Fate/kaleid caster ドラまた☆リナ 作:猿野ただすみ
朝の教室。あたしは机に突っ伏している。
うん、まあ、想像はつくと思うけど、昨日あたしはお母さんに、こってりしっかり叱られました。
いや、覚悟はしてたのよ? ただ、最後に与えられた罰則が、あたしの心にスターライト・ブレイカーを食らわせた。
---リナ。今月のアニメウィークは無しよ
一瞬、頭の中が真っ白になりましたよ。
うがぁぁっ! あたしの楽しみがぁっ! 一体誰のせいじゃあって、あたしのせいだあぁっ!!
なんて部屋でのたうちまわってたけど、後の祭り、時すでに遅し。罰を甘んじて受けることにしたけど、気持ちが晴れるわけでもなし。
うう、今月はついに、ViVidを借りようと思ってたのに。こんなことなら劇場版無印とA'sをクッションとして入れたりするんじゃなかった。……いや、面白かったんだけども!
「どーした、リナちー。随分落ち込んでるみてーだな!」
龍子が声をかけてきた。
「まあアレだ。落ち込んでてもいいことなんてないんだぜ」
「おいこら、タッツン。命が惜しくはないのか!?」
「やっぱりバカだなー、タッツンは」
いつもなら何を失敬な、と思うとこだけど、今のあたしは沸点が低い。
ずぴしっ!
立てた人差し指を龍子の額に勢いよく当てながら。
「
「のはぁ!?」
バレないように放った烈閃槍を食らい、のけ反る龍子。もちろん、さすがに威力は抑えているけど。
なんだか向こうの方で驚愕の表情であたしを見てる美遊がいるけど、別に気にするほどのもんでもないだろう。気も晴れたし。
と、そこへ。
どだだだだだだ!
ざっしゃああ!
すごい勢いで駆け込み、二人一緒にヘッドスライディングをするイリヤとクロエ。
……一体何があった?
「どっちが姉か、ねえ…」
聞いてみればなんて子供っぽい理由だろう。いや、イリヤは確かに子供だけど、クロエが関わるとより幼稚になるというか。
「ちょっと、そんな呆れた目で見ないでよ。
ママに煽られたってのもあるんだから!」
「ふぅん、なんか言われたの?」
「ええと、言ってたこと、そのまま言うよ?
『姉---。
そう、それは年長者にして権力者。
弟妹が発生した瞬間から、その上に立つことを宿命づけられた上位種である。
家庭内ヒエラルキーにおいては男親を超越した権力を有することすらあり、特に弟妹に対しては生涯覆らない絶対的な命令権を持つ。
彼の者曰く…。
[姉より優れた妹などいねぇ!!]』
……だって」
うわぁ、随分と偏った見解ねー。
「ねえ、リナ。前世でお姉さんがいるって言ってたよね? どんなお姉さんだったの?」
う…。
「……まさに上位種よ。人類種で姉ちゃんに敵う奴はいやしないわ」
「ちょっと、冗談はやめてよ」
うむ。普通は冗談だと思うよなー、やっぱり。それなら…。
「ふつーの剣で
「すいませんでしたっ!」
わかればよろしい。
「誕生会?」
クロエが雀花に聞き返す。
「そう。7月20日にイリヤの誕生会を海でやろうと思ってるんだけどさ」
そう、昨日話していた誕生会のことだ。でも、イリヤの誕生日ってことは多分…。
「実はその日、私も誕生日なの」
「うええええっ!?」
やっぱりそうきたか。クロエもイリヤなら、十分あり得るとは思ってたけど。
「あの…」
ん、美遊?
「イリヤの誕生日って7月20日なの?」
「え? そうだけど…」
「わたしも同じ日…、誕生日……」
……………………。
「「「「「「「おおおおおおおお!? 三人が同じ誕生日!!?」」」」」」」
いやいや、クロエはまだしも、さすがにこれは偶然が過ぎるでしょ!?
「おおお俺も同じ誕生日だぜ!!」
「嘘つけーっ!」
龍子が話に乗っかり那奈亀がツッコミを入れる。
「リナの誕生日はいつなの?」
「ん? あたしは7月28日よ」
美遊の質問に答えるあたし。そう。実はあたしとイリヤ、それと今し方判明したクロエと美遊の誕生日は近いのだ。
「7月28日。獅子座生まれ。誕生花は…」
「それ以上言うなーッ!!」
相変わらずの知識量を披露する美遊を、あたしは大声で制した。
はっきり言って、誕生花は知られたくない。正確に言うと、いくつかある誕生花のひとつを知られたくないのだ。
あたしの考え過ぎなんだろうけど、もしもあのことに気付かれでもしたら…。
そんな心配をよそに、三人一緒の誕生会ということで話はまとまった。
「姉の威厳がない!」
トイレでいきなりイリヤは言った。
何のことかわからない雀花が聞き返すと、クロの姉的存在なのに姉っぽい威厳がないとのたまった。そして姉らしく振るいたいと、四神(三人)+αに尋ねる。
「うちのねーちゃんの場合だとモテカワっぽいふんわり美人だよ」
最初は那奈亀。奈菜巳さんはあたしも会ったことあるからよく知ってるけど、あのあざとさの割には下級生には人気があるらしい。わからんものだなー。
「ウチのおねぇはいいもんじゃないなー。ベタとかトーンとかコキ使うくせに、ちょっと気に入らないとガスガス蹴ってくる。
まぁ、機嫌がいい時は、たまにプリンとか買ってきてくれたりするけど」
うーん、雀花んとこは、姉妹そろって腐女子だったか。
しかし雀花のねーちゃん、ちょっと
「みんな、あめーな! 何より重要なのは力だろ、力!
兄貴は強ぇから兄貴なんだよ!!」
うん。龍子はやっぱり
「わたしはひとつ下の弟がいるから、わたしがお姉ちゃんってことになるんだけど、あんまり姉の威厳とかはないと思う。
『姉ちゃんはなんか危なっかしい』ってよく心配されるし」
んー、美々の場合、なんか別の意味で危なっかしい気が。何というか、時々雀花と同じモノを感じたりするのよね。
「で、どうよイリヤ。参考になった?」
「うん…。とりあえず、全部やってみる!」
「この…、おバカさんどもーッ!!」
すぱぱぱぱぱーーーん!!
「あっ!!」
「いっ!」
「うっ?」
「えっ??」
「おっ!?」
あいうえおって、アンタらマンガか?
「えっ、リナ? いつの間に!?」
「アンタらの会話がきこえてきたから、トイレの扉の前で聞き耳を立ててたのよ」
って、れいせーに考えると結構恥ずかしいことしてたような。いやいや、そこは気にしちゃいかんでしょ。
ともかく。
「イリヤ。アンタまたテンパって勢いまかせに行動しようとしてるでしょ?」
「えうっ!?」
「冷静になってそのヴィジョンを想像してみなさいよ」
あたしが言うとイリヤのみならず、他のみんなも思案顔になり。
数秒後には全員から、つうーっと汗が流れる。
「なんだかクロから、悪い意味で心配される映像しか見えない…」
代表して答えたイリヤに、あたしは神妙にうなずく。
「アンタらが勢いまかせに行動すると、大概痛い目を見るからね。」
「いや、リナも結構勢いまかせだろ?」
雀花の反論にあたしは、半ばおどけて言い返した。
「あたしは考えた後の勢いまかせだもの。勢いだけの時は大概失敗するし」
自称あたしのライバルと旅してたときは、それが原因で痛い目を見たことが結構あった。
「うー、だったらどうすればいいのよぅ」
半ば拗ねたように聞くイリヤ。あ、ちょっと可愛い。
「それは自分で考えなさい。
言ったでしょ? あたしは基本、中立だって。今回は見るに見かねて口出ししたけど。」
「えっ、それってまだ続いてたの!?」
「とーぜん」
今はまだ、ね。
わたしはリナに諭されてから色々と考えてみた。そして気付いたのは、みんなの意見を合体させたら、属性多過ぎ!
属性を詰め込みすぎたヒロインなんて、クソゲーにしかならないって落とし神なら言うと思うし! ……いや、ギャルゲーのヒロインになりたいわけじゃないけど。
どっちにしても、四人の意見を取り入れてもすぐに身につくわけじゃないし、それぞれの属性がけんかしちゃうのが目に見えている。つまり、どれかひとつを参考程度にお手本にした方がいい。そう結論づけることにした。
放課後。わたしは一緒に帰る美遊に断りを入れて、少しだけ寄り道をして買い物をする。それを不審に思った美遊が尋ねてきたので、今朝と学校であったことを教えてあげた。
「そう、そんなことが…」
「うん。リナが諭してくれなきゃ、生き恥を晒すとこだったよ」
ほんと、今冷静に考えると、とんでもないことするとこだったんだと心底思う。
『私としては、あのまま突き進んでくれた方が面白おかしい展開になってくれて、ありがたかったんですけどねー』
「そこは止めてよー」
『いえいえ、神秘の秘匿のためにもあの場に登場するわけにはいきませんでしたから』
「本音の後に建前を言っても、意味がないと思う」
『美遊さまのおっしゃるとおりです』
うん。できれば本音は、隠したままにしてくれた方がありがたいんだけど。
「……でも確かに、クロには早めに釘を刺すというか、鎖をつけておく必要があるかもしれない」
え…?
「クロは精神的に不安定な上に破壊行動で物事を解決しようとする傾向が強い。その性質がすぐに変わるとは思えない。それに……。
ううん。とにかく油断しない方がいいと思う」
あのとき、わたしたちが駆けつけるまでのあいだ。
クロの中に何かを見たのかな…。
「ただいまー」
そう言って扉を開けると、玄関にはすでにクロの靴が脱ぎ捨ててあった。
別にたいしたことするわけじゃないのに、心臓がバクバクしてきた。私は気を落ち着かせるため深呼吸をし、リビングへ足を踏み入れる。
「クロー、お土産買ってきたから一緒、に?」
「ん、お帰り」
ソファーに腰掛けながら、クロはプリンを食べていた。しかも
「なに、間抜けた顔してんのよ。イリヤの分もあるわよ」
え…。
「これ、クロが買ったんだよね。どうしてわたしの分まで…」
「いちおう、これでも感謝してるの」
ふぇ、感謝?
「あのときは本当に終わりだと思った。
勝手に生み出されて。
勝手に封印されて。
ワケもわからず復活して。
なのに、なにも成さずに消えていくんだ、って」
クロ…。
その独白に声をかけようとしたけど。
「そんなの、冗談じゃないわ!
うかつにも弱気になって諦め発言しちゃったけど。
冗談じゃない! そんな簡単に消えてたまるもんか!」
クロのその発言に、わたしはホッとしながらも。
「わたしとしては、もうちょっと弱気でいてくれてもよかったんだけどねー」
なんて軽口を入れてみたり。
「あなたねぇ…。
ちゃんと責任はとってよね」
へ? 責任?
「……相性は最高だったみたいなのよね。一番効率がよかった」
「は?」
「だからっ!
わたしが在るためには魔力が必要なの!
魔力は何もしなくても、少しずつ消費されてくの!
いつかはまた
うう、なんとなく予想はつくけど…。
「つ、つまり…」
聞き返さずにはいられない。
「また、魔力供給…、よろしくってこと」
あー…………。
「それは別にいいけどっ! どうしてそんなに照れてるのよっ!?」
そう。クロってば顔を真っ赤にして、視線をそらして。
同じ顔なのに、思わず可愛いなんて思っちゃったじゃない!
「ミユとかミミとか、チューチュー吸いまくってたくせに! 急にしおらしくなんないでよねー!!」
「う、うるさいっ!
こっちにも色々あるのよっ、心の整理とかッ!」
ぜはーっ、ぜはーっ……
「……ところでイリヤ、お土産とか言ってたけどなに買ってきたの?」
いきなりクロが、話をそらして聞いてきた。って、何でこのタイミングで。
ばつが悪いけど、わたしはコンビニ袋の中から買ってきたものを取り出す。それを見たクロは、あっけにとられた顔をして。
「ゼブンのプリン…、しかも高いやつ」
そう。わたしは奇しくもクロと同じものを買ってきたんだ。
「どうして…」
「この間、クロには悪いこと言っちゃったから。
他の人たちもそうだけど、一番傷ついたのはやっぱりクロだと思うから、これはお詫びのしるし」
もちろん最初は姉的行動のつもりだったんだけど、選んでるうちにそんな気持ちになってた。ミユには、あんなこと言われたから話さず終いだったけど。
「クロ。姉の座争いは、今日のところは終わりにして、一緒にプリン食べよ」
「……しょうがないわね」
クロが少し呆れながら言った。それって姉っぽいけど、今はそんなことはどうでもよくって。
わたしたちは仲よくプリンを食べた。
「夕食前にプリンを2つも食べるなんて、なにを考えているのですか!」
そして、二人仲よくセラに叱られました。
今回のサブタイトル
桜玉吉「しあわせのかたち」から
1話にまとめることができなかったので、次回も日常回です。オリジナル部分入れすぎた(笑)。
さて、リナが知られたくなかった、誕生花。7月28日は「オシロイバナ」「ナデシコ」「ツユクサ」「コマチソウ」などですが、知られたくなかったのは「ナデシコ」。その理由は、ナデシコの英名を調べていただければわかるかと思います。ヒントは■■■のリナ。
ついでに言うとナデシコは7月14日、7月22日の誕生花でもあるのですが、28日にした理由は獅子座だったから。リナだったら獅子座か乙女座が似合いますよね?
次回「ゆめ色クッキング」
見てくんないと、暴れちゃうぞ!