Fate/kaleid caster ドラまた☆リナ   作:猿野ただすみ

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何気に伏線回収してたり。


魔法少女リリカルなのは

≪リナside≫

クロエと共に探索を始めて十数分。

 

「ほんと、おかしな空間よねー」

 

探索に飽きはじめたクロエが独り言のような、話しかけるような、曖昧な口調で呟いた。

いちおー、あたしに話しかけてる前提で言葉を返す。

 

「何て言うか、これと似た雰囲気の空間なら体験したことあるわよ」

「え? そうなの?」

「ええ。向こう、スィーフィード世界でね」

 

そう。この空間は、魔族が創った亜空間に何となく似ているのだ。もちろん似てるだけで同じとも思えないんだけど、なんだか引っ掛かるのよねー。

と、雑談をしながら進むうちに、何やら妙な気配を感じた。そう、誰かが戦っているような…。

 

どおおぉぉ…ん

 

いや、マジで戦ってる!?

 

「クロエ!」

「わかってる!」

 

クロエはスピードをあげて爆発音のした方へ進む。しばらく行くと上空に、翼を生やした無数の、って、あれ羽根つきのレッサーデーモンじゃない! なんであんなものが!?

 

「リナ! 囲まれながら戦ってる人がいる!」

 

言ってクロエが指差す方を見てみると…。いた!

確かにレッサーデーモンに囲まれて戦う、一組の男女の姿が…、え? ちょっと待って!?

金髪をツインテールにして黒い衣装を身に纏った、10才くらいの女の子。手にはハルバードを思わせる武器が、大鎌のような光刃を創り出している。

その衣装には見覚えがあるし、その子の見た目も()()()()()()()()()()()()()()()()っていうイメージそのまんま。

もう一人の少年も10才前後で、ブラウン罹った金髪の少し女の子っぽい顔立ち。額には鉢金、衣装は和服っぽい感じ、……陣羽織を纏った戦国武将風のいでたちで、手には光の刃を生み出す剣が握られていた。ナリはそうでもないけどその顔は、やはりある少年を彷彿とさせる。

しかし、あの剣ってまるで…。

と、その時。大分近づいたからか、二人の話し声が聞こえてきた。

 

「今から広範囲の術を使うから気をつけて」

「わかった」

 

少女の言葉に少年が承諾をする。その声も、あたしが知るものによく似てる。

 

「サンダーレイジ!!」

 

少女が放った雷撃が彼女を中心とした広範囲を襲い、レッサーデーモンの半数以上を塵へと還した。しかし残ったデーモンたちが、再び二人へ襲いかかろうとする。

 

「クロエ」

「わかった」

 

クロエは頷き。

 

投影開始(トレースオン)!」

 

投影した捻れた矢を弓につがえ、

 

偽・偽・螺旋剣(カラドボルグⅢ)!」

 

敵の群れの真ん中へ射た。

 

「ばかね! 避けなさいっ!!」

 

クロエの放った言葉に気がつき、上空の二人は慌てて逃げる。

矢はレッサーデーモンの一匹に命中する、その直前に。

 

壊れた幻想(ブロークン・ファンタズム)!」

 

どぐおぉぉぉん!!!

 

クロエの掛け声とともに矢は大爆発を起こし、多くのデーモンたちを巻き込んだ。

壊れた幻想(ブロークン・ファンタズム)。あらかじめ聞いてはいたけど、コレほどの威力とは。

神秘を秘めた武具に込められた魔力を、起爆剤として炸裂させる使い捨ての技。投影品をいくらでも造り出せる、アーチャー(クロエ)だからこその技でもある。

 

「クロエ…」

 

あたしはクロエの耳元に口を寄せて指示を出す。軽く頷くのを確認して、呪文の詠唱を始めた。

一方クロエは、一旦その身を屈め。

 

だんっ!

 

敵に向かって力強く跳躍する。

敵に近づく中、()()()二人の驚く顔が視界を掠めるけど、今は目の前の敵!

 

烈閃牙条(ディスラッシュ)!」

 

射程範囲に入った瞬間、あたしは術を発動させる。精神にダメージを与える数条の光の槍がデーモンたちに命中、消滅させた。

 

投影(トレース)…」

 

クロエは敵のさらに上に、複数の刀剣類を投影し、そのまま落下させた。

名もない、それでも神秘を秘めた魔剣、聖剣が敵に突き刺さり、その数を減らしていく。

 

「サンダーレイジっ!!」

 

さらに少女の、二回目の広範囲雷撃魔法攻撃で、残りを一桁にまで減らし。

 

「ハアッ!!」

 

少年が振るう剣によって、最後の一匹までもが消滅した。

その勇姿を見届けなから落下していくあたしたち。このままだと、水面に叩きつけられるけど。

 

浮遊(レビテーション)

 

唱えた術で落下は止まり、そのままゆっくりと近くのビルの屋上に移動して降り立つ。

それを追いかけるように、二人の魔導師もあたしのすぐ近くに降り立った。

うん、この二人ってやっぱり…。

 

「「リナ…?」」

 

はい!?

 

「ちょっと、あなたたち! なんでリナのこと、知ってんのよ!?」

「いや、なんでって言われても…」

 

少年が言い淀んでいる、そのとき。

 

『……リナ、聞こえる!?』

 

更衣室に行ったときに念のために持ってきた[遠話球(テレフォン・オーブ)]から、イリヤの声が聞こえてきた。

 

「聞こえるわよ。どうしたの、イリヤ」

 

遠話球をつまみ、口許まで持ってきて返事を返す。

 

『リナ、本物の魔法少女! 本物の魔法少女がいたんだよ!!』

『イリヤ。それじゃあリナも訳がわからないよ』

 

途中で美遊が割り込んできた。

 

『リナ。こっちはわたしたち以外の、二人の魔法少女と遭遇した。そのうちの一人が、その…』

「どうしたの、美遊?」

 

なんだ、美遊が言いあぐねてる?

 

『……リナ、なんだけど』

 

はあっ!? 魔法少女の一人があたし? すると。

 

『ええっ! そっちにもリナちゃんがいるの!?』

 

おそらく、ルビーかサファイアが拾ったその声。それは、あたしがよく知る、魔砲少女の声。

 

「イリヤ、美遊! 最初のビルで落ち合いましょう!!」

『えっ、リナ?』

『どうしたの?』

 

イリヤと美遊があたしのテンションの異常さに思わず尋ねてきたけど、そんなことよりあたしは、彼女に会いたい。

 

「とにかく急いで、二人とも!!」

『『う、うん!』』

 

あたしは二人を急かしてから通信を切った。

 

「クロエ、イリヤたちと落ち合うわよ。

あなたたちもそれでいいわね?」

 

二人も念話で、状況は理解してるはずだ。

 

「いい、けど、その…」

 

少女がなにやら言い淀む。ん、なんだ?

すると少年の方が代わりに。

 

「いつまで、おんぶしてるのかなって…」

 

……んなあああ! ()()やってもうたッ!!

 

「ちょっと、余計なこと言わないでよ。せっかくリナと密着できてウハウハなのに」

 

クロエ、アンタそんな邪な気持ちで!? どうりでときどき、手の位置が変なとこに…!

 

「え、キミたちってそういう仲なのかい!?」

「とーぜん!」

「んなわきゃあるかーッ!!」

 

すっぱーん!

 

スリッパでクロエの頭をひっぱたき、あたしはその背中から飛び降りる。

 

「ってか、なんでスリッパまで投影して…?」

「いや、リナといえばスリッパって思ったら、つい…」

 

頭を押さえながら言うクロエ。って、なにその、眼鏡が本体みたいな扱い!? あたしの本体、スリッパ!?

 

「うん。確かに、リナっていえばスリッパ」

 

ぐはっ! 金髪美少女からも言われたッ!!

 

「やめなよ。そんな、リナがスリッパみたいな言い方」

 

おお、あたしの味方をして…。

 

「第一リナは、『破壊と食欲の魔王』に決まってるじゃないか!」

 

……あたしに味方などいなかった。

 

「……えーと、そういえば自己紹介がまだだったわね?

わたしはクロエ。クロエ・フォン・アインツベルン、一応魔術師になるのかしら。わたしのことはクロって呼んでね」

 

クロエは話を反らして自己紹介を始めた。でも、気を遣ってくれるんなら、もう少し早くしてほしかったなー。

 

「あ…、わたしはフェイト・テスタロッサ。時空管理局の嘱託魔導師をしています」

 

……ん?

 

「ぼくは逢魔・S・ユーノ。元々は管理世界の出身だけど、今は地球の海鳴市で暮らしてるんだ」

 

……おや?

 

「じくうかんりきょく? かんりせかい?」

 

フェイト・テスタロッサ。逢魔・S・ユーノ。そして、もう一人のあたし(リナ)

 

「それって一体…」

「あ、そっか」

 

あたしはクロエの言葉を断ち切る形で声をあげた。

 

「リナ、何かわかったの?」

「ん、多分だけど。

……あ、あたしも自己紹介しないとね。あたしは稲葉リナ。剣士にして天才魔道士よ」

 

前世と同じ自己紹介をする。まあ、おそらくは二人とも、そんなことはわかってるんだろうけど。

 

「さ、みんなと合流しましょ? 話はそのときにね」

 

言ってあたしはウィンクをした。

 

 

 

 

≪イリヤside≫

リナの指示通り、わたしたちは最初のビルの屋上へと戻ってきた。そこにはまだ、リナたちの姿はない。

 

「リナたちはまだ、来てないね」

 

屋上に降りたミユがわたしに言った。

 

「あの、イリヤさん。そちらにもリナちゃんが、いるんですよね?」

 

ツインテの方の魔法少女、高町なのはちゃんが尋ねてきた。

 

「そんなに畏まらなくていいよ。こっちの方が年上っていっても、ひとつふたつしか違わないんだし」

 

さっき、リナに連絡をとる前に、わたしたちは軽く自己紹介をした。

高町なのはちゃんは聖祥大附属小学校に通う三年生で、もうすぐ進級するらしい。

最初聞いたとき、

 

---あれ? もうすぐ夏休みだよね?

---え、もうすぐ春休みじゃ…。

 

みたいな感じになったけど、ルビーが言うには、

 

---わたしたちとなのはさんたちが来た場所とでは、時間軸にズレがあるんでしょうねー。

 

ってことみたい。ただ、何か含み笑いをしてたのが気になるけど。

……と、

 

「それじゃああなたたちのことは、[イリヤ][美遊]って呼び捨てにしてもいい?」

 

そう言ったのは逢魔リナちゃん。なのはちゃんと同じく聖祥大附属小学校の三年生。なのはちゃんとは五歳の時からの親友なんだって。

見た目はわたしが知ってるリナと瓜二つ。ちょっと背が低い気がする事と、リナじゃ絶対着ないような魔法少女のコスチューム姿だってところが、違いっていえば違いかな?

 

「そ、それじゃわたしは、[イリヤちゃん][美遊ちゃん]って呼んでも、いいのかな?」

「うん、いいよ。その方が仲良くなれた気がするし」

「わたしも、イリヤがそれでいいならかまわない」

 

わたしの返答に、ミユもOKしてくれた。うん、やっぱり持つべきモノは友達だよね!

そんなことを話していると、空からこっちに近づいてくる人影が。

ようやく到着したか。そう思った瞬間、リナが突然スピードを上げて屋上に降り立ち。

 

「ホンモノだーッ!!」

 

そう言って、いきなりなのはちゃんに抱きついた。

 

「え? え!? なんなの!!?」

 

当然ながらなのはちゃんは、目を白黒させてる。ちなみに、男の子に抱えられながら到着したクロは、鬼の形相になってた。

 

「ちょっとリナ、いきなり何してんの!?」

 

わたしが注意を促そうとすると、興奮した声でリナが言った。

 

「だってホンモノよ? ホンモノのリリカルなのは!!」

「はぇ? リリカルなのは?」

 

リナは何を言って、っていうか、なんでなのはちゃんの名前を…。

 

「!!

リリカルなのは!?」

 

ミユが何かに気づいたのか、声を張る。

 

「ミユ、なにか知ってるの?」

 

わたしの言葉にミユはこくりと頷き。

 

「【魔法少女リリカルなのは】は、リナが借りてたDVDのタイトル…」

 

ミユは自分で言いながら、それでも信じられないという顔をしてる。そしてわたしも、ミユの言葉の意味に思い当たる。

 

「あ、レンタルDVDショップでの…」

「そうよ! この子は【魔法少女リリカルなのは】の主人公、高町なのはよ!!」

 

そうか。だからリナのテンションが異常に高く、……って、アニメの主人公!?

 

「ちょっと、それってどういうことなのーッ!?」

 

わたしの叫び声は、このおかしな世界の空へと消えていきました。




今回のサブタイトル
都築真紀「魔法少女リリカルなのは」から

というわけで、短編に出てきた魔法少女もののタイトル、実は伏線だったんですねー。ちなみに「リリすれ」とのコラボが無理だったときは、「プリティサミー」か、自分が書いてる他の魔法少女モノ にするつもりでした(笑)。
いやー、しかし久しぶりに出せましたよ。魔法少女でおかしなテンションになるリナ。なのはでこの調子だと、もしモモに出会ったら卒倒するのでは? なんて思ったりもしますが、リナには悪いけどさすがに書きません。

次回「ヒロインズ・ファンタジア」
リリカル、マジカル
「頑張りますっ!」
「恥ずかしげもなくっ!?」
(by 稲葉リナ & 逢魔リナ)

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