Fate/kaleid caster ドラまた☆リナ 作:猿野ただすみ
うーみゅ。宝石翁があたしの転生に関わってるって、また、突拍子もないことを…。でも、二人とも確信を持ってるみたいだし。
「ねえ。どうして宝石翁が転生に関わってると思ったの?」
あたしの質問に二人は、したり顔で言う。
「簡単な理由よ。大師父が魔法使いたる所以だもの」
「大師父が扱うのは第二魔法、[並行世界の運用]ですわ」
並行世界の運用!?
「あのー、並行世界ってパラレルワールドのことだよね? それって、パラレルワールドを自由に移動できるとか、そ-いうことなのかな?」
たぶん、マンガやアニメで得たんだろう知識でイリヤが尋ねた。
「そんな単純なことではありませんわよ、イリヤスフィール。
並行世界の運用とはすなわち、並行世界への干渉をも意味するもの。観測された世界の本来あるべき歴史的な流れを、改竄する事も可能と聞きおよびますわ」
おいこら、何じゃそのチートレベルの能力は!? いや、魔法使いがとんでもない能力を持ってるのは聞いちゃあいるけど、時空レベルの干渉なんて、すでに人間の域超えてるでしょうが!
『まあ、それでも以前ほどの能力は無いみたいですねー。今はちょっとした切っ掛けを与えてから、傍から覗いて愉しんでるみたいですよ? あのクソジジイは』
復活したルビーが言った。
いや、それも十分とんでもねーから。というか、それって。
「ねえ、それってルビーと変わらないんじゃない?」
そう、まさにクロエの言うとおり。宝石翁の行動は、ルビーの普段の行いとなんらかわらない。
以前サファイアが言ってた「私達カレイドステッキを創った方」というのが、ルビーに限って言えばかなり的を射た表現だったとわかる。とんだはっちゃけジジイもいたもんだ。
おっと、話の要点はそこじゃなかった。
しかし、並行世界の運用か。うーん、でも。
「ねえ、凛さん。あたしは異世界からの転生よ? 並行世界の運用じゃあ、ちょっとばかし無理があるんじゃない?」
あたしの言葉に凛さんは、ニヤリと笑い言った。
「私達はこう言ったはずよ。一枚噛んでるって」
「あ…」
「
貴女はおそらく、[金色の魔王]の意思によって転生したのでしょうが、こちらの世界へ導いたのは大師父ではないのでしょうか? もしくは、こちらの世界への接続の補助をしたのかもしれませんわ」
『自分の愉しみのためなら、十分やりかねませんよ、あのジジイ』
なるほど。ルビーが毒づくのもわかる気がしてきた。とりあえず、直接関わり合いにならないのが吉なんだろう。
それにしても接続の補助か。
あたしが転生したのはあたしの意思だけど、その切っ掛けになったリナちゃんは、こちらの世界からやって来た。そして、あたしが光の柱を通ってこの身体に憑依転生したことを考えると、リナちゃんの魂と肉体のパスは繋がったままだったはず。うむぅ、宝石翁が関わっているとしたらこのあたりか。
しかしそうなると、あいつとの関わりも気になってくる。
獣神官ゼロス。
いつ、どこでかは知らないけど、英霊となったアメリアはあたしと[混沌の海]との繋がりについて、彼から聞いたそうだ。そしてそれは彼、もしくは彼らにとって困ったときのための[保険]であるらしい。
もしそちらも関わりがあるのなら、あたしたち人間にとっても重大な問題なんだろうか?
あたしがそんなことを考えていると、ルヴィアさんがひとつ息を吐いてから言った。
「さて。日も暮れたことですし、そろそろ話を切りあげることといたしましょう」
そうか。もう、そんな時間…。
ばっっ!!
あたしは慌てて携帯の画面を見る。そこには5本の着信通知が!
「リナ? どうしたの」
冷や汗をかくあたしを見て、イリヤが尋ねてくる。
「あたし、お母さんに連絡入れてない…」
我ながら、かなり途方に暮れた声で答えた。ほんと、どうしよう?
リナは自宅へ連絡を入れるために退室する。その様子を見て、凛がため息を吐き言った。
「あの子も結構、うっかり体質みたいね」
『[うっか凛]ならぬ[うっかリナ]ですねー』
凛に便乗する形でルビーが言う。もちろん、凛をからかうことも忘れずに。
「うーん。あとで優しく慰めてあげようかしら?」
「いやー、だめでしょ。クロの場合、そこで止まらなくてリナの怒りを買うのが目に見えてるよ」
「わたしもそう思う」
「わたしをなんだと思ってんのよ…」
リナを心配するクロエにだめ出しをするイリヤと美遊。さすがに若干ヘコむクロエだが、実はそのルートを選択していた場合、まさにイリヤの言うとおりの展開に発展していたのだ。何気にイリヤはクロエの救世主だったのである。
……閑話休題。
「さてと。私たちはそろそろお暇しましょう。セラもきっと心配してるわよ?」
そう言ってアイリは席を立つ。
「さ、イリヤちゃん。……ほら、
アイリに促されたクロエは、少しだけ顔を赤らめてモジモジとする。
(あら、可愛らしいじゃない)
そんなクロエの態度を見た凛が内心で思い、あたたかな視線を送った。
家に戻った三人は家族にクロエのことを親戚の娘と紹介し、晴れて衛宮家に迎え入れられることとなった。まあ、士郎の隠し子じゃないか発言や、クロエが士郎に熱い視線を送りイリヤがヤキモキするなんてイベントがあったのは、ほんのご愛敬である。
そして一息つき、アイリが夫妻の自室へ戻ると。
「誰、かしら?」
ベランダへのガラス戸に人影が浮かんでいることに気づき、声をかける。
「あたしよ。ここ、開けてもらえる?」
それは、先ほどまで一緒にいたリナのものだった。アイリはガラス戸を開き、彼女を招き入れる。
「どうしたの? お母さまから連絡が来てたって言ってたけど」
「あー、それは後でたくさん怒られることにするわ。それよりあたしは、アイリさんに尋ねたいことがあって来たのよ」
「尋ねたいこと?」
アイリはわざとらしく右人差し指を右頬に添え、軽く首を傾げる。
「そう。聖杯戦争について」
リナが率直に尋ねた途端に部屋の空気が張りつめたものの、彼女もこうなることは判ったうえでの発言だったので動揺することもなく言葉を続けた。
「言っとくけど、あたしは親友を犠牲にしてまで聖杯を使おうだなんて思っちゃいないから。ただ、アイリさんの発言や態度で気になるところがあったからね。
あとひとつ。さっきは凛さんたちがいたから言わなかったけど、セイバーの英霊、ガウリイが言ってたのよ。『聖杯を守りとおせ』ってね」
これにはアイリも目を丸くする。
少し間を開け、気を落ち着かせたアイリはリナに尋ねた。
「それで、わたしの何が気になったのかしら」
「そうね。まずアイリさんはこう言ったわよね。『イリヤには
でも、戦争と呼ばれるような儀式にその程度の能力じゃ、万能の願望器である聖杯と呼ぶにはランクが低いんじゃないかなーって思ったのよ。
ということは、イリヤにはまだ隠された秘密があるか、あるいはもうひとつ、本体となる聖杯があるんじゃないか。そう考えたってわけ」
リナの説明に沈黙をするアイリ。ならばと、リナは説明を続けることにする。
「そしてもうひとつ気になったのが、あたしが発した[英霊]って言葉にアイリさんが反応したってこと。
簡単に呼び出せる訳でもない英霊と話したことに驚いたってより、英霊そのものに関心を示したって感じだったからね」
はぁ…
アイリはため息を吐き、観念したかのように言った。
「リナちゃん。これから話すことは他言無用よ?」
「今後、聖杯戦争が大きく絡んでこない限り、口外したりはしないわ。それだって必要ないとこは言うつもりもないし。何だったら、呪術的な契約したって構わないわよ?」
「……そうね。本来なら
いいわ。リナちゃんを信じて話してあげる。
ただひとつ。どうしてそんなに聖杯戦争について聞きたいのか、それだけは教えてほしいの」
故に魔術師としては、「信じる」などという曖昧な理由で妥協したアイリ。それでも念を入れての確認に、けれどもリナはいやな顔ひとつせずに答える。
「……イリヤが関わった事件だけど、残念ながらおそらくまだ解決してないわ。そしてそれにはクラスカードも関係している。
カード契約の詠唱の中に[聖杯]って文言があるのよ。
つまりどういう形かは分からないけれど、カードは聖杯戦争と関わりがあるんじゃないかってこと。それなら…」
「私から詳しい事情を聞いた方が役に立つかもしれない、ということね。
わかりました。貴女の疑問に答えてあげます。情報の開示も貴女に一任しましょう」
いつもとは違う、凜とした口調と言葉遣い。おそらくこれが、アインツベルンとしてのアイリの姿なのだろう。
リナがお礼を述べると、アイリは静かに口を開いた。
「聖杯戦争。それは七人のマスターが七騎の英霊を
まずは六騎分の魂をもって、イリヤという存在を犠牲に小聖杯が完成するわ。
さらに小聖杯を使い、六騎の魂を座へと帰すその力で大聖杯が根源への道を創り、発生した余剰エネルギーによって願いを叶えることができる。そういったことなの。
最も魔術師の目的は根源へ至ることだから、願いを叶える力はおまけみたいなものだけどね」
アイリは憂いの表情を浮かべている。しかしそれだけではなく、何か自虐的なニュアンスも含まれていて。
「あ…」
リナが小さく声をあげる。
十年前、聖杯戦争が起きたであろうその頃は、まだ赤ん坊だったイリヤ。なら当時、小聖杯となる人物は他にいたはずで。
(アイリさんが十年前の聖杯戦争の…。ううん、それよりも…)
「イリヤは、
アイリは言った。
「……ええ。けれど前回、
それを聞いてリナはとりあえずの安堵をする。しかしそれと同時に、沸々と怒りがこみ上げてくる。
「魔術師はろくでなしの集団だって凛さんがもらしてたんだけど、そのシステム造った奴はどうしようもないクズね。
何かを成すのに犠牲が出るのは、いいことじゃないけど仕方がない部分もあるわ。でもコレは、犠牲が前提のシステムだもの。
あたしだって前世で散々人には言えないことをしてきたけど、コレは、……気に食わないわね!」
そんな言葉を聞きながらアイリは、苦笑いを浮かべる。
「耳が痛いわね。
聖杯戦争というシステムはね、御三家と呼ばれる3つの魔術師一族が役割を分担して築いたものなの。
聖杯を用意するアインツベルン。
土地を提供する遠坂。
そして英霊召喚システムを創ったマキリ。今は間桐と名乗っているわ」
「え…、凛さんや桜ねーちゃんも、聖杯戦争の関係者?」
リナにしては珍しいほど、目に見えて狼狽えている。
「いいえ。あの二人、それから間桐慎二くんは聖杯戦争のことは知らないわ」
「シンジ? ああ、あのワカメのことか」
あら、ひどいわね、などと言いつつコロコロと笑うアイリ。そして話を続けた。
「遠坂の前当主は、凛ちゃんにソレを伝えなかったようね。
間桐は当主が死んでから、叔父にあたる
他人事のように言ってはいるが、それとは裏腹に確信めいたものが感じられる。
「そう。……うん、その方がいいわ。どんな理由があったって、切った張ったなんて関わらないに越したことはないんだから」
かつてクリムゾン・タウンで命を散らした、将来有望だった少女を思い浮かべながら、リナは言った。
「さて、と。もう少し聞きたいことがあるけど、さすがにこれ以上遅くなったら不味いし、そっちは後日ってことでいいかしら?」
「ええ。ただし内密に、ね?」
「りょーかい」
リナは返事をし、ガラス戸に手をかけたところで再びアイリの方を向く。
「アイリさん。今日はタメ口きいたりしてすみませんでした」
「いいわよ、別に。私と対等に話をするために、わざとそうしてたのよね」
アイリの言葉にリナは軽く頷き、今度こそガラス戸の向こうへと消えていった。
今回のサブタイトル
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改めまして、お待たせしました。ようやくスマホに替えての投稿です。
ガラケーよりも打つのが楽、とか言いつつ、ローマ字入力だったりしますが。
さて、本編ですが、いつもより長いうえに説明しきれずに切り上げてしまいました。完全に構成ミスです。また説明回設けないと。
次回、収まれば一回、でなければ二回の日常回を挟んでコラボが始まります。タカヒロオーさんとこのなのは、フェイト、ユーノ、そしてリナ(全員小学生時代)をお借りします。ということは、原作番外編のあの話です。かなりオリジナル色が強くなりますが。AATMとか後ろ姿がゴキブリ似とか。
次回「しあわせのかたち」
見てくんないと、暴れちゃうぞ!