Fate/kaleid caster ドラまた☆リナ   作:猿野ただすみ

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サファイアが壊れた(笑)


遥けき彼方より、此方まで

≪リナside≫

あたしの告白に、部屋はまたもや静まり。

 

「あー、その、よく無事にすんだわね?」

『「無事にすんだわね?」ではありません!』

 

動揺した凛さんが返した言葉に、サファイアが反論する。

 

『リナさまも! とんでもないことをしたという自覚はないのですか!?』

「いやー、ガウリイの命と引き替えだったもんで、つい」

『個人の命と世界を天秤にかけないでください!!』

「スィーフィード世界での事だし、みんな無事だったんだからいーじゃない」

『反省の色がないいいいっ!?』

 

失敬な。反省くらいしたわよ、ほんのちょっとくらいは。

 

『いやーしかし、リナさんもなかなかですねー。こんなに取り乱したサファイアちゃん、初めて見ましたよ?』

「そーいうルビーは、結構落ち着いてるわね?」

『サファイアちゃんが取り乱したので、逆に冷静になっちゃいましたよー』

 

なるほど。こんだけ取り乱した人? がいれば、周りも冷静に、とゆーか、さすがに引くわ。

 

「……それで、サファイアは何故そんなに取り乱してるの?」

 

やはりマスターとして気になったんだろう、美遊が尋ねる。

はぁ、仕方がない。秘密を打ち明けると腹を括ったんだ。

 

「それにはまず、『混沌の海』について説明しなきゃなんないんだけど…」

 

そう切り出し、あたしは以前サファイアに説明したのと同じことを、みんなに話して聞かせた。すると凛さんが。

 

「それって、私たち魔術師が目指すべき頂、『根源』が明確な意思をもったみたいな感じなのかしら?」

 

金色の魔王(ロード・オブ・ナイトメア)の説明まで終えたあたしに尋ねてきた。

でもそうか。魔術師にとって根源ってのは、共通認識されてるものなのか。

 

「……そうね。ルビーの推察では類似、もしくは同質だってことだけど?」

「そう、ルビーも同じ意見か」

 

凛さんは腕を組み、軽く頷く、が。

 

「ん? ちょっと待って! なんでルビーがこれを知ってるわけ!? それに取り乱したってことはサファイアも…!」

 

そりゃあさすがに気付くよなー。いや、でも。

 

「凛さんが言いたいことはわかるけど、ちょっと待って。さすがにこのまま質問に答えてると、要領の得ない話になりそうだから」

「そうね。よほどわからないことでもない限り、質問は控えた方がいいんじゃないかしら?」

「あ、はい…」

 

アイリさんの援護で素直に頷く凛さんだった。

 

 

 

 

 

「それじゃあ説明を続けるわよ。

とりあえず、『金色の魔王』が『混沌の海』の意思なのはわかったわね? ()()は混沌という特性から、スィーフィード世界では魔族と関連付けて捉えられてたわ。実際冥王も、『魔族(じぶん)たちの母』って認識だったし。

混沌、魔族の母。ここまで言えば、サファイアが何に取り乱したかわかるんじゃないかな。

はい、ルヴィアさん!」

 

あたしはいきなり、ルヴィアさんを名指しで指を差す。

 

「えっ? ええと、貴女が発動させた術は[金色の魔王]の力を借りたもので、その制御に失敗して乗っ取られた…?」

「うーん、あたしとしては、もう少し突っ込んだ解答が欲しいんだけど。

てなわけで、凛さん!」

 

自分に回ってくるのを予想していたんだろう、凛さんは落ち着いた様子で答える。ただし、頬には一筋の汗が。

 

「[金色の魔王]に乗っ取られたということは、本当ならリナを起点として、世界が混沌の海へと還る、つまり消滅するはずだった…?」

「正解。補足すると、さっきは『闇を引き込む術』って言ったけど、正確には『虚無を引き込む術』よ」

「……そりゃあ確かに、『個人と世界を天秤にかけないで』だわ」

 

クロエがため息を吐く。

 

「実のところ、冥王がポカしなかったら、マジで世界が滅んでただろうし」

「ポカ?」

「うん。アイツってば、あたしが[金色の魔王]に乗っ取られたのに気づかないで、攻撃しちゃったのよ。で、怒ったアレに反撃されて、ビックリして逃げ回って。

結局アイツは滅ぼされたんだけど、あたしっていう人間を核とした顕現じゃあ容量が足りなかったんでしょうねー。力の使いすぎで物質世界での維持が出来なくなって、混沌の海へと還っていったってわけ」

 

あたしの説明に唖然としつつも、ルヴィアさんが口を開いた。

 

「なんだか、遠坂凛(トオサカリン)のような間抜けっぷりですわね」

「ルヴィア、あんたねぇ…」

 

あまりにもと言えばあまりにもな言いように、凛さんが反論を試みるけど。

 

「うん。あたしも言ってて、凛さんのうっかり思い出した」

「リナまで…」

 

あたしが同意したことで項垂れてしまった。

 

「ね、ねえリナ。お願いだからそんな危険な術、使わないでね!?」

「いや、使う気なんて更々ないけど…。

ああ、これも言っとかないとね。話の流れをみてもちょうどいいタイミングだし」

 

イリヤに言い返しつつ、重要なことを言っていないことに気がついた。

 

「あたし、[混沌の海]と繋がってるから」

「「「「「「は?」」」」」」

 

六人の声が見事にハモる。

 

「なんでもそのお陰で、世界の隔たりを越え、スィーフィード世界の魔族の力を借りた黒魔法を使えるらしいわ。魔術回路が無いのに術が使えるのも、向こうの法則が反映されてるんでしょうね」

 

魔術回路が無いって発言に驚きつつも、ルヴィアさんがあたしに尋ねてくる。

 

「しかしそれは、下手をすれば[金色の魔王]に乗っ取られるということでは…」

「あ、とりあえず今のところ、その心配はないって」

 

原則質問禁止だけど、さすがにルヴィアさんも不安だったろうし、これは仕方ないでしょ。

 

「それについては[ランサー]のカードの英霊に聞いたから」

 

ぴくり

 

このセリフに反応したのは、意外にもアイリさんだった。もちろん質問のような、自分の興味を他者に知らしめるような真似はしてないけど。

 

「そういえば前に、リナの秘密とカードの英霊が関係してるって言ってたね」

 

あー、そういや3枚のカード回収のときに、そんなこと美遊に言ったっけ。

 

「そうね。この…」

 

言って3枚のカードを取り出し。

 

「[バーサーカー]、[ランサー]、[セイバー]の英霊全てがあたしと関わりあるわ」

 

カードを扇状に広げ、図柄をみんなに向けながら説明をする。

 

「まずバーサーカーの英霊にカードの使い方を教わり、ランサーの英霊からあたしの術が使える理由を説明され、セイバーの英霊はカードには応用した使い方があるって言われたわ」

 

あたしは敢えて、あとのひとつは言わなかった。アイリさんのあの話に繋がるようなことは、凛さんルヴィアさんの前で言わない方がいいって思ったからだ。

 

「そしてこれが、カードの本来の使い方。

……クラスカード[セイバー]、夢幻召喚(インストール)!」

「え…」

「夢幻召喚!?」

 

イリヤとクロエが驚きの声をあげた。

そりゃそうだろう。()()()()()なんとなく使っていた夢幻召喚を、あたしが今、この場で使って見せたんだから。

今のあたしの姿は、()()()()ガウリイの格好から胸甲冑(ブレス・プレート)のみがない状態。右手にはもちろん。

 

「それって、バーサーカーを倒した時の、剣…!?」

 

凛さんは言いながら、驚愕の表情に変わっていく。どうやら気がついたようだ。この剣の特性から、その素性を。

 

「これは[烈光の剣(ゴルン・ノヴァ)]。通称[光の剣]て呼ばれてたわ」

「[光の剣]!? それでは、その英霊の名は…!」

 

あたしは頷いて、ルヴィアさんの言葉を引き継ぎ言った。

 

「真名ガウリイ=ガブリエフ。前世でのあたしの旅のパートナーにして、生涯のパートナーでもあったひとよ。

そしてバーサーカーは魔法剣士のゼルガディス=グレイワーズ、ランサーはセイルーンの姫にして武闘派の巫女、アメリア=ウィル=テスラ=セイルーン。

みんな、あたしの仲間だったひとたちよ」

 

言ってて、当時のことが鮮明に思い出されてきた。

シルフィール、ミルガズィアさん、メフィ、ルーク、ミリーナ…。あと、おまけでナーガ。いろんな人たちと旅をしてきた。

時には辛い決断を迫られることもあったけど、それでもあたしにとっては大切な記憶だ。

長い時の中で忘れてしまったこともあるけど、きっとこの二度目の生涯が終わるまで、この事は忘れることはないだろう。

……おっと、いけない。つい感傷に耽ってしまった。今はまだ、説明の途中である。

 

「実はこの3枚のカードを回収するために黒化した彼らを倒したあと、わずかな時間だけど正常な英霊として実体化したの。

どうやらそうなるように仕掛けがしてあったらしいけど、あたしにも詳しいことはわからないわ」

『ほんと、ガウリイさんが実体化しときは、感極まって泣いてましたからねー』

 

すこーん!

 

あたしの投げた小刀の刀身が、ルビーの輪っかと中央の星の飾りとの隙間を通り、ルビーごと壁に縫いつけた。

 

「ルヴィアさん、あとで弁償します」

「いいえ。気にしなくてもよろしいですわ」

『姉さんには私から、きつく言っておきます』

「ありがと」

 

まったく、ルビーときたら…。

 

『いやー、まさに[体は子供、心は魔王]の…』

烈閃槍(エルメキア・ランス)!」

 

ぼひゅっ!

 

『あばっ!?』

 

やっと静かになったか。物理破壊は無理でも、精神攻撃は効いたみたいね。

 

「話が逸れたけど、そんな諸々の事情があってサファイアとルビーには説明してあったってわけ」

 

言ってから美遊に向き直り。

 

「だから、あのときはごめんね、美遊」

「……いいよ。リナが隠したかった気持ち、少しはわかるから」

 

美遊が許してくれて、ちょっと心が軽くなる。

なんだか、イリヤとアイリさんが同じ表情で惚けてるけど、事情を知らない二人には、何がなんたかってことなんだろう。

 

「ふう…。ようやく貴女が時々見せる、年齢に相応しくない態度のわけがわかりましたわ。

蓄積された年月だけではなく、その生きざまにこそあったのですね」

 

う、むう…。そんな評価されるほどのもんでもないと思うんだが…。

 

「世界を越えて、遥か彼方から助けに来てくれる仲間、か。ちょっと羨ましいわね」

 

クロエが少し淋しそうな笑顔で言った。この子は、まだわかってないなぁ。

 

「ちょっと、クロ。わたしたちがいるじゃない」

「イリヤ…」

 

そう。クロエはもう、独りぼっちなんかじゃない。となりにはイリヤがいる。もちろんあたしや美遊だって。その事を忘れないでいてほしい。

 

 

 

「ま、リナの説明でもうひとつ、別の謎の一端はわかったわね」

 

ん? 凛さん?

別のって、なんか謎なんてあったっけ?

 

「ああ、大師父のことですわね?」

 

あ、宝石翁…。キシュア・ゼルレッチ・シュバインオーグ。

凛さんとルヴィアさんが大師父と仰ぐ人物で、ルビー、サファイアの製作者。そして、魔術ではなく魔法を扱う魔法使い。

確かに、謎はあった。彼は何故あたしを知っていたか、という謎が。

 

「宝石翁があたしを知ってるのは確かに謎だけど、ほんとにあの説明で理由がわかるの?」

 

あたしの疑問に凛さんが答えた。

 

「ええ。むしろ納得がいったくらいよ」

「大師父の性格も鑑みれば…。

貴女の憑依転生に一枚噛んでますわね」

「はい!?」

 

魔法使いが一枚噛んでるって、一体どういうことなのよっ!?




今回のサブタイトル
NG騎士ラムネ&40 聖なる三姉妹の聖なる祈りから

はぁ…、ようやくリナの説明回が終わった。いや、次回に持ち越してはいるけど、リナの秘密に関しては、というこで。
ちなみにリナに名指しされたルヴィアの解答がフワッとしてるのは、突然のことで対応しきれなかったからで、凛さんより劣っているというわけではありません。

次回「御三家」
見てくんないと、暴れちゃうぞ!
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