーズ!